ペリドットとアンバー短編集
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リビングで美味しいお菓子とお茶を頂きながら、元太たちは学校で起きた珍事件を話してくれた。
大きな身振り手振りで話す子ども達の話しを、ふたりは時々声をあげて笑いながら聴いている。
昴とさくらはソファーで隣同士に座っていたが歩美はふと、昴がいつもさくらの様子を伺っていることに気が付く。
さっきもあまり水分の取れていないさくらに、お茶を飲むように勧めたり、口数が少なくなると小さな声で「大丈夫?」と訊ねたり。
(これって、光彦君が言うイチャイチャなのかな?)
歩美はどうやって写真を撮ろうか悩んでいた。
その後、学校での社会科見学の話を聞いている時だった。
「ん?」
昴はさくらがいる側の肩に重みを感じる。
見るとさくらが寄りかかって眠っていた。どうやら少々疲れたようだ。楽しい話を聞いて心なしか口元が笑っている。
昴はそっとさくらの体をずらし、楽な姿勢で自分に寄りかかれるようにした。
昴の動きに光彦がいち早く気付いた。
「あ、さくらさん眠ってしまったんですね…」
「ええ、今日カウンセリンがあったので疲れていたようです。でも皆とお茶をしたいと提案したのはさくらなんですよ。皆といると元気になるって」
昴の言葉を聞いて、子どもたちは照れくさそうに下を向いた。。
「さくらさんを起こしちゃってもいけないし、そろそろ帰りましょう」
哀が口元に手を当てて、小さな声でみんなに伝える。
「スミマセン。あ、じゃあみんなに手伝ってもらおうかな」
昴はそう言うと、歩美と哀に残ったお菓子を持ち帰れるよう袋に入れることを、コナンにはさくらを部屋に運ぶのを手伝うように頼んだ。
「元太くんたちは皆が飲んだカップをキッチンに運んでね」
歩美が指示を出す。
「はーい」とふたりは返事をした。
昴はそっと体勢を変え、さくらをお姫様だっこした。それを見ていた元太や光彦、歩美が「わぁ…」とため息をもらす。
コナンは昴の少し前を歩いてリビングのドアを開け、そのまま3人はさくらの部屋へと向かった。
「おい、今のヤツ写真撮ればよかったんじゃねーか?」
思い出したように元太が光彦に耳打ちした。
「確かに。でも眠ってしまったさくらさんを運んだだけだと言い逃れは出来ますよ」
「そっか…。難しいなぁ…」
元太はポリポリと頭を掻いた。
「今日はさくらさんも体調良くなかったし、また別の日を狙ったら?」
哀がお菓子を袋に詰めながら、残念そうにしている二人に声をかけた。
「それもそうですね」
ふたりはカップをトレーに載せると、キッチンへと運んだ。
**
工藤邸を出て、5人は再び博士の家に集まる。それぞれで撮った写真を見せ合った。
「元太くんの写真、お菓子の写真ばかりじゃないですか!」
光彦たちはパソコンに取り込まれた写真を見て呆れ顔だ。
「だってよう、イチャイチャってどういうもんだか全然分かんねえし…」
元太はしどろもどろだ。
「次は歩美の見て~」
今度は歩美が撮った写真を皆で覗き込む。
ソファーにならんで座るふたり。昴の視線はさくらの口元。さくらは昴を見上げていた。すぐにでもキスをしそうな雰囲気を醸し出している。それを見てコナンの顔が赤くなった。
「これね、昴のお兄さんが『もう少し水分取ったほうが良いよ』って、さくらお姉さんに声かけてたの。唇が乾いているって言ってたよ」
「え?ああ、水分ね。水分」
なんだ水分か…。と小さく呟いたのがどうやら哀に聞こえたらしい。
「江戸川くんは、一体何だと思ったの?」
意地悪く尋ねてきた。
「いや、俺はてっきり…」
言いかけて動きが止まる。自分は何を言おうとした? コナンは思わず下を向く。
「なんか、ヤラシー顔してるわよ」
哀の視線が冷たい。
「え? マジ? そんな顔してる?」
(小学一年生がそんな顔してたらヤベーだろッ!)
コナンは自分の顔が熱くなるのを感じて、思わず顔を手でおおった。
「ウソよ。何慌ててるの」
サラッと返されて、コナンはさらに顔を赤くした。
「僕が撮ったのはこれです」
今度は光彦の写真をみんなで見た。
キッチンでさくらがチョコを昴に差し出し、昴がそれをつまみ食いしていた。
昴の顔が、今まで見たことがないような笑顔でチョコを口に入れている。さくらもそれを嬉しそうに見ていた。
相手に向けた優しい笑顔は、まるで周りの空気すら柔らかくしているように感じる。
そこにいた全員が、思わず「わぁ…」と感嘆のため息を漏らした。
「昴のお兄さんすごく嬉しそうだね!」
歩美はちょっぴり頬を赤くしている。
「ちょっとこの二人…『好き』がダダ漏れじゃない!」
確かに。哀の言葉は的を得ている。
「ダダモレ?イチャイチャとどう違うんだ?」
こちらは的外れな質問だ。
「昴さんたち…隠しているつもりなのかもしれないけど…」
「隠しきれていないわよ」
コナンが言いかけたところで、哀が間髪入れずに答えた。
「だって、小学生に『イチャイチャ写真』を狙われている時点でね」
「まあ、そうだな」
コナンも大きくうなずいた。
さて、この写真を並べて、いつ恋人と認めさせようか。
「あの子達、まだまだ写真撮るつもりみたいだし…。面白いからもう少しほっといたら?」
哀は意地の悪い笑みを浮かべている。それを見てコナンも「そうだな」と笑った。
==おまけ==
夕食の片付けも済み、りおはソファーのクッションに体を預けるように座っていた。
昴は自分にコーヒー、りおにホットミルクを持ってリビングに入ってくる。
「りお、もう少し食事をとらないと…。せめてミルクは飲んでください」
ため息混じりに声をかけ、カップをりおの前に置く。
りおはカップを横目に見ながら、
「子ども達とのティータイム楽しかったね」とつぶやいた。
「何やら隠し撮りをしていたようですが。なんでしょうね」
コーヒーを一口すすりながら、昴が尋ねた。
「ん~。昴さんの変顔でも撮ってたのかな?」
「りおの変顔かもしれませんよ」
「じゃあ、もっと変な顔しておけば良かった」
「止めて下さい。私が笑ってしまいます」
軽快におしゃべりが続く。
「私、子ども達から今日撮った写真貰おうかな」
「え? どうしてですか?」
「だって、ふたりで撮った写真持ってないなぁと思って…」
「りお」
突然昴の声に怒りの色が滲む。
「え?」
ピッ!
「浮気か?」
その声は赤井だった。
「はぁ??」
「昴とのツーショット写真が欲しいんだろう?」
「え? ああ! ふふふふ。嫉妬ですか? 秀一さんとのツーショット写真も欲しいなぁ~」
「『も』ってなんだ。『も』って」
昴は(声も口調もすでに赤井だが)納得いかないようだ。
(どちらも『あなた』だから欲しいのに)
ブツブツと赤井の声で文句を言っている昴を横目に、さくらはミルクをすすった。
後日…子ども達から写真を見せてもらって二人が大いに焦ったのは、また別の話。