『勘違いから始まる恋』第一章『恋の終わり』
第008話
シャー……
シャワーの温かく心地良い刺激が極度の緊張で強ばった身体をほぐしてゆく。
『はぁ……学に嘘言っちゃった……』
顔にシャワーを浴びながら、山本 学に嘘を言ったことを少し後悔していた。
学には今回の件の原因はストーカーに付きまとわれたせいだと伝えた。
実際にストーカーに追われたことで恐怖を感じたのは確かだが、ウエンツ 瑛士とのことをまだ引きずっていることは言えなかった。
『でも……もう無理なんだよね……』
2人の大事な番号を瑛士は捨てた。
それは自分とのことを終わりにしたかったのだと想像できた。
また、鼻の奥がツーンとし泣きそうなのがわかった。
「おーい、大丈夫か?」
「今出るねー」
学が外から声をかけてきたので返事をし風呂からでた。
着替えを終えリビングに戻ると時計は10時を過ぎていた。
『時間!』
優子が時計を見て驚いていることに気づいた学がフォローをする。
「取材の仕事は11時からに変更してもらったから平気だよ」
「ごめんね。 迷惑かけて」
「気にするな。 それより、平気か? 風呂長かったし」
「うん、大丈夫。 サッパリした」
いつものように振る舞う優子に、学はばつが悪そうにしている。
「こっちこそすまん。 優子が大変な目に合っているのに、仕事を休ませてやれなくて」
「優しいね学は。 でも平気だよ。 仕事好きだし。 何よりストーカーがつくってことは、この大島さんは人気者だってことだよ」
自分でも下手な言い訳だなと思いながら作り笑いをした。
学もそれが彼女の強がりだとわかっていた。
「それに……私に何かあったら学が助けてくれるんでしょ?」
「もちろん」
ふふふ、2人は心から笑った。
「そろそろ、行こうか」
「うん」