『恋愛禁止条例』
第25話:繋がれた手
―隼人side―
「「お願いします!!」」
俺と大島の声がユニゾンし病室に響いた。
笑うところではないんだろうけど、下に向けた顔が笑ってしまいそうになる。
それくらい、今の俺に不安な気持ちが湧いてこない。
きっと、俺の手を握る大島の手から伝わる温もりが安心させてくれているんだろう。
それは、俺が寝ている間、意識がなかったけどずっと感じていた温もり。
大島は俺が寝ている間もずっと傍に居て、手を握ってくれていたんだろうな。
でも、少し大島が心配だった。
さっき病室に駆け込んできたときの大島の服装が事件のあったときと一緒で、たぶん俺の血が付いたままだったし……。
「隼人、大島も顔を上げなさい」
そんなことを暫く考えていると叔父さんが俺たちに声をかける。
言葉に従い顔を上げた俺の視界に入ったのは、叔父さんと麻巳子さんの柔らかい表情だった。
てっきり無理を言う甥に怒っているだろうと思っていた俺は、その表情に驚いてしまった。
「隼人、さっき私は大島にも同じ質問をした。 そうしたら何て返事したと思う?」
「えっ……」
分かる訳がなく、俺は隣の大島の様子を窺う。
すると、真っ赤になり大島は俯いてしまった。
でも、何だか満足げな表情に見える。
「“新城君を諦めるぐらいなら、AKBを辞めます。 それぐらい彼が好きです”だそうだ」
「なっ、大島さんそんなこと言ったんですか?」
「言っちゃった。 あはは……」
俺は隣の大島を驚いた顔で見ると全く不安げな表情をしていない。
寧ろ、頭をポリポリ掻きながら悪びれも無い笑顔で言う大島。
アイドルを辞めなきゃならないかもしれないっていうのに……。
男にはそんな思い切ったことなんて出来ない。
そう考えると、やっぱり男には女性が必要で、俺には大島が必要なんだと改めて思う。
「大島は、今でもその“覚悟”はあるのか?」
「あっ……」
叔父さんの言葉に思わず大島ではなく俺が声を上げた。
大島が“ある”と言える訳がない。
俺はAKBとして、その先にある夢を目指して欲しいと言ってしまったのだから。
板挟みとなってしまった大島だけど、その表情が揺るぐことも曇ることもなかった。
ただ、一度だけ目を伏せ「ふぅ……」と小さく呼吸を整えると叔父さんの顔を見据える。
「あります」
何者も曲げられないほど真っ直ぐとした視線を叔父さんに向け、淀みない言葉を口にする。
「そうか……」
そう言うと、叔父さんは眼鏡を眼鏡を掛け直す。
叔父さんのその仕草に、それまで感じなかった不安が、自分の中で湧いてくるのが分かる。
「では、先程の2人に対する私からの回答を伝えよう……」
ギュッ
大島も同じなんだろうか……。
彼女の気持ちを表すように、繋がれた手が少し強めに握られる。
周囲にいた麻里子さんや麻巳子さんまでも心なしか緊張しているように見えた。
そして運命の言葉を叔父さんが告げる。
「大島 優子を解雇する」