本編
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「おじゃまします。」
朝から元気のいい零くんは驚異的な目覚めの良さで私の事を起こしてくれる目覚まし時計係となっていた。小さくなった初日や翌日は緊張していたのか借りてきた猫のようだったが今では本来の彼が徐々に出てきている。安室さんとしての彼は物腰が柔らかく万人に好かれるといった印象をもつが、バーボンさんはその逆に位置していると思う。自信家。愛想は良くないし、全てが秘密めいている感じだった。どちらが本当の彼なのか知る由もないが目の前にいる幼い彼は、少しやんちゃでそれでいてどこか大人びているが、それでも年相応といった印象を持った。
手を握っている零くんも私に倣って阿笠博士や哀ちゃんに挨拶をする。うん、出来た子である。
雑談もそこそこに早速本題に入る。
「安室さんに間違えて薬を飲ませたって所までは言ったよね。·····実は身体が小さくなっただけじゃなくて記憶も無くしてるの。いや無くなったというより身体に合わせて元に戻ったと言った方がいいかな?」
「·····副作用、ってわけね。」
「そうなるね。だから哀ちゃんに彼の戸籍やこれまでの記録を作って欲しい。じゃないと学校にも病院にもいけない」
「皆まで言わないでいいわ。こちらでやっとくから。でもすでにある彼の名前では難しい。私の灰原哀や工藤くんの江戸川コナンは偽名なのは知ってるわよね?」
「ええ。だから名前はみょうじ零にしてほしい。」
「素敵な名前ね。後で生年月日、血液型の情報をもらえる?作れるまで1週間時間が欲しいわ。」
もちろん首を縦に降った。私一人では彼の戸籍すら用意できないわけで。心強い友達を友達を持って本当によかった。
「零くん、長い間ごめんね。博士も見てくれてありがとうございました。改めて紹介します!彼女は灰原哀ちゃん。」
ここにきて初めて会った同年代の子に若干テンションが上がっているようで喜んで挨拶をしている。小さくなったことで、整った顔立ちに幼さが加わり控えめに言って天使である。哀ちゃんは中身が元のままだからなんともないのだろうがこれは同級生にかなりモテると思う。
そう思うと母としての母性がそうさせているのか、彼のことが好きだった気持ちなのか定かではないが胸の当たりがモヤっとする。
小さな子供に対してちっぽけな嫉妬心を抱くいい大人な自分に呆れしかない。
「よし、いつまでもここにいるわけにはいけないしもう帰ろっか?哀ちゃん、博士ありがとうございました。」
「いいんじゃよ、それより零くんはすごいの。ワシ特製のとっておき謎解きをいとも簡単に解いておる。」
「えっと、ありがとうございます?」
私のことを褒めたわけじゃないけどまるで私が褒められたみたいに嬉しい。横で手を握っている零くんを見ると心なしか誇らしげに見える。
阿笠邸ではちゃっかりお昼ご飯をごちそうになってしまい、後にする頃は夕方を迎えようとしていた。博士は謎解きを真剣に答える零くんをずっと離さなかったがこれ以上長居するわけにもいかず買い物があるからと言って後にした。
零くんの戸籍の準備や学校への編入手続きの書類はまた郵送してくれるようなのでそれまでは零くんとの思い出をつくろう。
「零くん、どこか行きたいところない?学校への編入手続きが出来るまで時間あるからさ」
「行きたい所…あっ!じゃあ水族館に行きたい!俺行ったことなくて気になってたんだ。」
「水族館、いいねえ!じゃあ水族館に行こう。」
***
「いただきます!」
「どうぞ召し上がれ!」
