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『恋愛禁止条例』

第13話:優子とまゆゆとセンターと:前編

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 9月後半になり、俺はコンサートのスタッフとして埼玉県所沢市にある“西武ドーム”でコンサート前日の夜を迎えていた。
緑の多い場所に立てられたからか西武ドームの外では虫の音が響き、風も一足早く秋の色をしていた。

 コンサート前夜とあって既にステージや照明・音響など設備は完成し、昼間の内に前日リハーサルも行われ準備は万端……のはずだったのだけど、ここに来て誰も想像していなかった状況となっていた。

 時計の針は午後10時を回り、タイムスケジュールでは設営最終工程であるアリーナに観客用の椅子を並べる作業が行われているはずだった。
いや、実際アリーナでは何人ものスタッフさんが図面を元に椅子を並べる作業が行われてはいた。
だけど、西武ドーム特有の壁のない構造が外の闇を見せ今が夜だと教えてくれていたが、それがまるで錯覚なのではないかと思う程照明に煌々と照らされたステージでは、この時間流れているはずのない音楽が鳴り響いていた……。

 事の始まりは前日という直前のタイミングにあったセットリストの変更。
突如、舞台演出の人から告げられたセットリストの変更に、メンバーたちからは“無理”という声さえ上がる。
さらにはスタッフさんもこの自体を知らされておらず、響めきがスタッフさんからも上がっていた。

「無理だと何故決めつける? AKBはたった数人しか入らなかった劇場から始まり、当時周囲は失敗だと言った。 それが今やどうだ。 君たちは無我夢中に走り続け、こうして大きなステージでやれるまてに大きくなった。 無理を撥ね除ける強さを君たちは持っている。 これは新たな挑戦だと思って頑張って欲しい」

 それに対し叔父さんはプロデューサーとして変更を許さなかった。
そんな叔父さんに誰も反論はしなかったが、明らかに不満を含んだ視線が向けられていた。

『叔父さん……』

 メンバーやスタッフの視線に顔色一つ変えない叔父さん。
でも、本当は叔父さんが一番こんなことを言いたくないであろうことを俺は知っている。

 実はコンサートの数日前から叔父さんが頻繁に誰かと何時間も電話で話し合っているのを目撃していた。
その相手が誰なのか、具体的な内容は分からなかったけど、それでも相手に対し何かを断り続けていたのを憶えている。
でも、今朝になり電話越しに「わかりました……」と苦渋の表情を浮かべた叔父さんの辛そうな姿を見た俺は、改めて総合プロデューサーという立場の責任の重さを知った。
大きな力を持つが故、板挟みにあうことや大きな痛みを伴う選択を強いられる立場なんだと。
そんな光景を目の当たりにしていながら何もできない自分の無力さを感じるしかなかった……。

 各々心の内で思うことがあるのだろうが、こうしてセットリストの変更が行われることになった。
スタッフさんたちは会場の設営と並行し照明や音響のプログラム修正に追われ、メンバーはリハーサルをしながら新たに追加された振りや歌などを覚えなくてはならなくなった。
追加されたのはページで言えばほんの数頁程度。
だけど、やったことのない楽曲を前日に渡され、振り付けも含めて一日で憶えなければならないという過酷な要求に研究生を中心とした若手メンバーが音を上げてしまう。
それは研究生に留まらず経験の浅い正規メンバーに波及し、チーム4と研究生のメンバーの喧嘩にまで発展する結果となってしまった。
それに加え全グループが一同に会したため、まるでステージ上は小学校の朝礼のような状態で規律の乱れが顕著で、ある者は会話に夢中だったりある者は待ち疲れて座り込んでしまったりしていた。
そんな乱れた状態でスムーズに事が運ぶ訳もなく、遅遅として進まないリハーサルが余計に練習時間を減らす結果となっていた。

 この散々たる状況にメンバーやスタッフも含め多くの人が、今回の件は叔父さんや戸賀崎さんなど上の人間に責任があると不満を募らせていた。

「ほら、ボォーっとしてないで早く並ぶ! 通しでできる数少ないリハのチャンスなんだから、しっかり自分のパート憶えて! こんなんじゃファンの人たちに見せらるレベルじゃないよ!!」

「「「「「はい!」」」」」

 しかし、それを今更言ったところで解決しないことも事実で、それを誰よりも分かっている“高橋 みなみ”さんは、パフォーマンスのクオリティを残された時間の中で少しでも上げようと、小さな体で声を張り上げながらメンバーを鼓舞し続けてくれた。

