ペリドットとアンバー短編集
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とある任務の帰り道——
ラスティーは重いため息をつきながら歩いていた。
ジンとベルモットの計らいで、殺害の現場には居合わせていない。ラスティーはターゲット亡き後、その住居に忍び込みPCのデータをコピーしてきただけだ。
それでも——。そこはつい数時間前までターゲットが生活していた部屋。
ラスティーはポケットに忍ばせてあるUSBメモリに触れ、再びため息をついた。
米花町から一駅離れたカフェでベルモットと落ち合う。カフェではすでにベルモットが窓際の席で待っていた。
「あら、早かったわね」
ノートパソコンから目を離すと、ベルモットが声をかけた。
「ええ。セキュリティーはさほど厳重ではなかったし、同居する家族もいない。忍び込むのに苦労は無かったわ」
買ったばかりの飲み物をテーブルに置き、ラスティーはイスに座る。
「はい、これ。ターゲットのPCに入ってたデータよ。ジンに渡してくれる?」
ポケットから出したUSBメモリをベルモットに手渡した。
「OK。あら、あなた少し顔色が悪いわね。それに……なんだかだるそうよ」
ベルモットは心配そうにラスティーの顔を覗き込んだ。
「ああ。さっき忍び込んだ時、少し苦しくなったから安定剤を半錠だけ飲んだの。そのせいかな」
「そう。なら良いんだけど……」
ノートパソコンを閉じ、ベルモットはそれ以上何も言わなかった。
「ただいま……」
工藤邸に帰り着いたりおは、自室に入るなりベッドに倒れ込む。体が重くて着替えをする元気もない。グラグラと視界が揺れ、体が鉛のように重い——
目を開けるのも億劫で、りおはそのまま眠りに落ちた。
トントン
「りお?」
帰ってから部屋にこもりっぱなしのりおに昴が声をかける。しかし返事はない。
ガチャ……
昴はそっとドアを開けた。真っ暗な部屋の中でりおは着替えもしないまま眠っている。
「りお、どうした? 大丈夫か?」
「…う……ん…」
昴の声に反応したりおが身じろぎした。一瞬だけ表情を歪ませ、目を開ける。
「あ…れ…? 私……寝ちゃってた…?」
「ずいぶんお疲れだな。何かあったのか?」
りおはムクリと体を起こし目を擦る。
「ううん……任務はいつも通り。ちょっと動悸がしたから安定剤を半分だけ飲んだけど……なんでこんなにだるいんだろう」
のそのそとベッドから這い出るが、だるさは抜けないらしく動きはとても遅い。
(だいぶ辛そうだな……)
昴は心配そうにりおを見ていた。
翌日——
今日は土曜日。昨日の不調がウソのように消え、りおは午前中から精力的に家事をこなす。昴の協力もあって掃除も洗濯も予定より早く終えた。
「良い天気ですし、買い物がてら外でランチでもしませんか?」
昴の提案で二人は昼前に工藤邸を出た。
「和食もたまには良いなぁ。あ、でもこっちのイタリアン……期間限定のパスタも美味しそう」
「こちらの回鍋肉も良いですね」
米花町の繁華街には飲食店がたくさん並んでいて、二人は店先のメニューを見ながら相談していた。
和食にイタリアンに中華——。
どれも美味しそうで目移りしてしまう。なかなか決まらず、どうしようかな~と考えていると、何やら聞き覚えのある音が聞こえてきた。
ファン、ファン、ファン、ファン……
「パトカーのサイレンのようだけど……ん? しかも音、近づいてきてるよね?」
「ええ……この辺りで事件でしょうか?」
二人は辺りを見回した。
「あそこですね」
昴が視線を向ける先には、すでに人だかりができていた。
二人が現場にたどり着いた時、そこには捜査一課の面々が到着していた。
鑑識官も複数名居て、黄色い規制線を張り巡らせている。
「皆さん、現場検証をしますから少し下がって下さい」
高木刑事が集まった野次馬達に声をかけていた。
「何かあったんですか?」
昴が高木に声をかけた。
「あ、沖矢さんじゃないですか。実はここのお店で殺人事件がありまして……。偶然居合わせたコナンくんと蘭さんに、今事情聴取中です」
高木は店の方へ視線を送りながら、簡単に説明してくれた。
「え、またコナンくん目撃者なんですか?」
さくらが驚いて問いかける。
「え、ええ。どうも彼は『事件ホイホイ』なところがありまして……」
高木も呆れたように頭を掻いた。
二人は事件現場へと目を向ける。
店の内外に警察関係者がおり、中では鑑識が写真を撮っているのが見える。
