降谷さんと義娘【お父さんはトリプルフェイス】
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授業参観のお知らせから早くも今日が提出日。最近生活リズムが真反対なのに加えて、家に帰ってくるほうが珍しい状況で話せる時間があるわけもなく、LIMEで参加の有無を聞いた。
返ってきた返事は’’難しい’’。なにがあろうと毎年参加していて、今年も参加してくれるものだと思っていたばかりに、少しばかり寂しくなった。聞くところによると探偵業の方で仕事が入ってしまったらしい。残念ではあるがお父さんの仕事は人一倍大変だろうし高校生にもなって授業参加に来てほしいとは強く思わなかった。
配布されていた紙の不参加という項目に丸を付け帰りの支度を始める。どうせ今日も帰ってこないだろうし夕食も自分一人で摂ることになるだろう。下校途中にあるコンビニエンスストアでお世話なろうと決めお財布の中を確認する。折り畳み財布の中には同年代の子たちと比べると多めのお金が入っている。なにかあった時のためにと無理やり多くのお小遣いを毎月貰っているものの特に使い道などなく福沢、樋口、野口が変わらず鎮座している。何度か減額するように交渉もしてみたが、結果変わることはなかった。
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空調の効いた店内は快適でいつまでもこの空間の中で過ごしたいと思ってしまう。やる気のない店員さんの入店挨拶を聞きお惣菜コーナーまで一直線。思った以上に多くの種類が残っていて優柔不断がここで発揮される。お惣菜コーナーを見る他のお客さんの迷惑にならないよう出来るだけ端に寄って考える。スパゲティー、ハンバーグ、それともここは豪華に幕の内弁当か?いや一品ずつのものを何種類か買ってみるとか。埒があかないし全部食べるわけにもいかないので心の中で、どれにしようかな天の神様の言うとおり。と唱える。神様に選ばれたそぼろご飯とデザートにプリンが食べたかったので手に取ってお会計。
間延びしたお礼を言う店員さんから商品を受け取り、お腹の虫が鳴りそうだったのでいつもより早足で自宅に向かった。
夜にさしかかっている空は紫とも藍色とも取れる不思議な色をしている。人によって開拓された日本の都心は夜でも煌々と輝いていて日々の仕事に疲れているサラリーマン、楽しそうに歩いている学生に口げんかをするカップルそれぞれを平等に照らしている。人の合間を縫って歩道を抜けていくと見知った後姿。外国人を思わせる金髪にスタイルの良い長身、加えて褐色寄りの肌そして見覚えのある服。きっと、いや絶対お父さんだ。日本どこを探してもお父さんの特徴を持つ人はそうそういないだろう。人の多さに加えて歩くスピードが速いお父さんとの距離は徐々に離れていってしまう。
姿が見えるか見えないかの所でお父さんは立ち止まり歩道側に停車していた車に乗り込んだようだった。目がくらむようなハイビームが光ったかと思えばこちら側に走ってくる。誰と一緒にいるのか気になって運転席を見えばお父さんと同じ髪の長い金髪の女性が同乗していて、その唇には毒々しい程の真っ赤なルージュが引かれていた。運転席側に体を近づけてすごく親しげな様子で談笑している。もしかしてお付き合いしている人だろうか、それとも仕事上繋がっている人なのだろうか。正解を知れる訳でもないのに、脳内で色々な憶測が飛び交い答えを求めている。
「う、そ。」
……依頼人であってくれという願いは虚しく過ぎ去っていく車は確かに蛍光の文字が輝くホテルに入っていく。
―――ああ、せめて付き合っている人がいると教えてくれればよかったのに。
気がつけば玄関の前に立っていた。ここまでどうやって帰ってきたかもあまり覚えていない。もちろん家の中は暗く誰もいない。朝慌てていて若干荒れている部屋もなんら変化ない。きっと今日も帰らなかったのだろう。静かに空間の中で様々な感情が溢れ出す。
「ふっ、·····うぅ·····。」
今まで梓さんと幸せになればいいとか、お父さんを想ってくれる人がいいとか散々自分の想いを抑えてきた。だけどどうだろう、実際に誰かと付き合っているという事実を突きつけらた時、私がお父さんと、透さんと、零さんと幸せになりたいと心が叫ぶ。今まで我慢してきた想いが、感情が、頬を生温い線となって流れ落ちていく。どれだけ涙を流したって、あの時のようにお父さんは背中を撫でてはくれない、抱きしめてもくれない。私の心を占めるのは寂しさ、孤独だけだった。
