自由な空に、君と愛を。
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調査兵団本部の夜は、石造りの壁が吸い込む冷気と共に更けていく。
団長執務室の中、机の上に置かれたランプの炎が、微かな風に揺れて二人の影を壁に大きく、歪に映し出していた。
「……ナマエ、今日はもういい。後の書類は俺が片付けておこう」
エルヴィンの声が、夜の静寂に溶け込むように低く響く。
彼は椅子から立ち上がると、隣で資料を整理していた副団長のナマエの肩に、大きな手をそっと置いた。その掌から伝わる熱が、厚い軍服を通り越してナマエの肌に直接触れたような錯覚を呼ぶ。
「いいえ。……あなた一人を、この書類の山の中に残していくわけにはいきません」
ナマエが振り向き、彼を見上げた瞬間、エルヴィンの碧い瞳に宿る熱に射抜かれた。
彼は無言のまま、彼女の腰を引き寄せた。カチリ、と革のベルトが触れ合う硬質な音が、密室の静寂をかき乱す。
「……君は、どうしてそう頑固なんだ」
エルヴィンはナマエの首筋に鼻先を寄せ、深く、その香りを吸い込んだ。
清潔な石鹸の匂い、そして彼女自身の、甘く熱い体温の香り。
耐えきれず、エルヴィンの唇がナマエのうなじを割るように押し当てられた。
「……っ、だん、ちょう……。ここは、本部です……」
ナマエの制止は、彼女自身の吐息によって甘く溶けていく。エルヴィンの手がナマエのシャツの裾から侵入し、滑らかな背中を力強く撫で上げた。
情熱が昂り、二人の呼吸が重なり合おうとした、その時だった。
廊下の向こうから、複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。
――カツ、カツ、カツ。
規則正しく、冷徹なまでの正確さを刻むブーツの音。それは「人類最強」の男、リヴァイのものだ。
さらに、それとは対照的な軽やかな歩調のハンジ、そして重厚な足音のミケ。
「――っ!!」
ナマエは弾かれたようにエルヴィンの胸から離れた。
心臓が肋骨を突き破らんばかりに跳ねる。彼女は乱れた髪を指先で整え、シャツの襟元を正した。エルヴィンもまた、一瞬で「団長」の無機質な仮面を被り、椅子に深く腰を下ろした。
ドンドンドンドン!
ノックというよりは叩きつけるような音と共に、扉が勢いよく開かれた。
「おい、エルヴィン。まだクソ長い書類仕事に執着してやがんのか」
リヴァイが鋭い眼光を室内へ走らせる。
「やあ! 忙しいところ失礼するよ。明日の巨人捕獲作戦の最終確認をね……おや? ナマエも一緒だったのかい?」
ハンジが眼鏡の奥の瞳を好奇心に輝かせて入ってくる。
そして最後に入ってきたミケが、不意に足を止め、鼻をクンと鳴らした。
ナマエの全身に、氷のような戦慄が走る。
(ミケさんの鼻を、誤魔化せるわけがない……!)
「……クンクン。……クンクン」
ミケがナマエのすぐ側まで歩み寄り、その首筋近くで深く息を吸った。
「み、ミケ分隊長……? 何か……?」
「……。……おかしいな。ナマエ、お前……いつもと匂いが違う。……それから、エルヴィン」
ミケの鋭い視線が、机の向こうのエルヴィンに向けられた。
「……お前の匂いも、この部屋に混ざっている。……それも、いつもの事務的な汗の匂いではない。もっと、こう……」
「……ミケ、何の話だ」
エルヴィンの声は、驚くほど冷静だった。
彼は組んだ手の上に顎を乗せ、碧い瞳でミケを静かに射抜く。
「ナマエ副団長とは、先ほどまで今後の予算編成について、かなり踏み込んだ議論をしていた。……部屋に熱がこもっているのは、そのせいだろう」
「……フン。議論、か。……にしては、ナマエの顔が妙に赤いな」
リヴァイが歩み寄り、ナマエの顔を至近距離で覗き込んだ。その瞳は、まるで心臓の奥底まで透かそうとするかのように鋭い。
「……頬の紅潮。……それに、呼吸の乱れ。……おい、ナマエ。熱でもあるのか。それとも、エルヴィンに何か無理難題でも押し付けられたか」
「い、いえ! そんなことは……! 先ほど、議論が白熱してしまい、少々頭に血が上っただけで……!」
ナマエは必死に声を整えたが、自分でも分かるほど声が震えている。隣ではハンジが、ナマエの机の上に置かれた「あるもの」に手を伸ばしていた。
「おやおや? ナマエ。この万年筆……エルヴィンのじゃないかい? 君の資料の上に転がっているけど」
――っ!!