「お疲れ様です。 冷えた飲み物とおしぼり持ってきました!」

「おっ、悪いな。 ありがとう」

 一方、俺はメンバーがリハーサルなどしている間の空いた時間に自分は何が出来るだろうかと考えた挙げ句、作業に追われるスタッフさんたちに冷えた飲み物やおしぼりなどを配り、少しでも気持ちよく仕事をしてもらうことに徹していた。
高橋さんに比べたら自分のしていることなんか大したことではないけど、スタッフさんたちの負担を減らすことで結果的にコンサートの成功に繋がれば叔父さんたちへの不満を少なくできるんじゃないかと思ってのことだった。

………………

…………

……

 こうして時間はあっと言う間に過ぎ、気付いたら外は暗くなり夜の10時になっていたのだ。
結局、俺は食事は疎か休憩も碌に取らないままこんな時間まで走り回っていた。

 グゥッ……
気付くとお腹の虫が盛大に音を立て空腹を知らせる。

『まぁ、もうちょっと待ってよ』

 俺はそう心の内で自分のお腹に訴えかけながら、いくつかの大きなビニール袋を持ってアリーナをステージに向かい歩いていた。

 煌々と照らされたステージ上では音楽を背景にいくつもの人影が忙しなく動いているのが見える。
セッティング中のスタッフさんたちもいたが、多くはメンバーでこんな遅くまで練習を続けていた。

 そんな中、一際目立っていたのが大島。
俺がステージに近付く間も幾人かの声が聞こえてはいたけど、その度に大島の大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

「そこ違うって! みんな台詞と立ち位置ちゃんと頭に入ってる?」

 大島の何度目かの怒鳴り声が響いたかと思うと、彼女はツカツカと近くに置いてあるスピーカー付音楽プレイヤーに触れる。

♪♫~ ♩♬

 それまで流れていた音楽が止まり、ステージ上で動いていたメンバーもまた足を止める。
ステージから数メートル離れた所を歩く俺からも大島の真剣な表情が見えたが、他のメンバーの対照的な疲れが浮かんだ顔もはっきりと見てとれた。
すると、それを察したように前田さんが大島に近づいて行く。

「ねぇ、優子。今日はこの辺にしよう。 まだ台詞憶えてない娘だっているし、全員揃ってないのに通しは無理だよ」

「でも、本番は明日なんだよ? いまのペースでやったって間に合うかどうか微妙だって、あっちゃんにも分かってるでしょ?」

「それはそうだけど……」

 前田さんが大島の言葉に圧倒されるように視線をメンバーの方に逸らした。

 今ステージでは大島や前田さんなどを筆頭にコンサート初日冒頭“ヤンキーソウル”から始まる寸劇群に出演するメンバーが会場で練習を続けていた。
既に練習は3時間もの間続けられていて、これで疲れるなと言う方が無理なような気がするが、大島が言うようにそれでも頑張らない訳にはいかない理由があった。
それは、この“寸劇”が急遽追加されたもので、台本がメンバーの手元に届いたのも今日なのだ。
大島や前田さんのように芝居経験のあるメンバーは別として、それ以外のメンバーにとって寸劇といえど台詞や立ち位置を一度の尺でやるなんてそう簡単なことではない。
だから、大島の言うように沢山練習が必要だと言う意見は正しい。
でも一方で、前田さんが言うように、台詞を覚えていないまま続けても意味がないことは、何度もリテイクを繰り返していることが証明しているとも言えた。

「とにかくもっと「お疲れ様で~す。 この辺で休憩でもどうですか?」」

 どちらが正しいのか素人の俺に判断は付かないけど、メンバーの疲れが限界に近づいているのは見れば分かる。
練習を再開しようとする大島には悪いけど、俺はわざと遮るように声を掛けた。

「冷えてる飲み物とかゼリー持ってきたんで、みなさんどうぞ」

 ステージに上がった俺は、勝手に休憩だとばかりに大島や前田さんの横を通り過ぎ、みんなの前で持ってきた袋の中身を見せる。
当然、練習の邪魔をされた大島は俺を睨み付け、俺のことを知らない姉妹グループのメンバーは目を丸くして見ていた。

「ちょっと! 今は練習中な「おっ、隼人! 気が利くねぇ~! どれどれ……あたしはこれね」」

 苛々していたところに、俺が割り込んだことで怒りが頂点に達したのだろう、大島がそれまでで一番の怒鳴り声を上げる。
だけど、大島が言い終わらない内、麻里子さんがそれを遮り、俺が持っていた袋の中から水とゼリーを選び始めた。

「ちょっ、麻里子、何してるの」

「ん? 何って休憩でしょ? 優子も選びなよ。 ほら、あっちゃん。 珠理奈、みんなも。 結構種類あるけど、早く選ばないと欲しいのなくなっちゃうよ」

 大島の言葉に悪びれた様子もなく麻里子さんが答えると、手招きしてみんなを呼び寄せ始める。
麻里子さんの言葉や様子にメンバーたちの緊張感は一瞬にして解かれ、後はみんな各々好きな所で休憩をし始めた。

