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『勘違いから始まる恋』第二章『最悪な3日間』

第024話

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「ん……」

 瞼がゆっくり開き隼人は目覚めた。

『……ここは何処だ?』

 それが最初の感想だった。
体を起こすと投げ飛ばされたせいか背中に少し鈍い痛みが残っていた。
周りを見渡すと無機質な打ちっ放しコンクリートの壁や天井と、自分が寝かされていたパイプ式の簡易ベッドが備えられていた。
そしてこの部屋が何処であるかを象徴する“鉄格子”があり、廊下を挟んで向かいにも同じ作りの部屋が並んでいた。
廊下の様子を窺うと奥で警官が座って居るのが見え、隼人はこの場所が留置所であることを理解した。

 鉄格子の扉を両手で掴みながら廊下の様子を窺う。
その姿は服装こそパーカーにジーンズと普通だが、行動が漫画に良くある囚人と同じであり、これまたお約束のように、その姿を廊下の奥にいた警官が気づき隼人の様子を見に近づいてくる。

「気がついたようだね」

「はい……あのここってやはり留置所ですよね?」

「そうだよ。 ここは○○警察署内の留置所だ」

「そうですか……僕は逮捕されたってことですよね……」

「そうなるね。 君は気を失っていたから分からないだろうが、現行犯逮捕だと聞いている」

『あれは流石に避けれないぐらい綺麗に投げられたもんな……あの人、大島さんの彼氏なのかな?』

 落とし物を返そうとして女性に怖がられ、投げ飛ばされた挙げ句に逮捕、留置所に入れられるという悪夢のような展開であるにも関わらず、本人は自分を投げ飛ばした男性と大島 優子の関係を気にしていた。

「取り調べは夜が明けてからになるから、暫く大人しくしていなさい」

 隼人が全く逮捕に関係ないことを考えていたとは露知らず、警官はそれだけ言うと元の場所に戻っていった。

「わかりました」

 隼人もそれに一言だけ答えると先程まで寝かされていたベッドに横たわった。
コンクリートと鉄格子に囲まれた留置所という特殊な環境下でも、隼人は取り乱す事もなく色々と考えを巡らしていた。

『どうやったら彼女の誤解が解けるんだろう……解けなかったらプレゼンどうしようか』

「ん~……」

 色々と誤解を解く方法を考えてみたがベストなアイディアも浮かばず、ベッドにあぐらをかいたまま呻っていた――。


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