ペリドットとアンバー短編集
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「クソッ!」
いくら昴(赤井)が武術に長けていても、ここで暴れたら大惨事。壁に穴が開く程度ではすまないだろう。ジェームズがホテルに居られなくなってしまう。
そんな状況を分かっていて、狭い通路で羽交い絞めにしたジョディの作戦勝ち、といえよう。
「さてと、中には何が入っているのかな?」
ジョディが勝ち誇ったように笑顔を見せ、バッグの中を覗いた。
「ん? 包みが入ってる……これ、もしかしてお弁当?」
ジョディがバッグから包みを取り出した。
「OBENTO?」
その場にいた捜査官たちが不思議そうに顔を上げた。視線はすべて包みに向いている。
「はは~ん。これ、さくらが作ったお弁当でしょ。さては……ホテルを出て公園ででも食べるつもりだったのかしら?」
どうしてこう、女のカンというものは鋭いのか。
「ほ、ホテルの食事に飽きてきてたからな」
キャメルに羽交い絞めにされたまま、昴はフイッと顔を背けた。
「あなたねぇ、私達は飽きても毎日食べてるのよ? あなたはさくらの美味しい手料理食べてるんでしょう? 贅沢言わないでよ!」
「アイツの料理の味を知ってるから、ホテルの食事は飽きると言ってるんだ」
「確かに……赤井さんの言い分も分かります」
「ちょっとキャメル! あなたどっちの味方なの!?」
「ひっ! も、申し訳ありませんッ」
ほんの少し同意しただけで、ギロリと睨まれたキャメルは口を閉じた。
「良いなぁ~さくらの手作り弁当……。
私だって前に工藤邸で食べさせてもらったけど、確かに美味しかったわよね~。
あ、そうだ! ちょっと味見させてよ。あと、日本の『BENTO』をこの目で見たい!」
ジョディの提案に周りの捜査官も反応する。
「俺も見てみたいな~。ニホンの『BENTO』にもシュウの『カノジョ』にも興味ある!」
新顔の捜査官も興味津々。
わらわらとジョディの周りに集まった。
「はぁ…。仕方ないな……」
昴は早々に抵抗を諦めた。こうなれば抵抗したところで無駄に時間を取られるだけだ。
(さっさと見せてジョディに味見をさせたら部屋を出よう)
昴は大きなため息をついて、体の力を抜いた。
***
夕刻——。
「ただいま~」
工藤邸の玄関にりおの声が響く。
「おかえりなさい」
昴が玄関まで出迎える。ただちょっと元気が無いようにも見えた。
「昴さん、どうしたの? 疲れてる?」
りおが心配そうに昴の顔を覗き込む。
「あ、いいえ。大丈夫ですよ」
一瞬ハッとして、昴が笑顔になる。いつも通り玄関でハグをして、昴はキッチンに戻っていった。
「?」
やや違和感を覚えつつ、りおは洗面所へと向かった。
手洗いを終え、空になった弁当を持ってりおがキッチンへ行くと、昴が鍋の前で味見をしていた。
シンク横の食器かごには、キレイに洗われた弁当箱が伏せてある。
「あ、お弁当食べたのね! どうだった?」
りおは自分の弁当をシンクに出しながら昴に問いかけた。
「え、ええ……美味しかった…ですよ」
どことなく仰々しいというか、バツが悪そうな感じで昴が答えた。
「……そう。それは良かった」
やはり先ほどの違和感を拭えぬまま、りおは弁当を洗い始める。
「いんげんとニンジンの肉巻きはどうだった? あれ、秀一さん好きでしょ」
「え、ええ。美味しかったです」
(それはジョディとキャメルが食べたがな)
「小松菜の胡麻和えは味濃くなかった?」
「いえ、ちょうど良かったと思います」
(それはブライアンとジャックが気に入ってたよ)
「卵焼きの味付けはどう?」
「ええ。良かったです」
