ペリドットとアンバー短編集
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「おや、3人とも。こんな所で何をしているのですか?」
声のする方へ顔を向けると、今しがた店員さんから勧められた商品を手にした昴が立っていた。
「あ、昴さん…こんにちは! ボクたち、おやつを買いに来たんです。
昴さんこそ、ずいぶん熱心に店員さんに訊いていましたけど、何を買われたのですか? 差し支えなければボクたちに教えて欲しいんですけど……」
光彦はチャンス! とばかりに、不審がられないよう上手く状況説明と質問をした。
(昴さん! ここは大人なんだからちゃんとごまかしてくれよ‼)
コナンはもはや、引きつった笑いしか出来なかった。
「ほう…、なるほど。良いですよ。と言っても、子どもの君たちには必要ない物ではありますが……」
昴の言葉にコナンはギクリとする。
(お、おいおい…まさか…)
「今日私が買おうと思ったものは……」
「「思ったものは……?」」
「実は…」
「「うん、うん」」
(も、もう~~! なるようになれ‼)
コナンは腹をくくった。
「ハンドクリームです」
「へ?」
コナンの口から変な声が出た。
「「ハンドクリーム?」」
元太と光彦は目を丸くした。
「ええ。最近料理や洗濯はさくらに任せっぱなしで……。このところ寒くなったせいか、彼女の手荒れが酷いんですよ。それで、店員さんに相談してお勧めを教えてもらったんです」
ニコニコしながら昴が教えてくれた。
「へぇ~。昴さん優しいんですね~」
光彦は目をキラキラさせて昴を見ている。
「でもよぅ。姉ちゃんに買ってやるなら、フローラルとかの匂いが付いていた方が喜ぶんじゃねぇ?」
元太が隣から口を挟む。
「ははは。女性は良い香りを好みますからね。
でもさくらはあまり香りの強いものが得意ではないですし、料理をするので無香料の方が喜ぶと思って」
「あ! そうか。いくら洗っても、匂いって残りますからね」
光彦も合点がいったように声を上げた。
「ええ。私も料理を手伝いますから一緒に使っても良いですし。ふたりで使うならと、少し大きいサイズを選んだのですよ」
店員さんとのやり取りが繋がり、コナンは自分の勘違いに膝の力が抜けそうだった。
「きっとさくらさん喜びますね!」
「おう! また兄ちゃんのところを好きになっちまうな!」
「ふふふ。なら嬉しいですね」
脱力するコナンを除いた3人が笑顔になる。
謎が解けてご機嫌な元太は、そのままお菓子売り場へと駆けて行ってしまった。慌てて光彦が後を追う。
「で、ボウヤはどうしてそんなに疲れているんだ?」
笑顔はそのままに、昴は赤井の口調でコナンに話しかけた。
「え…いや…別に……」
バツが悪そうにコナンは視線を泳がせる。
「ほぅ…。男が一人でドラッグストアへ買いに来るもの——。どうやらその優秀な頭脳は、別のものを想像したのかな」
昴はニヤリと悪い笑みを浮かべてコナンの顔を見た。
「べべべべ、別に…っ。な、何も想像してないよッ!」
「ほ~~ぅ…そうですか。なら良いのですが」
コナンは自分でも驚くほど言葉につまった。これはバレたに違いない。その証拠に口調が昴に戻っているし、気味が悪いほど笑ってる……。
コナンは居た堪れなくなり、「げ、元太~…光彦~…帰るぞ~…」と弱々しく叫ぶと、一足先に店を出て行ってしまった。
(フッ。まだまだ若いな。まあ、ソレについてはボウヤの心配には及ばんよ)
昴は片方の口角を上げ、コナンが出て行った店の入り口を見つめていた。
数十分後、工藤邸——
「はい、りお。これプレゼントです」
「プレゼント? ……わぁ! ハンドクリームだ! 最近手荒れが酷くて…ずっと欲しかったんだ~。ありがとう昴さん!」
りおは早速荒れた手にクリームをつけた。
「ん! すぐに肌になじんでベタベタしないよ。匂いも無くて…これ良いね! そういえば昴さんも少しカサついてるよ。クリームつけてみる?」
「ええ。じゃあ私もつけてみます」
「はいどうぞ」
りおはクリームを手渡した。
「……なるほど。確かにベタベタしないですね」
「うん。これなら昴さんも一緒に使えるね。もしかしてそのつもりで買ってきたのかな?」
ふふふ、とりおが笑顔になる。
「『ちょっと出てくる』って言って出掛けたから、てっきりタバコを買いに近くのコンビニに行ったと思っていたのに。どうしてハンドクリームを?」
「え?」
さすがにブライアンに教えてもらった…とは言い辛い。
「えっと…りおの手を見た時に、ちょっと荒れ気味だな…と思ったんです」
「ッ! よ、よく見てるね…昴さん…」
(…よく見てたのはブライアンなのだが…)
照れて赤くなるりおを見て、昴は少々心が痛む。そんな昴の気持ちも知らず、りおはさらにクリームを手に出した。
「昴さんも家事してるし、さっきの量じゃ少なすぎ。もう少し塗らないと…」
りおは自分の手に取ったクリームを昴の手に丁寧に塗り込んだ。
「いや、あの…りお…」
その行為が…なんというか……そそる。
指一本一本まで丁寧に塗ってくれるのは有難いが、それはもう煽っているとしか思えない。
(ボウヤをからかい過ぎたかな。俺はもう思春期じゃないんだが……)
昴はりおにハンドクリームを塗って貰いながら、高まる気持ちを抑えるのに精いっぱいだった。
「はい、出来たよ。って……どうして昴さん、そんなに顔が真っ赤なの?」
お互いの手が程よく潤って、カサついた手肌が柔らかくなった。それを見て満足そうに顔を上げたりおは、昴の顔を見て不思議そうだ。
「りお…すまん。俺も…思春期男子にアテられたようだ…。今は我慢するから、夜は覚悟しておいてくれ」
「へ? どういうこと?」
小首を傾げるりおに謎な言葉を残して、昴はリビングを後にした。
==おまけ==
同じ頃、毛利探偵事務所――
「ただいま~」
「お帰りコナンくん。今日は遅かったね」
「あ、うん。元太たちと遊びながら帰って来たから……」
コナンはドッと疲れを感じ、下を向いたまま答えた。
「元気ないね、どうしたの?」
蘭がコナンに近づき、心配そうに顔を覗き込む。
「ッ!」
蘭の顔を間近でみたコナンは、ふと先ほどの妄想を思い出す。ボボボッ! と顔が赤くなった。
「こ、コナンくん! どうしたの? 顔が真っ赤よ! 風邪かな? 熱測ってみようよ」
「えッ! だ、大丈夫! そ、そんなんじゃな……」
両手を目の前で振りながら、風邪じゃないと言おうとしたその瞬間——
ブ~~~ッ!
「きゃぁぁ! コナンくん! 鼻血がッ!」
頭脳は思春期男子でも、やっぱり体は子ども。
キャパオーバーで鼻血を出し、倒れてしまった。
(くっそぉ~~、赤井さんめ~~!
絶対オレたちが尾行してたこと知ってて……覚えてろよ~!)
鼻にティッシュを突っ込まれた姿を蘭に見られ、リビングに寝かされたコナンは、いつか赤井に仕返しをしてやろうと心に決めたのだった。
===
さて、コナンくんが何と勘違いしたのか…
分かりましたか?