食べるのが楽しみだったお弁当やプリンだって今はどうでもいい。食べる気もおきず袋のまま冷蔵庫へと押し込んだ。脱衣所で服を脱ぎ捨て風呂場にはいる。部屋の中とはまた違う独特の空気が肌を包み込みシャワーを捻れば暖かいお湯が体の汚れを流した。止まりかけていたはずの涙なのか、はたまた頭から滴るシャワーのお湯が顔を濡らしていく。ああ、こんなに後悔するなら想いを伝えるだけでもすればよかった。娘という立場に甘んじて特別な特等席だと、タカを括っていた罰が今になって帰ってきたのだろうか。さっき見た情景が脳裏に浮かぶ。今日授業参観に来れなかったのは仕事のせいではなく、それよりも優先すべき人がいたからだ。これからもきっとお父さんの中の1番にはなれない。義娘は所詮義娘なのだ。
目が覚めればいつもの天井が映りなんだかんだで安心する。いつの間にかこの場所が私の帰る場所になっていたのだと気づかされた。目も重たいし鏡を見なくとも腫れているのが分かる。チクタクと時間を刻む時計はまだ朝が明けたばかりの時間で、起きるのにはまだまだ早い。目を瞑って布団を被ってみても一向に眠れない。体は疲労を隠せないのだろう、ベットから起き上がる気にはなれなかった。だが少し寝たことで案外頭はスっと冴えていて、感情に任せて自暴自棄になるような事はもうなく、毛布にくるまって本心の自分と会話が出来る余裕さえ生まれていた。
今まで娘として父と接すように心がけてきた。お父さんに想いを寄せる人と結ばれて私の知らないところでこれから幸せになってほしいと願うふりをしてきた。でも実際その光景を目の前にすれば偽っていた心は簡単に剥がれ落ちたのだった。本当は私がお父さんを幸せにしたい。愛し、そして愛されたいと強く自覚してしまったと同時に娘という立場であぐらをかいていた自分を殴りたくなった。想いを告げる勇気すらないくせに人に父を幸せにして欲しいだなんて人任せにも程がある。
今私にできることはなんなんだろう。両親を亡くし伝えたいことを伝えられず今生の別れをしてしまった私が1番後悔したことはなにか。素直なありのままの気持ちをストレートにぶつけることだったのではないか?今回も伝えきれずに終わってしまうのか?そんなの嫌だ。伝えたところで返事の答えなんて分かりきっている、百も承知だ。でも、それでも、本当の私の事を知って欲しい。距離を置かれたって仕方ない、私は言わない後悔よりいう後悔を選択する。
返ってきた返事は’’難しい’’。なにがあろうと毎年参加していて、今年も参加してくれるものだと思っていたばかりに、少しばかり寂しくなった。聞くところによると探偵業の方で仕事が入ってしまったらしい。残念ではあるがお父さんの仕事は人一倍大変だろうし高校生にもなって授業参加に来てほしいとは強く思わなかった。
配布されていた紙の不参加という項目に丸を付け帰りの支度を始める。どうせ今日も帰ってこないだろうし夕食も自分一人で摂ることになるだろう。下校途中にあるコンビニエンスストアでお世話なろうと決めお財布の中を確認する。折り畳み財布の中には同年代の子たちと比べると多めのお金が入っている。なにかあった時のためにと無理やり多くのお小遣いを毎月貰っているものの特に使い道などなく福沢、樋口、野口が変わらず鎮座している。何度か減額するように交渉もしてみたが、結果変わることはなかった。
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空調の効いた店内は快適でいつまでもこの空間の中で過ごしたいと思ってしまう。やる気のない店員さんの入店挨拶を聞きお惣菜コーナーまで一直線。思った以上に多くの種類が残っていて優柔不断がここで発揮される。お惣菜コーナーを見る他のお客さんの迷惑にならないよう出来るだけ端に寄って考える。スパゲティー、ハンバーグ、それともここは豪華に幕の内弁当か?いや一品ずつのものを何種類か買ってみるとか。埒があかないし全部食べるわけにもいかないので心の中で、どれにしようかな天の神様の言うとおり。と唱える。神様に選ばれたそぼろご飯とデザートにプリンが食べたかったので手に取ってお会計。
間延びしたお礼を言う店員さんから商品を受け取り、お腹の虫が鳴りそうだったのでいつもより早足で自宅に向かった。
