14、貴方は遠く
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トチに送り届けられたヒャンユンは、翌朝すぐに市場通りの荷入れに姿を現していた。もちろんこれに驚いたのはミン・ドンジュだった。そしてもう一つ、彼女が驚いたこと。それは────
「ドンジュ!大変だ!布の価値が下落している!我々が提示した価格の半値を切った!」
「えっ?何ですって!?」
「コン・ジェミョンとユン・テウォンは投獄されているのだろう?だったら一体誰が……」
頭を抱える夫のチョン・マッケに対して、ドンジュは真っ青な顔を浮かべた。
「───コン・ヒャンユンです」
「え?あの17にもならない小さなお嬢さんが?まさか……」
「いいえ!あの娘を取引前に殺そうとは思っていましたが、まさか本気でやるとは…………」
「まさか、仕損じたのか!?一体どうして」
「わかりません!」
ドンジュは混乱して首を横に振った。マッケはすぐに昨日の者たちを呼びつけ、事情を共に聞こうと思い立ったが、丁度部屋に彼らが自ら報告へやって来た。ドンジュは苛立ちながら報告を促す。すると、一人の男が恐る恐るこう言った。
「………その…………トンチャンが、邪魔立てをしました」
「何?トンチャンが?なぜあいつが邪魔立てを?」
マッケはそこまで言うと、はっと我に返った。
「ドンジュ、まさか……」
「あの色狂いが………………!!!今すぐトンチャンを呼べ!早く!」
ドンジュは金切り声を上げてトンチャンを呼びつけたが、彼はあろうことにもヒャンユンの入札を見守っていた。
「………これで、大行首様と交渉できるかもしれないな」
「そうね、父を解放してもらうわ。きっと上手くいく。」
二人が親密そうに見つめあっているその場に、怒り心頭のドンジュが部下と夫、そしてナンジョンを連れて現れた。事の発覚を悟ったトンチャンは、咄嗟にヒャンユンを背後に隠そうとした。だが、それよりも早くドンジュの平手打ちが彼女の白い頬に放たれる。乾いた音と共に、その場が凍りつく。
「そなた、うちの曰牌をたぶらかすとは。この女狐が!」
「女狐……ですか。朝鮮では、お慕いする方と添い遂げようとするだけで泥棒呼ばわりされるのでしたっけ?」
「この……………!!!」
全く動じないヒャンユンに業を煮やしたドンジュは、もう一度叩こうと手を振り上げた。だがそれよりも早くトンチャンがその腕を掴んで叫んだ。
「大行首様!お止めください。」
「離せ!何をする!」
「俺が悪いんです。俺が………俺がお嬢様をお慕いしたんです。立場もわきまえず、俺が…………」
ドンジュは腕を振り払うと、トンチャンのほほも叩いた。だが、トンチャンにとってそれは大した痛みではなかった。むしろ無性にすっきりした気分だった。
「叩いてください。気が済まれるまで、存分に叩いてください。ですが、あの命だけは見過ごすことが出来ませんでした。」
洗いざらいマッケから聞いたナンジョンは、ようやく前に歩み出た。そして静かに尋ねた。
「────父親を、牢から救いたいか?」
「ええ。救いたいです。ですが、救えぬから今こうして私は奥様と対峙しているのでは?」
ナンジョンはうっすら笑みを浮かべると、ヒャンユンの頭のてっぺんから爪先までを眺め始めた。
───ここまで肝の座った娘だとは。純な部分と気の強さが混ざっているようだ………トンチャンが気に入ったのもわかる。それに、コン・ジェミョンとは似ても似つかぬ程に申し分ない容姿だ。おまけに商才あふれる聡明な娘ときた。
「…………お前が苦しめば、父親は折れるだろう」
「何ですって……?」
訝しげにナンジョンを睨み付けるヒャンユンをよそに、いつの間にか到着していた捕盗庁の兵たちが彼女を取り囲んだ。
「何をしている。この娘も捕らえよ。重要参考人だ」
「は……はい。」
「そんな!奥様、話が違います。止めてください!」
咄嗟に兵との間を割って入ったトンチャンは、ヒャンユンの手を握って捕らえさせまいと立ちはだかった。だが、ナンジョンは淡々と話続ける。
「そなたは私の言う通りに動かなかった。………いや、ある意味言う通りに動いていたのかもしれぬな。」
「まさか…………奥様の狙いは…………」
ナンジョンは冷笑すると、ヒャンユンとトンチャンを嘲笑うかのように一瞥した。
「────コン・ジェミョン商団は、我が商団の配下となるであろう」
「チョン・ナンジョン!!!!」
ヒャンユンの怒声も虚しく、ナンジョンの高笑いが響き渡る。そしてあっという間にヒャンユンの身体に縄がかけられる。ほどこうとしてトンチャンは必死にもがいてしがみついた。時には武官を殴って蹴った。しまいには仕事が出来ないと悟ったヤン・ドングが、トンチャンを持っていた剣の鞘で叩いた。
「止めろ!お前も連行するぞ」
「それでも構いません!ヒャンユンを独りに出来ません!ヒャンユン!離せ!止めろ!」
「トンチャン!トンチャン…………!嫌、止めて!トンチャンに乱暴しないで!」