視線を下に移すと、入口近くの壁にはべったりと血が付いており、被害者のものであろう足がわずかに見えた。
「ッ!」
さくらの心臓がドクンと跳ねた。
血液に対する過剰反応はだいぶ軽減したとはいえ、死体を見るのはまだ抵抗がある。
胸がぎゅぅっと締め付けられ、息が苦しい。
「さくらッ!」
とっさに昴がさくらの肩を抱き、自分の方へ抱き寄せる。さくらから現場が見えないように向きを変えた。
「あ、一般の方にはキツイですよね……。コナンくんや蘭さんは見慣れているせいか、意外と平気なのでウッカリしてました」
高木が慌てて謝罪した。
「死体を見慣れてしまう小学生も困ったものですね。さくらもこんなですし、私たちは失礼します」
「ええ。お大事にしてください」
昴は二言三言言葉を交わし、さくらを連れて現場を離れる。
「ご、ごめん……」
さくらは青い顔をして謝った。
「現場はボウヤがいるから大丈夫だろう。それより体は?」
昴が優しく問いかける。
「ポケットに頓服の安定剤があるの。それを飲むわ」
近くのベンチに座り、さくらはバッグから小さなマグボトルを取り出した。薬を一錠口の中に入れるとボトルの水と一緒に飲み込む。
「薬が効いて落ち着いたら食事か……食欲が無いようでしたら出直しましょうか」
「うん……」
さくらは呼吸を整えながら小さくうなずいた。
薬が効くまでの間、さくらは昴の肩に体を預け目を閉じた。
いつもなら数分で呼吸がラクになり、体も軽くなる。ところが今日はなかなか効いてこない。
それどころか口が渇き、グラグラと目が回る。その上吐き気まで。
現場を見た時よりも気分が悪い。
「…ぅ……はぁ……ふ……」
「さくら?」
さくらの異変に気付いた昴が声をかける。しかし、それに答えるだけの余裕がさくらには無い。
「どうした? まだ苦しい? 薬、効いてこないのか?」
矢継ぎ早に問いかける昴の声も、その姿も、徐々に歪んでいく。
昴にもたれかかっていたさくらの体が大きく傾いた。
「おい! さくら!?」
さくらの体を抱き留めた昴は、慌ててその顔を見た。
「ッ!」
さくらの顔は蒼白で脂汗を浮かべていた。触れたところは驚くほど熱い。
「急にどうして……」
突然の激しい変化に、昴の思考はついていけない。
「おい、さくら! しっかりしろ!」
もうほとんど意識の無いさくらを抱きしめ、昴は何度も体を揺すり、声をかけ続けた。
ラスティーは重いため息をつきながら歩いていた。
ジンとベルモットの計らいで、殺害の現場には居合わせていない。ラスティーはターゲット亡き後、その住居に忍び込みPCのデータをコピーしてきただけだ。
それでも——。そこはつい数時間前までターゲットが生活していた部屋。
ラスティーはポケットに忍ばせてあるUSBメモリに触れ、再びため息をついた。
米花町から一駅離れたカフェでベルモットと落ち合う。カフェではすでにベルモットが窓際の席で待っていた。
「あら、早かったわね」
ノートパソコンから目を離すと、ベルモットが声をかけた。
「ええ。セキュリティーはさほど厳重ではなかったし、同居する家族もいない。忍び込むのに苦労は無かったわ」
買ったばかりの飲み物をテーブルに置き、ラスティーはイスに座る。
「はい、これ。ターゲットのPCに入ってたデータよ。ジンに渡してくれる?」
ポケットから出したUSBメモリをベルモットに手渡した。
「OK。あら、あなた少し顔色が悪いわね。それに……なんだかだるそうよ」
ベルモットは心配そうにラスティーの顔を覗き込んだ。
「ああ。さっき忍び込んだ時、少し苦しくなったから安定剤を半錠だけ飲んだの。そのせいかな」
「そう。なら良いんだけど……」
ノートパソコンを閉じ、ベルモットはそれ以上何も言わなかった。
「ただいま……」
工藤邸に帰り着いたりおは、自室に入るなりベッドに倒れ込む。体が重くて着替えをする元気もない。グラグラと視界が揺れ、体が鉛のように重い——
目を開けるのも億劫で、りおはそのまま眠りに落ちた。
トントン
「りお?」
帰ってから部屋にこもりっぱなしのりおに昴が声をかける。しかし返事はない。
ガチャ……
昴はそっとドアを開けた。真っ暗な部屋の中でりおは着替えもしないまま眠っている。
「りお、どうした? 大丈夫か?」
「…う……ん…」
昴の声に反応したりおが身じろぎした。一瞬だけ表情を歪ませ、目を開ける。
「あ…れ…? 私……寝ちゃってた…?」
「ずいぶんお疲れだな。何かあったのか?」
りおはムクリと体を起こし目を擦る。
