ペリドットとアンバー短編集
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金曜の夕方5時——
りおは大きな荷物を背負い、工藤邸の玄関前で途方に暮れていた。
「はあぁぁぁ…」
盛大なため息をつくと再び息を吸うタイミングで姿勢を正し覚悟を決める。
遠慮がちに伸ばした指が工藤邸の呼び鈴を鳴らした。
リンゴーン
来客を告げるチャイムが家中に響いた。
『……ガチャ…ガチャガチャ…』
「ん?」
インターホンからは珍しく返事の前に雑音が聞こえ、チャイムが鳴ってだいぶ経ってから『はい』という昴の声が聞こえた。
「昴さんごめんなさい。玄関開けてくれる?
ちょっと荷物が多いの。あと……驚かないでね」
りおの言葉に『え?』と一瞬戸惑った声が聞こえたが『分かりました。すぐ開けます』という昴の返事が返ってきた。
インターホンでのやり取りから数十秒後——
ガチャリと工藤邸の玄関ドアが開く。
「おかえりなさい。いったいどうし……」
何事かとドアを開け、そこにいたりおの姿を目視した昴は完全に固まった。
おそらく思考も停止した……ようだった。
「は?」
ポカンと口を開け、細めていたはずの目がカッと見開かれている。
それもそのはず。玄関前に居たのは——
大きな荷物を背負い、人間の赤ん坊を抱っこしたりおだったのだから。
「た、ただい、ま……」
予想通りの昴の反応にりおは引きつった笑顔を浮かべ、とりあえず帰宅の挨拶をした。
「りおが……産んだ、のか?」
すでにバグを起こした昴はとんでもないことを口走った。
「そ、そんなわけないじゃない! 今朝普通に出勤したし、そもそも私お腹大きくなかったでしょ! 人間の赤ちゃんが生まれるまでに何か月かかると思ってるの!?」
そこまで動揺しているのか、とりおは半目になる。
「とりあえず説明するから、家に入っても良い?」
「え、ええ……あッ! そ、それが……こちらも客人がいるのですが…」
「お客さん? こんな夕方に?」
今度はりおが目を丸くした。
りおがリビングに入ると、そこにお客の姿は無い。
「ん? 誰もいないけど」
赤ん坊を抱っこしたまま、りおは周りを見回した。
「あ、いえ……ちゃんと居ますよ。あなたの足元に」
「足元?」
意味が分からないままりおは視線を落とす。
そこには——
「みゃぁ!」
「!?」
足元にはヨチヨチ歩きの子猫がりおを見上げていた。
「実は、今日の学校帰りに少年探偵団が保護して来たんですよ。この週末に飼ってくれる人を探すから、それまで預かって欲しいと」
「そういうこと」
リビングのテーブルには子猫用の粉ミルクと小さな哺乳瓶、ペットシーツが置いてあった。
子どもたちが取りあえず準備したそうだ。
「で、あなたの方はいったい…」
まさか、今朝ふつうに仕事に出かけた恋人が、人間の赤ん坊を連れ帰るなんて夢にも思わなかっただろう。
昴の疑問ももっともだ。
「ああ、実は同僚の田島さんって方が今、産休を取ってるの。この子は田島さんの子なんだけど……。
今朝、田島さんのお母さんがひどいぎっくり腰になって入院しちゃったんだって」
腕の中でスヤスヤ眠っている赤ん坊の顔を見ながら、りおは話を続ける。
「それで急きょ、田島さんがお母さんの身の回りの世話をしに行くことになったの。
だけど、田島さんのご主人は日曜日まで京都に出張中。ご主人の実家も遠方だから、誰もこの子の面倒を見れないってことになっちゃって…」
「それで……あなたが見ることに?」
「うん。ご主人が帰ってくるまでだけどね。
研究室は独身の若い男性ばかりだし、女性もいるにはいるけど……試験が近いから預かれないって。一番当てにしていた森教授も、この週末はご夫婦で温泉旅行だって言うし……」
