自由な空に、君と愛を。
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窓の外では、柔らかな春の夜風が街路樹の葉を揺らしている。
学長公舎を兼ねたエルヴィンとナマエの新居には、今夜、戦場を共に駆け抜けた「家族」たちが集まっていた。
「おい、エルヴィン。この棚の角に埃が溜まっているぞ。お前、学長の椅子に座りすぎて掃除の仕方を忘れたのか」
玄関を開けるなり、リヴァイ教授が指先でチェストを撫で、険しい顔で言い放った。手には手土産の最高級茶葉ではなく、なぜか最新型の高性能ハンディクリーナーが握られている。
「……相変わらずだな、リヴァイ。今日は掃除の査定に来てもらったわけじゃないんだが」
エプロン姿のエルヴィンが、苦笑しながらリヴァイを迎え入れる。かつて人類の希望を背負ったその手は、今ではナマエと一緒にキッチンに立ち、野菜を刻む穏やかな日常に馴染んでいた。
「リヴァイ、今日くらい勘弁してあげなよ! あー、ナマエ! 会いたかったよ! 結婚してからますます綺麗になったね。エルヴィンに食べられちゃってないかい?」
ハンジが嵐のように現れ、キッチンで料理を仕上げていたナマエに抱きついた。
「ハンジさん、お久しぶりです!もう、変なこと言わないでください」
ナマエが頬を赤らめて笑う。その指先には、エルヴィンとお揃いのエメラルドの指輪が、キッチンの灯りを受けて幸福そうに輝いていた。
最後に、大きな影が音もなく滑り込んできた。ミケだ。
「……クンクン。……良い匂いだ。今日のメインは、猪肉の赤ワイン煮込みか」
「さすがミケさん、正解です! あの地下で食べた缶詰の味を、私なりに再現してみたんです」
ナマエの言葉に、その場にいた全員の動きが一瞬だけ止まった。 かつての地獄。閉ざされた地下室で、死を隣り合わせにしながら分け合った、あの肉の味。 今では笑い話のように語れるけれど、その味の記憶こそが、彼らを繋ぐ消えない絆でもあった。
「……フン、あのクソ不味い缶詰よりはマシそうだな」
リヴァイが不器用な手つきで、ナマエの頭を乱暴に撫でた。
「さあ、始めようか。皆、揃ったことだしね」
エルヴィンの合図で、賑やかな夕食会が始まった。
テーブルの上には、ナマエが腕を振るった料理の数々と、リヴァイが厳選したワインが並んでいる。 かつては、明日をも知れぬ命を惜しむように、静かに、重苦しく交わされていた杯。 けれど今は、次の一手の軍略ではなく、大学の予算会議の愚痴や、ハンジが見つけた新しい粘菌の話、そしてナマエが勤める図書館に新しく入った希少本の話題で持ちきりだった。
「それでね、エルヴィン! リヴァイったら、こないだの教授会で居眠りしてた学生の机を、無言で除菌シートで拭き始めたんだよ。学生、泣きそうになってたよ!」
「……チッ、あいつの机はあまりに不潔だった。教育の一環だ」
ハンジの暴露に、リヴァイが不機嫌そうにワインを煽る。
「ははは! それは目に浮かぶようだ。……ナマエ、リヴァイに新しい除菌グッズのリストを作ってやってくれないか。彼は、世界の不潔さと戦うのが生きがいのようだからな」
エルヴィンがナマエの肩を抱き寄せ、上機嫌に笑う。
ナマエは、その温かな重みに身を任せながら、視界が微かに潤むのを感じていた。 かつて夢に見た、彼が腕を失い、消えていく光景。それとは真逆の、両腕を広げて自分を抱きしめ、友と笑い合うエルヴィンの姿。 夢を現実に変えるために、地獄を潜り抜けた日々は、決して無駄ではなかったのだ。
「……どうした、ナマエ。口に合わなかったか?」
