ペリドットとアンバー短編集
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「なぜです? 彼女は私の――」
昴は表情を変えず聞き返そうとするが、相手はそれすら許さないという態度を取る。
「お付き合いされている方なのでしょう? それは先ほどの様子を見れば分かります。ですが、今日から僕とお付き合いすることになると思うので」
「な、何を言っているの? 私は…」
男の横暴な態度に、さくらが言い返そうとすると男はサッとさくらに近づき、その手を掴んで力任せに引っ張った。
「きゃ…」
まだステージから2段ほどしか降りていなかったさくらの体は、手を引っ張られたことでグラリと傾く。
トサッ
そのまま男に抱き留められた。
「ちょ、ちょっと…放し…」
『おとなしくして。死人を出しなくなかったら』
「ッ!」
そっと耳打ちされた言葉に、さくらは固まった。
「さくら?」
抱き留められたまま抵抗しないさくらを見て、昴が険しい顔で名を呼ぶ。
(何があった?)
「ほら、彼女も僕の方が良いみたい。それじゃあ元彼氏くん。さようなら」
さくらを横抱きにしたまま、男は踵を返す。そのまま会場を出て行こうとした。
「ちょっと待ってください。あなた、さくらに何かしたでしょう?」
男の肩越しに昴を見るさくらの顔が、動揺している。昴は表情も口調も変えなかったが、声だけがわずかに低くなった。
「人聞きが悪いなぁ。彼女が僕を選んだんだ。ここはおとなしく身を引くべきなのでは?」
見下すような視線を昴に向ける。さくらは男の体にしがみ付いていた。
これ以上引き留める事が出来ず、昴は奥歯を噛みしめる。黙り込んだ昴を見て、男はニヤリと笑うと再びドアに向かって歩き始めた。
その時——
ひらり…
さくらの体が宙を舞った。両足のつま先が床に着くと、膝を曲げて衝撃を0にする。ゆっくりと右の膝が床についた。
そのまま全体重が着地した時、ドレスの裾がゆっくりとその後を追い、音もなく床に広がる。
まるで天使が舞い降りたような光景に、そこに居た全員が一瞬息を飲んだ。
「ごめんなさい」
さくらはゆっくり立ち上がると男に向けて謝罪した。
「私やっぱり昴さんが好き。彼じゃなきゃダメなの」
わずかに小首を傾げて微笑んだ。
「なッ!?」
さくらの身のこなしに、そして「やっぱり昴が好き」と微笑む姿を見て、男は驚いた顔をした。悔しそうに顔をゆがめるが、すぐに元の顔に戻る。
「そうですか…。美しいあなただけでも助けてあげたかったのですが…」
そう言って、男は胸ポケットをまさぐる。
「ん? あれ?」
ポーカーフェイスを気取っていたが、ポケットにあるはずのものが無く、次第に焦り出した。
「お探し物はこれですか?」
さくらは右手でつまみ上げた物を、自分の目の前で振ってみせた。
「あ!!」
さくらの手にある物は、まさに今探していた物だった。男の顔から血の気が引く。
「何かのリモコンスイッチのようね。う~ん…例えば…爆弾とか?」
「爆弾?!」
近くにいた人たちが驚いたようにざわめきだした。
「お前…いつの間に!?」
「さっきあなたに抱きついた時」
「くそッ!」
男は素早く身を屈め、右足首に仕込んであったホルダーから小型の拳銃を取り出した。
「「ッ!」」
パン!
銃はさくらに向かって放たれたが、昴が一瞬早くさくらに近づき、その腕を引く。
さくらの体はクルリと半円を描いて、昴の腕の中へと納まった。一瞬だけその体を抱きしめる。
回転の動きを止めないように、さらに昴はさくらの背中を押すと、さくらはサッと男に近づき、回し蹴りを男の首元に決めた。
ドカッ!!