それは、先ほどエルヴィンに抱き寄せられた際、机から落ちそうになったのを彼が慌てて置いたものだった。
「……それは、団長に借りたものです! 私の筆記具がインク切れを起こしてしまったので……!」
その場に、重苦しい沈黙が流れる。
リヴァイの冷徹な観察眼。ミケの超人的な嗅覚。ハンジの鋭い直感。
三人の視線が、逃げ場のないナマエへと集中する。
「……エルヴィン。お前、何か隠してねえだろうな」
リヴァイが低く、脅すような声で言った、その時。
「――リヴァイ、ハンジ、ミケ。君たちの報告は、そんなに緊急を要するものなのか?」
エルヴィンが、圧倒的な威圧感を持って立ち上がった。
「ナマエ副団長は、私の指示で限界まで働いてくれている。これ以上の追求は、彼女の献身に対する侮辱だ。……用件がないなら、明日の朝にしてくれないか」
「団長」としての、有無を言わさぬ峻烈な命令。
リヴァイは舌打ちをし、ミケは最後にもう一度だけナマエの匂いを嗅ぐと、フンと鼻を鳴らした。
「……分かったよ、エルヴィン。そんなに怖い顔をしないでくれ。……行こう、ミケ、リヴァイ。お邪魔虫は退散しようじゃないか」
ハンジが苦笑しながら二人を促し、三人はようやく部屋を去っていった。
廊下に響く足音が遠ざかり、完全に聞こえなくなるまで、ナマエは息を止めていた。
「…………っ、はぁ……っ……!」
ナマエは崩れ落ちるように壁に背を預けた。
「……死ぬかと思いました……。ミケさんに、絶対にバレたかと……」
「……彼らの勘を甘く見ていたな。特にミケの鼻は、計算外だった」
エルヴィンが机を回り、ナマエの元へ歩み寄る。
その顔には、先ほどまでの「団長」の無機質さは消え、どこか愉しげで、それでいて激しい熱を帯びた「男」の表情が浮かんでいた。
「……だが、あんなふうに追い詰められる君を見るのは、悪くない気分だったよ」
「えっ……? 何を……っ」
エルヴィンはナマエの両手首を掴み、壁へと押し付けた。先ほどリヴァイたちがいたというスリルが、彼の独占欲に油を注いだらしい。
「君の赤らんだ頬。必死に嘘を紡ぐ唇。……俺以外の男に、あんなに近くで観察されたのは、実に不愉快だ。……その分、たっぷりと『上書き』させてもらおう」
「……エルヴィン団長…っ」
エルヴィンはナマエを抱き上げ、先ほどまで予算編成を語っていたはずの机の上に、再び彼女を押し倒した。
散らばる書類。転がる万年筆。
規律の象徴であるはずの場所で、二人の情動は、先ほどの危うい緊張感を糧にして、さらに深く、激しく、夜の闇へと堕ちていった。
団長執務室の中、机の上に置かれたランプの炎が、微かな風に揺れて二人の影を壁に大きく、歪に映し出していた。
「……ナマエ、今日はもういい。後の書類は俺が片付けておこう」
エルヴィンの声が、夜の静寂に溶け込むように低く響く。
彼は椅子から立ち上がると、隣で資料を整理していた副団長のナマエの肩に、大きな手をそっと置いた。その掌から伝わる熱が、厚い軍服を通り越してナマエの肌に直接触れたような錯覚を呼ぶ。
「いいえ。……あなた一人を、この書類の山の中に残していくわけにはいきません」
ナマエが振り向き、彼を見上げた瞬間、エルヴィンの碧い瞳に宿る熱に射抜かれた。
彼は無言のまま、彼女の腰を引き寄せた。カチリ、と革のベルトが触れ合う硬質な音が、密室の静寂をかき乱す。
「……君は、どうしてそう頑固なんだ」
エルヴィンはナマエの首筋に鼻先を寄せ、深く、その香りを吸い込んだ。
清潔な石鹸の匂い、そして彼女自身の、甘く熱い体温の香り。
耐えきれず、エルヴィンの唇がナマエのうなじを割るように押し当てられた。
「……っ、だん、ちょう……。ここは、本部です……」
ナマエの制止は、彼女自身の吐息によって甘く溶けていく。エルヴィンの手がナマエのシャツの裾から侵入し、滑らかな背中を力強く撫で上げた。
情熱が昂り、二人の呼吸が重なり合おうとした、その時だった。
廊下の向こうから、複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。
――カツ、カツ、カツ。
規則正しく、冷徹なまでの正確さを刻むブーツの音。それは「人類最強」の男、リヴァイのものだ。
さらに、それとは対照的な軽やかな歩調のハンジ、そして重厚な足音のミケ。
「――っ!!」
ナマエは弾かれたようにエルヴィンの胸から離れた。
心臓が肋骨を突き破らんばかりに跳ねる。彼女は乱れた髪を指先で整え、シャツの襟元を正した。エルヴィンもまた、一瞬で「団長」の無機質な仮面を被り、椅子に深く腰を下ろした。
ドンドンドンドン!
