その少女、英才につき実技絶望
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鈍い音が、静かな訓練場に響いた。
着地の瞬間、湿った枯れ葉の下に隠れていた木の根が、ナマエの足首を無慈悲に払ったのだ。
鋭い痛みが神経を駆け抜け、視界が火花を散らす。ナマエはたまらず、冷たい地面に膝をついた。
「……っ、痛……」
「おい、何を地面と戯れてやがる。……チッ、見せろ」
苛立ちを含んだ低い声と共に、リヴァイがすぐ隣に膝をついた。彼はナマエの返事も待たず、土に汚れた彼女のブーツを素早い手つきで脱がせていく。
木々の隙間から落ちる夕陽が、腫れ始めた足首を赤く照らした。
「鈍臭えな。お前は計算高い癖に、肝心なところで詰が甘い」
「……すみません。少し、目測を誤りました」
リヴァイは吐き捨てるように言ったが、その手つきは驚くほど慎重だった。
彼は自分の膝の上にナマエの足を乗せると、懐から小さな瓶を取り出した。蓋を開けると、ツンとした薬草の香りが鼻腔を突く。
「痛いなら言え」
リヴァイの節くれだった、温かな指先が、腫れた箇所を優しく撫でるようにマッサージし始める。
皮手袋を外した彼の素肌の熱が、患部の痛みを溶かしていくようだった。リヴァイの強い指が筋肉を解し、薬を刷り込むたび、ナマエの全身に甘い痺れが広がっていく。
ふと見上げると、リヴァイは眉間に皺を寄せたまま、一心不乱に彼女の足を介抱していた。その横顔は、戦場で見せる冷徹な英雄のそれではなく、ただひたむきに目の前の命を慈しむ一人の男の顔だった。
「……兵長、そんなに丁寧に……。もう大丈夫です、自分で歩けますから」
「黙ってろ。今ここで無理をして、明日から使い物にならなくなったら誰が責任を取る。俺だ」
突き放すような物言い。けれど、足を支える彼の手のひらは、ナマエが不安に震えないよう、しっかりと、そしてどこまでも甘く包み込んでいた。
数日後。足の怪我も癒え、訓練に復帰したナマエは、実戦形式の模擬戦に参加していた。
リヴァイは離れた位置から、腕を組んでその様子を眺めていた。
(……あいつの動きは、以前とは別物だ。無駄がない。……だが)
模擬戦の相手は、血気盛んな若手の兵士だった。
ナマエが巧みな身のこなしで相手の背後を取ろうとした、その時。相手の兵士が強引にナマエの腕を掴み、力任せに彼女を地面へ押し倒した。
「捕まえた!」という兵士の勝ち誇った声。
ナマエの背中が土を叩き、その上に兵士が覆い被さる形になる。
その光景が視界に入った瞬間、リヴァイの体は思考より先に動いていた。
一歩、鋭く地面を蹴る。
(……鍛えている。いい駒になる。……だから、これは、必要な介入だ)
心の中で呪文のように言い聞かせながらも、彼の手はすでに腰のブレードの柄にかかっていた。実際には、訓練において押し倒されるのは珍しいことではない。だが、他の男の汗ばんだ手がナマエの細い手首を掴んでいることに、彼は耐え難い嫌悪感を覚えた。
「そこまでだ。……模擬戦と言えど、力に頼りすぎだ」
冷気を纏った声に、若手兵士は顔を青くして飛びのいた。
リヴァイは倒れたままのナマエの手を取り、無言で引き起こす。砂を払い落としてやるその動作は、周囲の兵士たちが息を呑むほどに、独占欲に満ちていた。
その夜。
静まり返った執務室で、リヴァイは羽ペンを走らせていた。窓の外には、音もなく夜霧が立ち込めている。
ふと、書類の上に書かれた文字が滲んだ。
頭をよぎるのは、月明かりの下で聞いたナマエの言葉だ。
——『怖くても、外が良かったんです』
壁外調査に出ることを怖いと思ったことは、もうずっとない。死ぬことへの恐怖など、地下街に置いてきたつもりだった。
だが、こいつは——ナマエは、死を、外の世界を、明確に恐れながら、それでもここに来た。
怖いと知りながら、それでも一歩を踏み出す人間を、自分はどう評価すればいいのか。
カリ、カリ、とインクの音が響く。
自分でも気づかないうちに、彼女の成績表の欄に特筆すべき精神性と書き加えていた。
「……面倒なことになった」
誰もいない部屋で、リヴァイは小さく、けれど重い独り言を漏らした。
ただの駒。守るべき部下。
そのはずだった。
けれど、羽ペンを置いた彼の手は、微かに、けれど熱く、彼女を押し倒した兵士を睨みつけた時の衝動を覚えていた。
