自由な空に、君と愛を。
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第五十七回壁外調査。
それは人類にとって、そして調査兵団にとって、血で血を洗うような凄惨な行軍となった。
巨大樹の森に響き渡る女型の巨人の咆哮、次々と散っていく精鋭たちの命。ナマエはリヴァイ班の増援として、そしてエルヴィンの懐刀として、馬を飛ばした。
「リヴァイ兵長、ミカサ! エレンを連れ戻します!」
叫びと共に立体機動装置を噴射する。風が耳を裂き、視界が加速する。エレンを飲み込んだ女型の巨人が目の前に迫る。リヴァイの神速の剣技に合わせ、ナマエはミカサと共に巨人の視界を奪い、その機動を封じた。
刃が肉を断つ感触。熱い蒸気が全身を包む。ナマエはその調査中、補佐を含め二十体という驚異的な討伐数を記録した。それはもはや「天才」という言葉すら生温い、死地を潜り抜けた者だけが持つ、執念の結晶だった。
壁内への帰還後。夕闇に包まれた兵舎の広場。
「ナマエ。君の功績は疑いようのないものだ。今日この時を以て、君を正式に調査兵団副団長に任命する」
エルヴィンの凛とした声が響く。周囲の兵士たちから、畏敬と祝福の入り混じった歓声が上がった。
だが、その夜。ナマエを待っていたのは祝杯ではなく、呪縛のような悪夢だった。
――また、あの夢だ。 焼け付くような日差し。エレンを奪還せんとする熾烈な戦場。
「進め!」と叫ぶエルヴィンの右腕が、巨人の顎に噛み砕かれる。 鮮血。断末魔。そして、獣の巨人が投じる礫の雨の中で、彼が静かに微笑みながら消えていく光景。
「……はぁ、はぁっ……!」
飛び起きたナマエの額には、冷たい汗が滲んでいた。指先が震え、止まらない。
翌朝、団長室を訪れたナマエの顔色は、死人のように蒼白だった。エルヴィンは書類から目を上げ、即座に彼女の異変を察知した。その鋭い碧眼から逃れることなど、最初から不可能だったのだ。
「……ナマエ。顔色が悪いな。壁外調査の疲れが取れていないのか」
「団長……」
ナマエは唇を強く噛み、意を決して顔を上げた。この人の未来を、あの残酷な終焉を止めるには、もう隠し通すことはできない。
「団長……。もし、私が『未来』を知っていると言ったら、信じてくれますか?」
時計の針が刻む音だけが、不気味なほど大きく響く。
「……信じていただけないかもしれませんが、お話しします。私は、この世界の人間ではありません」
ナマエは震える声で紡ぎ出した。自分が別の世界から来たこと。あのループタイを手に取った夜、この世界に引き寄せられたこと。そして――。
「未来で……あなたは右腕を失います。そして、シガンシナ区の戦いで、あなたは命を落とす。私には、それが見えるんです。だから……私はあなたを死なせたくない。ただ、それだけなんです」
話し終えると、ナマエの目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。自分を狂人だと思ってくれてもいい。ただ、彼に生きてほしかった。
長い沈黙。エルヴィンはゆっくりと椅子から立ち上がり、窓の外の暮れゆく空を見つめていた。やがて、彼は音もなく彼女の側へと歩み寄り、大きな手で彼女の震える肩を包み込んだ。
「……突拍子もない話だな。だが、合点がいった」
エルヴィンの声は、驚くほど優しかった。指先で彼女の涙を拭い、そのまま頬を包み込む。
「君が俺を見る時、いつもどこか悲しげで、必死だった理由が……。俺を救うために、地獄のような訓練を耐えてきたというのか、ナマエ」
「……俺は、自分の運命を呪ったことはない。人類の勝利のためなら、この身がどうなろうと構わないと思っていた。……だが。君という未来が、俺のために泣いてくれるというのなら」
エルヴィンはナマエを強く抱き寄せ、その髪に唇を寄せた。
「俺は、君の言葉を信じるよ。君が持ってきた未来がどんなに過酷でも、俺たちはそれを書き換える。君が教えてくれたその『惨劇』を止めるために、俺のすべてを君に預けよう」
「エルヴィン…団長…っ……」
「泣かなくていい、ナマエ。君がこの世界に来たのは、俺を救うためだったのだろう? なら、その使命を果たさせてやる。……俺も、君の隣で生きたいと、願ってしまったからな」
窓の外では、一番星が静かに瞬き始めていた。 異世界からの旅人がもたらした絶望の予言。それを、エルヴィン・スミスという男は「希望」として受け入れたのだ。 二人の運命は、今、真実の名の下に一つに重なった。
「まずは、次のエレン奪還作戦だ。君が見た夢……右腕の件だったか。……回避してみせよう、二人でな」
