ペリドットとアンバー短編集
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『風見、広瀬! 今回の爆弾テロの予告はイタズラだったことが判明した。
犯人も確保された。二人とも戻ってきて良いぞ』
「「了解」」
降谷から犯人確保の連絡が入り、緊張していた二人の表情が緩む。
「広瀬、今どこだ? 俺は1Fのエントランスにいる」
『私は2Fのスタッフルームです。そちらに向かいます』
二人は連絡を取り合い合流した。
「お疲れさん。人騒がせな事件だったが死傷者が出なくて何よりだったな」
風見がりおに声を掛けた。
「ええ。たくさんの人が集まる商業ビルに爆弾テロだなんて、一報聞いたときは背筋が凍りましたよ」
爆弾処理班などたくさんの警察関係者が、まだエントランスで後処理をしていた。
それを横目で見ながら二人は警視庁へ戻った。
「二人ともご苦労だったな」
風見とりおの姿を見て、降谷がねぎらいの言葉を掛けた。
一通りの報告を済ませ、3人は各々の仕事に戻っていく。
りおはデスクで報告書を作成して、一度大学へ顔を出すことにした。
「広瀬、この後大学か? 俺もポアロだから乗せていってやるよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて。お願いします」
✳✳
RX-7は街中を抜け、米花町方面へと向かう。
街路樹が立ち並ぶ道は、日の光が葉の影を映し出し、さながら映画の一場面のように美しい。
先ほどまでのテロの緊張感から解放されたのも手伝って、りおは久しぶりに心が和む。
無意識に歌を口ずさんでいた。
「♪~♬~♪~」
(広瀬が鼻歌なんてめずらしいな)
ご機嫌なりおの様子に、降谷はフッと笑った。
(何を歌っているんだ?)
耳を澄ませてりおの歌を聴いた。
「………」
(ッ!この歌は…!)
自分も良く知るその曲をりおが歌っている事に、嬉しさとほんの少しのほろ苦さを感じた。
「ありがとうございました」
送ってくれた降谷に礼を言って、りおは車から降りる。
「じゃ、また」
その歌の事を口に出せぬまま、降谷は車を発進させた。
夕方は金曜ということもあり、りおは工藤邸へと帰った。
昴とおしゃべりをしながら夕飯の支度を始める。
「♪~♬~」
「珍しいですね。りおが鼻歌なんて」
「え? あれ、歌ってた? あ~懐かしい曲…」
りおは照れ笑いをした。
「なんて曲ですか? 聴いたことあるような…?」
「え? 昴さん、この歌聴いたことあるんですか?」
驚いてりおはもう一度歌い出した。
《君の一番近くで 一緒に笑っていたい
君が悲しい時は 肩を抱いてあげたい
君に寄り添って どんな時も
そばに居たいと願うのに
臆病な僕は動けないまま 時は過ぎていく
ふたりの距離は あの頃と変わらず
手を伸ばしても わずかに届かない
空を見上げて 風を感じて
君の元へと行けたなら
空を見上げて 両手を広げて
君を抱きしめたい
この先ずっと未来も
君と共にいたいと願うよ》
「甘酸っぱい青春みたいな歌でしょう?」
りおはふふっと恥ずかしそうに笑った。
確かに聴いたことのある歌だった。
歌詞は全く知らなかったが、メロディは知っている。
(一体どこで聴いたのか…)
昴は考え込んでしまった。
だが、どう記憶をたどっても思い出せなかった。
数日後——
昴はポアロに顔を出した。コナンとシャーロックホームズについて話をしようと約束をしていたからだ。
待ち人はまだ学校から帰っていないらしい。
安室は注文を聞きに昴に近づく。
「コーヒーお願いします」
「かしこまりました」
「あ、安室さん。一つ伺っても?」