リヴァイは背もたれに体を預け、深く、深く、夜の闇へと溜息を吐き出した。
翌日。
空は朝から鉛色に淀み、午後を過ぎる頃には、天が底を抜いたかのような豪雨へと変わっていた。
銀色の針が降り注ぐような激しい雨が、練兵場の赤土を容赦なく叩き、またたく間に深い泥濘へと変えていく。視界は白く煙り、数メートル先も判然としない。
シュッ、と雨音を切り裂く鈍いガス噴射の音が響く。
ナマエは、泥を跳ね上げながら大樹の幹を蹴り、空中へと舞い上がった。雨に打たれて重さを増した調査兵団の緑の外套が、彼女の動きを阻もうと纏わりつく。濡れた革ベルトは肌に食い込み、体温を奪っていく。
「……っ、姿勢が崩れる。重心をもっと低く……!」
独り言が、激しい雨音にかき消される。
計算では分かっている。雨粒が視界を遮り、ワイヤーが滑りやすくなっている今、どの程度の張力が必要か。だが、凍える指先は感覚を失い、思い通りの操作を拒んでいた。
「そこまでだ。戻れ」
木の上から、低いがよく通る声が降ってきた。
リヴァイだ。彼は雨を避ける様子もなく、枝の上に凛として立っていた。濡れた黒髪が額に張り付き、その鋭い眼光は、降りしきる雨すらも射抜くかのように冷徹だった。
「これ以上の訓練は効率が悪すぎる。機材の劣化も招く。……さっさと降りてこい」
ナマエは地上へ着地したが、そのままリヴァイを真っ直ぐに見上げた。雨水が睫毛を伝い、頬を激しく流れ落ちる。
「……嫌です。まだ、続けさせてください」
「あ?」
リヴァイの眉間に、深い皺が刻まれた。不服そうな表情を隠そうともせず、ナマエは泥塗れの拳を握りしめる。
「壁外で、雨を理由に動けなくなったら死にます。巨人は雨が降っても止まってはくれない。……兵長だって、そう思うでしょう。悪条件の中で動けないのは、兵士として致命的です」
リヴァイは、言葉を失った。
感情を剥き出しにしたその瞳には、かつて自分が地下街で見た、泥を啜ってでも生き抜こうとする獣の矜持が宿っていた。
冷たい雨の中、立ち尽くす少女の細い肩。だが、その足元はしっかりと泥を掴み、一歩も引く気配がない。
沈黙が、激しい雨音の中で重く横たわる。
やがて、リヴァイはふっと吐息を漏らすと、音もなく木から降り立った。
「……勝手にしろ。だが、限界を超えたら俺が力ずくで止める」
それから一時間。
二人は豪雨の中で、文字通り泥に塗れた。
訓練が終わる頃には、ナマエの体力は底をつき、その場に立っているのが精一杯だった。冷気に晒された体は小刻みに震え、唇は紫に色を失っている。
「……よし、撤収だ」
リヴァイが近寄り、ナマエの肩に手を置いた。その瞬間、彼は彼女の体が氷のように冷え切っていることに気づき、舌打ちを一つした。
「馬鹿が。案の定、体温が下がりすぎてやがる」
リヴァイは無造作に自分の外套を脱ぐと、それをナマエの頭からすっぽりと被せた。
ナマエが驚いて顔を上げると、目の前には、シャツ一枚になったリヴァイの、驚くほど逞しい胸板があった。
「兵長……、これでは兵長が濡れてしまいます。私は大丈夫ですから……」
「風邪を引いたら訓練にならん。それだけだ。……いいから大人しくしてろ」
リヴァイは反論を許さない力強さで、外套越しにナマエの肩を抱き寄せた。
大きな外套に包まれ、彼の体温が直接伝わってくる。リヴァイの体からは、雨の匂いと、激しい運動の後の濃密な熱が立ち昇っていた。
兵舎までの長い道のり。
二人はただ一つの外套の下で、肩を並べて歩いた。
一歩踏み出すたびに、リヴァイの腕の筋肉がナマエの背中に触れ、彼の歩調が、凍える彼女に合わせるようにゆっくりと刻まれる。
「……そんなに心配しなくても、私は大丈夫ですよ。兵長の指導のおかげで、今は結構強いはずなので」
ナマエが外套の中から、震える声で精一杯の強がりを言った。
リヴァイは前を向いたまま、彼女の細い腰を引き寄せ、その密着をより確かなものにした。
「……お前が強いかどうかは、俺が決めることだ」
低く、独占欲を孕んだ声。
雨音に紛れて、彼の本当の想いまでは聞こえなかったかもしれない。だが、ナマエを抱き込むその腕の力強さは、どんな言葉よりも雄弁に、彼女を失いたくないという切実な想いを物語っていた。
