ペリドットとアンバー短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ポアロで飲み会しませんか?」
梓からお誘いメールを貰ったのが3日前。
そして現在——
そのポアロには梓、安室、蘭、コナン、昴、さくら、そして偶然居合わせた風見……いや、飛田(ひだ)が顔を揃え、会は和やかに進んでいた。
「はい! ポアロ特製サンドイッチお待ちどうさま!」
次々と美味しそうな料理がカウンターに並び、その度に歓声が上がる。
「安室さん達もそろそろこっちで一緒に食べませんか?」
さくらが厨房の二人に声をかけた。
「は~い! すぐ行きま~す」
調理器具を片付けていた梓が笑顔で返事をした。
今回の企画は、小五郎が別の飲み会に出席するため未成年二人はポアロで夕飯を……という流れから、じゃあ他にも人を呼んで楽しくやろう! という話になったのだとか。
「昼間、由美さんにお会いしたから一緒にどうですかって誘ったんですけど『今日は徹マンだから』って断られちゃったんです」
蘭が苦笑いをしながらさくらに耳打ちした。ほかにも高木・佐藤両刑事、園子や世良にも声をかけたが都合がつくのは今回のメンツだけだった。
「由美さんもさぁ休みの前日なんだし、彼氏と会えば良いのにね~」
——ちなみに高木刑事と佐藤刑事はデートだって言ってたよ~。
隣でジュースを飲んでいたコナンも呆れ顔でつぶやいた。
そこへようやく厨房の二人が揃う。
「梓さん、安室さん、お二人は何飲みます?」
さくらが二人分のグラスを用意しながら訊ねた。
「えっと……じゃあこのサワーをお願いします」
梓がリキュールの缶を指さした。
「安室さんも今日くらい飲んだらどうですか?」
「そうですよ。料理もほぼ終わったし、せっかくの飲み会なんですから」
梓とさくらに勧められ、それじゃあ……と安室はビールをチョイスした。
全員のグラスが満たされた事を確認して、本日2度目の乾杯。
その後はみんなで料理を取り分ける。
「そういえば、僕にはアルコールを勧めたのにさくらさんはジュースなんですね。もしかして……お酒、飲めないんですか?」
安室がさくらのグラスを覗き込んで訊ねた。
「あ、いえ……飲めない訳では無いのですが……」
さくらがそこまで言いかけたところで、飛田が「なら、せっかくですから!」と言ってハイボールの入ったグラスをさくらに手渡す。
目元が赤く、どうやらすでに酔っぱらっているらしい。
「え、で、でも……」
さくらは困り顔で昴を見た。
「おや、お酒を飲むのにも彼氏の許可が必要なんですか?」
安室はやや意地悪そうな顔をして問いかける。
それを聞いて昴がため息をついた。
「あまり飲み過ぎなければ良いんじゃないですか」
仕方がないとでも言うように、さくらへ声をかけた。
さくらは一瞬躊躇したが、梓が「乾杯♫」とグラスを合わせて来たので、仕方なく「じゃあ1杯だけ……」と小さくつぶやいて口を付けた。
程度の差はあれど、大人組はそれぞれアルコールが入りおしゃべりに花が咲く。
さくらが安室達と楽しそうに話をしているのを、昴は横目で一瞥した。
「さくらさんのこと、気になる?」
昴の様子に気付いたコナンが口元に手を当てて訊ねた。
「え? あ、いや……」
誤魔化すように返事をして昴は身を屈めた。
「大勢が集まる場所で恋人を監視するような無粋な真似はせんよ」
人の良い『沖矢スマイル』を貼り付け、何事も無いように振舞う。
(そのわりには、さっきからチラチラとさくらさんばかり見てるけどね……)
コナンは「ふ~ん」と軽く返事をすると半目で昴を見た。
しばらく談笑し場が和んだ頃、酔っぱらった飛田が昴に声をかけた。
「沖矢しゃん……ちょっと伺いたいんでしゅけど」
「あ、はい。どうしました?……って、飛田さん! ずいぶんと酔ってますね。大丈夫ですか?」
