Chapter 2 ⛧磁気と引力
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窓の外には、毒々しいほどに美しい紺碧の光を放つ巨大な惑星が鎮座していた。 惑星『マグナ・ガルーダ』。その地殻に眠る膨大な超伝導物質が、艦の防護シールドさえも容易に突き破る、強力な磁気嵐を銀河に撒き散らしている。
『ウィングス・オブ・リバティ号』は、この宙域を通過するために特殊な対磁気宇宙服の着用を全乗組員に義務付けていた。最新技術の粋を集めたそのスーツは、外部からの磁性影響を相殺する設計だったはずだが――。
「……っ、うわっ!?」
機材通路を通っていたナマエの身体が、不可解な力によって後方へと引き寄せられた。 背後の空気に、磁石の同極同士が反発する時のような、あるいは異極が惹かれ合う時の、あの「見えない巨大な手」に掴まれたような圧迫感が走る。
「危ない、ナマエ!」
前方を歩いていたエルヴィンが咄嗟に振り返り、彼女の腕を掴もうと手を伸ばした。 だが、それが引き金だった。
――ガシャンッ!!
鼓膜を揺らす、凄まじい金属音。 二人の特殊宇宙服が接触した瞬間、そこには物理法則を超えた強固な結合が発生した。エルヴィンの胸部装甲と、ナマエの腹部から胸にかけての装甲が、吸い寄せられるように、完膚なきまでに密着したのだ。
「え……ええっ!? 何、これ……離れない……っ!」
ナマエが必死にエルヴィンの胸板を押し返そうとするが、二人の身体を繋ぐ磁力は、人一倍の筋力を誇るエルヴィンの力をもってしても微動だにしなかった。 エルヴィンがナマエを正面から抱きしめるような格好で、二人の身体はひと塊の金属像のように固定されてしまった。
「……落ち着くんだ。磁界の歪みが、スーツの極性を逆転させたらしい。N極とS極……今の私たちは、銀河で最も強力な一対の磁石になっている」
エルヴィンの声が、ヘルメットの通信越しではなく、胸板を通じた直接的な振動となってナマエの身体に響く。 至近距離――という言葉ですら生ぬるい。装甲の厚みはあるものの、エルヴィンの巨躯が、ナマエの身体を完全に覆い尽くしている。
「そんな……。艦長、どうにかして離れられませんか? このままじゃ仕事が……」
「無理に剥がそうとすれば、装甲が歪み、中の君の身体を圧迫する恐れがある。……ハンジに確認したところ、この磁気圏を抜けるまで、約24時間は解除不能だそうだ」
「24時間!? このままで……?」
ナマエが顔を上げると、目の前にはエルヴィンの碧眼があった。 バイザー越しに見える彼の表情は、相変わらず冷静沈着そのものだった。だが、ナマエの敏感な感性は、彼の声の僅かな「艶」と、瞳の奥でゆらりと揺れた昏い愉悦を逃さなかった。
「……不運だったな。だが、これは磁気のせいだ。不可抗力だよ、ナマエ」
彼は淡々と告げる。だが、その大きな掌は、磁力の助けを借りるまでもなく、ナマエの腰のあたりをしっかりと、独占欲を誇示するように抱き込んでいた。
周囲の冷ややかな視線(主にリヴァイの「見てられねぇ、吐き気がする」という罵倒)を浴びながら、二人はどうにか歩調を合わせて艦長室へと辿り着いた。密着したままの移動は困難を極め、一歩進むたびにエルヴィンの太腿がナマエの足の間に割り込み、彼女の細い腰が彼の硬い腹筋に押し当てられる。