「ぐぁっ!」
蹴りを決めたさくらの体にくるくるッとドレスの裾が巻き付き、またゆっくりと解けていった。
会場が一瞬静まり返る。
「こ、このように働く女性の美しさを、より際立たせるドレス。いかがだったでしょうか……」
マイクを持っていたMCが思わずアナウンスした。
パチ…パチ…パチ…
パラパラと起こった拍手は、瞬く間に会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
***
会場には何人も警察官が駆け付け、ホテルの外には赤色灯が回るパトカーが何台も停まっている。
「やれやれ…パーティーが爆弾騒ぎになるとは…」
小五郎がシャンパングラスを片手にぼやいた。
「高木刑事から聞いた話だと、さっきの男の人、新作ドレスのデザインをした人の元カレなんだって。最近別れたらしいんだけど、男の方が未練あったらしくて…」
高木刑事を丸め込んで聞いてきた内容をコナンが詳しく話してくれた。
「で、その新作発表で爆弾騒ぎ? 迷惑な元カレねぇ~! しかもさくらさんをたぶらかして。元々タラシだったんじゃない!」
園子は不機嫌そうにつぶやく。
「ま、まあ…昴さんとさくらさんのおかげで、誰もケガしなかったし、爆弾も爆発しなくてよかったじゃない」
蘭が園子をなだめている。
「あれ? そういえばさくらさんと昴さんは?」
「さっき事情聴取されてたけど……」
園子と蘭は顔を上げ、周りを見回す。
「ねえ、ちょっとあれ……」
何かに気付いた園子が驚いた様子で指さす。彼女がさし示した先には黒山の人だかりが出来ていた。
よく見ると、先に事情聴取の終わったさくらのところに、今日客として招かれた男性たちが集まっている。
男たちはニコニコして話しかけているが、さくらは困った顔をしていた。
「え、あの…私そろそろ着替えて…」
さくらは蘭たちの元へ戻ろうとするが、男性たちがさくらを囲み、デートへ誘おうとしている。
「え~ッ!? 良いじゃないですか。そのまま良かったら食事でもどうです? もうこの会場は警察が入っているから食べられなそうだし…」
「イヤイヤ、せっかくですから近くのバーで飲み直しませんか? たくさん動いたから喉乾いたでしょう?」
あの手この手で誘い出そうと必死だ。
さくらは「連れがいるので帰ります」と断るのだが、先ほど見たさくらの立ち居振る舞いにすっかり心奪われた男性たちは、是非お近づきになろうとなかなか放してくれない。
「ゴホン。失礼します」
人だかりになったさくらのところへ、事情聴取を終えた昴がワザとらしい咳ばらいをして近づいた。
スッと隙間に入り込んでさくらに近づく。
「さあ、さくら。みんなが待っていますよ。一緒に帰りましょう」
とびっきりの笑顔を作ってエスコートする。
差し出された昴の手に、今度こそさくらの手が重なった。
昴の空いている方の手がさくらの背中に触れると、ごく自然に細い腰を抱き寄せる。
「はい♪」
これまたとびっきりの笑顔で返事をしたさくらは、ほんの少し頬を染め、嬉しそうに男性陣の輪から抜け出す。
「それじゃあ皆さん、さようなら」
極めつけの挨拶だけを残してその場を去る。
後にはポカ——ンと口を開けた男性たちが残されていた。
~おまけ~
夜。工藤邸———
「ふ~。今日はホント疲れたな~」
温かいハーブティーを一口飲んだりおが、ため息交じりにつぶやいた。
「ははは。回し蹴りよりステージに立った時の方が疲れたんだろう?」
風呂上がりの赤井は髪を拭きながら訊ねる。
「うん。ドレスなんてほとんど着ないし、ヒールが慣れなくて……あ、でも今日着たドレス、ホント動きやすかったわ。昔パーティーに潜入した時に着たドレスは動きにくかったんだよね……」
その時の事を思い出したんだろう。途端に顔をしかめた。
「ところで秀一さんはずっと笑顔なんですけど。何か良い事ありました?」
パーティー会場から帰る時もずっと機嫌が良かったし、ニコニコしていた。変装を解いたのにまだ笑ってるって――。よほど良いことがあったに違いない。
「ん~? そうか? まあ……気分は良いな」
「気分?」
「ああ」
気分ねぇ……なんでかな。美味しいものでも食べたからかな?