(なるほど。そういうことか…)
話を聞いて昴はようやく合点がいった。
知らぬ間に子どもが生まれたのかと一瞬、自分を疑ってしまった。
しかしよく考えれば、どんなにスピード妊娠スピード出産しても一日で人間の赤ん坊が生まれるはずが無い。
相当頭がおかしくなっていたようだ。
「ふふふ……今週末は私たち、この子たちの仮の『パパ』と『ママ』をやらないといけないようね」
「ッ! ぱ、パパ…です…か…」
突然のパワーワード発言に昴(赤井)の動揺は増すばかり。しかし当の本人はそんなこととは知らず、赤ん坊の顔を覗き込み優しく微笑んだ。
「とにかく、ずっと抱っこってわけにもいかないし、この子を寝かせられるところを作らないと」
背負っていた荷物を昴に受け取ってもらい、りおはソファーを見た。
「まだ3か月になったばかりだから寝返りはしないけど……さすがにソファーに寝かせるのは危ないしなぁ」
なにか寝かせられるものが無いか、と部屋の中をぐるりと見回した。
「あ、それなら書斎に籐で出来た大きなカゴがありましたよ。この家の家主が、おそらくひざ掛けや毛布入れとして使っていたんだと思います。
脱衣かごより一回り大きいので赤ん坊を寝かせるのにちょうど良いかも」
昴はリビングを出ると書斎にあったカゴを持ってきた。手にはバスタオルも数枚持っている。
「こうしてたたんだバスタオルを中に敷いて…この毛布を使えば…これでどうですか?」
「わあ、これなら簡易のベビーベッドとして使えるわね! 昴さんありがとう!」
さっそくりおは眠っている赤ん坊をそっと寝かせた。
「ふふふ…大成功。よく眠ってる。この間に荷物の整理をしちゃうわね」
「おっと…じゃあ子猫を抱っこしていないといけないな。りおに踏まれてしまうかもしれない」
昴はりおの足元に座っている子猫をそっと抱き上げた。
そのまま手のひらに乗せて胸元に引き寄せる。小さくてふわふわで柔らかい。無意識のうちに昴の顔がフッとゆるむ。
「あなたが抱っこすると余計に子猫が小さく見えるわね」
急に抱っこされてキョトンとしている子猫を見て、りおは笑い出す。
「パパのところでおとなしくしててね」
「ッ!」
りおが何となく発した言葉に、昴はいちいち動揺していた。
荷物の整理が終わる頃、赤ん坊がふにゃふにゃと声を出す。
それまで身動き一つしなかったのに、手足をばたつかせていた。
「あ、起きたかな。おっぱい探してる……お腹すいたのね!」
口をあけては頭を振るように動かしている。
どうやら母親のおっぱいを探しているようだ。
りおはそっと赤ん坊を抱き上げた。
「昴さん、しばらく抱っこしてて。どうせ泣くと思うけど……ちょっと体を揺らしておしりをトントンしてくれれば、少し落ち着くと思うから。そのあいだに私ミルク用意してくる」
「わ、分かりました…」
昴はぎこちない手つきで赤ん坊を受け取り、言われた通り体をゆする。
おしりをトントンと優しくたたいた。
「ふぇ…ふ…ふえぇぇ…ふぎゃ~」
「ああ、待って…泣かないで…今ミルクを用意しています。少しだけガマンしてください…」
どうも女性や子どもに泣かれるのは苦手だ。昴は声をかけ、体を揺すりつづけた。
「お待たせ~!」
ようやく戻ってきたりおと抱っこを交代して、昴は「ふぅぅ~」と大きく息をついた。
「はい、ミルクですよ~。たくさんお飲み~」
赤ん坊がパクリと哺乳瓶に吸い付いたと同時に、さっきまでの大泣きがウソのように静かになった。
赤ん坊は一心不乱にミルクを飲んでいる。
「りお、ずいぶん慣れていますね」
帰って来てからの手際の良さに、昴は正直驚いていた。
「うん、今日の午後はずっと田島さんの『お世話講座』だったの。一通り教わってきたからね」
田島さんのスパルタ講座だったのよ~、とりおは苦笑いを浮かべる。
