ペリドットとアンバー短編集
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その後、いつもの生活リズムを取り戻した赤井だったが、公安からの連絡は無く時間ばかりが過ぎていった。
過熱していた報道も今はひっそり身を潜め、時折『捜索が続いている』というアナウンスが流れるだけ。
これだけ探しても見つからないとなると、生存はもはや絶望的。遺体はすでに太平洋のどこかに流され、海底に沈んでいるかもしれない。
そうなれば、もはや探すことも回収することも不可能になる。
捜索不能の領域にいるかもしれない行方不明者をいつまで探し続けるか。そのタイムリミットが近づいていた。
いつその連絡が来るかと、戦々恐々としながら過ごす日々。
それでも、赤井は出来るだけ冷静でいるよう心がけた。もしここで心を乱せば、自分自身が彼女の死を認めてしまうようで怖かったからだ。
りおはまだ生きている、という限りなく0に近い可能性にまだ縋っていたかったのかもしれない。
「いつりおが戻って来ても良いように」
そんなわずかな希望を心の支えに、毎朝同じ時間に起きて朝食をとり、身支度をして部屋を整える。
冷たい雨が降る日も、強風が窓を叩く日も、どんよりと暗い雲が空を覆う日も――赤井は一人、工藤邸でりおの帰りを待ち続けた。
***
『海上保安庁から先ほど連絡が来て、明日正午に捜索を打ち切る方針でいるそうだ』
降谷から赤井にそう連絡が入ったのは、事件から9日目の事だった。
「そう……か」
窓辺に立った赤井が外の様子を見つめたまま、静かに声を発した。
覚悟はしていた。赤井自身も海洋資料を集め、事件があった現場周辺は潮の流れが速いことを知っている。
公安が血眼になって探したものの、近くの海岸にりおが上陸した形跡はなかった。
そうなれば、当然彼女は爆発によって命を落とし、遺体は潮の流れに乗って大海原へと運ばれた可能性が非常に高い。
海上保安庁の決定は至極当然である。
しかし頭では分かっているが、赤井の心の奥底では「まだ可能性はあるんじゃないのか」という思いが渦巻いていた。
しかし、それを声に出したところで降谷を困らせてしまうだけだ。
海上保安庁の決定に公安が異議申し立てを行うなど、できるはずが無いと分かっているから。
「降谷くん、連絡ありがとう。でも俺はまだ諦めていないんだ。遺体が見つかるまで俺はりおの帰りを待つつもりだ」
『赤井……』
前向きとも捉えられる発言とは裏腹に、弱々しい声しか出なかった。
しかし、祈りとも願いとも取れる赤井の真っすぐな思いは、電話の向こうの降谷にも正しく伝わったらしい。
受話器の向こうで降谷が一瞬息をつめる。何か言いたげな間が数秒あったのち、
『あなたの、その諦めの悪いところ僕は嫌いじゃないですね。あなたのその願い、いつか……届くと…いいですね』
降谷らしい皮肉ともとれるような言葉がかけられた。が、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「……ああ。そうあってくれることを願うよ」
常日頃、回りくどさのある降谷なりの励ましなのだろう。赤井はそれに特段関心を寄せることなく「じゃあ」と言って電話を切った。
過熱していた報道も今はひっそり身を潜め、時折『捜索が続いている』というアナウンスが流れるだけ。
これだけ探しても見つからないとなると、生存はもはや絶望的。遺体はすでに太平洋のどこかに流され、海底に沈んでいるかもしれない。
そうなれば、もはや探すことも回収することも不可能になる。
捜索不能の領域にいるかもしれない行方不明者をいつまで探し続けるか。そのタイムリミットが近づいていた。
いつその連絡が来るかと、戦々恐々としながら過ごす日々。
それでも、赤井は出来るだけ冷静でいるよう心がけた。もしここで心を乱せば、自分自身が彼女の死を認めてしまうようで怖かったからだ。
りおはまだ生きている、という限りなく0に近い可能性にまだ縋っていたかったのかもしれない。
「いつりおが戻って来ても良いように」
そんなわずかな希望を心の支えに、毎朝同じ時間に起きて朝食をとり、身支度をして部屋を整える。
冷たい雨が降る日も、強風が窓を叩く日も、どんよりと暗い雲が空を覆う日も――赤井は一人、工藤邸でりおの帰りを待ち続けた。
***
『海上保安庁から先ほど連絡が来て、明日正午に捜索を打ち切る方針でいるそうだ』
降谷から赤井にそう連絡が入ったのは、事件から9日目の事だった。
「そう……か」
窓辺に立った赤井が外の様子を見つめたまま、静かに声を発した。
覚悟はしていた。赤井自身も海洋資料を集め、事件があった現場周辺は潮の流れが速いことを知っている。
公安が血眼になって探したものの、近くの海岸にりおが上陸した形跡はなかった。
そうなれば、当然彼女は爆発によって命を落とし、遺体は潮の流れに乗って大海原へと運ばれた可能性が非常に高い。
海上保安庁の決定は至極当然である。
しかし頭では分かっているが、赤井の心の奥底では「まだ可能性はあるんじゃないのか」という思いが渦巻いていた。
しかし、それを声に出したところで降谷を困らせてしまうだけだ。
海上保安庁の決定に公安が異議申し立てを行うなど、できるはずが無いと分かっているから。
「降谷くん、連絡ありがとう。でも俺はまだ諦めていないんだ。遺体が見つかるまで俺はりおの帰りを待つつもりだ」
『赤井……』
前向きとも捉えられる発言とは裏腹に、弱々しい声しか出なかった。
しかし、祈りとも願いとも取れる赤井の真っすぐな思いは、電話の向こうの降谷にも正しく伝わったらしい。
受話器の向こうで降谷が一瞬息をつめる。何か言いたげな間が数秒あったのち、
『あなたの、その諦めの悪いところ僕は嫌いじゃないですね。あなたのその願い、いつか……届くと…いいですね』
降谷らしい皮肉ともとれるような言葉がかけられた。が、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「……ああ。そうあってくれることを願うよ」
常日頃、回りくどさのある降谷なりの励ましなのだろう。赤井はそれに特段関心を寄せることなく「じゃあ」と言って電話を切った。