自由な空に、君と愛を。
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
階段の終端に辿り着いたとき、頬を撫でたのは地下の澱んだ空気ではなく、湿り気を帯びた本物の夜の予感だった。
見上げた先には、崩れかけた円形の天井。そこから覗く空は、残酷なほどに美しい燃えるような残照に染まっている。 だが、その静謐な美しさを打ち消すように、足元から地響きが伝わってきた。
ズシン、ズシン……。
「……! この地鳴り、巨人の足音ですね」
ナマエは無意識に、亡き先達から譲り受けたブレードの柄を握りしめた。
「ああ。それも、地下で見てきたものとは比べ物にならない大きさのようだ。……ナマエ、脱出について、私が最初に言ったことを覚えているか?」
「日が落ちるまでに、塔の上に昇る……でしたね。それができれば、まだ望みはある、と」
エルヴィンの問いに、ナマエは力強く頷いた。 窓の隙間から差し込む光は、すでに濃いオレンジ色へと変化している。太陽の縁が地平線に触れ、世界を影へと誘う「逢魔が時」。 ここで怖気づけば、待っているのは永遠の闇だけだ。
「行くぞ、ナマエ! 巨人を退け、屋上まで一気に突き進む!」
「はい……!!」
二人は螺旋階段を駆け上がった。 かつては栄華を極めたであろう塔の内部は、今や巨人の侵入によって無残に破壊されている。 一階上の円形ホールに出た瞬間、壁の大きな破れ目から、巨大な手が室内に滑り込んできた。
「エルヴィン団長、外に……! 複数群がっています!」
「やはりか。だが、止まるわけにはいかない」
外には十メートル級を超える巨影がひしめき、石造りの塔をなぞるように徘徊している。 その時、背後の闇から低い唸り声が響いた。
「……っ! 団長、三メートル級の一体が侵入しています! 追ってきます!」
「ナマエ、下がっていろ!」
エルヴィンが鋭い踏み込みと共に立体機動を起動させた。 シュルルッ、とワイヤーが空気を裂き、彼は鳥のような軽やかさで巨人の頭上を取る。 だが、狭い室内では巨人の不規則な動きを捉えきれない。
「私にも戦わせてください!!」
ナマエは叫ぶと同時に、自身もトリガーを引いた。 初めて使うこの装置は、驚くほど素直に彼女の意志に応えた。まるで亡くなった持ち主が、背中を押してくれているかのように。
「はっ……!!」
空中での制動。ナマエは巨人の視界を遮るようにその顔面を掠め、壁を蹴る。
「……わかった。行くぞ!」
「はいっ!」
二人のワイヤーが交差し、銀光が室内に火花を散らす。
「動きが速い個体だ……腕を落とす。君は右から頼む!」
「了解しました!」
エルヴィンの指示が、脳ではなく魂に直接響く。ナマエは巨人の右側から肉薄した。巨人が腕を振り回す一瞬の隙、彼女は自身の体を最小限の回転で滑り込ませる。
(外したら、団長にまで危険が及ぶ……必ず、仕留める!)
ビシュッッ!!
鋭い手応え。巨人の右腕が肘から先を失い、蒸気を上げながら床に落ちる。
「……後は任せろ!!」
エルヴィンの声が重なる。 彼は巨人の背後に回り込み、舞い落ちる木の葉のような静かな、それでいて死神の鎌よりも鋭い一撃を、そのうなじへと叩き込んだ。
巨大な肉体が崩れ落ち、部屋の中に熱い蒸気が充満する。ナマエは床に着地し、荒い息を整えながら彼を見上げた。
「……討伐補佐一だ。よくやったな、ナマエ」
「ありがとうございます……!」
「驚いたよ。君の動きは、もはや新兵の域を遥かに超えている。……いや、君を新兵扱いし続けていた私の目は、節穴だったようだ」
エルヴィンは返り血を拭うこともせず、わずかに目を細めて彼女を見つめた。 その眼差しには、上官としての評価だけでなく、もっと熱を帯びた、対等な戦士への敬意が混じっている。
「屋上まではあと少しだ。行くぞ。……日は、まだ沈みきっていない」
「はい!」
駆け出すエルヴィンの背中を追いながら、ナマエは胸の鼓動が熱く高鳴るのを感じていた。 共に戦い、共に生き残る。 その実感は、どんな甘い言葉よりも深く、二人の魂を強く結びつけていた。
階段を一段上るごとに、外界の風の音が激しくなっていく。 あと少し。あの燃えるような空の果てに、自分たちの「未来」がある。ナマエは手にしたブレードの重みを噛み締め、光の射す屋上へと飛び出した。
