本編
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外からチュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。遮光カーテンで日光をシャットアウトしているものの眠りが浅かったのか寝てから2時間程度で目が覚めてしまった。もう一度寝れないものかと何度か寝返りを打つも目は冴えたまま。仕方なくベッドから抜け出しミルクを温めココアを淹れた。
「うーん、おいしくない…。」
ポアロで飲むココアはすごく美味しいというのに自分で淹れたものはまるで美味しくない。薬剤の調合は得意なのにこういう家庭的な方面はからっきしだ。まだ湯気の立つマグカップを手に研究椅子に体育座りする。
パソコンの電源をつけると起動音とともに立ち上がる。さすがスペックが高いだけあって起動までの速さもけた違いだ。連絡はないかとメール受信ボックスを開くと厄介な人物からのメッセージが入っていた。
「はあ…。うそー…またジンさんからじゃん。絶対ろくな事ないわ」
メッセージは10時に研究室に行く、とそれだけ。ジンらしいというばそれまでだが感情が読み取れない文面にため息が重なった。
人間嫌なことが予定にあると、それまでの時間経過が早く感じるが、本当にあっという間だった。2度のノックの後に返事を待たずして開いた扉に舌をだす。
見られたらお説教なので早々に舌をしまい若干の笑みを浮かべる。
「ようこそいらっしゃいました。待ってましたよ。」
務めて明るい声でお出迎えするとため息が返ってきた。いや、つきたいのは私なのだが。
「無理に笑うな。不細工に拍車がかかる。」
無礼にも程がある目の前の男を心の中で殴るだけにした私を誉めたたえてほしい。自分の顔が整っているからって調子に乗っていらっしゃる。
「で、何か御用があったんですよね?」
「ああ。今回も任務を頼みたい。」
「……嫌と言っても無駄なんでしょ?」
「よくわかってるな。そういうことだ、お前に拒否権はない。」
どうやらこの組織内において私の人権は無くなってしまったようです。あくまで研究のみの従事という約束だったのに話が違うぞ。契約違反で訴えたいところだ。まあ、こんな違法だらけの組織に裁判もクソもないのだが。
「とりあえず…話は聞きますよ。」
「フンッ。任務内容は前回と同じだ。バーボンに不審な動きがないか見てもらうだけでいい。お前はなにもせずヤツの横にいるだけの仕事だ。」
耳を疑った。そもそも’’だけでいい’’とはどういうことなのか。さも簡単なお仕事です、といった口ぶりだが前回は命を張った任務だったし、おかげで寿命は確実にすり減った。そして何より嫌なのはバーボンさんと顔を合わせなくてはいけないということ。好意を寄せていた相手が思いもよらない人物だったという事実を未だに受け止め切れていないのにあんまりではないか。
「それって私じゃなきゃダメなんですか?もっと…適役な方が他にいると思いますけど。」
「俺だって別に誰でもいいと思ってるが、今回の任務はバーボン直々の指名だ。相棒はお前がいいんだとよ。」
「えっ…と、正直私には分かりません。こんな素人と同行なんてどう考えても足手まといですし、それを補えるほどの特化した能力も持ち合わせてませんよ?」
「俺もお前に同感だ。アイツが考えてることはさっぱり分からねえ。ま、そういうことだ、よろしく頼む。」
「えっ…あっ!ちょっと待ってください!」
早々に用件だけ伝えると面倒くさそうに研究室を後にしたジンさん。お茶だって用意したのにもったいない。無理やり進められた任務依頼への腹立たしさを押し込めるようにジンさんに淹れたお茶を一気に飲み干した。
自分のお茶も飲んでいたからかお腹がたぷたぷしている。それもこれも全部ジンさんのせいだ!
