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第壱章 暁光

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休憩と食事をする為に屋台の長椅子に腰掛ける。




「気分は悪くないか?」




炭治郎はとても優しい。
先程から感じていた事だったのだが、私が思うに彼は超がつくほどのお人好しである。


彼自身も疲れているはずなのだが、自分の事は二の次で、さっき知り合ったばかりの二三に対して労る言葉を掛けていた。



しかし、かく言う二三は、人が密集する都会は慣れていた為、何も問題無かった。
大丈夫だよと返事をすれば、彼はそれなら良かったと隣に腰掛け微笑む。



それに、二三が笑みを返せば、炭治郎は頬を赤く染め、慌ててそっぽを向き口に手を当てた。




何か照れるような事したかな…?




炭治郎の可笑しい様子に疑問に思いながらも、特に気に留めず辺りを見渡す。



炭治郎達がいる閑静な通りには、人の姿が見えない。
恐らく殆どの人は、明るく人通りの多い商店街へ出払っているのだろう。



その証拠に商店街から人の喧騒の音が聞こえていた。



しかし、その音を聞いていると、その中から不穏な気配を感じた。
それは賑やかな通りから感じる、禍々しい気配。




とても強い鬼…。




危険を感じ、冷や汗が背中を伝う。
一人で確かめに行こうと、炭治郎に焦燥感を悟られないように、平然を装う。




『買い物があるから少し、行ってくるね。』


「え…?あぁ、それなら俺も…。」




言いかけながら隣でこっくりこっくり船を漕いでいる禰豆子を起こそうとする彼。




『いや、大丈夫だよ。
そろそろ、うどんも出来上がると思うし、すぐに戻ってくるからここで待っててほしい。』


「ん?…そうか、なら。」



彼の言葉を遮ってそう伝えれば、禰豆子を起こそうと肩に置いていた手を下ろし、首を傾げながら、渋々と言った様子で長椅子に再度腰掛けた。


その行動を確認し、そそくさとその場を離れてから、気配のする方へ足を進める。




嫌な予感がする…。




その予感に、自然と足の進みは速くなっていく。


後ろを振り返り、炭治郎を確かめれば、さきほど頼んだうどんの出来上がりを二つ、店主から貰い受けていて、気付いている様子は全く無い。
その隙に建物の屋根へと飛び乗る。



炭治郎に気付かれない事を祈って騒がしい通りを見下ろすが、その通りのどこに目線を動かしても変わらぬ人の多さに、二三は大きな息を吐き出す。



気配の主を探っていると、視界に映る人の群れの中に、白いハット帽を被った一人の男性がいた。



彼から先程感じた禍々しい気配を感じ取り、彼を見下ろし、息を殺しながら機会を伺う。


いっその事このまま上から斬り掛かってしまおうかと思うが、この人の数だ。考え無しに動けば何の関係もない人を巻き込み、大混乱が起こるだろう。


もどかしいと思うも、虎視眈々と見詰め、方法を探る事しか出来なかった。



数秒の間、目を凝らし考えあぐねていると、ふと、彼が足を止め顔を上げた。



そのまま二三を視界に捉え、目を鋭く尖らせる。



気付かれた…!?
気配は消していたはずなのに…!



彼に睨まれたと同時に、ねっとりと身体に纏わり付く死の気配に、冷やり、と身震いをした。




『…っ!』




脳が危険信号を鳴らし、息を呑む。
普通ではない。今まで、出会った鬼とは桁違いの強さを感じ、全身から、冷や汗がどっと溢れ出す。



しかし、誰かが肩を掴んだ事で急に目を逸らされた。
ほっと息を吐くと共に、知り合いかと、目線を動かせば、そこには、赤く鈍く光る髪の毛が特徴的な少年。


炭治郎だ。



どうして…!?



意外な人物に、驚きが恐怖を上回り思い切り立ち上がる。



彼は先程まで禰豆子と一緒にうどんを啜っていたはずだ。その彼がこの場に居るという事は鬼を察知出来たという事なのか。
鬼に気付いていないのでは無かったのか…。



疑問がふつふつと湧き、彼をじっと見据えて考え込む。



ところが、彼は、目の前の鬼の存在に夢中になっているのか、凝視している二三に気付かず鬼に向かって言葉を発する。



鬼舞辻無惨。



彼の口の動きから、辛うじて連想出来た言葉は、以前から何度か耳にした事がある名前であった。



全ての鬼の元凶であり、鬼の頂点に屈する者。
されども、その名を知る者が多いが誰も見た事の無い謎多き人物であり、不鮮明な人物である。



どうして、その鬼が鬼舞辻だと言う事を知っているのか。



鬼舞辻無惨と炭治郎のやり取りを、考えながら見ていると、その途中で鬼舞辻が腕を振り上げる行動をした。


その先には、仲睦まじく歩いている夫婦の姿。
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