推しの心臓、我が家の1LDKにあり
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それは、独立した二人の事務所が大きなプロジェクトを成功させ、クライアント主催の祝賀パーティに招かれた夜のことだった。
会場は都内の一流ホテルのバンケットルーム。シャンパングラスの触れ合う音と、洗練された香水の匂いが空気の中に溶け合っている。エルヴィンは、仕立ての良いチャコールグレーのタキシードを完璧に着こなし、その圧倒的な存在感で会場の視線を釘付けにしていた。
だが、彼の碧い瞳が追っているのは、投資家たちの賛辞でも、自分を誘惑しようとする令嬢たちの視線でもない。
「――ミョウジさん、今日のドレスも素敵ですね。……いえ、いつも以上に」
フロアの少し離れた場所で、若手の新進気鋭のディレクターが、ナマエに熱烈な視線を送っていた。ナマエは、エルヴィンが選んだ深いボルドーのイブニングドレスを纏い、プロフェッショナルな微笑みを浮かべている。その優雅な立ち振る舞いと、戦略家としての知性が滲む瞳は、多くの男たちを惹きつけて止まない。
「ありがとうございます。高田さんの先ほどのスピーチも、非常に論理的で刺激を受けました」
「光栄です。……実は、今度ゆっくりお話ししたい案件がありまして。もしよろしければ、今夜この後、少しだけ……」
男の手が、ナマエの細い手首に触れようとした、その時。
「――彼女には、私の立てた『次の戦略』に参加してもらう予定が入っている」
低く、地を這うような重厚な声。 いつの間にか背後に立っていたエルヴィンが、ナマエの腰を抱き寄せ、静かに、けれど逃げ場のない威圧感で男を見下ろした。
「エ、エルヴィン代表……。失礼しました、お邪魔でしたか」
「邪魔、という言葉の定義は横に置くとして。……彼女を独り占めできる時間は、私以外には一秒たりとも与えない主義だ」
男は蛇に睨まれた蛙のように顔を青くし、足早に去っていった。 エルヴィンの大きな掌が、ナマエの腰にしっかりと食い込んでいる。その熱は、ドレスの薄い生地越しに、ナマエの肌へダイレクトに伝わってきた。
帰りのタクシーの車内。 エルヴィンは窓の外の夜景を見つめたまま、一言も発さなかった。 横顔はいつもの冷静沈着な指揮官そのものだが、組まれた指先が微かに強張っているのを、ナマエは見逃さなかった。
1LDKの自宅に戻り、ドアを閉めた瞬間。 静寂が二人を包み込む。
「……エルヴィン?」
ナマエが彼の背中に声をかけると、彼はジャケットを脱ぎ捨てることもせず、ゆっくりと振り返った。 碧い瞳の中に、暗い焔が揺れている。それは、かつて戦場で見せた野心とは違う、もっと泥臭くて、熱くて、理性を焼き切ろうとする情動だった。
「……おかしいな。俺は、自分の感情をコントロールすることにかけては、人一倍長けていると自負していたのだが」
エルヴィンは一歩、また一歩とナマエに歩み寄る。ナマエは壁際に追い詰められ、彼の大きな影に覆われた。 エルヴィンの両手が、ナマエの頭の横に置かれる。
「……嫉妬、というのか。この、胸の奥が焼けるような不快感は」
「エルヴィン……もしかして、怒ってる?」
「怒っているのではない。……焦燥しているんだ。あの男が君に触れようとした瞬間、俺の頭の中で、論理的な思考がすべて停止した。……彼の手を叩き折り、君を誰の目にも触れない場所へ隠してしまいたいと。そんな、野蛮な衝動に駆られた自分に驚いている」
エルヴィンは自嘲気味に目を伏せ、ナマエの髪を一房、愛おしそうに指先で弄んだ。 その仕草は優雅だが、どこか飢えた猛獣のような危うさを孕んでいる。