「ううん……任務はいつも通り。ちょっと動悸がしたから安定剤を半分だけ飲んだけど……なんでこんなにだるいんだろう」
のそのそとベッドから這い出るが、だるさは抜けないらしく動きはとても遅い。
(だいぶ辛そうだな……)
昴は心配そうにりおを見ていた。
翌日——
今日は土曜日。昨日の不調がウソのように消え、りおは午前中から精力的に家事をこなす。昴の協力もあって掃除も洗濯も予定より早く終えた。
「良い天気ですし、買い物がてら外でランチでもしませんか?」
昴の提案で二人は昼前に工藤邸を出た。
「和食もたまには良いなぁ。あ、でもこっちのイタリアン……期間限定のパスタも美味しそう」
「こちらの回鍋肉も良いですね」
米花町の繁華街には飲食店がたくさん並んでいて、二人は店先のメニューを見ながら相談していた。
和食にイタリアンに中華——。
どれも美味しそうで目移りしてしまう。なかなか決まらず、どうしようかな~と考えていると、何やら聞き覚えのある音が聞こえてきた。
ファン、ファン、ファン、ファン……
「パトカーのサイレンのようだけど……ん? しかも音、近づいてきてるよね?」
「ええ……この辺りで事件でしょうか?」
二人は辺りを見回した。
「あそこですね」
昴が視線を向ける先には、すでに人だかりができていた。
二人が現場にたどり着いた時、そこには捜査一課の面々が到着していた。
鑑識官も複数名居て、黄色い規制線を張り巡らせている。
「皆さん、現場検証をしますから少し下がって下さい」
高木刑事が集まった野次馬達に声をかけていた。
「何かあったんですか?」
昴が高木に声をかけた。
「あ、沖矢さんじゃないですか。実はここのお店で殺人事件がありまして……。偶然居合わせたコナンくんと蘭さんに、今事情聴取中です」
高木は店の方へ視線を送りながら、簡単に説明してくれた。
「え、またコナンくん目撃者なんですか?」
さくらが驚いて問いかける。
「え、ええ。どうも彼は『事件ホイホイ』なところがありまして……」
高木も呆れたように頭を掻いた。
二人は事件現場へと目を向ける。
店の内外に警察関係者がおり、中では鑑識が写真を撮っているのが見える。
視線を下に移すと、入口近くの壁にはべったりと血が付いており、被害者のものであろう足がわずかに見えた。
「ッ!」
さくらの心臓がドクンと跳ねた。
血液に対する過剰反応はだいぶ軽減したとはいえ、死体を見るのはまだ抵抗がある。
胸がぎゅぅっと締め付けられ、息が苦しい。
「さくらッ!」
とっさに昴がさくらの肩を抱き、自分の方へ抱き寄せる。さくらから現場が見えないように向きを変えた。
「あ、一般の方にはキツイですよね……。コナンくんや蘭さんは見慣れているせいか、意外と平気なのでウッカリしてました」
高木が慌てて謝罪した。
「死体を見慣れてしまう小学生も困ったものですね。さくらもこんなですし、私たちは失礼します」
「ええ。お大事にしてください」
昴は二言三言言葉を交わし、さくらを連れて現場を離れる。
「ご、ごめん……」
さくらは青い顔をして謝った。
「現場はボウヤがいるから大丈夫だろう。それより体は?」
昴が優しく問いかける。
「ポケットに頓服の安定剤があるの。それを飲むわ」
近くのベンチに座り、さくらはバッグから小さなマグボトルを取り出した。薬を一錠口の中に入れるとボトルの水と一緒に飲み込む。
「薬が効いて落ち着いたら食事か……食欲が無いようでしたら出直しましょうか」
「うん……」
さくらは呼吸を整えながら小さくうなずいた。
薬が効くまでの間、さくらは昴の肩に体を預け目を閉じた。
いつもなら数分で呼吸がラクになり、体も軽くなる。ところが今日はなかなか効いてこない。
それどころか口が渇き、グラグラと目が回る。その上吐き気まで。
現場を見た時よりも気分が悪い。
「…ぅ……はぁ……ふ……」
「さくら?」
さくらの異変に気付いた昴が声をかける。しかし、それに答えるだけの余裕がさくらには無い。
「どうした? まだ苦しい? 薬、効いてこないのか?」
矢継ぎ早に問いかける昴の声も、その姿も、徐々に歪んでいく。
昴にもたれかかっていたさくらの体が大きく傾いた。
「おい! さくら!?」
さくらの体を抱き留めた昴は、慌ててその顔を見た。
「ッ!」
さくらの顔は蒼白で脂汗を浮かべていた。触れたところは驚くほど熱い。
「急にどうして……」
突然の激しい変化に、昴の思考はついていけない。
「おい、さくら! しっかりしろ!」
もうほとんど意識の無いさくらを抱きしめ、昴は何度も体を揺すり、声をかけ続けた。