ペリドットとアンバー短編集
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「なあみんな、今日学校終わったら博士んちに行かねえか?」
学校の昼休み、元太が声をかけた。
「博士んちへ? 良いけどなんでだ?」
コナンが不思議そうに元太を見た。そこへ光彦が不敵な笑みを浮かべて、元太の後ろから姿を現す。これは何か良からぬ事を考えているにちがいない。直感的にコナンは思った。
「ふふふふふ。今日こそ現場を押さえ、真実を突きつけるのです」
光彦の顔が怪しく微笑む。
「?」
何の事を言っているのか全く分からない。
「コナンくん鈍いなぁ」
歩美はあきれ顔だ。
「へ? なにが? 一体何の話をしているんだよ、おめーら」
本当に何の事だか分からないとコナンがジェスチャーも交えて言うと、光彦が咳払いをして説明を始めた。
「良いですか? 今日こそ昴さんとさくらさんが恋人同士であるという、決定的な証拠を入手し、本人達に突きつけ認めさせるのです!」
そう言い放つ光彦の顔はほんのり赤く、目は輝いていた。
「は?」
コナンは目がテンだ。
「ああ、あれね……」
コナンの背後から哀が顔を出す。
「あの子達あんまりしつこいから、先日昴さんに『あなたはさくらさんの何?』って訊ねたら、『仲の良い同居人』って言われた事を伝えたの。
そしたら、もっとこじれてしまって……」
呆れたように説明してくれた。
「『仲の良い同居人』って昴さんが言ったのか?」
「ええ。でも、どう見てもそれ以上の関係でしょう?照れ隠しよ。て・れ・か・く・し!」
(まあ、そうだろうな…)
あとはお互いに危険の中に身を置く立場。関係性に名前をつけないっていうのも、あるかもしれない。
「で、アイツらどうする気なんだ?」
「なんでも、イチャイチャしている現場を写真に撮って、本人達に突きつけるんだとか」
(イチャイチャ…ねぇ)
「まあ、危険があるわけじゃねーし、お手並み拝見と行きますか」
コナンはニッと笑った。
**
放課後、博士の家に集まった少年探偵団。
「まずはどうするんだ?」
元太が光彦に訊ねた。
「お二人は夕方になると花壇の水やりをされますから、まずはそこを狙いましょう」
5人は工藤邸の庭に2人(哀、コナン)と3人(元太、光彦、歩美)に別れ、それぞれスマホやデジカメを片手に、花壇がよく見える所に身を隠した。
しばらく待っていると、昴が先に庭に出てきた。ガーデンチェアを1つ用意して、花壇の近くに置く。再び昴は家の中に戻り、今度はさくらの体を支えるようにして、ふたりで出てきた。
ガーデンチェアにさくらを座らせると、ふたりは二言三言笑顔で話す。その様子を光彦は写真に撮った。
「イチャイチャって感じじゃないですね…。もう少し様子を見ましょう」
(そういや、認知行動療法を再開するって言ってたな。今日は午後一でカウンセリングがあったのか…)
コナンはジッとさくらの表情を伺う。
昴に支えられて歩いていることといい、真っ青な顔色といい、間違いなさそうだ。
やがて昴がホースを伸ばし、水やりを始めた。
さくらはそれを微笑んで見ている。探偵団は固唾を飲んでその様子を観察していた。
水やりが終わって昴はホースを片付け、さくらの方へ向かう。するとさくらが何やら昴と話をしている。
昴が数回うなずいているのが確認できた。
何を話しているのだろうと思っていると突然昴がこちらを向いて、
「少年探偵団のみなさん、一緒にお茶でもどうですか?」と大きな声で誘ってきた。
(やっぱりバレてたか…)
5人はバツが悪そうに物陰から出てきた。
「かくれんぼでもしていたのですか?」という昴の質問に、皆しどろもどろだ。その様子をさくらがニコニコしながら見ていた。
「さくらお姉さん、具合悪いの?」
歩美が心配そうにさくらの元へと歩み寄る。
「ううん。ちょっと疲れが出ちゃって…。でも皆の顔を見てると元気になるよ。一緒にお茶にしましょう」
さくらはゆっくり立ち上がると、歩美と手を繋いで家の中へと入った。
「リビングで待っててね。すぐ用意するわ」
さくらと昴はキッチンへと向かう。
それを見て光彦は、
「元太くん、これはチャンスかもしれません」
カメラを持ってそっとキッチンを覗いた。
さくらがお皿にお菓子を並べ、昴はお茶を入れていた。背の高い昴が、さくらの様子を上から覗き込む。
「全部お皿に乗りました?」
お菓子の量が多かったので、残ったら別の容器に…と提案しているようだ。
「あ~残念。あと1つだけ乗りませんね。昴さん、お味見にどうぞ」
さくらはチョコを1粒指でつまむと、昴の口元へ差し出す。
『チャンス!』
光彦はカメラを構える。
「ぱくっ!」
さくらの手から昴がチョコをつまみ食いした。
『パシャ! パシャ!』
狙い通りのベストショットが撮れる。
『やった!』
光彦は小さくガッツポーズをすると、二人にバレないようにリビングへと退散した。
それをチラリと横目で見ながら昴はチョコレートをもぐもぐしている。
「ん! おいしーですよ」
「光彦くんも良い写真が撮れたようよ」
光彦と元太が居なくなった出入り口を見つめ、さくらは「ふふふ」と笑った。
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