「……俺は、君を失うことが、これほどまでに怖いのだな。巨人に立ち向かっていた時ですら、これほどの恐怖は感じなかった」
「……あなたは、私を失ったりしないよ。私の隣は、いつだってあなただけの場所なんだから」
ナマエが彼の首に腕を回し、つま先立ちでその唇に柔らかなキスを贈る。 すると、エルヴィンの理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
「…………っ、ナマエ」
深い、激しい接吻。 これまでの慈愛に満ちたものとは違う、奪い、刻み込み、独占するための口づけ。 エルヴィンの大きな舌が、ナマエの熱を余すところなく絡め取っていく。 腰を引き寄せられ、二人の身体の間に隙間がなくなる。
「君が俺に、愛という名の『戦い』を教えてくれた。……ならば、最後まで責任を取ってもらおう」
エルヴィンは、ナマエのドレスの肩紐を、大きな指先でゆっくりと滑り落とした。 露わになった白い肩に、彼は熱い唇を押し当て、自分の刻印を刻むように深く吸い上げる。
「……今夜は、君のすべてが俺のものであることを、身体に分からせる必要があるようだ」
「エルヴィン……っ、そんな顔、反則だよ……」
ナマエが見上げた彼の顔には、かつての象徴としての仮面などどこにもなかった。 ただ一人の女性を愛し、渇望し、執着する、剥き出しの「男」の顔。
エルヴィンは、ナマエを軽々と横抱きにし、寝室のベッドへと運んだ。 シーツの上に投げ出されたナマエを見下ろし、彼はタイを乱暴に引き抜きながら、不敵に、けれど最高に魅力的に微笑んだ。
「……覚悟してくれ。明日の仕事に支障が出るほど、君を愛し抜くつもりだ」
窓の外では、都会の夜景が静かにまたたいている。 けれど、この部屋の中だけは、戦略家としての理性を捨て、ただの男として最愛の女性を求める、熱く、甘美な独占の時間が続いていった。
英雄は、初めて知った。 誰かを独り占めしたいという、この醜くも愛おしい感情こそが、自分が「生きている」ことを何よりも強く証明してくれるのだということを。
会場は都内の一流ホテルのバンケットルーム。シャンパングラスの触れ合う音と、洗練された香水の匂いが空気の中に溶け合っている。エルヴィンは、仕立ての良いチャコールグレーのタキシードを完璧に着こなし、その圧倒的な存在感で会場の視線を釘付けにしていた。
だが、彼の碧い瞳が追っているのは、投資家たちの賛辞でも、自分を誘惑しようとする令嬢たちの視線でもない。
「――ミョウジさん、今日のドレスも素敵ですね。……いえ、いつも以上に」
フロアの少し離れた場所で、若手の新進気鋭のディレクターが、ナマエに熱烈な視線を送っていた。ナマエは、エルヴィンが選んだ深いボルドーのイブニングドレスを纏い、プロフェッショナルな微笑みを浮かべている。その優雅な立ち振る舞いと、戦略家としての知性が滲む瞳は、多くの男たちを惹きつけて止まない。
「ありがとうございます。高田さんの先ほどのスピーチも、非常に論理的で刺激を受けました」
「光栄です。……実は、今度ゆっくりお話ししたい案件がありまして。もしよろしければ、今夜この後、少しだけ……」
男の手が、ナマエの細い手首に触れようとした、その時。
「――彼女には、私の立てた『次の戦略』に参加してもらう予定が入っている」
低く、地を這うような重厚な声。 いつの間にか背後に立っていたエルヴィンが、ナマエの腰を抱き寄せ、静かに、けれど逃げ場のない威圧感で男を見下ろした。
「エ、エルヴィン代表……。失礼しました、お邪魔でしたか」
「邪魔、という言葉の定義は横に置くとして。……彼女を独り占めできる時間は、私以外には一秒たりとも与えない主義だ」
