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『勘違いから始まる恋』第一章『恋の終わり』

第001話

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「太陽が~♫」

 “大島 優子”は1人、夜道を上機嫌で歩いていた。
最寄りの駅から途中にある桜並木を抜け、引っ越したばかりのマンションに向け帰宅の途に就いていた。
その手には近くのコンビニで買った飲み物や雑誌が入った袋をぶら下げている。

 時刻は午後11時を少し過ぎた頃。
並木道周辺は住宅街で比較的明るいが、この時間は人通りが少ない。
そんな場所に“国民的アイドルグループAKB48”の一員で1、2を争うほど人気の優子が、何故かこんな時間にコンビニ袋片手に歩いて帰宅している。

 あまり見慣れない光景なのだが、本人曰く『折角町並みが気に入って引越したのに、毎日マネージャーに送り迎えされていたら勿体ない!』ということらしい。

 今はまだ3月中頃で並木道に緑はない。
しかし、ほんの2週間もすればこの辺一体は桜の名所として賑わう。
それを以前ドラマの収録で訪れた際に気に入り、最近引っ越してきたのだ。

 マネージャーからは危険だからと車での送り迎えを提案されてはいたが、本人の強い希望と引っ越したばかりで直ぐに飽きるだろうとの周囲の声もあり現在に至っている。

「カチューシャ 外しながらぁ♪~」

 優子はまだ鼻歌を歌いながら歩いていた。
久しぶりに仕事が早く終わり、同じ現場であった“前田 敦子”や“高橋 みなみ”そして“篠田 麻里子”など数名で食事をした帰りであった。
同じ現場で仕事をすることは多いが、なかなかメンバー同士で食事をする時間をとれる機会がない。
久しぶりのメンバー同士の食事会ということもあり、お酒が進み大騒ぎとなった。
お酒も入っているためか時折、左右にふらふらしながら歩いている。
端からみるとただの酔っ払いに見えた。

 そんな彼女の脇を若い男女の“カップル”がクスクス笑いながらすれ違う。

「届かないくらい?!……」

 先ほどまで鼻歌を歌って上機嫌だった優子の表情が曇る。
それはカップルに笑われたからでも、酔いが回り吐き気がしたからでもなかった。

 仲睦まじいカップルの姿に“彼”と自分が、ダブって見えたからであった。

「まだ、忘れられないんだ……」

 楽しかった気持ちが一気に冷め、あの日の出来事を思い出してしまった――。


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