 大島はさっき居た場所に1人佇み俯いていた。
表情はわからなかったけどギュッと拳を握っているのが見え、俺は心の内で謝った。

『ごめん、大島……』

 他にやりようが本当はあったのかもしれないけど、このときの俺には思い付けなかった。
きっと大島は俺のこと“もっと”嫌いになったことだろう。
でも、そんなことはどうでも良くて、それよりも大島が一生懸命頑張っているのを邪魔したことが嫌で仕方なかった。

 そんなことを思いながら大島を見ていた俺は、この前と同じ視線を感じその方向に目を向けた。
すると“柏木 由紀”さんや“指原 莉乃”さんと一緒に居る“渡辺 麻友”さんが居た。

「っ!?」

 視線が合った瞬間、驚いたような表情を浮かべるとまたしても渡辺さんは俺から目線を外し、柏木さんたちの輪の中に入るように背を向けてしまう。

 『んー、やっぱり俺って嫌われてるのか?』と思ったものの、これといって思い当たる節もなく渡辺さんの態度に首を捻っていたが、彼女だけゼリー飲料を持っていないのに気付く。
これは渡辺さんを知る良い機会だと思い、俺は彼女へと近付いていった。

「みなさん、お疲れ様です」

「ん? あっ、新城君お疲れ様」

「新城さん! お疲れ様です!」

「あはは、さっしーは相変わらず新城君に敬語なんだね」

「そうですよ指原さん。 俺はスタッフなんですから敬語なんて使わないでくださいって、いつも言ってるじゃないですか」

「さ、指原が新城さんに、ため口だなんて滅相もないですって!」

 俺が近付き声をかけると、柏木さんも指原さんも挨拶をしてくれた。
柏木さんが笑いながら指原さんをからかったように、何故か指原さんは俺が挨拶すると態々立ち上がって頭を下げるのだ。
俺からすると恥ずかしいので止めて欲しいのだが、指原さんは両手を顔の前で大袈裟に振りながら恐縮するから困ったものだ。
……とは言っても、指原さんの大袈裟な反応は面白く見ていて飽きないし、顔を強ばらせ逃げられたり視線を外されることもないので気が楽だった。

 それに比べもう1人の方はというと……。

「渡辺さん、お疲れ様です」

「……ぉ……さまです……」

 俺はまた視線を外されないように明るく笑顔で挨拶をするが、渡辺さんの返事は今にも消え入りそうで何処かぎこちない対照的なものだった。
その上、目も合わせてくれず、チラリとこちらを見たかと思うと直ぐにプイッと視線を外すの繰り返しで俺はどうしたらいいのか分からなかった。

「……ん?」

 だけど、何度かそんな彼女の仕草を見ていて、その表情が不機嫌という訳でもないことに気付く。
そして、実は勝手に嫌われていると思い違いをしているんじゃないかと思った俺は、試しに彼女に袋に残った幾つかのゼリーを見せた。

「渡辺さんゼリーどうですか? 水分以外にも少しお腹に入れておいた方がいいと思うんですが」

「えっ……でも……」

「新城君、麻友は小食だから……」

 俺の行動に困ったような様子で視線を彷徨わせてしまう渡辺さんを、隣に居た柏木さんがフォローするように理由を説明してくれた。
けど、この場に居るメンバーの殆どが練習のせいで夕飯を食べていないはず。
そんな状態で練習を続けて身体に良い訳はなく、ちょっと強引かもしれないけど俺は手をガサゴソと袋に突っ込むとあるゼリーを渡辺さんに差し出した。

「そうなんですか。 でも、練習続きで夕飯食べてないですよね?……これなんてどうですか?」

「?」

「渡辺さんのお気に入りの“ピルクル”に味が似てる気がするんですよね」

「何で……知ってるんですか?」

 渡辺さんは差し出されたゼリーを見て最初“?”マークを浮かべていたけど、俺の説明にビックリした様子だった。
まぁ、突然いつも飲んでいる飲み物の話をされたら驚くのはしょうがないか。

「楽屋とかレッスン場で飲んでるのを、よく見かけていたんですけど違いました?」

「ち、違わないです……」

「じゃあこれどうぞ。 “人一倍頑張ってる”渡辺さんにもしものことがあったら困りますから、少しでも良いんでお腹に入れてくださいね~」

「えっ……」

 俺は笑顔でそう言い残し“何で?”という表情を浮かべた渡辺さんに、手を振りながら彼女たち一団から離れた。

『良かった、嫌われている訳じゃなさそうだ』

 渡辺さんと話していて、彼女が俺を嫌っている訳ではないことが分かり安堵した。
その理由は、普段の渡辺さんであれば、結構喜怒哀楽がハッキリしている所がある。
だから、もし俺のことが嫌いならば、何か強引なことをした途端に嫌な顔をされるはず。
でも、そうではなかったし、チラチラと俺を見る顔が心なしか赤かったような気がした。
そうなると思い浮かぶ理由は一つ……渡辺さんは“人見知り”なんじゃないかと思ったのだ。
まぁ、こちらの勝手な思い込みかもしれないけど、もしそうだとするとあまり俺が長居しても渡辺さんにとって休憩にならない気がして足早に退散した。