返事をした昴は心配そうに飛田を見る。
飛田はネクタイを緩め、ろれつもかなり怪しい。心なしか足元もふらついていた。
「さくらしゃんみたいな美人な彼女は、どうしたらできるんでしゅか?」
「は?」
普段見せるお堅い雰囲気からは想像できない質問に、昴は「は?」とだけ言って思考が固まる。
数秒ほど間があって、ようやく出た言葉も結局「は?」だった。
(風見のヤツめ……飲み過ぎだな)
安室が遠巻きに二人のやり取りを見てため息をつく。
「あぁ……私お水持っていきますね」
安室の視線の先に気付き、さくらが苦笑いをしながら飛田に声をかける。ふらつく飛田を壁際の椅子へと誘導した。
「ふふふ。沖矢さん、絡まれましたね」
安室が昴に近づいた。
「え、ええ。彼は飲むと絡み酒なんですね」
両手を広げて参ったと返す昴に、安室も「僕も初めて知りました」と苦笑いで返した。
「それより……あなたとは一度一緒に飲んでみたいと思っていたんですよね」
「それは光栄ですね」
爽やかな笑顔で互いの顔を見る安室と昴。ちょっと見れば同世代の楽しいおしゃべり。しかしそこには——公安vsFBI——互いのプライドが見え隠れ。さらには、さくらをめぐる攻防戦が展開される、のか!?——。
そしてその少し先では、グダグダの飛田とそれを介抱するさくら。たんなる飲み会での介抱劇のようにも見えるが、実際のところ二人は公安の上司と部下。
本気の介抱か、それとも【飛田】という人物の人となりを印象付けるために、あえて演じているだけなのか——?
(あっちもこっちも複雑すぎて面倒くせぇ……)
コナンは視線を双方に動かし、「はぁぁ……」と深いため息をついた。
「さあ、飛田さん。お水飲んでください」
すでにベロベロの飛田にさくらは水を差しだす。
「あ~、さくらさんですか~。ありがと~ございます~。ところであなたは飲んでますか~?」
ここで『広瀬』と呼ばなかったのはさすがだ。しかし、それも時間の問題。
それくらいには飛田(風見)は酔っぱらっていた。
『風見さん、そろそろ控えないと……』
さくらはコッソリと耳打ちをした。
「あなたに言われなくても、わらしはだ~いじょおぶですって~。それよりさくらさんも飲んでます~?」
上機嫌の飛田はウイスキーをグラスに注ぎ「どうぞどうぞ」とさくらに勧めた。
グラスにたっぷり注がれたストレートのウイスキー。さすがにこれを飲んだら、例の発作がでる。
だが飛田は何を言っても聞く耳持たず。仕方なく、さくらは舐める程度に口を付けた。
「やぁだわ~、さくらさん。それじゃ飲んだことにならないわよ」
気付けばほろ酔いの梓が隣にいた。
「ほら、グッといっちゃって」
「えっ、あの、でも……」
さくらは何とか断ろうとあれこれ言い訳をするが、梓には「明日お休みでしょ」と言われ、飛田からは「俺の酒が飲めないのか」と、どこぞの昭和の親父のようなセリフが飛び出す。
さらには「それを飲まないなら俺も水を飲まん!」とまで言い出す始末。
酔っ払い相手にどうすることも出来ず、昴に助けを求めようと視線を向ける。
しかし、肝心の昴は安室と楽しげに酒を酌み交わし、さくらが必死に送るアイコンタクトに気付かない。
「あぁ、もうッ! 知らない!」
さくらもこの時、わずかに酔っていた。
酔っ払い二人の絡みにどうにも面倒くさくなったさくらは、一気にグラスを煽った。
「わお! 良い飲みっぷりだわ! 惚れ惚れしちゃう」
「さくらさんの豪快な飲みっぷり……なんか良いっすね」
酔っ払い二人組(梓&飛田)は歓声を上げた。その上、もう一杯とさらに勧めてくる。
段々酔いが回ってきたさくらは、もうどうでもよくなってさらにグラスを煽った。
数十分後———
「ちょ、ちょっとさくらさん?! 大丈夫ですか?!」