その間にもミルクを飲む赤ん坊は真っすぐりおを見つめ、りおも赤ん坊の顔を優しく見つめた。
その顔はまるで『母親』のようだ。
(女性には元々母性というものが備わっているのか)
初めて見るりおの顔。昴は思わず見惚れてしまう。
「みゃぉん?」
そんな昴を、子猫が不思議そうに見上げていた。
夜——
二人の子守は新たな局面を迎えていた。
「風呂は俺が入れるよ。あの『ロンパース』をうまく着せられる自信が無い」
「ああ~…スナップボタン多いからね。この子、けっこう足の力強いし。さっきのおむつ替え……大変だったもんなぁ」
ミルク後のおむつ替えの時、じたばたと足を動かす赤ん坊に四苦八苦。ようやくすべてのスナップボタンをつけ終わったと思ったら一つずつズレていた…という悲劇を体験した二人。
アレを見て赤井は早々に白旗を振った。
「じゃあ、お風呂はお願いしちゃうけど……秀一さん、大丈夫?」
「まあ…なんとかなるだろ。落とさないように気を付けるよ」
「頑張ってね。それじゃあ先にお風呂行ってて。服を脱がせたら連れて行くから」
「了解」
すでに変装を解いた赤井は返事をすると、一足先にバスルームへと急いだ。
「秀一さん、開けるよ」
「ああ」
浴室のドアをあけ、りおが赤ん坊を連れて中に入る。
洗い場で待機していた赤井が受け取った。
「それじゃあ、湯船に入る前におしりをよく洗ってあげてね」
「分かった。よし! ふわっふわの泡であらってやろう」
赤井は抱っこした赤ん坊に顔を近づけ、笑顔で話しかける。
赤井とのやり取りが楽しかったのか、赤ん坊はキャッキャッと嬉しそうな声を上げた。
事前にタップリ泡立てた石けんを手ですくい、赤井は赤ん坊の体を優しく洗う。
「ははは、気持ち良いだろう。後で髪もあらってやるからな」
赤ん坊の笑顔につられたのか、赤井はニコニコの笑顔を向けていた。
(ふふふ。良い顔しちゃって…)
赤ん坊と楽しそうに風呂に入る赤井を見て、りおは思わず微笑んだ。
りおは大きな荷物を背負い、工藤邸の玄関前で途方に暮れていた。
「はあぁぁぁ…」
盛大なため息をつくと再び息を吸うタイミングで姿勢を正し覚悟を決める。
遠慮がちに伸ばした指が工藤邸の呼び鈴を鳴らした。
リンゴーン
来客を告げるチャイムが家中に響いた。
『……ガチャ…ガチャガチャ…』
「ん?」
インターホンからは珍しく返事の前に雑音が聞こえ、チャイムが鳴ってだいぶ経ってから『はい』という昴の声が聞こえた。
「昴さんごめんなさい。玄関開けてくれる?
ちょっと荷物が多いの。あと……驚かないでね」
りおの言葉に『え?』と一瞬戸惑った声が聞こえたが『分かりました。すぐ開けます』という昴の返事が返ってきた。
インターホンでのやり取りから数十秒後——
ガチャリと工藤邸の玄関ドアが開く。
「おかえりなさい。いったいどうし……」
何事かとドアを開け、そこにいたりおの姿を目視した昴は完全に固まった。
おそらく思考も停止した……ようだった。
「は?」
ポカンと口を開け、細めていたはずの目がカッと見開かれている。
それもそのはず。玄関前に居たのは——
大きな荷物を背負い、人間の赤ん坊を抱っこしたりおだったのだから。
「た、ただい、ま……」
予想通りの昴の反応にりおは引きつった笑顔を浮かべ、とりあえず帰宅の挨拶をした。
「りおが……産んだ、のか?」
すでにバグを起こした昴はとんでもないことを口走った。
「そ、そんなわけないじゃない! 今朝普通に出勤したし、そもそも私お腹大きくなかったでしょ! 人間の赤ちゃんが生まれるまでに何か月かかると思ってるの!?」
そこまで動揺しているのか、とりおは半目になる。
「とりあえず説明するから、家に入っても良い?」
「え、ええ……あッ! そ、それが……こちらも客人がいるのですが…」
