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ゆめのはて

「菊花賞を諦めてBCクラシックに行くべきってこと?」
「諦めて、って言葉使いアレじゃない...?」
フジに打ち明けるのには勇気が行った。
菊花賞に行って、優勝して。三冠バになってほしいのがトレーナーとしてあるべき姿。
だけど、私はトレーナーとして酷いことを選択させようとしている。
フジのためにもなるから、と。
「菊花賞を諦めたくはない、でも」
「でも?」
「ファンの皆が喜んでくれるのなら、BCクラシックに挑戦してみるよ!」
てっきり菊花賞に行くかと思ったのだが、BCクラシックに挑戦してみたいと言ってくれた。
「菊花賞も大事さ。だけど、BCクラシックに参戦したら、わっとファンの皆が盛り上がるだろう?」
「悪い意味もありそうだけどね...」
悪い意味、というのは三冠路線かマイル路線どちらをら選ぶべきなのかと頭を悩ませたとき。
フジの三冠への思いを聞いて、距離適性の不安もありながらも三冠路線へ駒を進めた。
あの時は三冠路線に行きます、と会見で発言したからいいものの、今回は悪い意味で盛り上がる予感しかしない。
「菊花賞に行くつもりじゃなかったのか...」
「最後のクラシック、盛り上がると思ったのにな」
なんて普通に言われる。

そんな不安を抱えながらも、会見は始まり、一時騒然なときはあったもののフジの言い回しで助かった。
トレーナーなのに何て不甲斐ないのか。
これこそトレーナーとして大事な仕事じゃないか。
「本当にフジはすごいね。
トレーナーなのに、私が助けられちゃったよ」
「私はすごくないよ。
トレーナーさんのお陰で、今この場所に立ててるんだ。感謝しかないよ!」
BCクラシックに参戦する。
と決まったときから、時間が経つのは早いもので。
そしてBCクラシックの月、10月を迎えた。
「日本のレースの雰囲気とは全然違うよね」
「は、はい!」
「トレーナーさん、緊張しすぎて敬語になってるよ?」
「あっ」
それに気付いた私のあたふたする様子を見て、笑顔になるフジ。
「フジは緊張してないの?」
「とっても緊張してるさ!これが、私にとって初めての海外でのレースだからね。
見るからに強そうなウマ娘ばかりだから、勝てるかどうか不安だよ」
「フジ。私はフジがこのBCクラシックを走りきってくれただけでもお釣りが来るぐらい嬉しいよ。
もちろんトレーナーとしたら勝ちを求めるけど、怪我だけは」
「怪我だけはしないでほしい」と言おうとしたが、フジのしーに止められてしまった。
「分かってるさ。トレーナーさんは心配性だなぁ」
本当にどちらが年上なのか分からない。
私が共に行けるのはここまでだ。
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