男は蛇に睨まれた蛙のように顔を青くし、足早に去っていった。 エルヴィンの大きな掌が、ナマエの腰にしっかりと食い込んでいる。その熱は、ドレスの薄い生地越しに、ナマエの肌へダイレクトに伝わってきた。
帰りのタクシーの車内。 エルヴィンは窓の外の夜景を見つめたまま、一言も発さなかった。 横顔はいつもの冷静沈着な指揮官そのものだが、組まれた指先が微かに強張っているのを、ナマエは見逃さなかった。
1LDKの自宅に戻り、ドアを閉めた瞬間。 静寂が二人を包み込む。
「……エルヴィン?」
ナマエが彼の背中に声をかけると、彼はジャケットを脱ぎ捨てることもせず、ゆっくりと振り返った。 碧い瞳の中に、暗い焔が揺れている。それは、かつて戦場で見せた野心とは違う、もっと泥臭くて、熱くて、理性を焼き切ろうとする情動だった。
「……おかしいな。俺は、自分の感情をコントロールすることにかけては、人一倍長けていると自負していたのだが」
エルヴィンは一歩、また一歩とナマエに歩み寄る。ナマエは壁際に追い詰められ、彼の大きな影に覆われた。 エルヴィンの両手が、ナマエの頭の横に置かれる。
「……嫉妬、というのか。この、胸の奥が焼けるような不快感は」
「エルヴィン……もしかして、怒ってる?」
「怒っているのではない。……焦燥しているんだ。あの男が君に触れようとした瞬間、俺の頭の中で、論理的な思考がすべて停止した。……彼の手を叩き折り、君を誰の目にも触れない場所へ隠してしまいたいと。そんな、野蛮な衝動に駆られた自分に驚いている」
エルヴィンは自嘲気味に目を伏せ、ナマエの髪を一房、愛おしそうに指先で弄んだ。 その仕草は優雅だが、どこか飢えた猛獣のような危うさを孕んでいる。
「……俺は、君を失うことが、これほどまでに怖いのだな。巨人に立ち向かっていた時ですら、これほどの恐怖は感じなかった」
「……あなたは、私を失ったりしないよ。私の隣は、いつだってあなただけの場所なんだから」
ナマエが彼の首に腕を回し、つま先立ちでその唇に柔らかなキスを贈る。 すると、エルヴィンの理性の糸が、ぷつりと音を立てて切れた。
「…………っ、ナマエ」
深い、激しい接吻。 これまでの慈愛に満ちたものとは違う、奪い、刻み込み、独占するための口づけ。 エルヴィンの大きな舌が、ナマエの熱を余すところなく絡め取っていく。 腰を引き寄せられ、二人の身体の間に隙間がなくなる。
「君が俺に、愛という名の『戦い』を教えてくれた。……ならば、最後まで責任を取ってもらおう」
エルヴィンは、ナマエのドレスの肩紐を、大きな指先でゆっくりと滑り落とした。 露わになった白い肩に、彼は熱い唇を押し当て、自分の刻印を刻むように深く吸い上げる。
「……今夜は、君のすべてが俺のものであることを、身体に分からせる必要があるようだ」
「エルヴィン……っ、そんな顔、反則だよ……」
ナマエが見上げた彼の顔には、かつての象徴としての仮面などどこにもなかった。 ただ一人の女性を愛し、渇望し、執着する、剥き出しの「男」の顔。
エルヴィンは、ナマエを軽々と横抱きにし、寝室のベッドへと運んだ。 シーツの上に投げ出されたナマエを見下ろし、彼はタイを乱暴に引き抜きながら、不敵に、けれど最高に魅力的に微笑んだ。
「……覚悟してくれ。明日の仕事に支障が出るほど、君を愛し抜くつもりだ」
窓の外では、都会の夜景が静かにまたたいている。 けれど、この部屋の中だけは、戦略家としての理性を捨て、ただの男として最愛の女性を求める、熱く、甘美な独占の時間が続いていった。
英雄は、初めて知った。 誰かを独り占めしたいという、この醜くも愛おしい感情こそが、自分が「生きている」ことを何よりも強く証明してくれるのだということを。
