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『勘違いから始まる恋』第一章『恋の終わり』

第014話

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 久しぶりのTeam K全員が集合した公演は最高の盛り上がりをみせた。
優子のパフォーマンス、MC共に、いつも以上に輝いていたのもファンを盛り上がらせる要因の一つとなっていた。

 それは、先程のメンバーとのやり取りが優子をTeam Kのメンバーとして、AKBとしての自覚をより強いものにし、センターを務める彼女の実力を十二分に発揮させた。
そんな優子の姿に触発された他のメンバー達もいつも以上のパフォーマンスをみせ、ファンの中に漂っていた“脱•会いに行けるアイドル”という思いを消し去っていた。
再び燃え上がったファン達の気持ちは大声援となって表れ、会場はメンバー、ファンが一体となった“熱かった”頃の公演に戻っていた。
アンコールは鳴り止まず、それもこなしたメンバー達は公演後に楽屋で燃え尽き倒れていた。
だが、どのメンバーも表情は明るく、笑顔さえ顔に浮かんでいた。

 優子も肩で息をしながら床に寝転がる。
久しぶりに燃え尽きるまでパフォーマンスをした気がし全身を心地良い疲れが包む。

………………

…………

……

 暫くタオルを顔から被りじっとしていた優子は、いつもは五月蝿いぐらいの他のメンバーがあまりに今日は静かなことに疑問をもった。

「……みんなぁ?」

 余りに静かなので、頭から被ったタオルを取りながら上半身を起こした。

「あれ!?」

 楽屋を見回すが、先程まで居たはずのメンバーが誰1人見当たらなかった。

「おーい、誰かいませんかぁ?」

 部屋をキョロキョロ見渡しながらメンバーの姿を探す。

コンコン

 背後にある出入り口でノックがした。

ビクッ

「だ、誰?」

 不意のノックに優子はビクついてしまい、素っ頓狂な声を上げ振り返った。

「マネージャーの山本だけど、入っても平気かな?」

「……なんだ、学かぁ……はぁ、いいよ」

ガチャ

 山本 学が入ってくる。

「どうした、変な声あげて?」

「急にノックするからだよ……」

「ノックなんだから当たり前だろ……あれ? 他の娘達は何処に行ったんだ?」

「さぁ、気づいたら誰も居なかったんだよね……」

「置いてけぼりを食らった訳か」

「違うよぉ」

「ははは、そういうことにしとこう。 しかし、今日の公演は凄かったな……」

 優子と学は暫く今日の公演の盛り上がりのことで話していた。

………………

…………

……

ガチャ

「優子ぉー起きてるかー!」

 勢いよく楽屋に入ってくる宮澤 佐江だったが、優子1人だと思っていた部屋に学が居るのに驚いた。

「!? 学かぁ! ビックリした」

「ん? 佐江か。 さっきから驚かれっぱなしだな」

 優子に続き佐江にも驚かれたことに苦笑する。

「佐江~優子起きてた?……!?」

 ぞろぞろと入ってくるメンバーが一様に自分に驚いている姿を見て、学は苦笑するしかなかった。
メンバーが驚くのも無理はなかった。
このメンバーの中で専属でマネージャーが常に付いているのは優子と板野 友美ぐらいなもので、他の者は仕事毎にマネージャーが付いたり付かなかったりしていた。
その上、男性マネージャーが劇場の楽屋に入って来ることが滅多に無いため、学がここに居ることに驚いたのだ。

「ところで、何で学がここに居るの?」

「そうそう、男子禁制の女の園だよ?」

「山本はん、もしかして覗きですか?」

「おいおい……そんなことしないって」

 佐江や峯岸 みなみ、横山 由依の質問を苦笑しながら否定する学。
そんな学に爆弾を投下する優子。

「そうそう、学がうちらを覗いたりする訳ないじゃん。 覗くなら麻里子のだよねぇ~」

「え~っ!」

「おい! 優子! 馬鹿なこと言うな!」

 学は普段『推しメンは優子』と言い続けてきた。
実際、優子の専属マネージャーでもあり兄妹のような関係の2人を見る周囲も、何もそれに対し疑いを持っていなかった。
しかし、学は密かに“篠田 麻里子”を推していた。
理由は麻里子の“女王様”のような振る舞いとスレンダーなボディで、対する優子は妹のようであり、何より巨乳はタイプではないというのだ。
それを聞いた優子は一週間、一切口をきかなかったという過去のエピソードを話した。

 そんな秘密をバラされた学は卒倒しそうになり優子の口を押さえるが、既に時は遅く他のメンバーから暫く冷ややかな目で見られることになった――。


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