蘭の声で昴と安室が振り向いた。
そこで繰り広げられていた光景に二人は目を丸くする。
ひっく……ひっく……
しゃっくりをしながら、さくらは無心で風見の手を揉んでいた。
当の風見は飲み過ぎてソファーで伸びている。梓もさくらの隣で「さくらさん上手ね~」とチューハイを片手に楽しそうに眺めていた。
「ちょ、っと……さくらッ! 何やってるんですか!」
昴は慌ててさくらに駆け寄った。
かなりの量の酒を飲んだらしく、無心になって飛田の手を揉み、頬ずりをしている。
さくら止めなさい、と昴が腕を掴んで二人を引き離した。
「や~だ~……ひっく……揉むの~……ひっく」
突然引き離されたさくらは駄々をこねている。その光景に安室は驚き目を見張った。。
「いったいこれは……」
安室は昴に問いかけた。
「実は……さくらは酔うと人の手を揉みたくなるらしいのです。手フェチと言えば分かりますか? 揉み始めると寝落ちするまでこんな感じです。
人様に迷惑がかかるからと、普段外では飲まないようにしているんですよ。ほろ酔い程度なら問題ないんですけど……」
グダグダのさくらを介抱しながら昴は説明した。
「家でもこうなんですか?」
安室は信じられないという顔をして、さらに昴に問いかけた。
「ええ。家でもたまに一緒に飲むんですけど……。一定量を越えると私の手をずっと揉んでいて。翌日揉み返しで散々ですよ……」
彼女が酔うとロクなことが無い、と昴はため息をついた。
「それでさくらさん、飲酒の許可取ってたのか……」
先程の行動に合点がいったコナンは、半目のままさくらを見上げた。
「まだ飲む~! まだモミモミする~!」
上機嫌のさくらを見て、だめだこりゃとコナンも頭を抱えた。
「これは早く昴さんに連れて帰ってもらった方が良さそうだね、安室さん」
「そうですね……。本人が明日、後悔しないためにも早めにご帰宅された方が……」
安室も苦笑いをして昴にそう意見した。
「そうですね。せっかくの飲み会だったのに、ゆっくり出来なくて申し訳ありません」
昴はベロベロのさくらをおぶり、何度も謝罪しながらポアロを後にした。
外灯が点々と住宅街を照らす。
その中を昴はゆっくりと工藤邸に向かって歩いた。
「さくら! ちゃんと掴まってください!
落ちちゃいますよ!」
酔っ払いのさくらは、フラフラしていて今にも背中から落ちそうだった。
「昴さんのおんぶだ~。ふふふ。タバコのにおいがする~」
昴のうなじに顔を押し付けて、スゥと匂いを嗅いだ。
「こら、匂いをかがないで。汗臭いでしょ」
「汗の匂いしないよ~」
尚もスンスンと鼻を鳴らし、あろうことかペロリとそのうなじを舐めた。
「うぁっ! こ、こら! こんな所でっ!」
ゾワリとした感覚が昴の首から背中に走った。
「ふふふ~。昴さんの焦った顔スキ~!」
気を良くしたさくらは、さらに昴の首にキスを落とす。
昴が抵抗できない事を良いことに、やりたい放題。やがて耳まで甘噛みするものだから昴はたまったものではない。
「こ、こら! やめなさい! 誰かに…ッん……見られたら……」
「あ! 今感じたでしょ。『ッん』ってなた!」
(まったく…全然人の話を聞いちゃいない)
嬉しそうに首元にすり寄るさくらに、昴はため息をつく。
とはいえ、昴のガマンも限界だった。
「こんな所で煽ってあとでどうなるか……覚悟してくださいよ!」
半分冗談で半分本当。
ちょっと脅かしておけば少しはおとなしくなるかと思ったが甘かった。
「え~……それは身が持たないかも。あ、誰か~! 助けて下さ~い! 私襲われちゃいます~」
なんと、さくらはおんぶされたまま助けを呼び始める。昴の顔がサ~ッと青くなった。
「!! ちょ、ちょっと止めなさいッ! それシャレになりませんッ!!」
「誰か~!」
「ホントに逮捕されちゃいますよ!!」