りおは頬杖を突きながらぼんやり思案している。
(フッ。言い寄る男たちの前からお前をかっさらってきた事が、これ以上ないってくらい気分良かったって言ったら、どんな顔するかな)
これまた頬杖を突きながら、ず~っとニコニコ…いや、ニヤニヤする赤井。
(え、なに……秀一さん……こわ…)
それを見て、りおは怪訝そうにその顔を見つめたとさ。
昴は表情を変えず聞き返そうとするが、相手はそれすら許さないという態度を取る。
「お付き合いされている方なのでしょう? それは先ほどの様子を見れば分かります。ですが、今日から僕とお付き合いすることになると思うので」
「な、何を言っているの? 私は…」
男の横暴な態度に、さくらが言い返そうとすると男はサッとさくらに近づき、その手を掴んで力任せに引っ張った。
「きゃ…」
まだステージから2段ほどしか降りていなかったさくらの体は、手を引っ張られたことでグラリと傾く。
トサッ
そのまま男に抱き留められた。
「ちょ、ちょっと…放し…」
『おとなしくして。死人を出しなくなかったら』
「ッ!」
そっと耳打ちされた言葉に、さくらは固まった。
「さくら?」
抱き留められたまま抵抗しないさくらを見て、昴が険しい顔で名を呼ぶ。
(何があった?)
「ほら、彼女も僕の方が良いみたい。それじゃあ元彼氏くん。さようなら」
さくらを横抱きにしたまま、男は踵を返す。そのまま会場を出て行こうとした。
「ちょっと待ってください。あなた、さくらに何かしたでしょう?」
男の肩越しに昴を見るさくらの顔が、動揺している。昴は表情も口調も変えなかったが、声だけがわずかに低くなった。
「人聞きが悪いなぁ。彼女が僕を選んだんだ。ここはおとなしく身を引くべきなのでは?」
見下すような視線を昴に向ける。さくらは男の体にしがみ付いていた。
これ以上引き留める事が出来ず、昴は奥歯を噛みしめる。黙り込んだ昴を見て、男はニヤリと笑うと再びドアに向かって歩き始めた。
その時——
ひらり…
さくらの体が宙を舞った。両足のつま先が床に着くと、膝を曲げて衝撃を0にする。ゆっくりと右の膝が床についた。
そのまま全体重が着地した時、ドレスの裾がゆっくりとその後を追い、音もなく床に広がる。
まるで天使が舞い降りたような光景に、そこに居た全員が一瞬息を飲んだ。
「ごめんなさい」
さくらはゆっくり立ち上がると男に向けて謝罪した。
「私やっぱり昴さんが好き。彼じゃなきゃダメなの」
わずかに小首を傾げて微笑んだ。
「なッ!?」
さくらの身のこなしに、そして「やっぱり昴が好き」と微笑む姿を見て、男は驚いた顔をした。悔しそうに顔をゆがめるが、すぐに元の顔に戻る。
「そうですか…。美しいあなただけでも助けてあげたかったのですが…」
そう言って、男は胸ポケットをまさぐる。
「ん? あれ?」
ポーカーフェイスを気取っていたが、ポケットにあるはずのものが無く、次第に焦り出した。
「お探し物はこれですか?」
さくらは右手でつまみ上げた物を、自分の目の前で振ってみせた。
「あ!!」
さくらの手にある物は、まさに今探していた物だった。男の顔から血の気が引く。
「何かのリモコンスイッチのようね。う~ん…例えば…爆弾とか?」
「爆弾?!」
近くにいた人たちが驚いたようにざわめきだした。
「お前…いつの間に!?」
「さっきあなたに抱きついた時」
「くそッ!」
男は素早く身を屈め、右足首に仕込んであったホルダーから小型の拳銃を取り出した。
「「ッ!」」
パン!
銃はさくらに向かって放たれたが、昴が一瞬早くさくらに近づき、その腕を引く。
さくらの体はクルリと半円を描いて、昴の腕の中へと納まった。一瞬だけその体を抱きしめる。
回転の動きを止めないように、さらに昴はさくらの背中を押すと、さくらはサッと男に近づき、回し蹴りを男の首元に決めた。
ドカッ!!