カチリ、とドアが閉まり、完全な密室となる。エルヴィンはヘルメットのロックを解除し、プシュッという排気音と共にそれを脱ぎ捨てた。続いて、ナマエのヘルメットも彼の手によって丁寧に外される。
露わになった二人の顔。 人工照明の下、エルヴィンの整った顔立ちが、影を伴ってナマエに迫る。 閉ざされた空間には、二人の荒い呼吸の音と、宇宙服の内部冷却装置が奏でる微かなハム音だけが充満していた。
「……狭いな」
エルヴィンが独り言ちた。彼はナマエを抱き密着させたまま、ゆっくりと壁際のソファへと身体を沈める。必然的に、ナマエはエルヴィンの膝の上に跨るような形で、その胸に押し付けられた。
「かん、ちょう……近い、です」
「磁力のせいだと言っただろう。……それとも、嫌か? 私の体温を感じるのは」
エルヴィンの声から「艦長」としての虚飾が消え、一人の男としての「毒」が混じる。 彼は自由のきく片手で、ナマエのうなじに触れた。熱い指先が、彼女の柔らかな肌をなぞる。 スーツの薄いインナー越しに、彼の強靭な筋肉の躍動が、そして何より、自分と同じくらい激しく打ち鳴らされる心臓の鼓動が、ダイレクトに伝わってくる。
「……嫌じゃ、ないです。でも……」
「なら、大人しくしていなさい。24時間、君は私の腕の中から一歩も出られない。……これは命令ではなく、抗いようのない宇宙の摂理だ」
エルヴィンは、ナマエの黒髪に顔を埋め、深くその香りを吸い込んだ。石鹸の清潔な香りと、彼女自身の甘い体温の匂い。冷徹な理性の奥底で、彼はこの「事故」を仕組んだ神(あるいは磁気嵐)に深く感謝していた。 誰の目も届かないこの部屋で、物理的に、そして精神的に、彼女を完全に自分の支配下に置く。
夜が深まるにつれ、磁気の拘束は二人の理性を少しずつ削り取っていった。 空腹を満たすための不器用な食事。 そして、そのまま一つのベッドに倒れ込むようにして迎えた、密着したままの眠り。
エルヴィンの腕が、磁力以上に強くナマエを縛り上げる。
「……ナマエ。君は今、文字通り私の一部だ。このまま一生、極性が戻らなければいいとさえ思っている」
暗闇の中、囁かれたナマエは彼の胸に顔を埋め、逃げ場のない愛の重さに眩暈を覚えながらも、その温もりに深く溺れていった。 外には冷たい銀河が広がっている。だが、この小さな檻の中だけは、狂おしいほどの熱量に満たされていた。
『ウィングス・オブ・リバティ号』は、この宙域を通過するために特殊な対磁気宇宙服の着用を全乗組員に義務付けていた。最新技術の粋を集めたそのスーツは、外部からの磁性影響を相殺する設計だったはずだが――。
「……っ、うわっ!?」
機材通路を通っていたナマエの身体が、不可解な力によって後方へと引き寄せられた。 背後の空気に、磁石の同極同士が反発する時のような、あるいは異極が惹かれ合う時の、あの「見えない巨大な手」に掴まれたような圧迫感が走る。
「危ない、ナマエ!」
前方を歩いていたエルヴィンが咄嗟に振り返り、彼女の腕を掴もうと手を伸ばした。 だが、それが引き金だった。
――ガシャンッ!!