兵舎の明かりが見えてくる頃、ナマエは自分の胸の奥が、冷たい雨とは正反対の、激しい熱に浮かされていることを知った。
着地の瞬間、湿った枯れ葉の下に隠れていた木の根が、ナマエの足首を無慈悲に払ったのだ。
鋭い痛みが神経を駆け抜け、視界が火花を散らす。ナマエはたまらず、冷たい地面に膝をついた。
「……っ、痛……」
「おい、何を地面と戯れてやがる。……チッ、見せろ」
苛立ちを含んだ低い声と共に、リヴァイがすぐ隣に膝をついた。彼はナマエの返事も待たず、土に汚れた彼女のブーツを素早い手つきで脱がせていく。
木々の隙間から落ちる夕陽が、腫れ始めた足首を赤く照らした。
「鈍臭えな。お前は計算高い癖に、肝心なところで詰が甘い」
「……すみません。少し、目測を誤りました」
リヴァイは吐き捨てるように言ったが、その手つきは驚くほど慎重だった。
彼は自分の膝の上にナマエの足を乗せると、懐から小さな瓶を取り出した。蓋を開けると、ツンとした薬草の香りが鼻腔を突く。
「痛いなら言え」
リヴァイの節くれだった、温かな指先が、腫れた箇所を優しく撫でるようにマッサージし始める。
皮手袋を外した彼の素肌の熱が、患部の痛みを溶かしていくようだった。リヴァイの強い指が筋肉を解し、薬を刷り込むたび、ナマエの全身に甘い痺れが広がっていく。
ふと見上げると、リヴァイは眉間に皺を寄せたまま、一心不乱に彼女の足を介抱していた。その横顔は、戦場で見せる冷徹な英雄のそれではなく、ただひたむきに目の前の命を慈しむ一人の男の顔だった。
「……兵長、そんなに丁寧に……。もう大丈夫です、自分で歩けますから」
「黙ってろ。今ここで無理をして、明日から使い物にならなくなったら誰が責任を取る。俺だ」
突き放すような物言い。けれど、足を支える彼の手のひらは、ナマエが不安に震えないよう、しっかりと、そしてどこまでも甘く包み込んでいた。
数日後。足の怪我も癒え、訓練に復帰したナマエは、実戦形式の模擬戦に参加していた。
リヴァイは離れた位置から、腕を組んでその様子を眺めていた。
(……あいつの動きは、以前とは別物だ。無駄がない。……だが)
模擬戦の相手は、血気盛んな若手の兵士だった。
ナマエが巧みな身のこなしで相手の背後を取ろうとした、その時。相手の兵士が強引にナマエの腕を掴み、力任せに彼女を地面へ押し倒した。
「捕まえた!」という兵士の勝ち誇った声。
ナマエの背中が土を叩き、その上に兵士が覆い被さる形になる。
その光景が視界に入った瞬間、リヴァイの体は思考より先に動いていた。
一歩、鋭く地面を蹴る。
(……鍛えている。いい駒になる。……だから、これは、必要な介入だ)
心の中で呪文のように言い聞かせながらも、彼の手はすでに腰のブレードの柄にかかっていた。実際には、訓練において押し倒されるのは珍しいことではない。だが、他の男の汗ばんだ手がナマエの細い手首を掴んでいることに、彼は耐え難い嫌悪感を覚えた。
「そこまでだ。……模擬戦と言えど、力に頼りすぎだ」
冷気を纏った声に、若手兵士は顔を青くして飛びのいた。
リヴァイは倒れたままのナマエの手を取り、無言で引き起こす。砂を払い落としてやるその動作は、周囲の兵士たちが息を呑むほどに、独占欲に満ちていた。
その夜。
静まり返った執務室で、リヴァイは羽ペンを走らせていた。窓の外には、音もなく夜霧が立ち込めている。
ふと、書類の上に書かれた文字が滲んだ。
頭をよぎるのは、月明かりの下で聞いたナマエの言葉だ。
——『怖くても、外が良かったんです』
壁外調査に出ることを怖いと思ったことは、もうずっとない。死ぬことへの恐怖など、地下街に置いてきたつもりだった。
だが、こいつは——ナマエは、死を、外の世界を、明確に恐れながら、それでもここに来た。
怖いと知りながら、それでも一歩を踏み出す人間を、自分はどう評価すればいいのか。
カリ、カリ、とインクの音が響く。
自分でも気づかないうちに、彼女の成績表の欄に特筆すべき精神性と書き加えていた。
「……面倒なことになった」
誰もいない部屋で、リヴァイは小さく、けれど重い独り言を漏らした。
ただの駒。守るべき部下。
そのはずだった。
けれど、羽ペンを置いた彼の手は、微かに、けれど熱く、彼女を押し倒した兵士を睨みつけた時の衝動を覚えていた。