(ジェームズが大絶賛してた)
「ニンジンのサラダは?」
「いつも通り美味しかったですよ」
(ビリーとクリスがレシピ知りたがってたな)
「雑穀米は少し塩を振っておいたから、冷めても美味しかったでしょ」
「ええ。とても良かったです」
(ご飯も残さず食べてたよ。みんなが)
りおの質問に昴は愛想良く答えるが、心の中では別の回答をしている。
実のところ昴は弁当を一口も食べていない。全てFBIの仲間に食べられてしまったのだ。
ジョディがちょっと味見、と言って弁当を開けた途端、目を引く美しさにFBI 捜査官全員が固まった。
「こ、これがウワサに聞く日本の『Lunch Box』いや、『BENTO』か……」
皆うわごとのようにつぶやいては、いったい何が入っているのかと興味津々。
あとは前述の通りである。
一口も食べられなかった昴は、味について聞かれても『良かった』『美味しかった』としか答えられない。
「はぁ~…」
洗い物をするりおの隣で、鍋をかき混ぜながら昴は大きなため息をついた。
りおはそんな昴をチラリと見ながら、二人分の弁当を拭く。
「ねえ、昴さん。ホントはお弁当、食べてないでしょ?」
「えっ!」
静かに投げかけられたりおの言葉に、昴はぎくりと体を揺らした。
どうしてこう、自分の周りの女性はカンが鋭いのか。
「だってね、あのお弁当食べていれば、絶対言うと思ったの。『いつもより少し味付けが濃かった』って。
普段の料理と比べて、お弁当は少し味を濃いめにするのがセオリ―。冷めた状態で食べるし、日持ちの面から見てもね。
特に私は普段から薄味にしているから、お弁当の味付けは少し濃く感じるはず。
でもあなたは何を聞いても『美味しかった』『良かった』しか言わない」
どこぞの探偵よろしく、ニヤリと笑ってりおは昴の顔を見上げる。
弁当のセオリ―など知らない昴は降参するしかない。
「あなたの言う通りです。せっかく作ってくれたお弁当、FBIの仲間に食べられてしまって…。結局私はホテルのルームサービスを頼みました」
申し訳なさそうに肩を落とす昴は、全てを白状した。
「えっ! じゃあ、あの小さなお弁当をみんなで食べたの!?」
「はい……。最後は取り合いになって、ジェームズが取り分けてくれて…」
どこぞの幼稚園児ですか! とツッコみたいのをガマンして、りおは「そうだったの…」と頭を抱えた。
「そっか。日本のお弁当はちょっと特殊だもんね。外国の人にしてみれば、そりゃぁ興味あるわよね……」
申し訳ない事をしたな、とりおはキレイになったお弁当を見つめる。
「私の方こそ嘘をついてスミマセン。やはりりおの言う通り、一人だけ別のものを食べるのは良くないですね」
昨日りおに言われたことを思い出し、もう弁当は作らなくていい、と伝えた。
「う、うん……分かったわ」
りおの返答に昴は少し寂しそうに微笑むと、再び鍋をかき混ぜた。
一週間後——。
FBIの会議に出かける昴は、またしてもご機嫌だった。
肩にはユニオンジャックのトートバッグ。
手には大きな風呂敷包みを持っている。
「日本の『BENTO』はバリエーションが多いんだな」
昴はフッと口角を持ち上げて、足取り軽くジェームズのホテルへと急いだ。
同じ頃——。
「ふ~。朝から作るの大変だったけど、みんなが喜んでくれるなら…まぁいっか♪」
大学についたりおは自分のロッカーに荷物を入れると「んーッ!」と伸びをした。
今朝昴が持って出た風呂敷の中身は『重箱』。
FBI捜査官全員が食べれるくらいには、おかずとおにぎりがぎっしり入っている。
外は晴天。
皆で公園に行けばピクニックも出来るだろう。
(変装してるんだし。たまにはこんな日も良いよね)