夜にさしかかっている空は紫とも藍色とも取れる不思議な色をしている。人によって開拓された日本の都心は夜でも煌々と輝いていて日々の仕事に疲れているサラリーマン、楽しそうに歩いている学生に口げんかをするカップルそれぞれを平等に照らしている。人の合間を縫って歩道を抜けていくと見知った後姿。外国人を思わせる金髪にスタイルの良い長身、加えて褐色寄りの肌そして見覚えのある服。きっと、いや絶対お父さんだ。日本どこを探してもお父さんの特徴を持つ人はそうそういないだろう。人の多さに加えて歩くスピードが速いお父さんとの距離は徐々に離れていってしまう。
姿が見えるか見えないかの所でお父さんは立ち止まり歩道側に停車していた車に乗り込んだようだった。目がくらむようなハイビームが光ったかと思えばこちら側に走ってくる。誰と一緒にいるのか気になって運転席を見えばお父さんと同じ髪の長い金髪の女性が同乗していて、その唇には毒々しい程の真っ赤なルージュが引かれていた。運転席側に体を近づけてすごく親しげな様子で談笑している。もしかしてお付き合いしている人だろうか、それとも仕事上繋がっている人なのだろうか。正解を知れる訳でもないのに、脳内で色々な憶測が飛び交い答えを求めている。
「う、そ。」
……依頼人であってくれという願いは虚しく過ぎ去っていく車は確かに蛍光の文字が輝くホテルに入っていく。
―――ああ、せめて付き合っている人がいると教えてくれればよかったのに。
気がつけば玄関の前に立っていた。ここまでどうやって帰ってきたかもあまり覚えていない。もちろん家の中は暗く誰もいない。朝慌てていて若干荒れている部屋もなんら変化ない。きっと今日も帰らなかったのだろう。静かに空間の中で様々な感情が溢れ出す。
「ふっ、·····うぅ·····。」
今まで梓さんと幸せになればいいとか、お父さんを想ってくれる人がいいとか散々自分の想いを抑えてきた。だけどどうだろう、実際に誰かと付き合っているという事実を突きつけらた時、私がお父さんと、透さんと、零さんと幸せになりたいと心が叫ぶ。今まで我慢してきた想いが、感情が、頬を生温い線となって流れ落ちていく。どれだけ涙を流したって、あの時のようにお父さんは背中を撫でてはくれない、抱きしめてもくれない。私の心を占めるのは寂しさ、孤独だけだった。
食べるのが楽しみだったお弁当やプリンだって今はどうでもいい。食べる気もおきず袋のまま冷蔵庫へと押し込んだ。脱衣所で服を脱ぎ捨て風呂場にはいる。部屋の中とはまた違う独特の空気が肌を包み込みシャワーを捻れば暖かいお湯が体の汚れを流した。止まりかけていたはずの涙なのか、はたまた頭から滴るシャワーのお湯が顔を濡らしていく。ああ、こんなに後悔するなら想いを伝えるだけでもすればよかった。娘という立場に甘んじて特別な特等席だと、タカを括っていた罰が今になって帰ってきたのだろうか。さっき見た情景が脳裏に浮かぶ。今日授業参観に来れなかったのは仕事のせいではなく、それよりも優先すべき人がいたからだ。これからもきっとお父さんの中の1番にはなれない。義娘は所詮義娘なのだ。
目が覚めればいつもの天井が映りなんだかんだで安心する。いつの間にかこの場所が私の帰る場所になっていたのだと気づかされた。目も重たいし鏡を見なくとも腫れているのが分かる。チクタクと時間を刻む時計はまだ朝が明けたばかりの時間で、起きるのにはまだまだ早い。目を瞑って布団を被ってみても一向に眠れない。体は疲労を隠せないのだろう、ベットから起き上がる気にはなれなかった。だが少し寝たことで案外頭はスっと冴えていて、感情に任せて自暴自棄になるような事はもうなく、毛布にくるまって本心の自分と会話が出来る余裕さえ生まれていた。
今まで娘として父と接すように心がけてきた。お父さんに想いを寄せる人と結ばれて私の知らないところでこれから幸せになってほしいと願うふりをしてきた。でも実際その光景を目の前にすれば偽っていた心は簡単に剥がれ落ちたのだった。本当は私がお父さんを幸せにしたい。愛し、そして愛されたいと強く自覚してしまったと同時に娘という立場であぐらをかいていた自分を殴りたくなった。想いを告げる勇気すらないくせに人に父を幸せにして欲しいだなんて人任せにも程がある。
今私にできることはなんなんだろう。両親を亡くし伝えたいことを伝えられず今生の別れをしてしまった私が1番後悔したことはなにか。素直なありのままの気持ちをストレートにぶつけることだったのではないか?今回も伝えきれずに終わってしまうのか?そんなの嫌だ。伝えたところで返事の答えなんて分かりきっている、百も承知だ。でも、それでも、本当の私の事を知って欲しい。距離を置かれたって仕方ない、私は言わない後悔よりいう後悔を選択する。