「お客さん? こんな夕方に?」
今度はりおが目を丸くした。
りおがリビングに入ると、そこにお客の姿は無い。
「ん? 誰もいないけど」
赤ん坊を抱っこしたまま、りおは周りを見回した。
「あ、いえ……ちゃんと居ますよ。あなたの足元に」
「足元?」
意味が分からないままりおは視線を落とす。
そこには——
「みゃぁ!」
「!?」
足元にはヨチヨチ歩きの子猫がりおを見上げていた。
「実は、今日の学校帰りに少年探偵団が保護して来たんですよ。この週末に飼ってくれる人を探すから、それまで預かって欲しいと」
「そういうこと」
リビングのテーブルには子猫用の粉ミルクと小さな哺乳瓶、ペットシーツが置いてあった。
子どもたちが取りあえず準備したそうだ。
「で、あなたの方はいったい…」
まさか、今朝ふつうに仕事に出かけた恋人が、人間の赤ん坊を連れ帰るなんて夢にも思わなかっただろう。
昴の疑問ももっともだ。
「ああ、実は同僚の田島さんって方が今、産休を取ってるの。この子は田島さんの子なんだけど……。
今朝、田島さんのお母さんがひどいぎっくり腰になって入院しちゃったんだって」
腕の中でスヤスヤ眠っている赤ん坊の顔を見ながら、りおは話を続ける。
「それで急きょ、田島さんがお母さんの身の回りの世話をしに行くことになったの。
だけど、田島さんのご主人は日曜日まで京都に出張中。ご主人の実家も遠方だから、誰もこの子の面倒を見れないってことになっちゃって…」
「それで……あなたが見ることに?」
「うん。ご主人が帰ってくるまでだけどね。
研究室は独身の若い男性ばかりだし、女性もいるにはいるけど……試験が近いから預かれないって。一番当てにしていた森教授も、この週末はご夫婦で温泉旅行だって言うし……」
(なるほど。そういうことか…)
話を聞いて昴はようやく合点がいった。
知らぬ間に子どもが生まれたのかと一瞬、自分を疑ってしまった。
しかしよく考えれば、どんなにスピード妊娠スピード出産しても一日で人間の赤ん坊が生まれるはずが無い。
相当頭がおかしくなっていたようだ。
「ふふふ……今週末は私たち、この子たちの仮の『パパ』と『ママ』をやらないといけないようね」
「ッ! ぱ、パパ…です…か…」
突然のパワーワード発言に昴(赤井)の動揺は増すばかり。しかし当の本人はそんなこととは知らず、赤ん坊の顔を覗き込み優しく微笑んだ。
「とにかく、ずっと抱っこってわけにもいかないし、この子を寝かせられるところを作らないと」
背負っていた荷物を昴に受け取ってもらい、りおはソファーを見た。
「まだ3か月になったばかりだから寝返りはしないけど……さすがにソファーに寝かせるのは危ないしなぁ」
なにか寝かせられるものが無いか、と部屋の中をぐるりと見回した。
「あ、それなら書斎に籐で出来た大きなカゴがありましたよ。この家の家主が、おそらくひざ掛けや毛布入れとして使っていたんだと思います。
脱衣かごより一回り大きいので赤ん坊を寝かせるのにちょうど良いかも」
昴はリビングを出ると書斎にあったカゴを持ってきた。手にはバスタオルも数枚持っている。
「こうしてたたんだバスタオルを中に敷いて…この毛布を使えば…これでどうですか?」
「わあ、これなら簡易のベビーベッドとして使えるわね! 昴さんありがとう!」
さっそくりおは眠っている赤ん坊をそっと寝かせた。
「ふふふ…大成功。よく眠ってる。この間に荷物の整理をしちゃうわね」
「おっと…じゃあ子猫を抱っこしていないといけないな。りおに踏まれてしまうかもしれない」
昴はりおの足元に座っている子猫をそっと抱き上げた。
そのまま手のひらに乗せて胸元に引き寄せる。小さくてふわふわで柔らかい。無意識のうちに昴の顔がフッとゆるむ。