パチンと手を合わせた彼に私もあわせて返事をする。零くんが家に来てから確実にセロリ料理のバリエーションが多くなったことは確かで、今日も食卓にはセロリが並んだ。私自身元々得意ではなかったものの食べていくうちになんだかんだ好きになっている。
でも本当に良かった。零くんの戸籍が作れたことで生活の幅が広がる。ちょっと、いやかなり犯罪の匂いがするがこれも生きていくためだ、仕方がない。
「今日帰る時言ってた水族館のことだけど。急ではあるんだけど明日なんてどうかな?·····明後日に翻訳書類が送られてくるから仕事が詰まりそうで。」
「うん、大丈夫。すっごく楽しみだね!」
「よかった。じゃあ明日9時に家を出るから頑張って早起きしてね·····って零くんはいつも早起きなんだよね。私が頑張らなくちゃだ。」
「ふふっ大丈夫だよ。もし寝坊しそうでもなまえお姉さんは僕が起こすから。」
「うう····、ありがとね。頑張って起きます。」
歳の話はしたくないが、三十路手前にして実は水族館に行くのが楽しみでワクワクしている。思い返せば学校行事以外で行ったことが無いかもしれない。きっと零くんよりもソワソワしていることだろう。
食事後お風呂が沸いたアナウンスがリビングまで響き入浴の準備をする。
「零くんお風呂に行くから準備してね。」
「う、うん。」
身体が縮んで記憶もなくした日、ガラリと変わった環境に怯えているようだったので、子供である前に男の子だしどうかな、とは思ったけど、それより安心させたい一心で一緒に入浴した。
本当にちびっ子なら気にしないが仮にも私と同世代だし、顔見知りだし、なんなら好意を抱いてたワケだから抵抗は少なからずあった。苦肉の策として自分の体と零くんにタオルを巻き付けている。
それから何故か零くんとのお風呂が習慣づいてしまいこうして毎日一緒に入っているというわけだ。
体を洗う時はもちろん身体に巻つけたタオルを取らないといけないわけで。いくらなんでもじっと見ているわけもいかず遠くを見つめてその場をやり過ごしているのだ。
「零くん先に入っててくれる?もうちょっとで洗い物終わるから終わったら行くね。」
「うん、分かった。」
ちゃっちゃと洗い物を終わらせて脱衣所で身体にタオルを巻いているとお風呂場からかなり大きな音が響き渡った。
まるでお風呂場で盛大にコケた時のような·····コケた?
「·····零くん!!」
声をかける余裕などなく、躊躇なく扉を開けると頭を痛そうに抑えている零くんの姿が目に入る。
「何があったの?!頭見せて!!」
「ウッ·····」
状況を確認しようと抑えていた手を退け患部を診ると赤くなっていて、出血はしていないが若干腫れている。
「今気分が悪いとかない?打ち方によっては頭の中で内出血してるかもしれない。どうしてコケたの?」
「何故って…今の状況にびっくりして足を滑らした········っ!なまえさん!」
「びっくりしたとは·····?うん、そうだけど。」
これでもかというほど目を見開き私を見つめる零くん。しばらくするといつもの彼に戻ったが、と同時に若干頬を染めている。言いにくそうに私をチラチラ見ているが目が合うわけでもなく。嫌な予感がしてゆっくりと下を向くと。
「う、わあっ!ごめん!」
焦っていたから上手く巻けなかったタオルは無惨にも役割を果たしていなかった。光の速さで元の位置に戻したが完全に見られてしまった。明らかに意識している零くんの様子にさらに居た堪れない気持ちになってきた。
「急いでたから、つい····。」
「いや、いい。気にするな。」
短いやり取りだったけどなんとなく違和感が生まれる。なんだろう、いつもと違う?