「ぐぁっ!」
蹴りを決めたさくらの体にくるくるッとドレスの裾が巻き付き、またゆっくりと解けていった。
会場が一瞬静まり返る。
「こ、このように働く女性の美しさを、より際立たせるドレス。いかがだったでしょうか……」
マイクを持っていたMCが思わずアナウンスした。
パチ…パチ…パチ…
パラパラと起こった拍手は、瞬く間に会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
***
会場には何人も警察官が駆け付け、ホテルの外には赤色灯が回るパトカーが何台も停まっている。
「やれやれ…パーティーが爆弾騒ぎになるとは…」
小五郎がシャンパングラスを片手にぼやいた。
「高木刑事から聞いた話だと、さっきの男の人、新作ドレスのデザインをした人の元カレなんだって。最近別れたらしいんだけど、男の方が未練あったらしくて…」
高木刑事を丸め込んで聞いてきた内容をコナンが詳しく話してくれた。
「で、その新作発表で爆弾騒ぎ? 迷惑な元カレねぇ~! しかもさくらさんをたぶらかして。元々タラシだったんじゃない!」
園子は不機嫌そうにつぶやく。
「ま、まあ…昴さんとさくらさんのおかげで、誰もケガしなかったし、爆弾も爆発しなくてよかったじゃない」
蘭が園子をなだめている。
「あれ? そういえばさくらさんと昴さんは?」
「さっき事情聴取されてたけど……」
園子と蘭は顔を上げ、周りを見回す。
「ねえ、ちょっとあれ……」
何かに気付いた園子が驚いた様子で指さす。彼女がさし示した先には黒山の人だかりが出来ていた。
よく見ると、先に事情聴取の終わったさくらのところに、今日客として招かれた男性たちが集まっている。
男たちはニコニコして話しかけているが、さくらは困った顔をしていた。
「え、あの…私そろそろ着替えて…」
さくらは蘭たちの元へ戻ろうとするが、男性たちがさくらを囲み、デートへ誘おうとしている。
「え~ッ!? 良いじゃないですか。そのまま良かったら食事でもどうです? もうこの会場は警察が入っているから食べられなそうだし…」
「イヤイヤ、せっかくですから近くのバーで飲み直しませんか? たくさん動いたから喉乾いたでしょう?」
あの手この手で誘い出そうと必死だ。
さくらは「連れがいるので帰ります」と断るのだが、先ほど見たさくらの立ち居振る舞いにすっかり心奪われた男性たちは、是非お近づきになろうとなかなか放してくれない。
「ゴホン。失礼します」
人だかりになったさくらのところへ、事情聴取を終えた昴がワザとらしい咳ばらいをして近づいた。
スッと隙間に入り込んでさくらに近づく。
「さあ、さくら。みんなが待っていますよ。一緒に帰りましょう」
とびっきりの笑顔を作ってエスコートする。
差し出された昴の手に、今度こそさくらの手が重なった。
昴の空いている方の手がさくらの背中に触れると、ごく自然に細い腰を抱き寄せる。
「はい♪」
これまたとびっきりの笑顔で返事をしたさくらは、ほんの少し頬を染め、嬉しそうに男性陣の輪から抜け出す。
「それじゃあ皆さん、さようなら」
極めつけの挨拶だけを残してその場を去る。
後にはポカ——ンと口を開けた男性たちが残されていた。
~おまけ~
夜。工藤邸———
「ふ~。今日はホント疲れたな~」
温かいハーブティーを一口飲んだりおが、ため息交じりにつぶやいた。
「ははは。回し蹴りよりステージに立った時の方が疲れたんだろう?」
風呂上がりの赤井は髪を拭きながら訊ねる。
「うん。ドレスなんてほとんど着ないし、ヒールが慣れなくて……あ、でも今日着たドレス、ホント動きやすかったわ。昔パーティーに潜入した時に着たドレスは動きにくかったんだよね……」
その時の事を思い出したんだろう。途端に顔をしかめた。
「ところで秀一さんはずっと笑顔なんですけど。何か良い事ありました?」
パーティー会場から帰る時もずっと機嫌が良かったし、ニコニコしていた。変装を解いたのにまだ笑ってるって――。よほど良いことがあったに違いない。
「ん~? そうか? まあ……気分は良いな」
「気分?」
「ああ」
気分ねぇ……なんでかな。美味しいものでも食べたからかな?
りおは頬杖を突きながらぼんやり思案している。
(フッ。言い寄る男たちの前からお前をかっさらってきた事が、これ以上ないってくらい気分良かったって言ったら、どんな顔するかな)
これまた頬杖を突きながら、ず~っとニコニコ…いや、ニヤニヤする赤井。
(え、なに……秀一さん……こわ…)
それを見て、りおは怪訝そうにその顔を見つめたとさ。