『勘違いから始まる恋』第二章『最悪な3日間』
第025話
「……なさい。 起きるんだ」
男性の声と体を揺さぶる振動で隼人は目を覚ました。
「今から取り調べを行うから起きるんだ」
目覚めた隼人の前に先程の警官が立っていた。
誤解を解く方法を考えていたが、結局何も浮かばずいつの間にか眠ってしまっていた。
「あぁ、はい……」
完全に目覚め切れずにいる頭を降りベッドから起き上がる隼人に警官が手錠をかけた。
『……そういえば逮捕されたんだっけ。 忘れてた』
改めて自分が逮捕されたのだと思いだした隼人を警官は廊下へ出るように促す。
隼人が廊下に出るともう1人待っていた警官が先を歩き始めた。
歩いていると自分1人だと思っていた留置所に酔っ払いや不良数人が拘留されていた。
『やっぱり日本の留置所は大人しい人ばっかりだな』
隼人は彼らを見てそんなことを思いながら留置所のあるフロアを後にした。
警官に連れられ階段を下りると重々しい鉄の扉が並ぶフロアに連れて来られた。
隼人は四番目の部屋に通される。
その部屋には留置所と違い高い場所に鉄格子のついた小さな窓、部屋の中央にテーブルを挟んでパイプ椅子2脚、扉の近くにもテーブルとパイプ椅子1脚、そして壁にはこの部屋に似つかわしくない大きな鏡が備えられていた。
部屋の奥の椅子に座り暫く待つように言われ大人しく座る隼人。
扉の所には監視の警官が1人立っており、隼人をじっと見ていた。
隼人はそんな視線を気にすることもなく暫くぼんやりしていた。
『日が昇ってたけど今何時なんだろう……』
ガチャ
「待たせたね。 私は君の取り調べ官の後藤というものだ」
部屋に入ってきたのは普通のスーツと革靴という出で立ちの後藤と名乗る初老の刑事だった。
“後藤 啓三”数々の事件を解決してきたベテラン刑事だが来年定年を控えた身で、普段は若い連中の教育係をしているが、時々このように取り調べなどもしていた。
引退間近ながらもベテラン刑事の持つ特有の雰囲気がそこにはあった。
「宜しくお願いします」
隼人は後藤の言葉が終わると立ち上がり自分も頭を下げ挨拶をする。
書記の警官が後藤と隼人、2人の会話を記録する中、取り調べが始まった――。