自由な空に、君と愛を。
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地下一階。重苦しい鉄扉を押し開いた先で、ナマエの視界は一気に開けた。
そこは、かつて大広間だった場所だろうか。床の半分以上が無惨に抜け落ち、外壁の一部が剥落したことで、外界からの光が容赦なく差し込んでいる。
「……ああ」
ナマエは思わず息を呑んだ。 差し込む陽光は、すでに夕刻の気配を帯びて橙色に燃えている。埃の舞う空間が、その光に照らされて、まるで黄金の海の中を歩いているような錯覚に陥る。しかし、足元を見れば、そこには最下層まで続く深い闇の穴が口を開けていた。
「おそらく、ここだな。最初の崩落地点は」
エルヴィンの声に我に返り、ナマエは崩れた壁の向こう側を見上げた。遥か頭上、見覚えのある形の穴が開いている。
(あそこから落ちたんだ……。地下三階まで。エルヴィン団長が助けてくれなきゃ、私は今頃……)
ぞっとするような感覚が背筋を走り、無意識に足がすくむ。
「ナマエ、危険だ。あまり身を乗り出すな」
不意に、大きな手がナマエの肩を抱き寄せた。エルヴィンの体温が制服越しに伝わり、張り詰めていた心がわずかに弛緩する。
「は、はい。すみません……。上は地上なんですね。みんな、どうなっているんでしょうか」
「リヴァイやハンジたちなら、最善を尽くしているはずだ。……ナマエ、見てくれ。奥の部屋に階段がある」
エルヴィンが指し示した先、瓦礫の陰に隠れるようにして、上へと続く石造りの階段が見えた。
「本当ですか!? これで、ようやく……」
地上へ戻れる。その喜びが口を突きかけた、その時だった。
ナマエの全身の産毛が逆立つような、強烈な殺気が背後から迫った。
「……っ! エルヴィン団長、後ろです! 巨人の気配が!」
振り返るよりも早く、地響きが轟いた。通路の奥から現れたのは、四つん這いで異様な速度を誇る五メートル級の巨人だった。その動きは、これまでの鈍重な個体とは明らかに違う。
「そのようだな……。万が一、階段を崩されでもしたら困る。この部屋で仕留めるぞ」
「でも、足場が……!」
ズシッ!! という衝撃と共に、巨人が大広間へと踏み込んできた。
巨躯が動くたびに、不安定な床が悲鳴を上げ、瓦礫が穴へと吸い込まれていく。
「ナマエ! 下がれ! 素早い個体だ。注意しろ!」
エルヴィンがブレードを構え、巨人の懐へと飛び込もうとする。しかし、巨人はその巨体に似合わぬ俊敏さで彼の攻撃を回避し、逆に巨大な腕を振り回した。
エルヴィンが辛うじてそれをかわすが、足元の石床が砕け、彼の姿勢がわずかに崩れる。
(ダメだ、このままじゃ団長が危ない。私が、何かしないと!)
ナマエは手にした予備のブレードを強く握りしめた。立体機動装置は壊れている。けれど、元陸上部で鍛えた脚力と、この三年間で培った感覚がある。
「エルヴィン団長! 私が囮になります! その間に、うなじを!」
「何……!? 待て、ナマエ! 危険だ!」
「お願いします、私を信じて!」
制止の声を振り切り、ナマエは巨人の正面へと躍り出た。
「さあ来い、化け物! 獲物はここだよ!」
石を拾い、巨人の濁った眼球を目掛けて投げつける。
巨人は怒りに吠え、ナマエへと狙いを定めた。突進してくる巨躯。ナマエは極限まで引きつけ、崩落した穴の縁を全速力で駆け抜ける。
(今……今だ!!)