「···あっ!零くんの口調がいつもと違うんだ!」
「···っ!い、いやあ···そ、そうかなあ?気の所為だよ!気の所為!」
軽い気持ちで言ったのだけどそんなに否定されるとは思わなかった。
そういえばなまえお姉さん呼びからなまえさんになってたし。まあ、兎にも角にも零くんが大怪我がなくてよかった。
戸籍も何もない状況で病院を使うのは難しいだろうし、いくら子供でもバーボンの面影がある状態で組織に診てもらうのはあまりにもリスキーだ。
「零くんまだお風呂に入る?」
「いや、もう十分、です。」
そそくさとお風呂を後にしたが、私が入浴している間に容態が急変してしまっても困る。今日はお風呂に浸からずシャワーだけにしようと急いで髪を洗った。
朝から元気のいい零くんは驚異的な目覚めの良さで私の事を起こしてくれる目覚まし時計係となっていた。小さくなった初日や翌日は緊張していたのか借りてきた猫のようだったが今では本来の彼が徐々に出てきている。安室さんとしての彼は物腰が柔らかく万人に好かれるといった印象をもつが、バーボンさんはその逆に位置していると思う。自信家。愛想は良くないし、全てが秘密めいている感じだった。どちらが本当の彼なのか知る由もないが目の前にいる幼い彼は、少しやんちゃでそれでいてどこか大人びているが、それでも年相応といった印象を持った。
手を握っている零くんも私に倣って阿笠博士や哀ちゃんに挨拶をする。うん、出来た子である。
雑談もそこそこに早速本題に入る。
「安室さんに間違えて薬を飲ませたって所までは言ったよね。·····実は身体が小さくなっただけじゃなくて記憶も無くしてるの。いや無くなったというより身体に合わせて元に戻ったと言った方がいいかな?」
「·····副作用、ってわけね。」
「そうなるね。だから哀ちゃんに彼の戸籍やこれまでの記録を作って欲しい。じゃないと学校にも病院にもいけない」
「皆まで言わないでいいわ。こちらでやっとくから。でもすでにある彼の名前では難しい。私の灰原哀や工藤くんの江戸川コナンは偽名なのは知ってるわよね?」
「ええ。だから名前はみょうじ零にしてほしい。」
「素敵な名前ね。後で生年月日、血液型の情報をもらえる?作れるまで1週間時間が欲しいわ。」
もちろん首を縦に降った。私一人では彼の戸籍すら用意できないわけで。心強い友達を友達を持って本当によかった。
「零くん、長い間ごめんね。博士も見てくれてありがとうございました。改めて紹介します!彼女は灰原哀ちゃん。」
ここにきて初めて会った同年代の子に若干テンションが上がっているようで喜んで挨拶をしている。小さくなったことで、整った顔立ちに幼さが加わり控えめに言って天使である。哀ちゃんは中身が元のままだからなんともないのだろうがこれは同級生にかなりモテると思う。
そう思うと母としての母性がそうさせているのか、彼のことが好きだった気持ちなのか定かではないが胸の当たりがモヤっとする。
小さな子供に対してちっぽけな嫉妬心を抱くいい大人な自分に呆れしかない。
「よし、いつまでもここにいるわけにはいけないしもう帰ろっか?哀ちゃん、博士ありがとうございました。」
「いいんじゃよ、それより零くんはすごいの。ワシ特製のとっておき謎解きをいとも簡単に解いておる。」
「えっと、ありがとうございます?」
私のことを褒めたわけじゃないけどまるで私が褒められたみたいに嬉しい。横で手を握っている零くんを見ると心なしか誇らしげに見える。
阿笠邸ではちゃっかりお昼ご飯をごちそうになってしまい、後にする頃は夕方を迎えようとしていた。博士は謎解きを真剣に答える零くんをずっと離さなかったがこれ以上長居するわけにもいかず買い物があるからと言って後にした。
零くんの戸籍の準備や学校への編入手続きの書類はまた郵送してくれるようなのでそれまでは零くんとの思い出をつくろう。
「零くん、どこか行きたいところない?学校への編入手続きが出来るまで時間あるからさ」
「行きたい所…あっ!じゃあ水族館に行きたい!俺行ったことなくて気になってたんだ。」
「水族館、いいねえ!じゃあ水族館に行こう。」
***
「いただきます!」
「どうぞ召し上がれ!」
パチンと手を合わせた彼に私もあわせて返事をする。零くんが家に来てから確実にセロリ料理のバリエーションが多くなったことは確かで、今日も食卓にはセロリが並んだ。私自身元々得意ではなかったものの食べていくうちになんだかんだ好きになっている。