そこには、世界を飲み込もうとする夕闇と、それを拒むように輝く最後の陽光が待っていた。
見上げた先には、崩れかけた円形の天井。そこから覗く空は、残酷なほどに美しい燃えるような残照に染まっている。 だが、その静謐な美しさを打ち消すように、足元から地響きが伝わってきた。
ズシン、ズシン……。
「……! この地鳴り、巨人の足音ですね」
ナマエは無意識に、亡き先達から譲り受けたブレードの柄を握りしめた。
「ああ。それも、地下で見てきたものとは比べ物にならない大きさのようだ。……ナマエ、脱出について、私が最初に言ったことを覚えているか?」
「日が落ちるまでに、塔の上に昇る……でしたね。それができれば、まだ望みはある、と」
エルヴィンの問いに、ナマエは力強く頷いた。 窓の隙間から差し込む光は、すでに濃いオレンジ色へと変化している。太陽の縁が地平線に触れ、世界を影へと誘う「逢魔が時」。 ここで怖気づけば、待っているのは永遠の闇だけだ。
「行くぞ、ナマエ! 巨人を退け、屋上まで一気に突き進む!」
「はい……!!」
二人は螺旋階段を駆け上がった。 かつては栄華を極めたであろう塔の内部は、今や巨人の侵入によって無残に破壊されている。 一階上の円形ホールに出た瞬間、壁の大きな破れ目から、巨大な手が室内に滑り込んできた。
「エルヴィン団長、外に……! 複数群がっています!」
「やはりか。だが、止まるわけにはいかない」
外には十メートル級を超える巨影がひしめき、石造りの塔をなぞるように徘徊している。 その時、背後の闇から低い唸り声が響いた。
「……っ! 団長、三メートル級の一体が侵入しています! 追ってきます!」
「ナマエ、下がっていろ!」
エルヴィンが鋭い踏み込みと共に立体機動を起動させた。 シュルルッ、とワイヤーが空気を裂き、彼は鳥のような軽やかさで巨人の頭上を取る。 だが、狭い室内では巨人の不規則な動きを捉えきれない。
「私にも戦わせてください!!」
ナマエは叫ぶと同時に、自身もトリガーを引いた。 初めて使うこの装置は、驚くほど素直に彼女の意志に応えた。まるで亡くなった持ち主が、背中を押してくれているかのように。
「はっ……!!」
空中での制動。ナマエは巨人の視界を遮るようにその顔面を掠め、壁を蹴る。
「……わかった。行くぞ!」
「はいっ!」
二人のワイヤーが交差し、銀光が室内に火花を散らす。
「動きが速い個体だ……腕を落とす。君は右から頼む!」
「了解しました!」
エルヴィンの指示が、脳ではなく魂に直接響く。ナマエは巨人の右側から肉薄した。巨人が腕を振り回す一瞬の隙、彼女は自身の体を最小限の回転で滑り込ませる。
(外したら、団長にまで危険が及ぶ……必ず、仕留める!)
ビシュッッ!!
鋭い手応え。巨人の右腕が肘から先を失い、蒸気を上げながら床に落ちる。
「……後は任せろ!!」
エルヴィンの声が重なる。 彼は巨人の背後に回り込み、舞い落ちる木の葉のような静かな、それでいて死神の鎌よりも鋭い一撃を、そのうなじへと叩き込んだ。
巨大な肉体が崩れ落ち、部屋の中に熱い蒸気が充満する。ナマエは床に着地し、荒い息を整えながら彼を見上げた。
「……討伐補佐一だ。よくやったな、ナマエ」
「ありがとうございます……!」
「驚いたよ。君の動きは、もはや新兵の域を遥かに超えている。……いや、君を新兵扱いし続けていた私の目は、節穴だったようだ」
エルヴィンは返り血を拭うこともせず、わずかに目を細めて彼女を見つめた。 その眼差しには、上官としての評価だけでなく、もっと熱を帯びた、対等な戦士への敬意が混じっている。
「屋上まではあと少しだ。行くぞ。……日は、まだ沈みきっていない」
「はい!」
駆け出すエルヴィンの背中を追いながら、ナマエは胸の鼓動が熱く高鳴るのを感じていた。 共に戦い、共に生き残る。 その実感は、どんな甘い言葉よりも深く、二人の魂を強く結びつけていた。
階段を一段上るごとに、外界の風の音が激しくなっていく。 あと少し。あの燃えるような空の果てに、自分たちの「未来」がある。ナマエは手にしたブレードの重みを噛み締め、光の射す屋上へと飛び出した。
そこには、世界を飲み込もうとする夕闇と、それを拒むように輝く最後の陽光が待っていた。