地面にねじ伏せられ、木の棒で叩きのめされる姿がヒャンユンの目に飛び込んでくる。両腕を引っ張られた彼女は前を向いたが、その耳にはいつまでもトンチャンの叫びがこびりついて離れることはなかった。
「ドンジュ!大変だ!布の価値が下落している!我々が提示した価格の半値を切った!」
「えっ?何ですって!?」
「コン・ジェミョンとユン・テウォンは投獄されているのだろう?だったら一体誰が……」
頭を抱える夫のチョン・マッケに対して、ドンジュは真っ青な顔を浮かべた。
「───コン・ヒャンユンです」
「え?あの17にもならない小さなお嬢さんが?まさか……」
「いいえ!あの娘を取引前に殺そうとは思っていましたが、まさか本気でやるとは…………」
「まさか、仕損じたのか!?一体どうして」
「わかりません!」
ドンジュは混乱して首を横に振った。マッケはすぐに昨日の者たちを呼びつけ、事情を共に聞こうと思い立ったが、丁度部屋に彼らが自ら報告へやって来た。ドンジュは苛立ちながら報告を促す。すると、一人の男が恐る恐るこう言った。
「………その…………トンチャンが、邪魔立てをしました」
「何?トンチャンが?なぜあいつが邪魔立てを?」
マッケはそこまで言うと、はっと我に返った。
「ドンジュ、まさか……」
「あの色狂いが………………!!!今すぐトンチャンを呼べ!早く!」
ドンジュは金切り声を上げてトンチャンを呼びつけたが、彼はあろうことにもヒャンユンの入札を見守っていた。
「………これで、大行首様と交渉できるかもしれないな」
「そうね、父を解放してもらうわ。きっと上手くいく。」
二人が親密そうに見つめあっているその場に、怒り心頭のドンジュが部下と夫、そしてナンジョンを連れて現れた。事の発覚を悟ったトンチャンは、咄嗟にヒャンユンを背後に隠そうとした。だが、それよりも早くドンジュの平手打ちが彼女の白い頬に放たれる。乾いた音と共に、その場が凍りつく。
「そなた、うちの曰牌をたぶらかすとは。この女狐が!」
「女狐……ですか。朝鮮では、お慕いする方と添い遂げようとするだけで泥棒呼ばわりされるのでしたっけ?」
「この……………!!!」
全く動じないヒャンユンに業を煮やしたドンジュは、もう一度叩こうと手を振り上げた。だがそれよりも早くトンチャンがその腕を掴んで叫んだ。
「大行首様!お止めください。」
「離せ!何をする!」
「俺が悪いんです。俺が………俺がお嬢様をお慕いしたんです。立場もわきまえず、俺が…………」
ドンジュは腕を振り払うと、トンチャンのほほも叩いた。だが、トンチャンにとってそれは大した痛みではなかった。むしろ無性にすっきりした気分だった。
「叩いてください。気が済まれるまで、存分に叩いてください。ですが、あの命だけは見過ごすことが出来ませんでした。」
洗いざらいマッケから聞いたナンジョンは、ようやく前に歩み出た。そして静かに尋ねた。
「────父親を、牢から救いたいか?」
「ええ。救いたいです。ですが、救えぬから今こうして私は奥様と対峙しているのでは?」
ナンジョンはうっすら笑みを浮かべると、ヒャンユンの頭のてっぺんから爪先までを眺め始めた。
───ここまで肝の座った娘だとは。純な部分と気の強さが混ざっているようだ………トンチャンが気に入ったのもわかる。それに、コン・ジェミョンとは似ても似つかぬ程に申し分ない容姿だ。おまけに商才あふれる聡明な娘ときた。
「…………お前が苦しめば、父親は折れるだろう」
「何ですって……?」
訝しげにナンジョンを睨み付けるヒャンユンをよそに、いつの間にか到着していた捕盗庁の兵たちが彼女を取り囲んだ。
「何をしている。この娘も捕らえよ。重要参考人だ」
「は……はい。」
「そんな!奥様、話が違います。止めてください!」
咄嗟に兵との間を割って入ったトンチャンは、ヒャンユンの手を握って捕らえさせまいと立ちはだかった。だが、ナンジョンは淡々と話続ける。
「そなたは私の言う通りに動かなかった。………いや、ある意味言う通りに動いていたのかもしれぬな。」
「まさか…………奥様の狙いは…………」
ナンジョンは冷笑すると、ヒャンユンとトンチャンを嘲笑うかのように一瞥した。
「────コン・ジェミョン商団は、我が商団の配下となるであろう」
「チョン・ナンジョン!!!!」
ヒャンユンの怒声も虚しく、ナンジョンの高笑いが響き渡る。そしてあっという間にヒャンユンの身体に縄がかけられる。ほどこうとしてトンチャンは必死にもがいてしがみついた。時には武官を殴って蹴った。しまいには仕事が出来ないと悟ったヤン・ドングが、トンチャンを持っていた剣の鞘で叩いた。
「止めろ!お前も連行するぞ」
「それでも構いません!ヒャンユンを独りに出来ません!ヒャンユン!離せ!止めろ!」
「トンチャン!トンチャン…………!嫌、止めて!トンチャンに乱暴しないで!」
地面にねじ伏せられ、木の棒で叩きのめされる姿がヒャンユンの目に飛び込んでくる。両腕を引っ張られた彼女は前を向いたが、その耳にはいつまでもトンチャンの叫びがこびりついて離れることはなかった。