鼓膜を揺らす、凄まじい金属音。 二人の特殊宇宙服が接触した瞬間、そこには物理法則を超えた強固な結合が発生した。エルヴィンの胸部装甲と、ナマエの腹部から胸にかけての装甲が、吸い寄せられるように、完膚なきまでに密着したのだ。
「え……ええっ!? 何、これ……離れない……っ!」
ナマエが必死にエルヴィンの胸板を押し返そうとするが、二人の身体を繋ぐ磁力は、人一倍の筋力を誇るエルヴィンの力をもってしても微動だにしなかった。 エルヴィンがナマエを正面から抱きしめるような格好で、二人の身体はひと塊の金属像のように固定されてしまった。
「……落ち着くんだ。磁界の歪みが、スーツの極性を逆転させたらしい。N極とS極……今の私たちは、銀河で最も強力な一対の磁石になっている」
エルヴィンの声が、ヘルメットの通信越しではなく、胸板を通じた直接的な振動となってナマエの身体に響く。 至近距離――という言葉ですら生ぬるい。装甲の厚みはあるものの、エルヴィンの巨躯が、ナマエの身体を完全に覆い尽くしている。
「そんな……。艦長、どうにかして離れられませんか? このままじゃ仕事が……」
「無理に剥がそうとすれば、装甲が歪み、中の君の身体を圧迫する恐れがある。……ハンジに確認したところ、この磁気圏を抜けるまで、約24時間は解除不能だそうだ」
「24時間!? このままで……?」
ナマエが顔を上げると、目の前にはエルヴィンの碧眼があった。 バイザー越しに見える彼の表情は、相変わらず冷静沈着そのものだった。だが、ナマエの敏感な感性は、彼の声の僅かな「艶」と、瞳の奥でゆらりと揺れた昏い愉悦を逃さなかった。
「……不運だったな。だが、これは磁気のせいだ。不可抗力だよ、ナマエ」
彼は淡々と告げる。だが、その大きな掌は、磁力の助けを借りるまでもなく、ナマエの腰のあたりをしっかりと、独占欲を誇示するように抱き込んでいた。
周囲の冷ややかな視線(主にリヴァイの「見てられねぇ、吐き気がする」という罵倒)を浴びながら、二人はどうにか歩調を合わせて艦長室へと辿り着いた。密着したままの移動は困難を極め、一歩進むたびにエルヴィンの太腿がナマエの足の間に割り込み、彼女の細い腰が彼の硬い腹筋に押し当てられる。
カチリ、とドアが閉まり、完全な密室となる。エルヴィンはヘルメットのロックを解除し、プシュッという排気音と共にそれを脱ぎ捨てた。続いて、ナマエのヘルメットも彼の手によって丁寧に外される。
露わになった二人の顔。 人工照明の下、エルヴィンの整った顔立ちが、影を伴ってナマエに迫る。 閉ざされた空間には、二人の荒い呼吸の音と、宇宙服の内部冷却装置が奏でる微かなハム音だけが充満していた。
「……狭いな」
エルヴィンが独り言ちた。彼はナマエを抱き密着させたまま、ゆっくりと壁際のソファへと身体を沈める。必然的に、ナマエはエルヴィンの膝の上に跨るような形で、その胸に押し付けられた。
「かん、ちょう……近い、です」
「磁力のせいだと言っただろう。……それとも、嫌か? 私の体温を感じるのは」
エルヴィンの声から「艦長」としての虚飾が消え、一人の男としての「毒」が混じる。 彼は自由のきく片手で、ナマエのうなじに触れた。熱い指先が、彼女の柔らかな肌をなぞる。 スーツの薄いインナー越しに、彼の強靭な筋肉の躍動が、そして何より、自分と同じくらい激しく打ち鳴らされる心臓の鼓動が、ダイレクトに伝わってくる。
「……嫌じゃ、ないです。でも……」
「なら、大人しくしていなさい。24時間、君は私の腕の中から一歩も出られない。……これは命令ではなく、抗いようのない宇宙の摂理だ」
エルヴィンは、ナマエの黒髪に顔を埋め、深くその香りを吸い込んだ。石鹸の清潔な香りと、彼女自身の甘い体温の匂い。冷徹な理性の奥底で、彼はこの「事故」を仕組んだ神(あるいは磁気嵐)に深く感謝していた。 誰の目も届かないこの部屋で、物理的に、そして精神的に、彼女を完全に自分の支配下に置く。
夜が深まるにつれ、磁気の拘束は二人の理性を少しずつ削り取っていった。 空腹を満たすための不器用な食事。 そして、そのまま一つのベッドに倒れ込むようにして迎えた、密着したままの眠り。
エルヴィンの腕が、磁力以上に強くナマエを縛り上げる。
「……ナマエ。君は今、文字通り私の一部だ。このまま一生、極性が戻らなければいいとさえ思っている」
暗闇の中、囁かれたナマエは彼の胸に顔を埋め、逃げ場のない愛の重さに眩暈を覚えながらも、その温もりに深く溺れていった。 外には冷たい銀河が広がっている。だが、この小さな檻の中だけは、狂おしいほどの熱量に満たされていた。