リヴァイは背もたれに体を預け、深く、深く、夜の闇へと溜息を吐き出した。
翌日。
空は朝から鉛色に淀み、午後を過ぎる頃には、天が底を抜いたかのような豪雨へと変わっていた。
銀色の針が降り注ぐような激しい雨が、練兵場の赤土を容赦なく叩き、またたく間に深い泥濘へと変えていく。視界は白く煙り、数メートル先も判然としない。
シュッ、と雨音を切り裂く鈍いガス噴射の音が響く。
ナマエは、泥を跳ね上げながら大樹の幹を蹴り、空中へと舞い上がった。雨に打たれて重さを増した調査兵団の緑の外套が、彼女の動きを阻もうと纏わりつく。濡れた革ベルトは肌に食い込み、体温を奪っていく。
「……っ、姿勢が崩れる。重心をもっと低く……!」
独り言が、激しい雨音にかき消される。
計算では分かっている。雨粒が視界を遮り、ワイヤーが滑りやすくなっている今、どの程度の張力が必要か。だが、凍える指先は感覚を失い、思い通りの操作を拒んでいた。
「そこまでだ。戻れ」
木の上から、低いがよく通る声が降ってきた。
リヴァイだ。彼は雨を避ける様子もなく、枝の上に凛として立っていた。濡れた黒髪が額に張り付き、その鋭い眼光は、降りしきる雨すらも射抜くかのように冷徹だった。
「これ以上の訓練は効率が悪すぎる。機材の劣化も招く。……さっさと降りてこい」
ナマエは地上へ着地したが、そのままリヴァイを真っ直ぐに見上げた。雨水が睫毛を伝い、頬を激しく流れ落ちる。
「……嫌です。まだ、続けさせてください」
「あ?」
リヴァイの眉間に、深い皺が刻まれた。不服そうな表情を隠そうともせず、ナマエは泥塗れの拳を握りしめる。
「壁外で、雨を理由に動けなくなったら死にます。巨人は雨が降っても止まってはくれない。……兵長だって、そう思うでしょう。悪条件の中で動けないのは、兵士として致命的です」
リヴァイは、言葉を失った。
感情を剥き出しにしたその瞳には、かつて自分が地下街で見た、泥を啜ってでも生き抜こうとする獣の矜持が宿っていた。
冷たい雨の中、立ち尽くす少女の細い肩。だが、その足元はしっかりと泥を掴み、一歩も引く気配がない。
沈黙が、激しい雨音の中で重く横たわる。
やがて、リヴァイはふっと吐息を漏らすと、音もなく木から降り立った。
「……勝手にしろ。だが、限界を超えたら俺が力ずくで止める」
それから一時間。
二人は豪雨の中で、文字通り泥に塗れた。
訓練が終わる頃には、ナマエの体力は底をつき、その場に立っているのが精一杯だった。冷気に晒された体は小刻みに震え、唇は紫に色を失っている。
「……よし、撤収だ」
リヴァイが近寄り、ナマエの肩に手を置いた。その瞬間、彼は彼女の体が氷のように冷え切っていることに気づき、舌打ちを一つした。
「馬鹿が。案の定、体温が下がりすぎてやがる」
リヴァイは無造作に自分の外套を脱ぐと、それをナマエの頭からすっぽりと被せた。
ナマエが驚いて顔を上げると、目の前には、シャツ一枚になったリヴァイの、驚くほど逞しい胸板があった。
「兵長……、これでは兵長が濡れてしまいます。私は大丈夫ですから……」
「風邪を引いたら訓練にならん。それだけだ。……いいから大人しくしてろ」
リヴァイは反論を許さない力強さで、外套越しにナマエの肩を抱き寄せた。
大きな外套に包まれ、彼の体温が直接伝わってくる。リヴァイの体からは、雨の匂いと、激しい運動の後の濃密な熱が立ち昇っていた。
兵舎までの長い道のり。
二人はただ一つの外套の下で、肩を並べて歩いた。
一歩踏み出すたびに、リヴァイの腕の筋肉がナマエの背中に触れ、彼の歩調が、凍える彼女に合わせるようにゆっくりと刻まれる。
「……そんなに心配しなくても、私は大丈夫ですよ。兵長の指導のおかげで、今は結構強いはずなので」
ナマエが外套の中から、震える声で精一杯の強がりを言った。
リヴァイは前を向いたまま、彼女の細い腰を引き寄せ、その密着をより確かなものにした。
「……お前が強いかどうかは、俺が決めることだ」
低く、独占欲を孕んだ声。
雨音に紛れて、彼の本当の想いまでは聞こえなかったかもしれない。だが、ナマエを抱き込むその腕の力強さは、どんな言葉よりも雄弁に、彼女を失いたくないという切実な想いを物語っていた。
兵舎の明かりが見えてくる頃、ナマエは自分の胸の奥が、冷たい雨とは正反対の、激しい熱に浮かされていることを知った。