エルヴィンが、彼女の耳元で優しく囁いた。
「いいえ。……幸せすぎて、少しだけ、夢じゃないかって怖くなっただけです」
「夢じゃないさ。……ほら、これほど賑やかな『現実』が、他にどこにある?」
エルヴィンはナマエの手に自分の手を重ね、指を絡めた。
「おい、肉が冷めるぞ。早く食え、馬鹿共が」
リヴァイが呆れたように言いながら、ナマエの皿に大きな肉の塊を取り分ける。
「リヴァイ、君こそさっきからナマエにばかりいいところを譲ってるじゃないか! さては君も彼女が可愛くて仕方ないんだね?」
「……黙れ、クソメガネ。殺すぞ」
夜が更けるまで、笑い声は絶えなかった。 窓の外では、一番星が静かに瞬いている。 かつて「心臓を捧げよ」と叫んだ戦士たちは、今、その心臓を、愛する人と、共に歩む友のために、穏やかに、熱く拍動させている。
仲間たちが帰った後、静まり返った部屋で、二人はテラスに出た。 夜風がナマエの髪を揺らし、エルヴィンの清涼な香りを運んでくる。
「……楽しかったですね、エルヴィンさん」
「ああ。……あいつらも、ようやく報われた気がするよ。……もちろん、俺もな」
エルヴィンはナマエを背後から包み込み、その首元に顔を埋めた。 そこにあるのは、かつての戦場での緊張感ではない。一人の女性を心から愛し、守り抜こうとする、一人の男の切実な熱情だった。
「愛しているよ、ナマエ。……君がこの世界に連れ戻してくれた俺の人生を、一生をかけて、君に捧げよう」
「私も、愛しています。……エルヴィンさん。明日も、明後日も、ずっと隣にいてくださいね」
繋いだ手の指先から、永遠の約束が溶け出していく。 止まることのない時の中で、二人の物語は、これからも色鮮やかに、どこまでも続いていく。 春の月明かりが、幸せな二人の影を、いつまでも長く、優しく、床に描いていた。
学長公舎を兼ねたエルヴィンとナマエの新居には、今夜、戦場を共に駆け抜けた「家族」たちが集まっていた。
「おい、エルヴィン。この棚の角に埃が溜まっているぞ。お前、学長の椅子に座りすぎて掃除の仕方を忘れたのか」
玄関を開けるなり、リヴァイ教授が指先でチェストを撫で、険しい顔で言い放った。手には手土産の最高級茶葉ではなく、なぜか最新型の高性能ハンディクリーナーが握られている。
「……相変わらずだな、リヴァイ。今日は掃除の査定に来てもらったわけじゃないんだが」
エプロン姿のエルヴィンが、苦笑しながらリヴァイを迎え入れる。かつて人類の希望を背負ったその手は、今ではナマエと一緒にキッチンに立ち、野菜を刻む穏やかな日常に馴染んでいた。
「リヴァイ、今日くらい勘弁してあげなよ! あー、ナマエ! 会いたかったよ! 結婚してからますます綺麗になったね。エルヴィンに食べられちゃってないかい?」
ハンジが嵐のように現れ、キッチンで料理を仕上げていたナマエに抱きついた。
「ハンジさん、お久しぶりです!もう、変なこと言わないでください」
ナマエが頬を赤らめて笑う。その指先には、エルヴィンとお揃いのエメラルドの指輪が、キッチンの灯りを受けて幸福そうに輝いていた。
最後に、大きな影が音もなく滑り込んできた。ミケだ。
「……クンクン。……良い匂いだ。今日のメインは、猪肉の赤ワイン煮込みか」
「さすがミケさん、正解です! あの地下で食べた缶詰の味を、私なりに再現してみたんです」
ナマエの言葉に、その場にいた全員の動きが一瞬だけ止まった。 かつての地獄。閉ざされた地下室で、死を隣り合わせにしながら分け合った、あの肉の味。 今では笑い話のように語れるけれど、その味の記憶こそが、彼らを繋ぐ消えない絆でもあった。