巨人の手が届く寸前、ナマエは大きく跳躍した。 巨人は勢い余って足元を滑らせ、その隙をエルヴィンは見逃さなかった。
「はああぁあっ!!」
夕陽を浴びた銀光が、鮮やかな弧を描く。
ビシュッッ!! という確かな手応えと共に、巨人のうなじが深く削ぎ落とされた。
「や、やった……!」
着地したナマエが安堵の息を漏らした瞬間、不気味な軋み音が広間に響き渡った。 巨人の巨大な死骸が倒れ込んだ衝撃に、限界を迎えていた床が耐えきれなくなったのだ。
「エルヴィン団長! 足元が!」
ナマエが叫んだ時、エルヴィンが立っていた床が、音を立てて崩れ落ちた。
「……っ!」
宙に浮いたエルヴィンの体が、闇の底へと吸い込まれていく。
「ナマエ、私に構うな! 君だけでも、塔の屋上へ行け!」
「そんなこと……できるわけないでしょう!!」
ナマエは迷わず、崩れゆく床の縁へ身を投げ出した。 左手で辛うじて残った柱を掴み、右手で、落下するエルヴィンの腕を力一杯に掴み取る。
「ぐ……っ……!」
エルヴィンの体重が、ナマエの右腕に強烈な負荷となってのしかかる。肩の関節が外れそうな激痛が走り、視界がチカチカと爆ぜた。
「放せ、ナマエ! 二人とも落ちるぞ!」
「絶対に、放しません! あなたを助けるために、私はここに来たんだから!」
歯を食いしばり、顔中の血管が浮き出るほどに力を込める。ナマエは自身の体を支点にし、振り子の原理を利用してエルヴィンの体を安全な足場へと放り投げようと試みた。
「……!!」
火事場の馬鹿力だった。エルヴィンの体が宙を舞い、階段側の安定した床へと転がり込む。
「……やった」
成功を確信した瞬間、ナマエが掴んでいた柱が根元からへし折れた。
「あ……」
支えを失ったナマエの体は、夕闇の差し込む大穴へと投げ出される。遠ざかっていくエルヴィンの碧い瞳。絶望に染まった彼の顔が、網膜に焼き付く。
(エルヴィン団長……あなたは、助かった。それでいい。私の「夢」は、これで……)
頬を撫でる風の音を聞きながら、ナマエは静かに瞳を閉じた。
「ナマエーーーーーッ!!!」
地底に響き渡る、彼の絶叫を背に受けて。
そこは、かつて大広間だった場所だろうか。床の半分以上が無惨に抜け落ち、外壁の一部が剥落したことで、外界からの光が容赦なく差し込んでいる。
「……ああ」
ナマエは思わず息を呑んだ。 差し込む陽光は、すでに夕刻の気配を帯びて橙色に燃えている。埃の舞う空間が、その光に照らされて、まるで黄金の海の中を歩いているような錯覚に陥る。しかし、足元を見れば、そこには最下層まで続く深い闇の穴が口を開けていた。
「おそらく、ここだな。最初の崩落地点は」
エルヴィンの声に我に返り、ナマエは崩れた壁の向こう側を見上げた。遥か頭上、見覚えのある形の穴が開いている。
(あそこから落ちたんだ……。地下三階まで。エルヴィン団長が助けてくれなきゃ、私は今頃……)
ぞっとするような感覚が背筋を走り、無意識に足がすくむ。
「ナマエ、危険だ。あまり身を乗り出すな」
不意に、大きな手がナマエの肩を抱き寄せた。エルヴィンの体温が制服越しに伝わり、張り詰めていた心がわずかに弛緩する。
「は、はい。すみません……。上は地上なんですね。みんな、どうなっているんでしょうか」
「リヴァイやハンジたちなら、最善を尽くしているはずだ。……ナマエ、見てくれ。奥の部屋に階段がある」
エルヴィンが指し示した先、瓦礫の陰に隠れるようにして、上へと続く石造りの階段が見えた。
「本当ですか!? これで、ようやく……」
地上へ戻れる。その喜びが口を突きかけた、その時だった。
ナマエの全身の産毛が逆立つような、強烈な殺気が背後から迫った。
「……っ! エルヴィン団長、後ろです! 巨人の気配が!」
振り返るよりも早く、地響きが轟いた。通路の奥から現れたのは、四つん這いで異様な速度を誇る五メートル級の巨人だった。その動きは、これまでの鈍重な個体とは明らかに違う。
「そのようだな……。万が一、階段を崩されでもしたら困る。この部屋で仕留めるぞ」
「でも、足場が……!」
ズシッ!! という衝撃と共に、巨人が大広間へと踏み込んできた。
巨躯が動くたびに、不安定な床が悲鳴を上げ、瓦礫が穴へと吸い込まれていく。
「ナマエ! 下がれ! 素早い個体だ。注意しろ!」
エルヴィンがブレードを構え、巨人の懐へと飛び込もうとする。しかし、巨人はその巨体に似合わぬ俊敏さで彼の攻撃を回避し、逆に巨大な腕を振り回した。
エルヴィンが辛うじてそれをかわすが、足元の石床が砕け、彼の姿勢がわずかに崩れる。
(ダメだ、このままじゃ団長が危ない。私が、何かしないと!)
