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ゆめのはて

「フジが出たいのなら私も嬉しい。
でも、担当するトレーナーは変わるけど、あ、確かそれを纏めたファイルをね...」
丁度偶然に持ってきたファイルはドリームトロフィーシリーズで走っているウマ娘の担当トレーナーの一覧をまとめているものだったらしい。
しかし、それが引き金になってしまったらしく、気付いたときには遅かった。
「トレーナーが変わるってどういうことかい?」
「事情でフランスに行くことにしたの。所謂武者修行。
トレーナーとして強くなるために」
「いつ帰ってくる予定?それに今すぐ行く?」
「まだ行ってすらいないのに帰ってくる予定なんてまだ早くない?」
フジの姿はいつもと違って、あまりにも見てらなかった。
でも、ここまで来たんだ。私にも譲れないプライドがあった。
「フジキセキはすごいよ。
私と違って、どんどん前に進むんだもん。
でも、私はあのBCクラシックから前を見れなくなったし進めなくなった。
フジキセキが望むトレーナーに私はなれなかっただけ、相応しくなかった。強くならなきゃって。」
だから、自分だけでどこまで出来るか試したいから、
フランスに行く。

それから、フジとはあまり会話をしなくなったどころか会話すらもなくなった。
フジキセキからしたら一生傍にいると約束した相手が、何も言わず相談もせず。海外へ武者修行しに行きます、と言われたのがショックだったし、幻滅したからこそ話すらもしたくなくなったんだろう。
自分から結局は壊した。3年前の昔も今も変わらない。
もうすぐ3月。普通ならURAファイナルズに出てるのに、この体たらくは何だ。
この部屋を見てると、フジを誘って一緒に寝たり料理したりフジの意外な一面も知った。
だけど、今の部屋はダンボールだらけで見る姿もない。
フジに誤解を解いてもらうために会いに行こう。

トレーナー室に入ると、フジとの思い出が蘇った。
確かフジが私と同僚の男トレーナーと仲が良いところを見て拗ねちゃってキスしてくれたら許す、なんてフジから言われたときがあった。
フジが私を押し倒したし、なんなら私がつまづいてフジを押し倒したこともあったときのソファはまだ現役だ。
そんなことを懐かしんでいたら、目の前のテーブルに「ドアを見て!」のメモ書きがあって、ドアを見ると次は「トレーナー寮の自室に来て!」と、そのメモ通りトレーナー寮に戻った。自室ということは私の部屋か。
部屋に戻ると何も無かった。
ただ単のイタズラにしては面倒臭い回り道をやるなと思っていたら、「寝室のクローゼットを見て!」とメモが置いてあった。
そして寝室のクローゼットを開けると、そこからフジキセキが飛び出してきた。
あまりにも勢いがあったのか、私はベッドに倒れてしまい、フジが私のことをベッドに押し倒した状態になってしまった。
「フジ...ッ!」
いつもなら恥ずかしくてフジキセキから体を話すのに何故か今回は離す気が起きないどころか強く抱きしめた。
「私、フジキセキのことが頭に離れられなかった。」
抱きしめる力を強める。
「トレーナーさん、私もだよ。
我慢できなくなったから、こうやって会いに来たんだ。」
「フジ、心配かけてごめんね。」
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