 その後、袋の中身を大方みんなに配り終わった俺は、前田さんや高橋さんの一団に混じる麻里子さんの元を訪れ、さっきフォローしてくれたお礼を言った。

「麻里子さん、さっきはありがとうございます。 助かりました」

「ううん。 こっちこそありがとう……」

 麻里子さんは俺を見ると笑顔を見せてくれたが、それも束の間困ったような表情に変わりステージの隅に視線を移した。
その視線の先には大島がセットの隅でポツンと膝を抱え座っていて、ちょうど“宮澤 佐江”さんと“秋元 才加”さん2人で近づいて行くのが見えた。
大島は2人と二言三言喋っていたようだけど、また膝に顔を埋めてしまい残された2人は肩を落とすように戻って来た。

 チクリと俺の胸が痛む。
言わずもがなその様子の元凶は俺にあり、何か言える義理はないのだけど大島には笑顔でいて欲しいと思う。
たとえそれと引き替えに大島が俺をもっと嫌いになったとしても……。

「俺、ちょっと行ってきます」

 俺が大島の元に行こうすると、丁度戻って来た宮澤さんにすれ違いざまに腕を引かれる。

「止めなよ。 今スッゴい不機嫌だから。 優子は何でか知らないけど新城君には冷たいから行ったらもっと嫌われるよ」

「ちょっと佐江! 新城君に悪いでしょ!……でも新城君、佐江の言う通り今はそっとしときなよ」

「嫌われるのは承知の上です。 みなさんを思って一生懸命やっていた大島さんの邪魔をしたのは俺ですから……」

「でも……」

 宮澤さんはそれでも行かせたくないのか、俺に何かを言いたそうな顔をする。

 でも、このままだとせっかくの大島やみんなで必死にした努力が無駄になってしまう。
俺もそんなことをしたくて練習の邪魔をした訳じゃない。

「隼人がそう言うなら行ってきな。 篠田は隼人がしたことも優子がしたことも間違ってなかったって思ってる。 だから、ふてくされてる優子を連れ戻してきてよ。 まだまだ練習しないといけないんだからさ」

「ありがとう麻里子さん。 大島さんが戻って来たら宜しくお願いします」

 麻里子さんの言葉に後押しされるように、俺はその場に居たメンバーに頭を下げると大島の元へと向かった。

「あ、お兄ちゃ……」

「シンちゃ……」

 途中、同じグループのメンバー同士で休憩していた珠理奈や渡辺(美優紀)さんに呼ばれた気がしたけど俺は一直線に彼女の元へ向かった――。


―優子side―

 私は何となく居場所がなくってセットの隅で蹲るように座った。
横目で見ると、みんな楽しそうに各々グループを作って配られた飲み物やゼリー片手に、さっきまで私の前では見せなかった笑顔を浮かべ談笑している。

 どうしてこうなったの?
私はただ明日のコンサートを成功させたくて頑張っていただけなのに……。

 “アイツ”のせいだ。
突然現れた“アイツ”に全部奪われたんだ。
奪われたって言ったら大袈裟に聞こえるけど、それまでみんな私の言葉に従ってちゃんと動いてくれていた。
なのに“アイツ”新城君が現れた途端、みんな嬉しそうに彼の言うことを聞くんだもん。
そう思わずにはいられないでしょ。
特に麻里子の奴、一目散に彼の元に行って『休憩じゃないの?』って何さ。
麻里子も、みんなもそんなに私の言うことに不満があったの?

 私だってさ、みんなが疲れているのは分かってるよ。
でも残された時間が少ないんだから仕方ないじゃん。

 あっちゃんが言うことだって理解出来るよ。
でも、それじゃあ立ち位置とかタイミングが掴めない。

 でも……本当は私自身が一番いけないんだって分かってるよ……。
子役からずっと演技のお仕事をしていたから、台本を貰ったとき楽勝だって感じた。
案の定、練習してみても私自身のパートに不安はなかった。
だから、私は周りの演技経験が少ないメンバーをサポートする形でアドバイスを始めた。
始めは周りも、私が演技経験者ということでアドバイスを真摯に受け、応えてくれようとしていた。
けど、経験の少ないメンバーが直ぐに上達する訳なんかなくって“私なら簡単にできる”部分でもミスをすることに段々と苛立ちを憶えるようになっていた。
何より自分がやるのと教えるとではまるで勝手が違うということを忘れ、私は自分のやり方を押し付け出来ないメンバーを怒鳴っていた。
次第にみんなの表情は畏れの感情が見え隠れし始め、私に怒られないようにビクビクしていた。
その状況で演技に集中しろだの、台詞憶えろだの、言われても集中できる訳ない。
途中、自分でもそれに気付いたけど演技のことになると止められなくて、あっちゃんが折角言ってくれたのに反論していた。
それなのに一瞬でも“私は頑張った”なんて思った自分が一番嫌い……。

