自由な空に、君と愛を。
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吹き荒れる風が、戦場に満ちた鉄錆と蒸気の臭いを巻き上げていく。エレン奪還作戦――それは、人類の存亡を賭けた凄惨な乱戦の極致だった。
ナマエは、死神の鎌が振り下ろされる瞬間を、網膜に焼き付く予知の残像として追っていた。立体機動装置のワイヤーを巨人の肩に打ち込み、跳躍する。彼女の視線の先には、最前線で指揮を執るエルヴィンの雄々しい背中があった。
(来る……右だ、右から来る……!)
予言された惨劇の刻限が迫る。ナマエは喉が裂けるほどの叫びを上げ、エルヴィンの右側へと割り込んだ。
「団長、右です! 避けて――!」
だが、運命という名の濁流は無慈悲だった。死角から現れた巨人の顎が、予想を超えた速度で空を裂く。ナマエのブレードが巨人の口角を切り裂いたが、あと数センチ、届かなかった。 鈍い衝撃音と、肉が潰れる不快な音が戦場に響く。
「……あ……」
ナマエの視界が真っ赤に染まった。エルヴィンの右腕が、肩の付け根から巨人の口腔へと消えていく。鮮血が噴水のように舞い、彼の端正な顔を汚した。
「エルヴィン団長!!」
ナマエは絶叫し、巨人のうなじを狂気的な速さで削ぎ落とした。だが、失われた肉体は戻らない。落馬し、泥にまみれるエルヴィン。ナマエはすぐさま彼の元へ降り立ち、止血帯を強く締め上げた。
「……ナマエ……構うな……」
激痛に顔を歪めながらも、彼の碧い瞳には依然として、鋼のような意志の灯が消えていなかった。彼は残された左腕を天に突き出し、肺腑を絞り出すような声で吠えた。
「進め!! エレンはすぐそこだ! 進め!!」
「もういい、もういいから……っ!」
ナマエは涙で視界を滲ませながら、彼を抱きしめた。未来を変えられなかった無力感と、それでも折れない彼の気高さに、胸が張り裂けそうだった。
――作戦終了後。
右袖を失ったエルヴィンの看病を、ナマエは献身的に続けた。包帯を替える指先が震えるたび、エルヴィンは左手で彼女の頬を優しく撫でる。
「君のせいではない。むしろ、君がいたから俺は命を繋げた。……悔やむな、ナマエ」
「……でも、あなたは腕を……私の夢の通りに……」
「腕一本で、世界の真実へと近づけるなら安いものだ。……そうだろう?」
彼は寂しげに、けれど強く微笑んだ。
しかし、平穏は束の間だった。
ウォール・マリア最終奪還作戦。シガンシナ区への帰還を目前に控えた夜、ナマエはまた、あの最悪の夢を見た。 吹き荒れる礫の雨。砕け散る馬と兵士。そして、その中央で静かに落命するエルヴィンの姿。
「……嫌、絶対に嫌……!」
ナマエは青ざめた顔で立ち上がり、隣の部屋で待機していたリヴァイの元へと走った。
「リヴァイ兵長! お願いです、話を聞いてください!」
深夜、月明かりだけが照らす無機質な廊下。リヴァイは鋭い眼光でナマエを見つめ、短く「入れ」と告げた。ナマエは震える声で、これから起こるであろう「獣の巨人」による投石と、エルヴィンの死を語った。
「……投石だと? あの野郎が馬の上で、挽肉になるっていうのか」
「そうです。……リヴァイ兵長、あなたにしか頼めないんです。彼を、シガンシナに行かせないでください。行けば……彼は死にます」
リヴァイは長い沈黙の後、小さく溜息をついた。
「……あいつが、地下室への未練を捨てて大人しく残るとは思えねえが……。ナマエ、お前に懸けてみる価値はありそうだな」
翌朝、団長室。ナマエとリヴァイは、出陣の準備を進めるエルヴィンの前に立った。
「団長。今回の作戦、あなたはここに残ってください」
ナマエの言葉に、エルヴィンは動きを止めた。その碧い瞳には、地下室への狂おしいほどの執着と、指揮官としての重責が渦巻いている。
「何を言うんだ、ナマエ。指揮官が残ってどうする。それに、俺は……真実を、見なければならないんだ」
「行けば、死にます!!」