昴はさくら(酔っ払い)をおぶったまま、全速力で工藤邸へ帰りましたとさ。
梓からお誘いメールを貰ったのが3日前。
そして現在——
そのポアロには梓、安室、蘭、コナン、昴、さくら、そして偶然居合わせた風見……いや、飛田(ひだ)が顔を揃え、会は和やかに進んでいた。
「はい! ポアロ特製サンドイッチお待ちどうさま!」
次々と美味しそうな料理がカウンターに並び、その度に歓声が上がる。
「安室さん達もそろそろこっちで一緒に食べませんか?」
さくらが厨房の二人に声をかけた。
「は~い! すぐ行きま~す」
調理器具を片付けていた梓が笑顔で返事をした。
今回の企画は、小五郎が別の飲み会に出席するため未成年二人はポアロで夕飯を……という流れから、じゃあ他にも人を呼んで楽しくやろう! という話になったのだとか。
「昼間、由美さんにお会いしたから一緒にどうですかって誘ったんですけど『今日は徹マンだから』って断られちゃったんです」
蘭が苦笑いをしながらさくらに耳打ちした。ほかにも高木・佐藤両刑事、園子や世良にも声をかけたが都合がつくのは今回のメンツだけだった。
「由美さんもさぁ休みの前日なんだし、彼氏と会えば良いのにね~」
——ちなみに高木刑事と佐藤刑事はデートだって言ってたよ~。
隣でジュースを飲んでいたコナンも呆れ顔でつぶやいた。
そこへようやく厨房の二人が揃う。
「梓さん、安室さん、お二人は何飲みます?」
さくらが二人分のグラスを用意しながら訊ねた。
「えっと……じゃあこのサワーをお願いします」
梓がリキュールの缶を指さした。
「安室さんも今日くらい飲んだらどうですか?」
「そうですよ。料理もほぼ終わったし、せっかくの飲み会なんですから」
梓とさくらに勧められ、それじゃあ……と安室はビールをチョイスした。
全員のグラスが満たされた事を確認して、本日2度目の乾杯。
その後はみんなで料理を取り分ける。
「そういえば、僕にはアルコールを勧めたのにさくらさんはジュースなんですね。もしかして……お酒、飲めないんですか?」
安室がさくらのグラスを覗き込んで訊ねた。
「あ、いえ……飲めない訳では無いのですが……」
さくらがそこまで言いかけたところで、飛田が「なら、せっかくですから!」と言ってハイボールの入ったグラスをさくらに手渡す。
目元が赤く、どうやらすでに酔っぱらっているらしい。
「え、で、でも……」
さくらは困り顔で昴を見た。
「おや、お酒を飲むのにも彼氏の許可が必要なんですか?」
安室はやや意地悪そうな顔をして問いかける。
それを聞いて昴がため息をついた。
「あまり飲み過ぎなければ良いんじゃないですか」
仕方がないとでも言うように、さくらへ声をかけた。
さくらは一瞬躊躇したが、梓が「乾杯♫」とグラスを合わせて来たので、仕方なく「じゃあ1杯だけ……」と小さくつぶやいて口を付けた。
程度の差はあれど、大人組はそれぞれアルコールが入りおしゃべりに花が咲く。
さくらが安室達と楽しそうに話をしているのを、昴は横目で一瞥した。
「さくらさんのこと、気になる?」
昴の様子に気付いたコナンが口元に手を当てて訊ねた。
「え? あ、いや……」
誤魔化すように返事をして昴は身を屈めた。
「大勢が集まる場所で恋人を監視するような無粋な真似はせんよ」
人の良い『沖矢スマイル』を貼り付け、何事も無いように振舞う。
(そのわりには、さっきからチラチラとさくらさんばかり見てるけどね……)
コナンは「ふ~ん」と軽く返事をすると半目で昴を見た。
しばらく談笑し場が和んだ頃、酔っぱらった飛田が昴に声をかけた。
「沖矢しゃん……ちょっと伺いたいんでしゅけど」
「あ、はい。どうしました?……って、飛田さん! ずいぶんと酔ってますね。大丈夫ですか?」
返事をした昴は心配そうに飛田を見る。
