ペリドットとアンバー短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ずいぶんと賑やかですね。宿題は済んだのですか?」
「今日の宿題は二人の恋バナを聞くことだよ」
世良はニヤリと笑う。
「私たちの恋バナにそんなに興味がおありで?」
「もちろん興味津々だよ。さくらさんが秀兄の事を知っているんじゃないかってね」
「え? 秀兄?」
園子は不思議そうに反復する。
「そ。ボクの一番上の兄だよ。…死んじゃったけどな…」
「そのお兄さんをさくらが知っていると?」
昴は人の良さそうな笑みを浮かべたまま、世良に問いかけた。
「ボクが中学の時、駅で秀兄をみつけて後をつけたことがあったんだ。
その時スコッチって呼ばれていた人にベースを教わったんだけど、後から若い女の人が話しかけてきたんだよね」
世良はさくらの表情を伺いながら話を続ける。
「その時のお姉さんの瞳が、さくらさんの瞳とそっくりなんだよ。色素の薄い琥珀色の瞳なんて、日本人には珍しいでしょ?」
「え? そう?」
さくらは驚いた表情を見せる。
「秀兄はFBIだったし、一緒にいた人たちとも知り合いだったようだから、さくらさんも警察関係者か何かで、体調が悪いのもそれに関係してるとか。
そして昴さんもその事情を知ってるんじゃないかってね。
つまり、昴さんとさくらさんは、スーパーで会う前から知り合いだったんじゃないかって思うんだ」
「なるほど。面白い考察ですね」
昴はニッコリ微笑んだ。
「ですが、瞳の色だけでそのお姉さんがさくらだと断定するのは時期尚早でしょう。
確かに珍しいカラーかもしれませんが、色素の薄い茶色の目をした方は結構いますから。
それに、病院に行かなかったのは、さくら本人が『頼れる人もいないし、職場にも迷惑がかかるから病院には行きたくない』と私に伝えたからです。しかし意識を失ってしまったのでどうしようかと思い、博士に連絡して指示を仰いだんですよ」
昴は世良の疑問を一掃するかの如く、当時の状況を説明した。
「まだまだツメが甘いようですよ」
「ちぇっ!」
世良は反論できず舌打ちをした。
「でもさ、2回しか会っていない人と同棲って…それはどうなの?」
園子はずいぶん2回しか会っていない事と、同棲にこだわる。
「ああ、初めは博士のところにお世話になっていたんですよ。少しずつ動けるようになりましたが食事も取れていませんでしたし、自活はまだまだ無理そうだったので。
コナンくんに相談したら、部屋がたくさん空いているから、ルームシェアという形を取ろうということになったんです。
さくらには頼れる身内が近くにいませんでしたので」
「ルームシェア…」
園子がつぶやいた。
「ええ。そうやって一緒に居るうちに恋心が芽生えまして…。良くある話ですよ」
頭を掻きながら昴は笑う。
「そうだったんですね!!」
園子はすっかり昴の恋バナにメロメロだ。
だが和やかになった雰囲気を壊すように、
「ボクは諦めないからな! 絶対真実を突き止めてやる!」
世良が昴に向かって強い口調で言った。
「望むところです」
昴は世良の顔を見てニッコリ笑った。
そんなピリピリした空気を元に戻そうと園子は一計を案じ、ピンッ! とひらめく。
「そうそう! もう一つ聞きたかったんだけど……」
「なあに? 園子ちゃん」
次は何だろうと、さくらは戦々恐々としながら訊ねた。
「お二人はもう一線は越えたの?」
「へ?!」
頬を染めながらも大胆不敵にものすごい質問を投下してきた。
あまりのド直球な質問に、血の気の引いたさくらの顔は青くなる。
昴はそんな質問にも顔色一つ変えず、口を開いた。
「園子さんが言う一線というのはセッ…」
「越えていませんッ!!」
昴の言葉にかぶせるようにさくらが大声で叫んだ。
「断じてそういうことはありません!!」
今度は顔を真っ赤にしてさらに否定を繰り返す。
(さくらさん、最近のJKだってそんな反応しないよ…)
さくらの反応に園子もびっくりした。
昴は内緒話をするように口元に手を当てると小さな声で、
「キスはさせてくれるけど、それ以上はガードが固くてね」
園子たちだけに聞こえるように言った。
だがそれもさくらに聞こえたらしく、
「もう!! 昴さん! 恥ずかしいからやめてッ!!」
茹でダコのようになったさくらは、クルリと向きを変え、バタバタと小走りにダイニングを出て行ってしまった。
***
「な、なんか…悪いことしちゃったね…」
帰り道、蘭は真っ赤になったさくらの顔を思い出し、申し訳ない気持ちになった。
しかし世良は蘭の話など全く聞いておらず、ブツブツと先ほどの推理を練り直しているようだ。
園子は園子で、昴さんとさくらさんのキスってさぁ~と、デレ顔で妄想に勤しんでいる。
「はぁぁ~~……」
自由気ままな親友たちを横目に、蘭は大きなため息をつき家路を急いだ。
==おまけ==
蘭たちが帰り、昴はりおの部屋をノックした。
返事は無いがそっとドアを開ける。
りおはドアに背を向け、枕を抱えてベッドに横になっていた。
「りお…怒ったのですか?」
「怒っています」
「いったい何を怒っているんです? 園子さんに嘘をついたのがいけなかったですか?」
「嘘?」
言葉の意味が分からず、りおは思わず昴の方へ顔を向ける。
「りおとはとっくに一線を越えているし、キスに弱くてすぐグズグズに溶……」
「わ~! わ~!! わ~!!!!」
昴がとんでもないことを言い出したので、慌てて大声で止めた。
「わ、私昴さんとなんか寝てないもん。こんな意地悪する昴さんなんて嫌いよ。私が好きなのは秀一さんなんだから!」
顔を真っ赤にして、りおは涙目になりながら訴える。
それを見て、昴はウイッグを外しチョーカーの電源をOFFにした。
そっとりおに近づく。
「すまん、りお。調子に乗りすぎた。機嫌直してくれ」
りおは顔を背けたままだ。
「りお?」
返事をしてくれないので、赤井はベッドに近づき左の首筋にキスをする。
「ん…」
「こっち向いてくれ」
何度目かのお願いで、ようやく視線があう。
「もう園子ちゃんたちにそういうこと言わない?」
「ああ。お前が嫌がることはしない」
赤井の言葉を聞いて、ようやくりおの表情も緩んだ。
「仲直りのハグをもらっても良いか?」
「うん」
りおは体を起こし、赤井に抱きついた。
「お前はそういう話に弱いんだな…」
りおの背中を抱きながら赤井はつぶやいた。
「むしろ何であんなペラペラ話せるの? お国柄の違いかしら…?」
りおは赤井に抱きついたまま不貞腐れている。
なんでかって? それはりおの反応が面白いから。
顔を赤くしたり青くしたり、とにかくクルクルと表情を変えるりおが可愛かったのだ。
そんな事を言ったら、しばらく口をきいてもらえなそうなので、黙っておこうと赤井は思った。
「真純もなかなか良い推理をしていたな」
「血は争えないわね~。きっとまた推理の披露に来るかもね。
しかし…尊敬する『秀兄』に推理のレクチャーを受けているとは…いつ気付くのかしらね」
「まったくだ」
ふたりは顔を見合わせて笑った。