ナマエは机を叩き、彼に詰め寄った。
「投石です。巨大な獣の巨人が放つ岩の雨に打たれ、あなたは馬の上で、夢の半ばで潰える……! 私には見えるんです。あなたが仲間を死地へ追いやり、自らも消えていく姿が!」
エルヴィンは絶句した。ナマエの語る予言は、あまりにも具体的で、そして彼自身が密かに覚悟していた「最期」と重なっていた。
「リヴァイ、お前も同じ意見か?」
「……ああ。お前が死ぬ姿は見たくねえ。……夢を諦めて死ね、とは言わねえ。だが、生きててくれなきゃ困るんだよ」
リヴァイの言葉が、エルヴィンの心に深く食い込む。
「俺が……行かないというのか。仲間を特攻させ、自分だけが生き残るなど……そんなことが許されると思うか」
「いいえ、団長」
ナマエはエルヴィンの膝元に跪き、その残された左手を両手で包み込んだ。
「特攻の指揮は、私が執ります。副団長である私が、新兵たちを率いて囮になります。……あなたはここで、生きて、帰ってきた私たちを迎えてください。それが、私の……そしてリヴァイ兵長の、切なる願いです」
「ナマエ……君は、俺に夢を捨てて生きろと言うのか」
「いいえ。あなたの夢を、私が代わりに守り抜くと言っているんです。……生きて、地下室のその先の世界を、私と一緒に見てください。」
ナマエの瞳から零れた大粒の涙が、エルヴィンの手の甲を濡らす。エルヴィンは激しく葛藤した。父との約束、仲間たちの屍、そして、目の前で自分を生かそうとする恋人の献身。
やがて、彼は震える左手でナマエの後頭部を引き寄せ、額を合わせた。
「……わかった。君に、すべてを託そう」
作戦当日。シガンシナ区の外壁の外。
ナマエは欠けた右袖を翻すエルヴィンの姿を、見つめていた。彼は残った左手で、静かに彼女に敬礼を贈った。
「総員……私に続け!!」
ナマエは新兵たちを鼓舞し、降り注ぐ礫の雨の中を駆け抜けた。
視界が火花を散らし、馬の嘶きと悲鳴が混じる。左脇腹に、焼けるような衝撃が走った。
「ぐ……っ……!」
それでも、彼女の瞳には、壁の上で生き続ける男の影だけが映っていた。
(変えてみせる……変えてみせたよ、エルヴィン団長……)
ナマエは、死神の鎌が振り下ろされる瞬間を、網膜に焼き付く予知の残像として追っていた。立体機動装置のワイヤーを巨人の肩に打ち込み、跳躍する。彼女の視線の先には、最前線で指揮を執るエルヴィンの雄々しい背中があった。
(来る……右だ、右から来る……!)
予言された惨劇の刻限が迫る。ナマエは喉が裂けるほどの叫びを上げ、エルヴィンの右側へと割り込んだ。
「団長、右です! 避けて――!」
だが、運命という名の濁流は無慈悲だった。死角から現れた巨人の顎が、予想を超えた速度で空を裂く。ナマエのブレードが巨人の口角を切り裂いたが、あと数センチ、届かなかった。 鈍い衝撃音と、肉が潰れる不快な音が戦場に響く。
「……あ……」
ナマエの視界が真っ赤に染まった。エルヴィンの右腕が、肩の付け根から巨人の口腔へと消えていく。鮮血が噴水のように舞い、彼の端正な顔を汚した。
「エルヴィン団長!!」
ナマエは絶叫し、巨人のうなじを狂気的な速さで削ぎ落とした。だが、失われた肉体は戻らない。落馬し、泥にまみれるエルヴィン。ナマエはすぐさま彼の元へ降り立ち、止血帯を強く締め上げた。
「……ナマエ……構うな……」
激痛に顔を歪めながらも、彼の碧い瞳には依然として、鋼のような意志の灯が消えていなかった。彼は残された左腕を天に突き出し、肺腑を絞り出すような声で吠えた。
「進め!! エレンはすぐそこだ! 進め!!」
「もういい、もういいから……っ!」
ナマエは涙で視界を滲ませながら、彼を抱きしめた。未来を変えられなかった無力感と、それでも折れない彼の気高さに、胸が張り裂けそうだった。
――作戦終了後。
右袖を失ったエルヴィンの看病を、ナマエは献身的に続けた。包帯を替える指先が震えるたび、エルヴィンは左手で彼女の頬を優しく撫でる。
