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もうひとりのフジキセキ

「トレーナーさーん!!」
フジのことを考えていたら、当の本人であるフジキセキがトレーナー室に息を切らして駆け込んできた。
こんなフジの姿はあまり見かけない。
「フジ、大丈夫?」
「大丈夫...と言いたいところだけど、あいにくね...」
フジが言葉を詰まらせる。
「ト、トレーナーさんは私に似たウマ娘、さっき見なかったかい?朝来る途中とかでさ...」
「うーん...見てないなぁ」
フジに似たウマ娘?
朝起きて、寮からトレーナー室に向かうまで見たことはない。
「なにかあったの?」
フジは隠すと思ったが、すぐに理由を話してくれた。
「試作でタキオンが薬を作っていて、その薬を飲んだんだ。実験は失敗しちゃってね。
で、その代償で私と探している私に似たウマ娘とで分裂しちゃったんだ。
タキオンは相変わらず悪びれもない感じだし、それにそのウマ娘はどこか行ってしまった。
どこかで悪さしてないか心配で、いち早く探したいんだ!」
フジは学園の中で一番ウマ娘たちから熱い信頼をもらわれているウマ娘だ。
だから分裂した、フジに似たウマ娘が悪さをした場合フジキセキに問題が行ってしまう。
「つまり...私にも探してほしいってこと?」
「よく分かったね...」
今までフジの顔は焦りや浮かない顔だったが、私が探すよ!と言った瞬間、笑顔が見えた気がする。
「で、でもトレーナーさんお仕事は」
「大丈夫!今日はフジと丸一日トレーニングのつもりで考えていたし!」
「トレーナーさん、本当にありがとう!」そんなこんなで例のウマ娘探しが始まった。
私はヒシアマゾンやエアグルーヴにも話したの?とアドバイスをしたのだが、フジによるとそれは知られたくないから言わなかった、と。
しかも、これはトレーナーさんにしか言えない。と言われてしまった。
「うーん...中々見つからない」
「思いつく先は全部あたったんだけどね」
気を引き締めて、また探すかと決意したときには夕暮れ時になっており、これ以上の捜索は無理になってしまった。
「心配しなくても明日には見つかるよ!」
「そうかな...作戦会議とかした方が良くないかな?」
フジは私と別れるのが嫌なのか、作戦会議をした方がいいと誘ってくる。
しかしそんな誘い方をされたら、大人として情けない。
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