ペリドットとアンバー短編集
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「ニンジン嫌いを直したい?」
工藤邸のキッチンで、目をまん丸にしながら驚きの声を発したのはりおだった。
「ええ。あ、でも私じゃないですよ。
少年探偵団から相談されたんです」
——ああ、そういう事ね……。りおが納得する。
「てっきり昴さんがニンジン嫌いなのかと思ったわ。肉じゃがにもカレーにも入っているのに……ってびっくりしちゃった」
エプロンの紐を結びながら、りおは苦笑いした。
「でも、子ども達どうしてそんなことを?
5人の中にニンジンが嫌いな子でも居たかしら…?」
何度か食事を一緒にしているが、そんな話は聞いたことが無かった。
「どうやら、探偵団に相談があったようなんですよ」
クスクスと笑いながら昴が教えてくれた。
街の困りごとを聞いては、持ち前の行動力とコナンの助けで問題を解決している少年探偵団。
今回の依頼主はクラスメイト。
学校で給食週間が間もなく始まり、各クラスの残飯を減らそうキャンペーンが開催されるようだ。
どうやらクラスに迷惑を掛けないように、今のうちから嫌いなニンジンを克服したいと、探偵団に相談があったという。
「少年探偵団の依頼は多岐に渡るわね。
さすが《困った人の味方》ね」
「ええ。でも、さすがに今回の依頼は私にも難解で。りおに相談したというわけです」
エプロンを掛けてニンジンを手にした昴が、困ったように笑った。
「なるほどね。ニンジン嫌いか~。匂いが嫌なのかな。ニンジン嫌いな子はあの独特な《泥臭さや青臭さ》を嫌がる子もいるわ」
そういってりおは昴からニンジンを受け取る。
「ニンジンの品種を選ぶのも手だけど…。《ベータリッチ》とか《ミニキャロット》は特有の匂いも抑えられているし、甘いのが特徴ね。でもスーパーではあまり見ないかも。
お店で良く見かけるのはこの《五寸ニンジン》かしら。とりあえず、これでサラダ作ってみましょう」
りおはそう言うと、まな板と包丁、スライサーを準備した。
「サラダ? 生で食べるのですか?」
てっきり火を通して甘みを出すのかと思っていた昴は小首をかしげる。
「ええ、生で食べます。まあ、任せて」
りおは意外そうな顔をしている昴を横目に、調理を進めていった。
「まずは皮をむいて、スライサーで薄くスライスします。それを包丁で細切りにするの。スライサーと包丁の《二刀流》がポイントよ。
スライサーのセットについている《つま切り》を使っても良いし、全部包丁で切っても良いけど、この《二刀流》が一番食感が良いのよ。
好き嫌いがある子って、この食感も重要だったりするわ」
説明をしながら、りおはスライサーでニンジンを薄切りにし、今度はそれを揃えると包丁で細切りにしていく。
「ずいぶん細く切りますね」
「ええ。生で食べるので太いとコリコリって触感になりますし、細い方がシャキシャキしています。ニンジン好きな方はどちらでも良いでしょうけど、嫌いな子はシャキシャキの方が食べやすかな」
トントンと軽快に包丁が動き、気が付くと1本すべてを細切りにしていた。
細切り——というより、ニンジンの《千切り》という感じだ。
「昴さん。切ったニンジンをボールに入れて、二つまみほど砂糖を入れてください」
使った道具をシンクで洗いながら、りおは昴に指示を出す。
「分かりました。砂糖ですね。ふたつまみ…こんなもんですか?」
「ええ、OKです。それを手で良いので、砂糖がまんべんなく回るように混ぜてください」
「え? 手で、ですか?」
「洗ってあるでしょ?」
「ああ、はい。じゃ、じゃあ失礼して……」
確かに手は洗ってある。昴は恐る恐る、ボールに手を入れて混ぜ合わせた。
しばらくすると、ある変化に気付く。
「りお。ニンジンがシャキッとしてきた」
「そうなの。それを感じてほしかったので、手で混ぜて貰ったのよ」
予想通りの昴の反応を見て、りおはクスクスと笑う。
「たくさん砂糖を入れる必要はないわ。一つまみか二つまみ。全体に薄~く回るくらい。
ニンジンの甘みと砂糖の甘みで、嫌いな子でも結構食べれちゃう」
なるほど、と昴が感心していると「そろそろいいわよ」とりおが声をかけた。
昴が砂糖の付いた手を洗っている間に、りおは軽く塩コショウを振る。
「あと加えるのはこの塩コショウと、白ごま、マヨネーズのみ。マヨネーズを入れる前に軽く味付けと、白ごまをたっぷり加えてよ~く混ぜておいて。全体に混ざったところでマヨネーズを加えるわ。ニンジン1本でマヨは大さじ2~3くらいかしら。ゴマもマヨもお好みで良いと思うわ」
ボールにマヨネーズを絞り入れると、りおは手早く箸で混ぜ合わせた。
「はい。これで出来上がり。味見してみて」