「君のせいではない。むしろ、君がいたから俺は命を繋げた。……悔やむな、ナマエ」
「……でも、あなたは腕を……私の夢の通りに……」
「腕一本で、世界の真実へと近づけるなら安いものだ。……そうだろう?」
彼は寂しげに、けれど強く微笑んだ。
しかし、平穏は束の間だった。
ウォール・マリア最終奪還作戦。シガンシナ区への帰還を目前に控えた夜、ナマエはまた、あの最悪の夢を見た。 吹き荒れる礫の雨。砕け散る馬と兵士。そして、その中央で静かに落命するエルヴィンの姿。
「……嫌、絶対に嫌……!」
ナマエは青ざめた顔で立ち上がり、隣の部屋で待機していたリヴァイの元へと走った。
「リヴァイ兵長! お願いです、話を聞いてください!」
深夜、月明かりだけが照らす無機質な廊下。リヴァイは鋭い眼光でナマエを見つめ、短く「入れ」と告げた。ナマエは震える声で、これから起こるであろう「獣の巨人」による投石と、エルヴィンの死を語った。
「……投石だと? あの野郎が馬の上で、挽肉になるっていうのか」
「そうです。……リヴァイ兵長、あなたにしか頼めないんです。彼を、シガンシナに行かせないでください。行けば……彼は死にます」
リヴァイは長い沈黙の後、小さく溜息をついた。
「……あいつが、地下室への未練を捨てて大人しく残るとは思えねえが……。ナマエ、お前に懸けてみる価値はありそうだな」
翌朝、団長室。ナマエとリヴァイは、出陣の準備を進めるエルヴィンの前に立った。
「団長。今回の作戦、あなたはここに残ってください」
ナマエの言葉に、エルヴィンは動きを止めた。その碧い瞳には、地下室への狂おしいほどの執着と、指揮官としての重責が渦巻いている。
「何を言うんだ、ナマエ。指揮官が残ってどうする。それに、俺は……真実を、見なければならないんだ」
「行けば、死にます!!」
ナマエは机を叩き、彼に詰め寄った。
「投石です。巨大な獣の巨人が放つ岩の雨に打たれ、あなたは馬の上で、夢の半ばで潰える……! 私には見えるんです。あなたが仲間を死地へ追いやり、自らも消えていく姿が!」
エルヴィンは絶句した。ナマエの語る予言は、あまりにも具体的で、そして彼自身が密かに覚悟していた「最期」と重なっていた。
「リヴァイ、お前も同じ意見か?」
「……ああ。お前が死ぬ姿は見たくねえ。……夢を諦めて死ね、とは言わねえ。だが、生きててくれなきゃ困るんだよ」
リヴァイの言葉が、エルヴィンの心に深く食い込む。
「俺が……行かないというのか。仲間を特攻させ、自分だけが生き残るなど……そんなことが許されると思うか」
「いいえ、団長」
ナマエはエルヴィンの膝元に跪き、その残された左手を両手で包み込んだ。
「特攻の指揮は、私が執ります。副団長である私が、新兵たちを率いて囮になります。……あなたはここで、生きて、帰ってきた私たちを迎えてください。それが、私の……そしてリヴァイ兵長の、切なる願いです」
「ナマエ……君は、俺に夢を捨てて生きろと言うのか」
「いいえ。あなたの夢を、私が代わりに守り抜くと言っているんです。……生きて、地下室のその先の世界を、私と一緒に見てください。」
ナマエの瞳から零れた大粒の涙が、エルヴィンの手の甲を濡らす。エルヴィンは激しく葛藤した。父との約束、仲間たちの屍、そして、目の前で自分を生かそうとする恋人の献身。
やがて、彼は震える左手でナマエの後頭部を引き寄せ、額を合わせた。
「……わかった。君に、すべてを託そう」
作戦当日。シガンシナ区の外壁の外。
ナマエは欠けた右袖を翻すエルヴィンの姿を、見つめていた。彼は残った左手で、静かに彼女に敬礼を贈った。
「総員……私に続け!!」
ナマエは新兵たちを鼓舞し、降り注ぐ礫の雨の中を駆け抜けた。
視界が火花を散らし、馬の嘶きと悲鳴が混じる。左脇腹に、焼けるような衝撃が走った。
「ぐ……っ……!」
それでも、彼女の瞳には、壁の上で生き続ける男の影だけが映っていた。
(変えてみせる……変えてみせたよ、エルヴィン団長……)