「……フン、あのクソ不味い缶詰よりはマシそうだな」
リヴァイが不器用な手つきで、ナマエの頭を乱暴に撫でた。
「さあ、始めようか。皆、揃ったことだしね」
エルヴィンの合図で、賑やかな夕食会が始まった。
テーブルの上には、ナマエが腕を振るった料理の数々と、リヴァイが厳選したワインが並んでいる。 かつては、明日をも知れぬ命を惜しむように、静かに、重苦しく交わされていた杯。 けれど今は、次の一手の軍略ではなく、大学の予算会議の愚痴や、ハンジが見つけた新しい粘菌の話、そしてナマエが勤める図書館に新しく入った希少本の話題で持ちきりだった。
「それでね、エルヴィン! リヴァイったら、こないだの教授会で居眠りしてた学生の机を、無言で除菌シートで拭き始めたんだよ。学生、泣きそうになってたよ!」
「……チッ、あいつの机はあまりに不潔だった。教育の一環だ」
ハンジの暴露に、リヴァイが不機嫌そうにワインを煽る。
「ははは! それは目に浮かぶようだ。……ナマエ、リヴァイに新しい除菌グッズのリストを作ってやってくれないか。彼は、世界の不潔さと戦うのが生きがいのようだからな」
エルヴィンがナマエの肩を抱き寄せ、上機嫌に笑う。
ナマエは、その温かな重みに身を任せながら、視界が微かに潤むのを感じていた。 かつて夢に見た、彼が腕を失い、消えていく光景。それとは真逆の、両腕を広げて自分を抱きしめ、友と笑い合うエルヴィンの姿。 夢を現実に変えるために、地獄を潜り抜けた日々は、決して無駄ではなかったのだ。
「……どうした、ナマエ。口に合わなかったか?」
エルヴィンが、彼女の耳元で優しく囁いた。
「いいえ。……幸せすぎて、少しだけ、夢じゃないかって怖くなっただけです」
「夢じゃないさ。……ほら、これほど賑やかな『現実』が、他にどこにある?」
エルヴィンはナマエの手に自分の手を重ね、指を絡めた。
「おい、肉が冷めるぞ。早く食え、馬鹿共が」
リヴァイが呆れたように言いながら、ナマエの皿に大きな肉の塊を取り分ける。
「リヴァイ、君こそさっきからナマエにばかりいいところを譲ってるじゃないか! さては君も彼女が可愛くて仕方ないんだね?」
「……黙れ、クソメガネ。殺すぞ」
夜が更けるまで、笑い声は絶えなかった。 窓の外では、一番星が静かに瞬いている。 かつて「心臓を捧げよ」と叫んだ戦士たちは、今、その心臓を、愛する人と、共に歩む友のために、穏やかに、熱く拍動させている。
仲間たちが帰った後、静まり返った部屋で、二人はテラスに出た。 夜風がナマエの髪を揺らし、エルヴィンの清涼な香りを運んでくる。
「……楽しかったですね、エルヴィンさん」
「ああ。……あいつらも、ようやく報われた気がするよ。……もちろん、俺もな」
エルヴィンはナマエを背後から包み込み、その首元に顔を埋めた。 そこにあるのは、かつての戦場での緊張感ではない。一人の女性を心から愛し、守り抜こうとする、一人の男の切実な熱情だった。
「愛しているよ、ナマエ。……君がこの世界に連れ戻してくれた俺の人生を、一生をかけて、君に捧げよう」
「私も、愛しています。……エルヴィンさん。明日も、明後日も、ずっと隣にいてくださいね」
繋いだ手の指先から、永遠の約束が溶け出していく。 止まることのない時の中で、二人の物語は、これからも色鮮やかに、どこまでも続いていく。 春の月明かりが、幸せな二人の影を、いつまでも長く、優しく、床に描いていた。
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