力強い抱擁の中で、ナマエは誓った。たとえ歴史が、世界が彼を殺そうとしても。 自分だけは、死神の鎌をへし折ってでも、この男を光の射す場所へ連れ戻すと。
それは人類にとって、そして調査兵団にとって、血で血を洗うような凄惨な行軍となった。
巨大樹の森に響き渡る女型の巨人の咆哮、次々と散っていく精鋭たちの命。ナマエはリヴァイ班の増援として、そしてエルヴィンの懐刀として、馬を飛ばした。
「リヴァイ兵長、ミカサ! エレンを連れ戻します!」
叫びと共に立体機動装置を噴射する。風が耳を裂き、視界が加速する。エレンを飲み込んだ女型の巨人が目の前に迫る。リヴァイの神速の剣技に合わせ、ナマエはミカサと共に巨人の視界を奪い、その機動を封じた。
刃が肉を断つ感触。熱い蒸気が全身を包む。ナマエはその調査中、補佐を含め二十体という驚異的な討伐数を記録した。それはもはや「天才」という言葉すら生温い、死地を潜り抜けた者だけが持つ、執念の結晶だった。
壁内への帰還後。夕闇に包まれた兵舎の広場。
「ナマエ。君の功績は疑いようのないものだ。今日この時を以て、君を正式に調査兵団副団長に任命する」
エルヴィンの凛とした声が響く。周囲の兵士たちから、畏敬と祝福の入り混じった歓声が上がった。
だが、その夜。ナマエを待っていたのは祝杯ではなく、呪縛のような悪夢だった。
――また、あの夢だ。 焼け付くような日差し。エレンを奪還せんとする熾烈な戦場。
「進め!」と叫ぶエルヴィンの右腕が、巨人の顎に噛み砕かれる。 鮮血。断末魔。そして、獣の巨人が投じる礫の雨の中で、彼が静かに微笑みながら消えていく光景。
「……はぁ、はぁっ……!」
飛び起きたナマエの額には、冷たい汗が滲んでいた。指先が震え、止まらない。
翌朝、団長室を訪れたナマエの顔色は、死人のように蒼白だった。エルヴィンは書類から目を上げ、即座に彼女の異変を察知した。その鋭い碧眼から逃れることなど、最初から不可能だったのだ。
「……ナマエ。顔色が悪いな。壁外調査の疲れが取れていないのか」
「団長……」
ナマエは唇を強く噛み、意を決して顔を上げた。この人の未来を、あの残酷な終焉を止めるには、もう隠し通すことはできない。
「団長……。もし、私が『未来』を知っていると言ったら、信じてくれますか?」
時計の針が刻む音だけが、不気味なほど大きく響く。
「……信じていただけないかもしれませんが、お話しします。私は、この世界の人間ではありません」
ナマエは震える声で紡ぎ出した。自分が別の世界から来たこと。あのループタイを手に取った夜、この世界に引き寄せられたこと。そして――。
「未来で……あなたは右腕を失います。そして、シガンシナ区の戦いで、あなたは命を落とす。私には、それが見えるんです。だから……私はあなたを死なせたくない。ただ、それだけなんです」
話し終えると、ナマエの目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。自分を狂人だと思ってくれてもいい。ただ、彼に生きてほしかった。
長い沈黙。エルヴィンはゆっくりと椅子から立ち上がり、窓の外の暮れゆく空を見つめていた。やがて、彼は音もなく彼女の側へと歩み寄り、大きな手で彼女の震える肩を包み込んだ。
「……突拍子もない話だな。だが、合点がいった」
エルヴィンの声は、驚くほど優しかった。指先で彼女の涙を拭い、そのまま頬を包み込む。
「君が俺を見る時、いつもどこか悲しげで、必死だった理由が……。俺を救うために、地獄のような訓練を耐えてきたというのか、ナマエ」
「……俺は、自分の運命を呪ったことはない。人類の勝利のためなら、この身がどうなろうと構わないと思っていた。……だが。君という未来が、俺のために泣いてくれるというのなら」
エルヴィンはナマエを強く抱き寄せ、その髪に唇を寄せた。
「俺は、君の言葉を信じるよ。君が持ってきた未来がどんなに過酷でも、俺たちはそれを書き換える。君が教えてくれたその『惨劇』を止めるために、俺のすべてを君に預けよう」
「エルヴィン…団長…っ……」
「泣かなくていい、ナマエ。君がこの世界に来たのは、俺を救うためだったのだろう? なら、その使命を果たさせてやる。……俺も、君の隣で生きたいと、願ってしまったからな」
窓の外では、一番星が静かに瞬き始めていた。 異世界からの旅人がもたらした絶望の予言。それを、エルヴィン・スミスという男は「希望」として受け入れたのだ。 二人の運命は、今、真実の名の下に一つに重なった。
「まずは、次のエレン奪還作戦だ。君が見た夢……右腕の件だったか。……回避してみせよう、二人でな」
力強い抱擁の中で、ナマエは誓った。たとえ歴史が、世界が彼を殺そうとしても。 自分だけは、死神の鎌をへし折ってでも、この男を光の射す場所へ連れ戻すと。