今度は思いっきりジンさんの出て行った方向に舌を出してやった。ま、結局本人に向かっては出来ないんだけどね。
人がいなくなっいてシンッと静まり返った部屋の中でさっきの言葉を思い返した。’’バーボン直々の指名’’。前回、何もしていないし役に立つどころか足手まといだった私。指名されるような心あたりもない。きっと今回の任務も(強制的に)行くことになるだろうし、また顔を合わせた時にでもワケを聞くのが早いだろう。あ、またベルに変装頼まなきゃ。
「よしっ!帰りますか!」
昨日徹夜でした研究もキリのいいところだったし簡単に身なりを整えて鞄に最低必需品を詰めて自宅を目指す。
***
しばらく家を空けていたためか全く人の生活痕を残さない部屋に小さくただいま、と呟き入る。もちろん返事など帰ってこないのだけれど、いつからの癖なのだから仕方がない。
帰宅途中に簡単なお惣菜も買い、今日は特に家を出る予定もないので、体の汚れを落とすためざっとシャワーに入った。お風呂上りにゆっくりテレビを見ようかとも思ったが、個人的な研究である幼児後退化の薬が完成の一歩手前なのでそちらを着手しよう部屋着に手を伸ばした。パジャマの上から羽織る白衣などこの上なく格好つかないが誰が見るわけというでもないので気にすることはない。
自室の研究室に念のため備え付けた鍵穴にキーを差し込み開錠する。
棚の中には研究に使うための薬品が多数並べられていて、我ながら病院みたいな匂いだと思ってしまう。
「うん、結果は良好だね」
幼児後退薬の試作品が出来上がり適当な空き瓶に薬をつめる。仮にも完成したのだが、問題は臨床試験が出来ないということ。長期間自宅を開けていたためモルモットやネズミは1匹すらいない。この際だからと組織の研究室に持ち込んでしまった。薬をアジトに持ち込むのは難しいのでまた新しく実験体を購入するしかない。特別、反動物実験的な強い思想はないが、動物は好きなので命を使って実験をしたくないのだが、実際にこの薬が使われるかもしれないのでそんなことは言っていられない。
多種多様な薬品が眠っている棚に薬をしまい一息ついた。
私が組織に入った時から、ベルモットの紹介で仲良くさせて貰っているシェリーこと志保ちゃんの為にもいち早く体が元に戻る薬を作る必要がある。
個人のメールアドレスから志保ちゃんに薬の進捗状況を送ると直ぐに返信が届いた。直接会って話がしたいということで次の休みに阿笠博士の研修所にお邪魔することになった。あそこへは志保ちゃんが薬で小さくなって保護されて以来行っていない。天才的な発明をするのに頓珍漢なクイズを出して笑わせてくれる阿笠博士。彼は発明家であるが大きく考えると同じ研究者でもあるのでぜひお会いして情報交換をしたい。そう思えば次の休みがとても楽しみになった。
「うーん、おいしくない…。」
ポアロで飲むココアはすごく美味しいというのに自分で淹れたものはまるで美味しくない。薬剤の調合は得意なのにこういう家庭的な方面はからっきしだ。まだ湯気の立つマグカップを手に研究椅子に体育座りする。
パソコンの電源をつけると起動音とともに立ち上がる。さすがスペックが高いだけあって起動までの速さもけた違いだ。連絡はないかとメール受信ボックスを開くと厄介な人物からのメッセージが入っていた。
「はあ…。うそー…またジンさんからじゃん。絶対ろくな事ないわ」
メッセージは10時に研究室に行く、とそれだけ。ジンらしいというばそれまでだが感情が読み取れない文面にため息が重なった。
人間嫌なことが予定にあると、それまでの時間経過が早く感じるが、本当にあっという間だった。2度のノックの後に返事を待たずして開いた扉に舌をだす。
見られたらお説教なので早々に舌をしまい若干の笑みを浮かべる。
「ようこそいらっしゃいました。待ってましたよ。」
務めて明るい声でお出迎えするとため息が返ってきた。いや、つきたいのは私なのだが。
「無理に笑うな。不細工に拍車がかかる。」
無礼にも程がある目の前の男を心の中で殴るだけにした私を誉めたたえてほしい。自分の顔が整っているからって調子に乗っていらっしゃる。
「で、何か御用があったんですよね?」
「ああ。今回も任務を頼みたい。」
「……嫌と言っても無駄なんでしょ?」
「よくわかってるな。そういうことだ、お前に拒否権はない。」