ノックというよりは叩きつけるような音と共に、扉が勢いよく開かれた。
「おい、エルヴィン。まだクソ長い書類仕事に執着してやがんのか」
リヴァイが鋭い眼光を室内へ走らせる。
「やあ! 忙しいところ失礼するよ。明日の巨人捕獲作戦の最終確認をね……おや? ナマエも一緒だったのかい?」
ハンジが眼鏡の奥の瞳を好奇心に輝かせて入ってくる。
そして最後に入ってきたミケが、不意に足を止め、鼻をクンと鳴らした。
ナマエの全身に、氷のような戦慄が走る。
(ミケさんの鼻を、誤魔化せるわけがない……!)
「……クンクン。……クンクン」
ミケがナマエのすぐ側まで歩み寄り、その首筋近くで深く息を吸った。
「み、ミケ分隊長……? 何か……?」
「……。……おかしいな。ナマエ、お前……いつもと匂いが違う。……それから、エルヴィン」
ミケの鋭い視線が、机の向こうのエルヴィンに向けられた。
「……お前の匂いも、この部屋に混ざっている。……それも、いつもの事務的な汗の匂いではない。もっと、こう……」
「……ミケ、何の話だ」
エルヴィンの声は、驚くほど冷静だった。
彼は組んだ手の上に顎を乗せ、碧い瞳でミケを静かに射抜く。
「ナマエ副団長とは、先ほどまで今後の予算編成について、かなり踏み込んだ議論をしていた。……部屋に熱がこもっているのは、そのせいだろう」
「……フン。議論、か。……にしては、ナマエの顔が妙に赤いな」
リヴァイが歩み寄り、ナマエの顔を至近距離で覗き込んだ。その瞳は、まるで心臓の奥底まで透かそうとするかのように鋭い。
「……頬の紅潮。……それに、呼吸の乱れ。……おい、ナマエ。熱でもあるのか。それとも、エルヴィンに何か無理難題でも押し付けられたか」
「い、いえ! そんなことは……! 先ほど、議論が白熱してしまい、少々頭に血が上っただけで……!」
ナマエは必死に声を整えたが、自分でも分かるほど声が震えている。隣ではハンジが、ナマエの机の上に置かれた「あるもの」に手を伸ばしていた。
「おやおや? ナマエ。この万年筆……エルヴィンのじゃないかい? 君の資料の上に転がっているけど」
――っ!!
それは、先ほどエルヴィンに抱き寄せられた際、机から落ちそうになったのを彼が慌てて置いたものだった。
「……それは、団長に借りたものです! 私の筆記具がインク切れを起こしてしまったので……!」
その場に、重苦しい沈黙が流れる。
リヴァイの冷徹な観察眼。ミケの超人的な嗅覚。ハンジの鋭い直感。
三人の視線が、逃げ場のないナマエへと集中する。
「……エルヴィン。お前、何か隠してねえだろうな」
リヴァイが低く、脅すような声で言った、その時。
「――リヴァイ、ハンジ、ミケ。君たちの報告は、そんなに緊急を要するものなのか?」
エルヴィンが、圧倒的な威圧感を持って立ち上がった。
「ナマエ副団長は、私の指示で限界まで働いてくれている。これ以上の追求は、彼女の献身に対する侮辱だ。……用件がないなら、明日の朝にしてくれないか」
「団長」としての、有無を言わさぬ峻烈な命令。
リヴァイは舌打ちをし、ミケは最後にもう一度だけナマエの匂いを嗅ぐと、フンと鼻を鳴らした。
「……分かったよ、エルヴィン。そんなに怖い顔をしないでくれ。……行こう、ミケ、リヴァイ。お邪魔虫は退散しようじゃないか」
ハンジが苦笑しながら二人を促し、三人はようやく部屋を去っていった。
廊下に響く足音が遠ざかり、完全に聞こえなくなるまで、ナマエは息を止めていた。
「…………っ、はぁ……っ……!」
ナマエは崩れ落ちるように壁に背を預けた。
「……死ぬかと思いました……。ミケさんに、絶対にバレたかと……」
「……彼らの勘を甘く見ていたな。特にミケの鼻は、計算外だった」
エルヴィンが机を回り、ナマエの元へ歩み寄る。
その顔には、先ほどまでの「団長」の無機質さは消え、どこか愉しげで、それでいて激しい熱を帯びた「男」の表情が浮かんでいた。
「……だが、あんなふうに追い詰められる君を見るのは、悪くない気分だったよ」
「えっ……? 何を……っ」
エルヴィンはナマエの両手首を掴み、壁へと押し付けた。先ほどリヴァイたちがいたというスリルが、彼の独占欲に油を注いだらしい。
「君の赤らんだ頬。必死に嘘を紡ぐ唇。……俺以外の男に、あんなに近くで観察されたのは、実に不愉快だ。……その分、たっぷりと『上書き』させてもらおう」
「……エルヴィン団長…っ」
エルヴィンはナマエを抱き上げ、先ほどまで予算編成を語っていたはずの机の上に、再び彼女を押し倒した。
散らばる書類。転がる万年筆。
規律の象徴であるはずの場所で、二人の情動は、先ほどの危うい緊張感を糧にして、さらに深く、激しく、夜の闇へと堕ちていった。