 だから、佐江と才加に声をかけられても、私はどんな顔してメンバーの輪に入れば良いか分からなくて拒絶した。

「優子」

「……何?」

「あっちでみんなと休憩しようよ?」

「いい……」

「でも「ほっといて!」」

「優子……」

 遠ざかる2人の足音に後悔が広がる。

『わたし何してんだろ……ごめんね佐江、才加』

 グウゥ……
真面目に友人に心の内とはいえ謝っているというのにお腹が鳴った。
こんな時にと悪態を付こう思ったけど、考えてみれば夕飯も食べずに練習していたんだから当たり前か。

『喉渇いたし、お腹も空いたなぁ……』

 でも今更みんなの所に、ましてや新城君の所に行ける訳もなく遣る瀬無さに深く顔を膝に埋めた。

 暫くそうしていると誰かの足音が近付き、私の前で止まるのが気配でわかった。

「大島さん」

「……何の用?」

 私の前で止まった気配の正体は、今一番話しかけられたくなかった新城君のものだった。
新城君があそこで練習を止めずにいたら、私はみんなのことを考えず何処までも練習を続けていたかもしれず、本当は感謝するべきなのは分かっていた。
でも、何故か私は素直になれず、顔も上げないまま新城君にぶっきらぼうな返事を返していた。

「あぁ……えーっと、水とゼリー持ってきたんですけど、どうですか?」

「……いらない」

「え~、でも折角買ってきたんだし飲んでくださいよ」

「いらない……」

「ちょっとでいいですから~」

「もういい加減に「はい、どうぞ」なっ!?」

 疲労と空腹で苛々していた私は、彼のしつこさに文句を言おうと顔を上げた。
その途端、彼は私の手元に何かを放った。
咄嗟のことで取るしか選択肢のなかった私が、それをキャッチすると新城君は「ナイスキャッチ」と言いながら笑っていた。
彼の態度にムッとしそうになるけど、それより早く手に感じる冷たい感触に思わずキャッチした物を見る。

 そこには“ゼリー飲料”と書かれ、それを見た瞬間“やられた”と思った。
新城君が何故私にしつこくしていたのか理由が分かったから。
彼は私に顔を上げさせるために態としつこくし、私はまんまとそれに乗ってしまったんだ。
“嫌な奴”そんな風に睨み付けたのに、新城君は全く意に介さないように私の隣に腰を下ろした。

「よっこいしょっ……」

 そう言いながら胡座をかくように座った新城君は、袋からゼリー飲料とペットボトルを出すとゼリー飲料を飲み始めた。
まるで当然みたいな顔して座ってるけど、私は“いいよ”なんて一言もいってない。

「ちょっと何してるの」

「ん? 俺も夕飯まだなんでついでに休憩しようかなって。 あっ“水”もどうぞ」

 新城君はペットボトルを私の脇に置くと、何事もなかったように再びゼリー飲料に口を付けた。

『また、私のこと無視して!』

 そんな新城君に何か言ってやろうとしたけど言葉が続くことはなかった。
近くで見るその横顔は久しぶりに見る彼の優しい表情だったから私は何も言えなくなる。
彼が私に見せる表情は、いつも憂鬱そうだったり困ったような表情ばかりで、私にこんな表情を見せてくれるなんてもう二度とないって思っていた。
だって、私が彼を傷付けたから……。

………………

…………

……

 彼が転校してきたとき、何だか壁を感じて取っ付き難い男の子だって思っていた。
みんなと普通に話すんだけど何処か一線を引いていて、笑顔は何処か作り笑いなように感じた。
それに家族のことは頑なに拒むとかじゃないんだけど、やんわりとそれでいて絶対話そうとしなかった。
私も両親が離婚しているから家族のことを詮索されるのは好きじゃなかったから聞こうとは思わなかったけど、何処かそんなところに私は共通点を感じたのかもしれない。
それに席が隣同士だったこともあって、それから私は事あるごとに話しかけたりした。

 趣味や好きなものが似通っていたのもあったし、何故か学校行事で一緒になることも多かった私たちは、その時間に比例するように仲良くなっていった。
次第に彼から壁が無くなっていくのが分かり、心からの笑顔を見せてくれるようにさえなった。
そんな彼と喋ったり馬鹿をしたりするのが楽しくて、私は仕事が忙しくても極力学校に登校するようにしていた。

