自由な空に、君と愛を。
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深夜の団長室。エルヴィンは、次回の作戦立案……ではなく、一枚の羊皮紙に苦戦していた。
心にあるのは、愛する副官・ナマエへの想い。普段、言葉では尽くせない熱情を、彼は「詩」という形で昇華させようとしていたのである。
「……いや、これは少し表現が甘すぎるか……」
彼は眉をひそめ、書きかけの紙を丸めると、背後の屑籠へと放り投げた。だが、運命の悪戯か。その紙玉は屑籠の縁に当たり、床の上を転がって、扉の隙間のすぐ近くで静止したのである。
疲れ果てたエルヴィンはそれに気づかず、そのまま眠りについてしまった。
「大変だ!! みんな、集まってくれ! エルヴィンの最高にクールな暗号を見つけたぞ!!」
翌朝、本部の会議室。ハンジの絶叫が響き渡った。
テーブルを囲むのは、寝不足で不機嫌なリヴァイ、鼻をクンクンさせているミケ、そして事態が飲み込めず困惑するナマエ。
最後に、威厳を湛えて入室してきたエルヴィンが、ハンジの手にある「見覚えのある紙屑」を見た瞬間、その顔面は調査兵団の壁外生存率並みに蒼白となった。
「ハ、ハンジ……。それは、ただのゴミだ。返してくれないか」
「何を言ってるんだいエルヴィン! 謙遜しなくていい! この複雑な比喩、重層的なレトリック……これこそ君が徹夜で練り上げた、対巨人特殊攪乱作戦の全容だろう!?」
ハンジは眼鏡をキラリと光らせると、丸まった紙を丁寧に広げ、朗読を始めた。
「まず冒頭だ! 『暁に燃える黄金の冠、それは自由への灯火』……! リヴァイ、どう思う!?」
「……チッ。朝方の奇襲作戦か。黄金の冠ってのは、目標地点の古城か何かの暗喩か?」
(……違う。ナマエ、君の朝の寝癖に光が当たって綺麗だったっていう話だ……)
「次が凄いんだ! 『翠の深淵、その瞳の奥底に、私は永遠に溺れたい』! ミケ、これの意味するところは!?」
「……クンクン。……深淵……地下……。地下巨大空間への巨人の大規模誘導作戦か。翠は……森林地帯を通るルートを指しているのか?」
(……頼む、やめてくれ。ナマエの瞳に見つめられると正気を失うと言いたいだけなんだ……)
ナマエは隣で、エルヴィンがじっと見つめていることに気づき、顔が急速に茹で上がっていく。
「そして極めつけはこれだ! 『羽ばたく翼を重ね、孤独な夜を終わらせよう。今宵、君という名の真実を暴く』!!」
ハンジが机を叩く。
「『君という名の真実』……つまり、壁の中に潜む巨人の正体を、今夜、一斉検挙するという合図だね!? エルヴィン!!」
「……おい、エルヴィン。どうした。顔から汗が滝のように流れてるぞ」
リヴァイが冷たく問いかける。
「……いや。……作戦の全容を、あまりに的確に読み解かれたことに……驚いただけだ」
「じゃあ、この『作戦:エメラルド・アビス(翠の深淵)』、承認ということでいいんだね!?」
ハンジが目を輝かせて詰め寄る。
エルヴィンは、震える手で自身のループタイを整えた。
ここで「それは副団長へのラブレターだ」と白状すれば、団長としての威厳は消滅し、リヴァイには一生「ポエマー」と罵られ、ミケには「恋の匂いがする」と一生嗅がれるだろう。
「……ああ。承認する。……全軍、その……『深淵に溺れる』準備をしておけ」
「やったー!! 流石エルヴィン! ロマンチックな作戦名だね!!」
嵐のような会議が終わり、全員が去った後の会議室。
残されたのは、魂が抜けたようなエルヴィンと、真っ赤な顔で俯くナマエ。
「……ナマエ。……すまない」
「……いえ。あの……『黄金の冠』っていうのは、その……」
「……忘れてくれ。……死ぬ気で、その、巨人を深淵に溺れさせる作戦を、今から本当に考え出すから……」
エルヴィンは、これまでの人生で最も困難な「実戦」に挑む決意を固めた。
一方、ナマエは心の中で(……続きが読みたいなんて、言えない……)と、密かに思うのだった。
