第壱章 暁光
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視界に広がる空は暗い暗い藍色に染まり、星の光が瞬いていた。時刻は戌の刻。
『炭治郎くん。さっきは申し訳ございませんでした…。怪我とかはありませんか?』
「あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。
一二三さんこそ、大丈夫ですか?」
隣を歩くのは二人の影。
名前を竈門炭治郎、竈門禰豆子という。
炭治郎は背中に木箱を抱えており、隊服の上には市松模様の羽織を着ている。
禰豆子は桃色の着物の上に、黒い羽織を着ている可愛らしい少女だ。二人は、美男美女の兄妹である。
先程の無礼を謝るように言葉を掛ければ、心優しい言葉が返された。
あぁ、この子は優しすぎる。
その温厚な対応に、思わず少し苦笑いが零れた。
これに至るまで遡る事、二時間程前。
日が沈んで間も無い頃。
前の任務が終わり、一二三は一人で次の任務の場所へと向かっていた。
薄暗い茜色に染まった道の先に、一人の隊士が歩いていた。
次の任務で一緒なのだろうと想定し、話し掛けようと一二三は足を一歩踏み出す。それと同時にある気配に気づいた。
鬼…?
疑問に思い、息を殺しながらその後ろ姿を追う。
その途中で背中に木箱を抱えたその少年が、木箱を地面に下ろすのが伺えた。
そして、奇妙な事に箱に向かって彼が独り言を始めた。
彼の独り言に反応するかのように、徐ろに木箱の扉が開く。
不気味な光景に、瞬時に建物の影に身を潜める。
箱から出てきたのは、竹の口枷のような物を口に付けた少女。三歳か四歳ぐらいの幼い少女だ。
なぜ、木箱から出て来たのか。怪しい出来事に疑念が募る。
そのまま凝視していると、ある違和感を覚えた。
確かにそこに居たのは三歳か四歳ぐらいの可愛らしい女の子のはずだった。だが、今そこにいるのは十三歳ぐらいの子である。
奇怪な光景に少女が鬼なのだと確信するまで、そう時間は掛からなかった。
足を踏み出し、鬼の背に回り、鬼の首襟を引っ掴み、少年から離れる。
急な出来事に目を見開いて、一二三に目を向けて固まる男の子に、喉から酷く冷たい声が出た。
『なぜ、鬼殺隊の者が鬼を連れているのですか?』
問い掛けの言葉に、反応するように彼が動き出そうとする。それと同時に後ろへ飛び退き、刀の刃を鬼の首に向ければ、またピタッと動きを止める。
顔を顰め、鬼を奪った一二三を睨む少年に、繰り返し問い質す。
『どうして?鬼から人を護るはずのあなたが、鬼を連れているの?』
「禰豆子は鬼じゃない!いや、鬼だけども!
俺の妹だ!禰豆子は…人を喰わない!
一度も人を喰ってないんだ!」
『喰った事が無いのは、日が長く経っていないからです。飢餓状態が続けば、鬼は食欲に耐え切れず人を喰う。』
妄言を吐く彼に哀れに思い、同情しながらも呆れた声で尋ねる。
『あなたもその事くらいは知ってるでしょう?
そんな戯言はあなたの妹が人を喰わないという事の証明にはならないですよ。』
「でも、二年!
禰豆子は二年間、人を喰った事が無いんだ!」
二年…?
有り得ない…。
記憶を探るが、鬼殺隊に入隊してから一度も聞いた事の無い話に頭が混乱する。
だからか、隙があったのだろう。
しまったと思った時は遅く、目の前に迫る彼に、咄嗟に飛び退く。
脇に抱えていた鬼は、奪い取られ、彼の背中に隠れている。
彼を睨み付け、刀を構える手に力を込める。
互いに刀を構えたままの長い膠着状態を治めたのは鬼だった。
少年の肩から顔を覗かせると、彼の袖をチョンチョンと引っ張る。
その行動に、一二三は思わず目を瞬かせ、ある考えが頭に浮かぶ。
彼の事を喰おうとしていない…?