「新城君と居ると変に気を遣わなくて楽ちんなんだ」

 そのときの私は本当にそう思っていた……。

 でも神様は意地悪で、男子と仲良くすることを許さないと言うかのように、私の身体に異変が起きた。

「声帯に嚢胞が出来ています……手術をお勧めします」

 以前から喉の調子が悪かった私は病院で検査を受けると、そう医師に告げられた。
そのまま放置しておくといずれは声が出なくなる、そう言われた私は頭は真っ白になった。
歌うことが仕事のアイドルが喉を手術する。
これがどういう意味を持っているか考えただけで私は怖かった。
でも、手術をしなければいずれはもっと最悪な結果が待っていると言われれば受けるしか他なかった。
だけど手術をすると一週間はお仕事や学校を休む必要があり、急にそんなスケジュール調整が出来る訳もなく、数日手術までの猶予期間があった。

 それと、私が手術を受けることは秋元先生や一部の関係者しかしらない秘密事項となった。
医師からは術後に声質に変化や、最悪の場合声が出し難くなるかもかもしれないと言われたからだ。
折角ここまで頑張って来たのにもしかしたら“アイドルを辞めなければならない”そう考えると毎日が不安で仕方なかった。

 今まで自分の声が好きでも嫌いでもなかった。
でも、現金なもので声質が変わると聞いた途端に自分の声が愛おしくなり、それから数日の間、私は放課後の屋上に上がり夕日を見ながら1人歌を歌った。
自分の声を忘れることなく心に刻み込むように……。

 でも、まさかそれを新城君に聞かれていたとは思わなかったし、私の思っていることを歌声だけで見透かされるなんて思ってもみなかった。

 術後、医師の言う通り声が以前よりもハスキーになり、高音域が出辛くなっていた。
ボイストレーナーの先生にはトレーニングをすれば以前のようになると言われたけど、それまで普通に歌えていた歌も高音部分が苦しくなり、それが私の精神状態を最悪にしていた。

 丁度そんなとき新城君に屋上へ呼び出され告白を受けた。

 その時の私はアイドルを辞めることさえ考えていたときで、とてもじゃないけど好きとか嫌いとか考えられなかった。
それどころか男性が近づくのも自分がアイドルという肩書きに寄ってくる、そんな風に勝手に思っていた私は男子クラスメイトの中で唯一心を許せる彼だったのに、私の何処が好きなのか聞いてしまった。

 でも私は質問したことを後悔することになった。
新城君は、私が同級生やメンバーに演技をしてでも隠していた秘密をいとも簡単に言い当てた。
本人は無意識なのだろうけど相手の心にスッと入ってくる新城君を、そのときの私は何もかも見透かされているようで怖くなり、拒絶ともとれる最低の断り方をしてしまった。

 しかも、次の日から何処から出回ったのか“新城が大島に告白した”と学校中の話題になり、男子たちから“抜け駆け”をしたと仲間外れにされ彼は段々と孤立していく。
なのに、そのとき自分のことで精一杯だった私は何も男子たちに言えず、寧ろ火に油を注ぐと分かっていながら新城君と普通に接してさえいた。
新城君はそんな私にも彼らにも反論することなく、ただ憂鬱そうな表情を浮かべ日々を耐えていた。

 そして、私は二度目の過ちを繰り返す。
彼がAKB劇場のアルバイトスタッフとして入ってきたときも普通に接することができず、私と新城君の間にある溝を埋めることができないままいた。

 他のメンバーに向けられる優しい表情を見る度に、私は自分のしたことをずっと後悔し続けていた。

………………

…………

……

 こんな嫌な女だから、私は新城君から嫌われているって思っていた。
それが今、私の前で彼は以前と同じような優しい表情を浮かべている。

『私のこと嫌いじゃないのかな? 私を許してくれたのかな?』

 私は彼の横顔に心の内で問いかけるけど、本音を聞くのが怖くて声を出して聞けないままいた。

「……」

「……」

 お互い何も話さず、ただ隣り合って座る新城君と私。
いつの間にか苛々する気持ちが嘘のように消えていたけど、この状況をどうすれば良いのかという新たな問題に私は頭を悩ませていた。
あれだけ突っぱねるような態度をとっておいて今更どんな風に話せば良いのかも分からない。
それにステージの向こうで興味津々に見ているメンバーの視線も気になって余計に何もできない。
気が付くと手の中のゼリーは冷たさを失っていた。

「……ゼリー温かくなっちゃいましたね」

「べ、別に私は持ってきてなんて頼んでない……」

「俺が勝手にやったことですけど、みんな喜んでくれてますよ」

「……それ嫌味?」

「事実です。 みんな疲れてましたから」

「……」

 何だろうこのやり取り……。
さっきまで良い感じだと思っていたのに喧嘩越しに聞こえる新城君の言葉に、私は思わず眉を顰めた。
仕返しのつもりだったら最低だし、今は止めて欲しい。