ナマエは手にした予備のブレードを強く握りしめた。立体機動装置は壊れている。けれど、元陸上部で鍛えた脚力と、この三年間で培った感覚がある。
「エルヴィン団長! 私が囮になります! その間に、うなじを!」
「何……!? 待て、ナマエ! 危険だ!」
「お願いします、私を信じて!」
制止の声を振り切り、ナマエは巨人の正面へと躍り出た。
「さあ来い、化け物! 獲物はここだよ!」
石を拾い、巨人の濁った眼球を目掛けて投げつける。
巨人は怒りに吠え、ナマエへと狙いを定めた。突進してくる巨躯。ナマエは極限まで引きつけ、崩落した穴の縁を全速力で駆け抜ける。
(今……今だ!!)
巨人の手が届く寸前、ナマエは大きく跳躍した。 巨人は勢い余って足元を滑らせ、その隙をエルヴィンは見逃さなかった。
「はああぁあっ!!」
夕陽を浴びた銀光が、鮮やかな弧を描く。
ビシュッッ!! という確かな手応えと共に、巨人のうなじが深く削ぎ落とされた。
「や、やった……!」
着地したナマエが安堵の息を漏らした瞬間、不気味な軋み音が広間に響き渡った。 巨人の巨大な死骸が倒れ込んだ衝撃に、限界を迎えていた床が耐えきれなくなったのだ。
「エルヴィン団長! 足元が!」
ナマエが叫んだ時、エルヴィンが立っていた床が、音を立てて崩れ落ちた。
「……っ!」
宙に浮いたエルヴィンの体が、闇の底へと吸い込まれていく。
「ナマエ、私に構うな! 君だけでも、塔の屋上へ行け!」
「そんなこと……できるわけないでしょう!!」
ナマエは迷わず、崩れゆく床の縁へ身を投げ出した。 左手で辛うじて残った柱を掴み、右手で、落下するエルヴィンの腕を力一杯に掴み取る。
「ぐ……っ……!」
エルヴィンの体重が、ナマエの右腕に強烈な負荷となってのしかかる。肩の関節が外れそうな激痛が走り、視界がチカチカと爆ぜた。
「放せ、ナマエ! 二人とも落ちるぞ!」
「絶対に、放しません! あなたを助けるために、私はここに来たんだから!」
歯を食いしばり、顔中の血管が浮き出るほどに力を込める。ナマエは自身の体を支点にし、振り子の原理を利用してエルヴィンの体を安全な足場へと放り投げようと試みた。
「……!!」
火事場の馬鹿力だった。エルヴィンの体が宙を舞い、階段側の安定した床へと転がり込む。
「……やった」
成功を確信した瞬間、ナマエが掴んでいた柱が根元からへし折れた。
「あ……」
支えを失ったナマエの体は、夕闇の差し込む大穴へと投げ出される。遠ざかっていくエルヴィンの碧い瞳。絶望に染まった彼の顔が、網膜に焼き付く。
(エルヴィン団長……あなたは、助かった。それでいい。私の「夢」は、これで……)
頬を撫でる風の音を聞きながら、ナマエは静かに瞳を閉じた。
「ナマエーーーーーッ!!!」
地底に響き渡る、彼の絶叫を背に受けて。