「あなたが抱っこすると余計に子猫が小さく見えるわね」
急に抱っこされてキョトンとしている子猫を見て、りおは笑い出す。
「パパのところでおとなしくしててね」
「ッ!」
りおが何となく発した言葉に、昴はいちいち動揺していた。
荷物の整理が終わる頃、赤ん坊がふにゃふにゃと声を出す。
それまで身動き一つしなかったのに、手足をばたつかせていた。
「あ、起きたかな。おっぱい探してる……お腹すいたのね!」
口をあけては頭を振るように動かしている。
どうやら母親のおっぱいを探しているようだ。
りおはそっと赤ん坊を抱き上げた。
「昴さん、しばらく抱っこしてて。どうせ泣くと思うけど……ちょっと体を揺らしておしりをトントンしてくれれば、少し落ち着くと思うから。そのあいだに私ミルク用意してくる」
「わ、分かりました…」
昴はぎこちない手つきで赤ん坊を受け取り、言われた通り体をゆする。
おしりをトントンと優しくたたいた。
「ふぇ…ふ…ふえぇぇ…ふぎゃ~」
「ああ、待って…泣かないで…今ミルクを用意しています。少しだけガマンしてください…」
どうも女性や子どもに泣かれるのは苦手だ。昴は声をかけ、体を揺すりつづけた。
「お待たせ~!」
ようやく戻ってきたりおと抱っこを交代して、昴は「ふぅぅ~」と大きく息をついた。
「はい、ミルクですよ~。たくさんお飲み~」
赤ん坊がパクリと哺乳瓶に吸い付いたと同時に、さっきまでの大泣きがウソのように静かになった。
赤ん坊は一心不乱にミルクを飲んでいる。
「りお、ずいぶん慣れていますね」
帰って来てからの手際の良さに、昴は正直驚いていた。
「うん、今日の午後はずっと田島さんの『お世話講座』だったの。一通り教わってきたからね」
田島さんのスパルタ講座だったのよ~、とりおは苦笑いを浮かべる。
その間にもミルクを飲む赤ん坊は真っすぐりおを見つめ、りおも赤ん坊の顔を優しく見つめた。
その顔はまるで『母親』のようだ。
(女性には元々母性というものが備わっているのか)
初めて見るりおの顔。昴は思わず見惚れてしまう。
「みゃぉん?」
そんな昴を、子猫が不思議そうに見上げていた。
夜——
二人の子守は新たな局面を迎えていた。
「風呂は俺が入れるよ。あの『ロンパース』をうまく着せられる自信が無い」
「ああ~…スナップボタン多いからね。この子、けっこう足の力強いし。さっきのおむつ替え……大変だったもんなぁ」
ミルク後のおむつ替えの時、じたばたと足を動かす赤ん坊に四苦八苦。ようやくすべてのスナップボタンをつけ終わったと思ったら一つずつズレていた…という悲劇を体験した二人。
アレを見て赤井は早々に白旗を振った。
「じゃあ、お風呂はお願いしちゃうけど……秀一さん、大丈夫?」
「まあ…なんとかなるだろ。落とさないように気を付けるよ」
「頑張ってね。それじゃあ先にお風呂行ってて。服を脱がせたら連れて行くから」
「了解」
すでに変装を解いた赤井は返事をすると、一足先にバスルームへと急いだ。
「秀一さん、開けるよ」
「ああ」
浴室のドアをあけ、りおが赤ん坊を連れて中に入る。
洗い場で待機していた赤井が受け取った。
「それじゃあ、湯船に入る前におしりをよく洗ってあげてね」
「分かった。よし! ふわっふわの泡であらってやろう」
赤井は抱っこした赤ん坊に顔を近づけ、笑顔で話しかける。
赤井とのやり取りが楽しかったのか、赤ん坊はキャッキャッと嬉しそうな声を上げた。
事前にタップリ泡立てた石けんを手ですくい、赤井は赤ん坊の体を優しく洗う。
「ははは、気持ち良いだろう。後で髪もあらってやるからな」
赤ん坊の笑顔につられたのか、赤井はニコニコの笑顔を向けていた。
(ふふふ。良い顔しちゃって…)
赤ん坊と楽しそうに風呂に入る赤井を見て、りおは思わず微笑んだ。