豆皿に少量取りわけてもらい、昴は味見をした。
「!! うま…おいしいです。具はニンジンだけなのに」
シャキシャキとした歯ごたえと、ゴマの風味。そしてニンジンの甘み。ニンジン特有の香りはマヨネーズでまろやかになっている。
思わず《赤井》が出そうになって言い直した。
「まずはこれが食べられれば、『生のニンジンが食べられた!』って自信になるんじゃないかな」
パクパクと美味しそうに食べる昴を見ながら、りおは微笑んだ。
「今度探偵団が来た時に、さっそく教えてあげますね」
昴は『これで子どもたちに顔向けが出来る』と喜んだ。
「はぁ……。しかし、まさか昴さんと…ううん、《ライ》とこうやって《お料理教室》を一緒にする日が来るとはね~」
作ったサラダを作り置き用のタッパーに入れながら、しみじみとりおが呟いた。
「ホントに。不思議ですね。私だって組織で知り合った女性と、こんな関係になるとは思ってもいませんでした」
昴は優しい眼差しでりおを見る。
「こんな関係って?」
りおは照れているのをごまかすように、あえてとぼけてみせた。
——分かっているくせに。
お前のことなど見通しだと言わんばかりに、昴はチュッと唇に触れるだけのキスをした。
「マヨネーズ味のキスをする関係って事?」
「ゴマとニンジンの味もしますね」
真っ赤になりながらりおが訊ねると、同じように昴もふざけて答えた。
——こんな何でもない幸せが、ずっと続きますように。
おそらく同じことを思いながら微笑んでいるであろう昴を見て、りおは顔を赤くしながらも、心が温かくなるのを感じた。
~おまけ~
「昴さん、スライサー使う時は子ども達にやらせちゃダメよ。危ないから」
「確かに。そうしたら包丁も危なくないですか?」
「あ、1年生に作るのは無理か……」
「それなら、私が作ってそのクラスメイトにご馳走してあげれば良いですね」
「昴さんが手を切らないようにね」
「……やっぱりスライサーは使い慣れないので、りおが作ってください」
「今作ったヤツ、持っていけば良いんじゃない?」
「あ…。そうですね。でも今晩のサラダがありません。私も食べたいです」
「追加で作っておくから。探偵団に届けて来てください」
「了解。《秒》で帰ってきます」
「昴さん。いくら何でも《秒》で作れないから。まだ博士の家に探偵団が居るみたいだし。ちゃんとサラダの説明もしてくださいね!」
りおとの時間は1秒でも無駄にしたくない昴さんでした。(笑)
美味しいので是非お試しください。
工藤邸のキッチンで、目をまん丸にしながら驚きの声を発したのはりおだった。
「ええ。あ、でも私じゃないですよ。
少年探偵団から相談されたんです」
——ああ、そういう事ね……。りおが納得する。
「てっきり昴さんがニンジン嫌いなのかと思ったわ。肉じゃがにもカレーにも入っているのに……ってびっくりしちゃった」
エプロンの紐を結びながら、りおは苦笑いした。
「でも、子ども達どうしてそんなことを?
5人の中にニンジンが嫌いな子でも居たかしら…?」
何度か食事を一緒にしているが、そんな話は聞いたことが無かった。
「どうやら、探偵団に相談があったようなんですよ」
クスクスと笑いながら昴が教えてくれた。
街の困りごとを聞いては、持ち前の行動力とコナンの助けで問題を解決している少年探偵団。
今回の依頼主はクラスメイト。
学校で給食週間が間もなく始まり、各クラスの残飯を減らそうキャンペーンが開催されるようだ。
どうやらクラスに迷惑を掛けないように、今のうちから嫌いなニンジンを克服したいと、探偵団に相談があったという。
「少年探偵団の依頼は多岐に渡るわね。
さすが《困った人の味方》ね」
「ええ。でも、さすがに今回の依頼は私にも難解で。りおに相談したというわけです」
エプロンを掛けてニンジンを手にした昴が、困ったように笑った。
「なるほどね。ニンジン嫌いか~。匂いが嫌なのかな。ニンジン嫌いな子はあの独特な《泥臭さや青臭さ》を嫌がる子もいるわ」
そういってりおは昴からニンジンを受け取る。
「ニンジンの品種を選ぶのも手だけど…。《ベータリッチ》とか《ミニキャロット》は特有の匂いも抑えられているし、甘いのが特徴ね。でもスーパーではあまり見ないかも。
お店で良く見かけるのはこの《五寸ニンジン》かしら。とりあえず、これでサラダ作ってみましょう」
りおはそう言うと、まな板と包丁、スライサーを準備した。
「サラダ? 生で食べるのですか?」
てっきり火を通して甘みを出すのかと思っていた昴は小首をかしげる。
「ええ、生で食べます。まあ、任せて」
りおは意外そうな顔をしている昴を横目に、調理を進めていった。
「まずは皮をむいて、スライサーで薄くスライスします。それを包丁で細切りにするの。スライサーと包丁の《二刀流》がポイントよ。