飛田はネクタイを緩め、ろれつもかなり怪しい。心なしか足元もふらついていた。
「さくらしゃんみたいな美人な彼女は、どうしたらできるんでしゅか?」
「は?」
普段見せるお堅い雰囲気からは想像できない質問に、昴は「は?」とだけ言って思考が固まる。
数秒ほど間があって、ようやく出た言葉も結局「は?」だった。
(風見のヤツめ……飲み過ぎだな)
安室が遠巻きに二人のやり取りを見てため息をつく。
「あぁ……私お水持っていきますね」
安室の視線の先に気付き、さくらが苦笑いをしながら飛田に声をかける。ふらつく飛田を壁際の椅子へと誘導した。
「ふふふ。沖矢さん、絡まれましたね」
安室が昴に近づいた。
「え、ええ。彼は飲むと絡み酒なんですね」
両手を広げて参ったと返す昴に、安室も「僕も初めて知りました」と苦笑いで返した。
「それより……あなたとは一度一緒に飲んでみたいと思っていたんですよね」
「それは光栄ですね」
爽やかな笑顔で互いの顔を見る安室と昴。ちょっと見れば同世代の楽しいおしゃべり。しかしそこには——公安vsFBI——互いのプライドが見え隠れ。さらには、さくらをめぐる攻防戦が展開される、のか!?——。
そしてその少し先では、グダグダの飛田とそれを介抱するさくら。たんなる飲み会での介抱劇のようにも見えるが、実際のところ二人は公安の上司と部下。
本気の介抱か、それとも【飛田】という人物の人となりを印象付けるために、あえて演じているだけなのか——?
(あっちもこっちも複雑すぎて面倒くせぇ……)
コナンは視線を双方に動かし、「はぁぁ……」と深いため息をついた。
「さあ、飛田さん。お水飲んでください」
すでにベロベロの飛田にさくらは水を差しだす。
「あ~、さくらさんですか~。ありがと~ございます~。ところであなたは飲んでますか~?」
ここで『広瀬』と呼ばなかったのはさすがだ。しかし、それも時間の問題。
それくらいには飛田(風見)は酔っぱらっていた。
『風見さん、そろそろ控えないと……』
さくらはコッソリと耳打ちをした。
「あなたに言われなくても、わらしはだ~いじょおぶですって~。それよりさくらさんも飲んでます~?」
上機嫌の飛田はウイスキーをグラスに注ぎ「どうぞどうぞ」とさくらに勧めた。
グラスにたっぷり注がれたストレートのウイスキー。さすがにこれを飲んだら、例の発作がでる。
だが飛田は何を言っても聞く耳持たず。仕方なく、さくらは舐める程度に口を付けた。
「やぁだわ~、さくらさん。それじゃ飲んだことにならないわよ」
気付けばほろ酔いの梓が隣にいた。
「ほら、グッといっちゃって」
「えっ、あの、でも……」
さくらは何とか断ろうとあれこれ言い訳をするが、梓には「明日お休みでしょ」と言われ、飛田からは「俺の酒が飲めないのか」と、どこぞの昭和の親父のようなセリフが飛び出す。
さらには「それを飲まないなら俺も水を飲まん!」とまで言い出す始末。
酔っ払い相手にどうすることも出来ず、昴に助けを求めようと視線を向ける。
しかし、肝心の昴は安室と楽しげに酒を酌み交わし、さくらが必死に送るアイコンタクトに気付かない。
「あぁ、もうッ! 知らない!」
さくらもこの時、わずかに酔っていた。
酔っ払い二人の絡みにどうにも面倒くさくなったさくらは、一気にグラスを煽った。
「わお! 良い飲みっぷりだわ! 惚れ惚れしちゃう」
「さくらさんの豪快な飲みっぷり……なんか良いっすね」
酔っ払い二人組(梓&飛田)は歓声を上げた。その上、もう一杯とさらに勧めてくる。
段々酔いが回ってきたさくらは、もうどうでもよくなってさらにグラスを煽った。
数十分後———
「ちょ、ちょっとさくらさん?! 大丈夫ですか?!」
蘭の声で昴と安室が振り向いた。
そこで繰り広げられていた光景に二人は目を丸くする。