「でも、みんなも分かってるんです。 これだけやらないと間に合わないって。 だから、大島さんのアドバイスを聞きながら一生懸命にやってたんです」

「……」

「だから、大島さんもそれだけで良いんで口にしてください。 まだ、みんな練習するつもりで大島さんを待ってますから」

 そう言って柔らかい笑顔を私に向ける新城君。

 あぁ……私は馬鹿だ。
新城君は只の一度も、私を悪くなんか言ったことなんかない。
今だって私の身体を気遣って言ってくれていたのに、一瞬でも彼を最低だと思った自分が恥ずかしかった。

「ほら、みんな大島さんを待ってますよ」

 そんな私を察するみたいに新城君がステージの真ん中の方を指差す。
その先にはいつの間にか才加や麻里子、メンバーみんなが居て、佐江なんて笑顔で手を振ってくれている。

「ね?」

 そして新城君もやっぱり笑顔で私を見てくれていた。
込み上げてくる感情を誤魔化すように、生温かくなったゼリー飲料を一気に飲み干すとペットボトル片手に立ち上がった。

「しょうがないもう一頑張りしますか!」

 それでも意地っ張りな私は彼に背を向けたまま歩き始めた。

「あっ、そうだ。これ」

 私は数歩行ったところで気がついたふりをし振り返ると、私は彼の元に戻り空のゼリー飲料を差し出す。
新城君はそれを嫌な顔をせずニコニコしながら受け取ってくれる。

「ごちそうさま!」

 そんな彼に“ありがとう”なんて恥ずかしくて面と向かって言えない私は、その代わりに嘘偽りのないありったけの笑顔を向ける。
なんだかそれも照れくさくて、紅くなっているであろう顔を隠すように踵を返す。

「どういたしまして」

 心なしか弾んで聞こえる彼の言葉を背に、私は足早にみんなの所に戻った。


―麻友side―

 優子ちゃん指導の下で行われていた練習も終わり、私と同室のゆきりんはホテルの部屋に戻ってきていた。

「んーっ!」

 部屋に戻るなり私はベッドにダイブするように寝転がった。
4時間も練習していたから、伸びをすると首から足のつま先までの筋肉がほぐれ、思わず声が出るほど気持ち良かった。
ストレッチをしっかりしてもこれだから、明日の朝がちょっと心配かも。

「先にシャワー浴びちゃうね」

 私がそんなことをしていると、ゆきりんがそう言って足早にシャワールームへ入って行ってしまった。
今すぐにでも私も汗を流したいけど女2人が入れるほど広くないので、そのまま仕方なくベッドの上でゴロゴロしながら今日あったことを思い返す。

 今日は本当に色々あったと思う。

 朝、会場に着くなり秋元先生からセットリストを変更すると言われ、無我夢中で憶え直すことに……。
ようやく憶えたセットリストなだけに、急に変更されても簡単に憶え直せる訳なんてなくて、結局散々たる状態だったリハーサル。
それを見かねた優子ちゃん指導の下始まった“ヤンキーソウル”の寸劇の練習は、台詞から演技まで含めて通しでの練習だったから演技経験のないメンバーの多くが苦労していた。
容赦のない辛口のアドバイスに誰も不平を言うメンバーがいなかったのは、優子ちゃんが普段とはまるで別人で怖いぐらいの熱血指導だったからなのかも。
幸いにして私はドラマの経験があったからこういうことには慣れていたけど、目立たないようにゆきりんの陰にずっと隠れていたことは優子ちゃんには黙っていよう・・・。

 でも、今日私が一番驚いたのはそこではなく、新城さんとのことだと思う。

 朝から新城さんはスタッフの一員として動き回っていたから、同じ現場に居るはずなのになかなか姿を見ることが出来ずいた。
時折、リハーサルの合間や休憩のときに遠くで忙しそうに走り回る新城さんの姿があったけど、話す機会もなく折角コンサートのスタッフさんになったのだから少しは仲良くなれるチャンスかと思っていただけに残念で仕方なかった。

 結局そうこうしている間に夜になり、私は今日はもうお話ししたりできないんだろうなと諦めた頃、新城さんが私たちの“マジすか学園”の寸劇部分を練習していたステージに現れた。

 新城さんの姿を見れたのが嬉しかった反面、練習を中断させるようなことをしたり大きな袋を両手に抱えている様子に“どうしたんだろう?”と疑問を持たずにはいられなかった。
すると、持っていた袋からお水とかゼリーとか出し涼しい顔でサラッと「休憩しませんか?」と言い出す新城さんにビックリしてしまった。
だって、新城さんにも優子ちゃんの大きく叫ぶ声が聞こえていたはずだろうし、ステージの状況を見れば今そんなこと出来るわけがないことぐらい分かるはず。

