ペリドットとアンバー短編集
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ギムレットとの死闘後、退院してきたりおは穏やかな日々を過ごしていた。
失声症がある以外は脇腹のケガも癒え、ほぼ通常の生活を行える。
今日も一通り家事を終え、リビングでは昴とりおがティータイムを楽しんでいた。
リンゴ~ン
来客を知らせるチャイムが響いた。
りおは声が出ないので、昴がインターホンに出た。
「昴さん、さくらさんこんにちは」
やってきたのはコナンだった。
「コナンくん、どうしたんですか?」
リビングに通されたコナンに昴が声を掛ける。
小さな名探偵が家に来るときは、決まって何かあった時だ。昴の言葉は柔らかいが、声は緊張の色が見える。
「今日は事件じゃないよ。蘭姉ちゃんにお使い頼まれたんだ」
昴の緊張を察してかコナンは笑顔で二人を見上げ、大きな紙袋を手渡した。
「園子姉ちゃんが、週末家族と出かけたらしくって。お土産に果物をもらったんだけど、小五郎のおじちゃんは食べないって言うし、僕と蘭姉ちゃんの二人では食べきれなくて…」
袋を見ると中には桃がいくつか入っていた。
『ありがとうコナンくん!』
さくらは嬉しそうに手話で感謝を伝える。
「ありがたいのは僕のほうだよ。良かった~~。このまま三食桃になるかと思ったもん」
頭に手を当てて、笑いながらコナンが言った。
「ところでさあ。さくらさん…相談があるんだけど…」
コナンの声のトーンがほんの少し下がる。
『なあに?』
「女の子ってプレゼントに何貰うと嬉しいの?」
突然の質問にさくらの目がテンになった。
『え? 誰かにあげる予定あるの?』
なぜか手話も小さくなって、コソコソ感が満載だ。
「あ、いや、すぐどうってわけじゃなくて。蘭姉ちゃんにあげようかな~~と思って…。
お世話になってるし…。でも年上の女の人って何が良いか全然わからなくって…」
(なるほど。蘭ちゃんにあげるのか…)
さくらは口元に手を当てて考え込んだ。
『私より園子ちゃんに聞いた方が良いんじゃない? 親友だし、何より同い年だし』
年上って言ったって、さくらと蘭では世代が違う。自分と現役女子高生とでは絶対感覚が違うだろう。
いわゆる《ジェネレーションギャップ》というやつだ。
「園子姉ちゃんに相談したら、『マセガキがナマ言ってんじゃない!』って怒られたよ」
コナンの話を聞いて、(ああ、園子ちゃんならそう言うわね…)とさくらはうなずいた。
「だからお願い! こんなこと頼めるの、さくらさんしかいないの!」
コナンは拝むように手を合わせている。
(うーん、困ったなぁ…。自分だって異性からプレゼントなんて貰ったことないぞ!)
と思いながらさくらは考えた。
さくらが困っているのがわかったのか、
「じゃ、じゃあさ、さくらさんが今欲しい物ってなあに?」
コナンは視点を変えて訊いてみた。
『私が欲しいもの?』
考えたこと無かった…。今欲しいもの…。
『え~っと…今欲しいもの…う~ん…シャンプーの替えでしょ、あとスリッパ。それから昴さんの夏服かな』
「…」
「…」
コナンの目が半目になった。
「…さくらさん。それ今欲しい日用雑貨だよね?
しかも最後はさくらさんの物ですらないし…」
(あ、あれ? 欲しい物って言われて真っ先に浮かんだのがそれだったんだけど…)
コナンが大きくため息をつく。
昴(赤井)から『さくらはあまり物を欲しがらない』と聞いたことがあったが、まさかここまでとは思わなかった。
「女性ならアクセサリーとかどうですか?」
昴が苦笑いをしながら、助け舟を出すように提案した。
『アクセサリー!! …蘭ちゃんなら、花をモチーフにしたネックレスとかブレスレットとか似合いそうね』
それを聞いて今度はコナンが考え込んだ。
「う~ん…花っていっても色々あるよね…」
『蘭ちゃんのイメージ…桜とか、元気な向日葵とか。
コナンくんが蘭ちゃんに持つイメージでいいんじゃないかな。
あと、同じモチーフでも素材の色が違うだけでイメージ変わるよね。
ゴールド、シルバー、ピンクゴールドなんかがあるから、その中からコナンくんがピンと来るもので良いんじゃない?』
コナンはなるほど~と何か閃いたようだ。
「よし! ネットでも色々見てみるね。さすがに小学生の僕がアクセサリー売り場でウロウロしてるのもおかしいし。
さくらさん、昴さんありがとう!」
じゃあね、と言ってコナンは帰っていった。
(コナンくんがどんなアクセサリーを選ぶのか、ちょっと興味あるなぁ)
そんなことを考えながら、さくらは彼が出て行った玄関を見ていた。
「りおはアクセサリーに興味無いんですか?」
ボンヤリと玄関を見ていたりおに、昴が後ろから声をかけた。
『興味ないわけではないのですが…似合わないんですよね…』
「そんなことありませんよ。…おや、ピアスホールは開いているのですね」
昴がりおの耳元を覗き込む。
『ええ。マレーシアにいた時は現地にあるのはピアスばかりで。任務で変装した時にどうしても必要になって開けたんです』
昴はまじまじとりおの耳を見た。
「普段もつければ良いのに」
『持ってないんです』
意外な答えが返って来て昴は驚いた。
「それなら、今度一緒に買いに行きましょう。
体調も良くなってきているのですし、おしゃれして出かけないと。女の子なんですから」
(お、女の子って…私アラサーですよ…)
そうツッコミを入れたかったが、なんだか嬉しそうな昴をみて、まあ良いかと思うりおだった…。
この数日後……昴の夏物とりおのアクセサリーを買いに東都デパートに行くのだが…。
歩行者天国でにぎわっていた大通りで、ライブ中の男性が狙撃され——
またしても事件が起きてしまうのでした。
本編:アンバーの闇へと続く。