零
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カチャン
一通りの手当を終えた化野が、薬草の粉の入った器を置いて息を吐くいて、手当してやった娘をみやる。
「…」
傷に薬草を塗ってやったら、ほぼ全身が薄い緑になってしまった。
それほど、全身怪我だらけだった。
「にしても…こんな娘がいたかね」
仕事柄、化野は村のすべての人間を認識しているはずだった。
できているという自信もあった。
名前をすべて一致させられるかどうかは別として、顔は覚えていた。
しかし、こんな娘は見たことがない。
それにこのような珍しい…髪も、目を縁どる睫毛も、眉も、肌も、真っ白な、こんな容姿をしている者を、そう簡単に忘れるはずがない。
よその村から来たのか。
この近くに捨てられたか。
この年なら…嫁入りが嫌で逃げ出したのか。
十四、五に見える少女を見ながら化野は考える。
「…ん…」
「お、起きたかね」
少女の目が、小さく漏れた声とともに少しずつ開いていく。
そして、側に座る化野を認識した瞬間。
飛び起き、警戒し始めた。
「こら、まだ寝てなきゃまた倒れるぞ」
苦笑いしながら言う化野にハッとしたように、少女は自分の体を見た。
『…手当、してくれたのか』
「まあ、医者だからなあ」
少し気まずそうに寝かされていた布団へと戻る少女。
『その…ありがとう』
物分りはいいらしい。
「いいさ。ただしばらくは家で療養だ、帰るのはそれからだ」
こんなに体をボロボロにしてる奴は久しぶりに見るよ。
そんな化野の言葉にただ、そうか、と返す少女。
「…そういやお前、名前なんというんだ」
『…樹』
やっぱ聞き覚えは無いがねえ…とボヤきながら、化野は薬の片付けを再開した。