「なんでしょう?」
昴がポアロに来るのも珍しいのに、昴の方から質問をされるとは…。
(今日は雨が降るのかな)
安室はガラにもなくそんなことを考えた。
「最近さくらが頻繁に歌っている歌があるんです。
聴いたことはあるのですが、誰の曲なのか、いつ頃流行った歌なのか全く分からなくて。
安室さんならご存じかと思って…」
「鼻歌? どんな曲ですか?」
安室に訊かれ、昴はサビの部分だけ歌った。
「?! そ、その曲は…」
歌を聴いて安室は顔を赤くした。
「安室さん? 顔が赤いですよ。どうしたんです?」
「沖矢さん、その曲ご存じなんですか?」
「知っていると言って良いのか…。ただ聴いたことはあるんです。
いつどこで聴いたのか思い出せないのですが…」
昴の言葉を聞いて、安室は大きく息を吐いた。
「その曲…僕とヒロで作った曲ですよ。
詩はヒロがほとんど付けましたが」
「え?」
「僕も最近思い出したんです。
警察学校を卒業する時、ヒロが好きだった子に歌をプレゼントしたことを。
想いを告げられないまま……ただこの歌だけ手渡したと聞いています。
ライ、スコッチ、バーボンで組んでいた頃…
そう、ラスティーが伝達係として姿を見せるようになった頃、ヒロ…いえ、スコッチもよく口ずさんでいましたよ」
「あ…!」
そうだった。ターゲットを待つ間、時々スコッチは鼻歌を歌っていた。
「それを聴いて覚えていたのか…」
そしてりおが大切な人を想う時、空を見上げて風を感じる理由が分かった気がした。
安室が成田のホテルで、りおの心の内を理解した理由も。
「甘酸っぱい青春の歌…か」
どんな想いを込めてスコッチはこの曲をりおに手渡したのだろう。
りおはずっと大事にしてきたはずだ。歌も詩も。
嫉妬しないといえば嘘になる。が、そんな気持ちも全て——
丸ごと受け止めてやりたいとも思ってしまう。
「お待たせしました」
安室がテーブルに近づいた。
ふわりとコーヒーのいい香りがした。
「もしかして、嫉妬しましたか?」
ニヤリと笑ってカップを置いた。
「さあ、どうでしょうね」
カップを手に取り、昴はコーヒーを一口飲んだ。
《空を見上げて風を感じて》
今頃りおもこの空を見ているのだろうか。
昴は店の窓越しに空を見上げた。
「ねえ、さくらさん! 空キレイ!」
蘭が叫んだ。
「ホントだ~。キレイ!」
日が沈んだ西の空から東の空へ向けて、空がオレンジ、ピンク、青へとグラデーションを描く。
星もいくつか輝いていた。
(昴さんも…見てるかな)
大きな買い物袋を抱え、蘭と二人で空を見上げる。
「早く…会いたくなっちゃうね」
蘭がぼそりとさくらに声を掛けた。
「え? 誰に?」
蘭の言いたいことは分かったが、恥ずかしいのでとぼけてみせた。
「もう。照れちゃって!」
「大人をからかうもんじゃありませ~ん」
「ああ、ごめんなさ~い」
二人でふざけ合いながら歩く。
今夜、小五郎は妻の英理とお食事デート。
蘭とコナンだけではつまらないということで、毛利邸で夕食を共にする約束をしていた。
一足早くコナンくんとシャーロックホームズの話をするんだと、昴はポアロへ行っているはずだ。
「蘭ちゃん。早く帰ろう!」
昴に会いたくなって、さくらは帰り道を急いだ。
==おまけ==
帰り着いた頃には蘭とさくらは疲れ切っていた。
「この荷物持って、早歩きはキツかった…」
二人はゼーゼーハーハーと息を切らし、倒れ込んでいた。
「蘭姉ちゃんとさくらさん、なんでこんなに疲れてんの?」
「さあ…?」
「僕たちの夕飯どうなるの?」
「鍋…のようですし、私たちで準備始めますか」
「そだね」
昴とコナンはいそいそと鍋の用意を始めたのだった。