でも本当に良かった。零くんの戸籍が作れたことで生活の幅が広がる。ちょっと、いやかなり犯罪の匂いがするがこれも生きていくためだ、仕方がない。
「今日帰る時言ってた水族館のことだけど。急ではあるんだけど明日なんてどうかな?·····明後日に翻訳書類が送られてくるから仕事が詰まりそうで。」
「うん、大丈夫。すっごく楽しみだね!」
「よかった。じゃあ明日9時に家を出るから頑張って早起きしてね·····って零くんはいつも早起きなんだよね。私が頑張らなくちゃだ。」
「ふふっ大丈夫だよ。もし寝坊しそうでもなまえお姉さんは僕が起こすから。」
「うう····、ありがとね。頑張って起きます。」
歳の話はしたくないが、三十路手前にして実は水族館に行くのが楽しみでワクワクしている。思い返せば学校行事以外で行ったことが無いかもしれない。きっと零くんよりもソワソワしていることだろう。
食事後お風呂が沸いたアナウンスがリビングまで響き入浴の準備をする。
「零くんお風呂に行くから準備してね。」
「う、うん。」
身体が縮んで記憶もなくした日、ガラリと変わった環境に怯えているようだったので、子供である前に男の子だしどうかな、とは思ったけど、それより安心させたい一心で一緒に入浴した。
本当にちびっ子なら気にしないが仮にも私と同世代だし、顔見知りだし、なんなら好意を抱いてたワケだから抵抗は少なからずあった。苦肉の策として自分の体と零くんにタオルを巻き付けている。
それから何故か零くんとのお風呂が習慣づいてしまいこうして毎日一緒に入っているというわけだ。
体を洗う時はもちろん身体に巻つけたタオルを取らないといけないわけで。いくらなんでもじっと見ているわけもいかず遠くを見つめてその場をやり過ごしているのだ。
「零くん先に入っててくれる?もうちょっとで洗い物終わるから終わったら行くね。」
「うん、分かった。」
ちゃっちゃと洗い物を終わらせて脱衣所で身体にタオルを巻いているとお風呂場からかなり大きな音が響き渡った。
まるでお風呂場で盛大にコケた時のような·····コケた?
「·····零くん!!」
声をかける余裕などなく、躊躇なく扉を開けると頭を痛そうに抑えている零くんの姿が目に入る。
「何があったの?!頭見せて!!」
「ウッ·····」
状況を確認しようと抑えていた手を退け患部を診ると赤くなっていて、出血はしていないが若干腫れている。
「今気分が悪いとかない?打ち方によっては頭の中で内出血してるかもしれない。どうしてコケたの?」
「何故って…今の状況にびっくりして足を滑らした········っ!なまえさん!」
「びっくりしたとは·····?うん、そうだけど。」
これでもかというほど目を見開き私を見つめる零くん。しばらくするといつもの彼に戻ったが、と同時に若干頬を染めている。言いにくそうに私をチラチラ見ているが目が合うわけでもなく。嫌な予感がしてゆっくりと下を向くと。
「う、わあっ!ごめん!」
焦っていたから上手く巻けなかったタオルは無惨にも役割を果たしていなかった。光の速さで元の位置に戻したが完全に見られてしまった。明らかに意識している零くんの様子にさらに居た堪れない気持ちになってきた。
「急いでたから、つい····。」
「いや、いい。気にするな。」
短いやり取りだったけどなんとなく違和感が生まれる。なんだろう、いつもと違う?
「···あっ!零くんの口調がいつもと違うんだ!」
「···っ!い、いやあ···そ、そうかなあ?気の所為だよ!気の所為!」
軽い気持ちで言ったのだけどそんなに否定されるとは思わなかった。
そういえばなまえお姉さん呼びからなまえさんになってたし。まあ、兎にも角にも零くんが大怪我がなくてよかった。
戸籍も何もない状況で病院を使うのは難しいだろうし、いくら子供でもバーボンの面影がある状態で組織に診てもらうのはあまりにもリスキーだ。
「零くんまだお風呂に入る?」
「いや、もう十分、です。」
そそくさとお風呂を後にしたが、私が入浴している間に容態が急変してしまっても困る。今日はお風呂に浸からずシャワーだけにしようと急いで髪を洗った。
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