今日はきっと、昴もジョディたちも楽しいランチタイムになるはずだ。
いくら昴(赤井)が武術に長けていても、ここで暴れたら大惨事。壁に穴が開く程度ではすまないだろう。ジェームズがホテルに居られなくなってしまう。
そんな状況を分かっていて、狭い通路で羽交い絞めにしたジョディの作戦勝ち、といえよう。
「さてと、中には何が入っているのかな?」
ジョディが勝ち誇ったように笑顔を見せ、バッグの中を覗いた。
「ん? 包みが入ってる……これ、もしかしてお弁当?」
ジョディがバッグから包みを取り出した。
「OBENTO?」
その場にいた捜査官たちが不思議そうに顔を上げた。視線はすべて包みに向いている。
「はは~ん。これ、さくらが作ったお弁当でしょ。さては……ホテルを出て公園ででも食べるつもりだったのかしら?」
どうしてこう、女のカンというものは鋭いのか。
「ほ、ホテルの食事に飽きてきてたからな」
キャメルに羽交い絞めにされたまま、昴はフイッと顔を背けた。
「あなたねぇ、私達は飽きても毎日食べてるのよ? あなたはさくらの美味しい手料理食べてるんでしょう? 贅沢言わないでよ!」
「アイツの料理の味を知ってるから、ホテルの食事は飽きると言ってるんだ」
「確かに……赤井さんの言い分も分かります」
「ちょっとキャメル! あなたどっちの味方なの!?」
「ひっ! も、申し訳ありませんッ」
ほんの少し同意しただけで、ギロリと睨まれたキャメルは口を閉じた。
「良いなぁ~さくらの手作り弁当……。
私だって前に工藤邸で食べさせてもらったけど、確かに美味しかったわよね~。
あ、そうだ! ちょっと味見させてよ。あと、日本の『BENTO』をこの目で見たい!」
ジョディの提案に周りの捜査官も反応する。
「俺も見てみたいな~。ニホンの『BENTO』にもシュウの『カノジョ』にも興味ある!」
新顔の捜査官も興味津々。
わらわらとジョディの周りに集まった。
「はぁ…。仕方ないな……」
昴は早々に抵抗を諦めた。こうなれば抵抗したところで無駄に時間を取られるだけだ。
(さっさと見せてジョディに味見をさせたら部屋を出よう)
昴は大きなため息をついて、体の力を抜いた。
***
夕刻——。
「ただいま~」
工藤邸の玄関にりおの声が響く。
「おかえりなさい」
昴が玄関まで出迎える。ただちょっと元気が無いようにも見えた。
「昴さん、どうしたの? 疲れてる?」
りおが心配そうに昴の顔を覗き込む。
「あ、いいえ。大丈夫ですよ」
一瞬ハッとして、昴が笑顔になる。いつも通り玄関でハグをして、昴はキッチンに戻っていった。
「?」
やや違和感を覚えつつ、りおは洗面所へと向かった。
手洗いを終え、空になった弁当を持ってりおがキッチンへ行くと、昴が鍋の前で味見をしていた。
シンク横の食器かごには、キレイに洗われた弁当箱が伏せてある。
「あ、お弁当食べたのね! どうだった?」
りおは自分の弁当をシンクに出しながら昴に問いかけた。
「え、ええ……美味しかった…ですよ」
どことなく仰々しいというか、バツが悪そうな感じで昴が答えた。
「……そう。それは良かった」
やはり先ほどの違和感を拭えぬまま、りおは弁当を洗い始める。
「いんげんとニンジンの肉巻きはどうだった? あれ、秀一さん好きでしょ」
「え、ええ。美味しかったです」
(それはジョディとキャメルが食べたがな)
「小松菜の胡麻和えは味濃くなかった?」
「いえ、ちょうど良かったと思います」
(それはブライアンとジャックが気に入ってたよ)
「卵焼きの味付けはどう?」
「ええ。良かったです」
(ジェームズが大絶賛してた)
「ニンジンのサラダは?」