スライサーのセットについている《つま切り》を使っても良いし、全部包丁で切っても良いけど、この《二刀流》が一番食感が良いのよ。
好き嫌いがある子って、この食感も重要だったりするわ」
説明をしながら、りおはスライサーでニンジンを薄切りにし、今度はそれを揃えると包丁で細切りにしていく。
「ずいぶん細く切りますね」
「ええ。生で食べるので太いとコリコリって触感になりますし、細い方がシャキシャキしています。ニンジン好きな方はどちらでも良いでしょうけど、嫌いな子はシャキシャキの方が食べやすかな」
トントンと軽快に包丁が動き、気が付くと1本すべてを細切りにしていた。
細切り——というより、ニンジンの《千切り》という感じだ。
「昴さん。切ったニンジンをボールに入れて、二つまみほど砂糖を入れてください」
使った道具をシンクで洗いながら、りおは昴に指示を出す。
「分かりました。砂糖ですね。ふたつまみ…こんなもんですか?」
「ええ、OKです。それを手で良いので、砂糖がまんべんなく回るように混ぜてください」
「え? 手で、ですか?」
「洗ってあるでしょ?」
「ああ、はい。じゃ、じゃあ失礼して……」
確かに手は洗ってある。昴は恐る恐る、ボールに手を入れて混ぜ合わせた。
しばらくすると、ある変化に気付く。
「りお。ニンジンがシャキッとしてきた」
「そうなの。それを感じてほしかったので、手で混ぜて貰ったのよ」
予想通りの昴の反応を見て、りおはクスクスと笑う。
「たくさん砂糖を入れる必要はないわ。一つまみか二つまみ。全体に薄~く回るくらい。
ニンジンの甘みと砂糖の甘みで、嫌いな子でも結構食べれちゃう」
なるほど、と昴が感心していると「そろそろいいわよ」とりおが声をかけた。
昴が砂糖の付いた手を洗っている間に、りおは軽く塩コショウを振る。
「あと加えるのはこの塩コショウと、白ごま、マヨネーズのみ。マヨネーズを入れる前に軽く味付けと、白ごまをたっぷり加えてよ~く混ぜておいて。全体に混ざったところでマヨネーズを加えるわ。ニンジン1本でマヨは大さじ2~3くらいかしら。ゴマもマヨもお好みで良いと思うわ」
ボールにマヨネーズを絞り入れると、りおは手早く箸で混ぜ合わせた。
「はい。これで出来上がり。味見してみて」
豆皿に少量取りわけてもらい、昴は味見をした。
「!! うま…おいしいです。具はニンジンだけなのに」
シャキシャキとした歯ごたえと、ゴマの風味。そしてニンジンの甘み。ニンジン特有の香りはマヨネーズでまろやかになっている。
思わず《赤井》が出そうになって言い直した。
「まずはこれが食べられれば、『生のニンジンが食べられた!』って自信になるんじゃないかな」
パクパクと美味しそうに食べる昴を見ながら、りおは微笑んだ。
「今度探偵団が来た時に、さっそく教えてあげますね」
昴は『これで子どもたちに顔向けが出来る』と喜んだ。
「はぁ……。しかし、まさか昴さんと…ううん、《ライ》とこうやって《お料理教室》を一緒にする日が来るとはね~」
作ったサラダを作り置き用のタッパーに入れながら、しみじみとりおが呟いた。
「ホントに。不思議ですね。私だって組織で知り合った女性と、こんな関係になるとは思ってもいませんでした」
昴は優しい眼差しでりおを見る。
「こんな関係って?」
りおは照れているのをごまかすように、あえてとぼけてみせた。
——分かっているくせに。
お前のことなど見通しだと言わんばかりに、昴はチュッと唇に触れるだけのキスをした。
「マヨネーズ味のキスをする関係って事?」
「ゴマとニンジンの味もしますね」
真っ赤になりながらりおが訊ねると、同じように昴もふざけて答えた。
——こんな何でもない幸せが、ずっと続きますように。
おそらく同じことを思いながら微笑んでいるであろう昴を見て、りおは顔を赤くしながらも、心が温かくなるのを感じた。
~おまけ~
「昴さん、スライサー使う時は子ども達にやらせちゃダメよ。危ないから」
「確かに。そうしたら包丁も危なくないですか?」
「あ、1年生に作るのは無理か……」
「それなら、私が作ってそのクラスメイトにご馳走してあげれば良いですね」
「昴さんが手を切らないようにね」
「……やっぱりスライサーは使い慣れないので、りおが作ってください」
「今作ったヤツ、持っていけば良いんじゃない?」
「あ…。そうですね。でも今晩のサラダがありません。私も食べたいです」
「追加で作っておくから。探偵団に届けて来てください」
「了解。《秒》で帰ってきます」
「昴さん。いくら何でも《秒》で作れないから。まだ博士の家に探偵団が居るみたいだし。ちゃんとサラダの説明もしてくださいね!」
りおとの時間は1秒でも無駄にしたくない昴さんでした。(笑)
美味しいので是非お試しください。