 案の定、それを聞いた優子ちゃんは先程よりも一段と険しい表情となり、今にも新城さんへ食って掛かろうとしていた。
何故なのか優子ちゃんは新城さんに対してはあまり良い印象を持っていないのか、いつも素っ気ない態度で接している。
だから、こんなときはきっと凄い剣幕で何か言うに違いない、そう思った私はその場面を見たくなくてゆきりんの陰に隠れた。

 でも、ステージに優子ちゃんの声が響くことはなく、代わりに新城さんをフォローするように篠田さんが他のメンバーへ休憩を奨める声がし、それが切っ掛けになったのか躊躇していたメンバーから緊張感が消え、なし崩し的に休憩時間へと変わった。

 優子ちゃんと新城さんの間に衝突が起きなかったことに胸を撫で下ろす一方で、2人の対照的な姿に胸が痛んだ。

 新城さんの周りには笑顔のメンバーが沢山集まる一方で、みんなのためと奮起していた優子ちゃんの周りには誰も居らず、孤立した彼女はステージの端の方に行ってしまった。

 険しかった表情とは裏腹に、寂しげな背中を見せる優子ちゃんが可哀想で、私は何故あんなことを新城さんがしたのか理解出来ず“こんな大変なときに何をしているの?”と思わずにいられなかった。
そこに新城さんの真意があったことなど露知らず、私は優子ちゃんに悪い気がし水だけを取るとゆきりんやさっしーと一緒に身体を休めていた。

 暫くすると新城さんがゼリーを持って来てくれたけど、やっぱり優子ちゃんに悪い気が拭えず、とても口に出来る気分になれなかった私は断ろうとした。
でも、人見知りで普段から新城さんと目もまともに合わせられない私が、言えるはずもなくドギマギしていると隣のゆきりんが見かねたように「小食だから」とフォローしてくれた。

 それを聞いた新城さんは、それでも私に「渡辺さんのお気に入りの“ピルクル”に味が似てる気がするんですよね」と半ば強引にゼリー飲料を差し出し、彼の言葉に驚いた私は思わず受け取ってしまった。

 驚いた理由?
だって人一倍人見知りで、新城さんと話したのだって今日が初めてくらいの私の好みを、まさか知ってくれてるなんて想像ができなかったから。
自分のことを特別に見てくれてるんだってちょっと優越感を感じたけど、よく考えたら私が飲んでいるのをよく見かけたって言っていたからそれでなのだろう。
ちょっと残念だったけど、メンバーのことを良く見てさり気ない気遣いのできる新城さんらしい一面だと思った。

 でも、新城さんが去り際に私に言った“人一倍頑張ってる”ってどう言う意味なんだろう?
何のことか気になったけどあの後、結局聞けず終いで新城さんは優子ちゃんの所に行ってしまった。

 それも新城さんが隣に座って暫くすると、さっきまであんなに複雑な表情をしていた優子ちゃんの顔に笑顔が戻っていた。
2人の間に何があったのかは定かじゃないけど、戻って来た優子ちゃんの顔が心なしか上気しているように見えたのは気のせいだろうか?

 去り際の言葉や優子ちゃんを元気にしたことといい、とにかく新城さんの掴み所のないキャラクターは、私を夢中にさせるには十分で今でも新城さんの言葉の意味を考えていた。

「う~ん」

 答えのでない問いに頭を悩ませ、ベッドでごろごろ転がる私。

ガチャッ

「ふぅ~ さっぱりした。 麻友入っていいよ……って何してるの?」

「べ、別に……ゆきりん早く出てこないかなって思ってただけ」

 そこにお風呂から戻って来たゆきりんがバスタオルを巻いた姿で、私の謎の行動を不思議そうに見ていた。
行動も然る事乍ら、新城さんのことを考えていたなどと口が裂けても言えない私は、適当なことを言ってはぐらかした。

「ふ~ん、私はてっきり新城君のことでも考えてるんだと思ってた」

「そ、そんな訳ないって。 さっ、私もお風呂入ろっ!」

 そんな私の気持ちを見透かすようにニヤリとするゆきりん。
その不適な笑みは正にさっきまで何度も見たマジすかのブラックそのもので、私はそんな彼女から逃れるように足早にシャワールームに入った。

『変な所で鋭いんだからゆきりんは……』

 ゆきりんの言う通りなのだけど、いつも彼女の陰に隠れてばかりの私。
自分を変えて、新城さんとお話してみたいけど、それができるほどの度胸はない。
言うなれば、マジすかの役柄ネズミと私は一緒。
今日もちょっと新城さんと喋れたのはゆきりんが居たから。

 優子ちゃんやあっちゃんみたいに“センター”になれば、こんな私でも変われるのかな?

 そんなことを思いながらシャワーを浴びた――。


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