壱
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この前先生に教わったお茶の淹れ方に忠実に倣って、三つお茶を淹れる。
そして縁側より少し内側に腰掛けた先生の横に座り、例の客の様子を伺いながらそろりと持ってきたお茶を差し出せば。
「おう、さっきは悪かったな。お前、出掛けるところだったんだろ」
と、こちらを見る男の人とばっちり目が合ってしまい。
「う、ぁ…、そう、だ」
と、なんとも情けない返事が口から溢れだす。
_____あ、そういや風呂敷、玄関に置いたままだ。
後で片さなければ。
目を逸してそんな事を考えていれば、先生が口を開いて。
「そういやギンコ、今年は来るのが早かったな」
「いや待て。お前、一先ずその横にいる奴を説明しろ」
「あーそうか。それが先だったな」
「…分かっててやってんだろ、お前」
すっとぼけた顔をした先生に苦笑いするその男が、わざとらしくため息を吐く。
それを見て先生は楽しそうに笑ってから、私を指して。
「こいつはな、樹といって…」
数ヶ月前に裏の山の麓に倒れてたのを拾って、帰る所も無いそうだからそれから家に置いてるんだよ。
ものすごく簡潔にまとめる先生。
それを聞いて例の男の人はなにか考えた後、
「…そうかい」
と此方を向き。
「俺は蟲師ってのをやってる、ギンコってもんだ」
と。
「___むしし?」
「ああ…蟲ってのは、」
「いや、それは知ってる」
蟲は、知ってる。
いつからか見えていた、ヤツらの事だ。
けど、むしし、って。なんだ…?
「ああそうだギンコ、こいつは見える質でな」
「なっ、お前そういう事はもっと早く…まあいい」
何故か驚いた顔をしていたギンコ…でいいのか?ギンコは、また先生に呆れたようにため息をついて。
こちらに顔を向けた。
「お前さん、蟲が見えてるのか」
「ああ…それ、其処に居るような奴らの事だろう」
ギンコが吸ってた煙草が消えてから、妙に集まってきていた蟲達が、丁度私とギンコとの間に溜まっていたため、そやつらを指さすと。
「ほんとに見えてんのかよ…」と溢すギンコ。
先生は私の言葉を聞いた瞬間から、いるのか!そこに⁉としきりに燥いでいるけれど、どうやらギンコには見えているらしい。
溜まっていた蟲達を軽く手で払った後、
「蟲師、ってのはまあ…その、なんだ」
___蟲を、扱う奴らのことだよ。
と、静かに言った。
「あいつらを、扱う…?」
あれらはただ、そこに居るだけだと思っていた。
だからこの男の言う事がいまいち理解できないでいた。
すると先生が、そんな私を見兼ねてか
「またこいつから話してもらえ。面白い話もあるだろう。直にわかるようになるさ」
と笑う。
「それはお前が聞きたいだけだろう」
と、間髪入れずに返すギンコが何故か面白くて、少し笑ってしまいながら
「聞きたい、その話。面白そうだ」
と言えば、それに先生も乗っかって。
「な、ギンコ。樹もこう言ってることだしよ…?」
「わあったよ…また明日にでも話してやるさ」
最後には、ギンコが折れたようだった。