「いつも通り美味しかったですよ」
(ビリーとクリスがレシピ知りたがってたな)
「雑穀米は少し塩を振っておいたから、冷めても美味しかったでしょ」
「ええ。とても良かったです」
(ご飯も残さず食べてたよ。みんなが)
りおの質問に昴は愛想良く答えるが、心の中では別の回答をしている。
実のところ昴は弁当を一口も食べていない。全てFBIの仲間に食べられてしまったのだ。
ジョディがちょっと味見、と言って弁当を開けた途端、目を引く美しさにFBI 捜査官全員が固まった。
「こ、これがウワサに聞く日本の『Lunch Box』いや、『BENTO』か……」
皆うわごとのようにつぶやいては、いったい何が入っているのかと興味津々。
あとは前述の通りである。
一口も食べられなかった昴は、味について聞かれても『良かった』『美味しかった』としか答えられない。
「はぁ~…」
洗い物をするりおの隣で、鍋をかき混ぜながら昴は大きなため息をついた。
りおはそんな昴をチラリと見ながら、二人分の弁当を拭く。
「ねえ、昴さん。ホントはお弁当、食べてないでしょ?」
「えっ!」
静かに投げかけられたりおの言葉に、昴はぎくりと体を揺らした。
どうしてこう、自分の周りの女性はカンが鋭いのか。
「だってね、あのお弁当食べていれば、絶対言うと思ったの。『いつもより少し味付けが濃かった』って。
普段の料理と比べて、お弁当は少し味を濃いめにするのがセオリ―。冷めた状態で食べるし、日持ちの面から見てもね。
特に私は普段から薄味にしているから、お弁当の味付けは少し濃く感じるはず。
でもあなたは何を聞いても『美味しかった』『良かった』しか言わない」
どこぞの探偵よろしく、ニヤリと笑ってりおは昴の顔を見上げる。
弁当のセオリ―など知らない昴は降参するしかない。
「あなたの言う通りです。せっかく作ってくれたお弁当、FBIの仲間に食べられてしまって…。結局私はホテルのルームサービスを頼みました」
申し訳なさそうに肩を落とす昴は、全てを白状した。
「えっ! じゃあ、あの小さなお弁当をみんなで食べたの!?」
「はい……。最後は取り合いになって、ジェームズが取り分けてくれて…」
どこぞの幼稚園児ですか! とツッコみたいのをガマンして、りおは「そうだったの…」と頭を抱えた。
「そっか。日本のお弁当はちょっと特殊だもんね。外国の人にしてみれば、そりゃぁ興味あるわよね……」
申し訳ない事をしたな、とりおはキレイになったお弁当を見つめる。
「私の方こそ嘘をついてスミマセン。やはりりおの言う通り、一人だけ別のものを食べるのは良くないですね」
昨日りおに言われたことを思い出し、もう弁当は作らなくていい、と伝えた。
「う、うん……分かったわ」
りおの返答に昴は少し寂しそうに微笑むと、再び鍋をかき混ぜた。
一週間後——。
FBIの会議に出かける昴は、またしてもご機嫌だった。
肩にはユニオンジャックのトートバッグ。
手には大きな風呂敷包みを持っている。
「日本の『BENTO』はバリエーションが多いんだな」
昴はフッと口角を持ち上げて、足取り軽くジェームズのホテルへと急いだ。
同じ頃——。
「ふ~。朝から作るの大変だったけど、みんなが喜んでくれるなら…まぁいっか♪」
大学についたりおは自分のロッカーに荷物を入れると「んーッ!」と伸びをした。
今朝昴が持って出た風呂敷の中身は『重箱』。
FBI捜査官全員が食べれるくらいには、おかずとおにぎりがぎっしり入っている。
外は晴天。
皆で公園に行けばピクニックも出来るだろう。
(変装してるんだし。たまにはこんな日も良いよね)
今日はきっと、昴もジョディたちも楽しいランチタイムになるはずだ。