ペリドットとアンバー短編集
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「さくら、着きましたよ」
花の苗を買うため、今回は昴の車でホームセンターまでやってきた。
藤枝の狙いがエンジェルダストだと知って、さくらの表情は沈んだままだ。
(気分転換になれば良いがな…)
昴は車から降りると、さくらの肩にそっと触れて、花のコーナーへと歩みを進めた。
花のコーナーの手前を通りかかった時、『ワンワン!』『にゃー!』という鳴き声が聞こえ、さくらは歩みを止めた。
「ここってペットコーナーもあったんですね…」
「ええ。そんなに多くは無いですが…。見に行ってみますか?」
「うん」
ふたりはペットコーナーへ向かった。
「わ~! カワイイ…」
ヨチヨチ歩く子犬や子猫を見て、さくらの表情が緩む。
「この子…『チワックス』?」
「ああ、チワワとダックスのミックス犬だそうですよ」
「ええ? そうなんですか? めちゃめちゃ可愛いんですけど…」
ダックス特有の大きなたれ耳だが、目が大きく足が細い。チワワの特徴もしっかり持っている。何とも愛らしい姿だ。
「抱っこしてみますか?」
「え? 良いんですか?」
店員さんに声を掛けられ、さくらの表情が明るくなった。
「この子もあなたの事が気になるみたい」
さくらに向かってブンブンと尻尾を振る子犬を店員さんがそっと抱き上げ、さくらの胸元に連れてきた。
「わぁ…カワイイ!」
さくらはそっと頭を撫でた。
子犬は気持ち良さそうに目を細める。
「ふふふっ。なんだかこの子犬も笑っているみたいに見えますよ」
昴はさくらと子犬が同じ表情をしていたので、思わず笑ってしまった。
子犬はさくらに頭や首元を撫でられて気持ち良さそうだ。さくらも子犬と触れ合ううちに先ほどまでの沈んだ表情が一変して、穏やかな優しい表情になっていた。
「良い飼い主さんと巡り会って、幸せになるんだよ」
さくらは子犬に言い聞かせるようにつぶやいた。
店員さんにお礼を言って子犬を返す。
「もう良いのですか?」
「うん。これ以上は情が移っちゃうから」
一瞬寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔が戻った。
「ねえ、昴さん。あそこ見て!」
さくらが指さす方を見ると水槽がいくつか見えた。
「熱帯魚とかもいるんだね」
「行ってみます?」
「うん。見てみたい」
ふたりは熱帯魚コーナーへと移動した。
「わあ! キレイだね!」
色とりどりの魚が水槽の中でゆらゆらと泳いでいた。
「ねえねえ! 昴さん! これ、これ! ちっちゃいけど…フグじゃない?」
「ホントだ。フグ…ですね」
小さなヒレを忙しなく動かし、こちらを興味津々で見ている。
「なんか、この子ジッと見過ぎ。私たちの方が監視されているみたい」
さくらも水槽に近づき、まるでフグとにらめっこしているようだ。
「このフグ、私に怒られて不貞腐れているさくらに似てますね」
「え?! なんか酷くない?」
「だってそっくりですよ。口を尖らせて人の顔を上目遣いでジ―ッと見るところとか…」
「タバコ注意された秀一さんにも似てるよ?」
「ええ?! こんな顔してます?」
「あれ、なんで昴さんが焦ってるのかな~?」
「そういう意地悪な顔もフグ面ですよ」
「ひどーい!!」
水槽の前でお互いの顔とフグを見比べて二人は言いたい放題。
そのうち当のフグの方がこちらの観察に飽きたのか、クルリと方向転換をして水槽の奥へと隠れてしまった。
「残念。もう少し見たかったなぁ」
「フグだけでこんなに和むとは思いませんでした」
ふたりは満足げだ。
「昴さん、そろそろ本題のお花の苗を見に行きましょ」
「そうですね。何色があるか楽しみです」
「私青い花欲しいな。あと黄色も」
「気に入った花があると良いですね」
「うん!」
子犬とフグと花…なんだかへんてこな組み合わせだったけれど。
さくらが笑顔になったからまあ良いか…。
笑って、ほんの少し赤みの差したさくらの顔を見て、昴も安堵の表情を見せる。
(しかしアイツ…りおの拗ねた顔にホントそっくりだったな…)
アイツ…「ミドリフグ」をちょっと気に入ってしまった昴だった。
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こうしてこの後、本編の2章《白昼の強盗》での強盗騒ぎに巻き込まれたのでした…。