どうやらこの組織内において私の人権は無くなってしまったようです。あくまで研究のみの従事という約束だったのに話が違うぞ。契約違反で訴えたいところだ。まあ、こんな違法だらけの組織に裁判もクソもないのだが。
「とりあえず…話は聞きますよ。」
「フンッ。任務内容は前回と同じだ。バーボンに不審な動きがないか見てもらうだけでいい。お前はなにもせずヤツの横にいるだけの仕事だ。」
耳を疑った。そもそも’’だけでいい’’とはどういうことなのか。さも簡単なお仕事です、といった口ぶりだが前回は命を張った任務だったし、おかげで寿命は確実にすり減った。そして何より嫌なのはバーボンさんと顔を合わせなくてはいけないということ。好意を寄せていた相手が思いもよらない人物だったという事実を未だに受け止め切れていないのにあんまりではないか。
「それって私じゃなきゃダメなんですか?もっと…適役な方が他にいると思いますけど。」
「俺だって別に誰でもいいと思ってるが、今回の任務はバーボン直々の指名だ。相棒はお前がいいんだとよ。」
「えっ…と、正直私には分かりません。こんな素人と同行なんてどう考えても足手まといですし、それを補えるほどの特化した能力も持ち合わせてませんよ?」
「俺もお前に同感だ。アイツが考えてることはさっぱり分からねえ。ま、そういうことだ、よろしく頼む。」
「えっ…あっ!ちょっと待ってください!」
早々に用件だけ伝えると面倒くさそうに研究室を後にしたジンさん。お茶だって用意したのにもったいない。無理やり進められた任務依頼への腹立たしさを押し込めるようにジンさんに淹れたお茶を一気に飲み干した。
自分のお茶も飲んでいたからかお腹がたぷたぷしている。それもこれも全部ジンさんのせいだ!
今度は思いっきりジンさんの出て行った方向に舌を出してやった。ま、結局本人に向かっては出来ないんだけどね。
人がいなくなっいてシンッと静まり返った部屋の中でさっきの言葉を思い返した。’’バーボン直々の指名’’。前回、何もしていないし役に立つどころか足手まといだった私。指名されるような心あたりもない。きっと今回の任務も(強制的に)行くことになるだろうし、また顔を合わせた時にでもワケを聞くのが早いだろう。あ、またベルに変装頼まなきゃ。
「よしっ!帰りますか!」
昨日徹夜でした研究もキリのいいところだったし簡単に身なりを整えて鞄に最低必需品を詰めて自宅を目指す。
***
しばらく家を空けていたためか全く人の生活痕を残さない部屋に小さくただいま、と呟き入る。もちろん返事など帰ってこないのだけれど、いつからの癖なのだから仕方がない。
帰宅途中に簡単なお惣菜も買い、今日は特に家を出る予定もないので、体の汚れを落とすためざっとシャワーに入った。お風呂上りにゆっくりテレビを見ようかとも思ったが、個人的な研究である幼児後退化の薬が完成の一歩手前なのでそちらを着手しよう部屋着に手を伸ばした。パジャマの上から羽織る白衣などこの上なく格好つかないが誰が見るわけというでもないので気にすることはない。
自室の研究室に念のため備え付けた鍵穴にキーを差し込み開錠する。
棚の中には研究に使うための薬品が多数並べられていて、我ながら病院みたいな匂いだと思ってしまう。
「うん、結果は良好だね」
幼児後退薬の試作品が出来上がり適当な空き瓶に薬をつめる。仮にも完成したのだが、問題は臨床試験が出来ないということ。長期間自宅を開けていたためモルモットやネズミは1匹すらいない。この際だからと組織の研究室に持ち込んでしまった。薬をアジトに持ち込むのは難しいのでまた新しく実験体を購入するしかない。特別、反動物実験的な強い思想はないが、動物は好きなので命を使って実験をしたくないのだが、実際にこの薬が使われるかもしれないのでそんなことは言っていられない。
多種多様な薬品が眠っている棚に薬をしまい一息ついた。
私が組織に入った時から、ベルモットの紹介で仲良くさせて貰っているシェリーこと志保ちゃんの為にもいち早く体が元に戻る薬を作る必要がある。
個人のメールアドレスから志保ちゃんに薬の進捗状況を送ると直ぐに返信が届いた。直接会って話がしたいということで次の休みに阿笠博士の研修所にお邪魔することになった。あそこへは志保ちゃんが薬で小さくなって保護されて以来行っていない。天才的な発明をするのに頓珍漢なクイズを出して笑わせてくれる阿笠博士。彼は発明家であるが大きく考えると同じ研究者でもあるのでぜひお会いして情報交換をしたい。そう思えば次の休みがとても楽しみになった。