ひっく……ひっく……
しゃっくりをしながら、さくらは無心で風見の手を揉んでいた。
当の風見は飲み過ぎてソファーで伸びている。梓もさくらの隣で「さくらさん上手ね~」とチューハイを片手に楽しそうに眺めていた。
「ちょ、っと……さくらッ! 何やってるんですか!」
昴は慌ててさくらに駆け寄った。
かなりの量の酒を飲んだらしく、無心になって飛田の手を揉み、頬ずりをしている。
さくら止めなさい、と昴が腕を掴んで二人を引き離した。
「や~だ~……ひっく……揉むの~……ひっく」
突然引き離されたさくらは駄々をこねている。その光景に安室は驚き目を見張った。。
「いったいこれは……」
安室は昴に問いかけた。
「実は……さくらは酔うと人の手を揉みたくなるらしいのです。手フェチと言えば分かりますか? 揉み始めると寝落ちするまでこんな感じです。
人様に迷惑がかかるからと、普段外では飲まないようにしているんですよ。ほろ酔い程度なら問題ないんですけど……」
グダグダのさくらを介抱しながら昴は説明した。
「家でもこうなんですか?」
安室は信じられないという顔をして、さらに昴に問いかけた。
「ええ。家でもたまに一緒に飲むんですけど……。一定量を越えると私の手をずっと揉んでいて。翌日揉み返しで散々ですよ……」
彼女が酔うとロクなことが無い、と昴はため息をついた。
「それでさくらさん、飲酒の許可取ってたのか……」
先程の行動に合点がいったコナンは、半目のままさくらを見上げた。
「まだ飲む~! まだモミモミする~!」
上機嫌のさくらを見て、だめだこりゃとコナンも頭を抱えた。
「これは早く昴さんに連れて帰ってもらった方が良さそうだね、安室さん」
「そうですね……。本人が明日、後悔しないためにも早めにご帰宅された方が……」
安室も苦笑いをして昴にそう意見した。
「そうですね。せっかくの飲み会だったのに、ゆっくり出来なくて申し訳ありません」
昴はベロベロのさくらをおぶり、何度も謝罪しながらポアロを後にした。
外灯が点々と住宅街を照らす。
その中を昴はゆっくりと工藤邸に向かって歩いた。
「さくら! ちゃんと掴まってください!
落ちちゃいますよ!」
酔っ払いのさくらは、フラフラしていて今にも背中から落ちそうだった。
「昴さんのおんぶだ~。ふふふ。タバコのにおいがする~」
昴のうなじに顔を押し付けて、スゥと匂いを嗅いだ。
「こら、匂いをかがないで。汗臭いでしょ」
「汗の匂いしないよ~」
尚もスンスンと鼻を鳴らし、あろうことかペロリとそのうなじを舐めた。
「うぁっ! こ、こら! こんな所でっ!」
ゾワリとした感覚が昴の首から背中に走った。
「ふふふ~。昴さんの焦った顔スキ~!」
気を良くしたさくらは、さらに昴の首にキスを落とす。
昴が抵抗できない事を良いことに、やりたい放題。やがて耳まで甘噛みするものだから昴はたまったものではない。
「こ、こら! やめなさい! 誰かに…ッん……見られたら……」
「あ! 今感じたでしょ。『ッん』ってなた!」
(まったく…全然人の話を聞いちゃいない)
嬉しそうに首元にすり寄るさくらに、昴はため息をつく。
とはいえ、昴のガマンも限界だった。
「こんな所で煽ってあとでどうなるか……覚悟してくださいよ!」
半分冗談で半分本当。
ちょっと脅かしておけば少しはおとなしくなるかと思ったが甘かった。
「え~……それは身が持たないかも。あ、誰か~! 助けて下さ~い! 私襲われちゃいます~」
なんと、さくらはおんぶされたまま助けを呼び始める。昴の顔がサ~ッと青くなった。
「!! ちょ、ちょっと止めなさいッ! それシャレになりませんッ!!」
「誰か~!」
「ホントに逮捕されちゃいますよ!!」
昴はさくら(酔っ払い)をおぶったまま、全速力で工藤邸へ帰りましたとさ。