鬼なら速攻で首に齧り付いているはずだ。
二年も人を喰っていない状態で、喰う素振りを全く見せない。まるで喰う気が無いとでも言うようだった。
『本当に人を喰べた事が…?』
「あぁ…!本当だ!!」
鬼殺隊は、鬼を滅殺させるため暗躍してきた組織である。
その為、鬼に出会った場合は、例え死のうとも鬼と戦うのは当たり前だった。
彼の言葉に、心の中でお館様に謝る。
静かに刀を鞘に納め、それに合わせ、安心したように息を吐く少年。
『あなたの言葉は信じる。
けど、この先その娘が人を喰う事が無いとも言い切れ無い。』
安堵した様子に釘を刺せば、一二三の言葉に背筋をピンッと伸ばし、困惑したような複雑な表情を浮かべる彼。
『なので、次の任務に私が同行します。
そこで、もし人を喰う素振りが少しも無かったなら見逃しましょう。』
所謂、監視役という役割だが、少年は顔を綻ばせ、快い返事をした。
『炭治郎くん。さっきは申し訳ございませんでした…。怪我とかはありませんか?』
「あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。
一二三さんこそ、大丈夫ですか?」
隣を歩くのは二人の影。
名前を竈門炭治郎、竈門禰豆子という。
炭治郎は背中に木箱を抱えており、隊服の上には市松模様の羽織を着ている。
禰豆子は桃色の着物の上に、黒い羽織を着ている可愛らしい少女だ。二人は、美男美女の兄妹である。
先程の無礼を謝るように言葉を掛ければ、心優しい言葉が返された。
あぁ、この子は優しすぎる。
その温厚な対応に、思わず少し苦笑いが零れた。
これに至るまで遡る事、二時間程前。
日が沈んで間も無い頃。
前の任務が終わり、一二三は一人で次の任務の場所へと向かっていた。
薄暗い茜色に染まった道の先に、一人の隊士が歩いていた。
次の任務で一緒なのだろうと想定し、話し掛けようと一二三は足を一歩踏み出す。それと同時にある気配に気づいた。
鬼…?
疑問に思い、息を殺しながらその後ろ姿を追う。
その途中で背中に木箱を抱えたその少年が、木箱を地面に下ろすのが伺えた。
そして、奇妙な事に箱に向かって彼が独り言を始めた。
彼の独り言に反応するかのように、徐ろに木箱の扉が開く。
不気味な光景に、瞬時に建物の影に身を潜める。
箱から出てきたのは、竹の口枷のような物を口に付けた少女。三歳か四歳ぐらいの幼い少女だ。
なぜ、木箱から出て来たのか。怪しい出来事に疑念が募る。
そのまま凝視していると、ある違和感を覚えた。
確かにそこに居たのは三歳か四歳ぐらいの可愛らしい女の子のはずだった。だが、今そこにいるのは十三歳ぐらいの子である。
奇怪な光景に少女が鬼なのだと確信するまで、そう時間は掛からなかった。
足を踏み出し、鬼の背に回り、鬼の首襟を引っ掴み、少年から離れる。
急な出来事に目を見開いて、一二三に目を向けて固まる男の子に、喉から酷く冷たい声が出た。
『なぜ、鬼殺隊の者が鬼を連れているのですか?』
問い掛けの言葉に、反応するように彼が動き出そうとする。それと同時に後ろへ飛び退き、刀の刃を鬼の首に向ければ、またピタッと動きを止める。
顔を顰め、鬼を奪った一二三を睨む少年に、繰り返し問い質す。
『どうして?鬼から人を護るはずのあなたが、鬼を連れているの?』
「禰豆子は鬼じゃない!いや、鬼だけども!
俺の妹だ!禰豆子は…人を喰わない!
一度も人を喰ってないんだ!」
『喰った事が無いのは、日が長く経っていないからです。飢餓状態が続けば、鬼は食欲に耐え切れず人を喰う。』
妄言を吐く彼に哀れに思い、同情しながらも呆れた声で尋ねる。
『あなたもその事くらいは知ってるでしょう?
そんな戯言はあなたの妹が人を喰わないという事の証明にはならないですよ。』
「でも、二年!
禰豆子は二年間、人を喰った事が無いんだ!」
二年…?
有り得ない…。
記憶を探るが、鬼殺隊に入隊してから一度も聞いた事の無い話に頭が混乱する。
だからか、隙があったのだろう。
しまったと思った時は遅く、目の前に迫る彼に、咄嗟に飛び退く。
脇に抱えていた鬼は、奪い取られ、彼の背中に隠れている。
彼を睨み付け、刀を構える手に力を込める。
互いに刀を構えたままの長い膠着状態を治めたのは鬼だった。
少年の肩から顔を覗かせると、彼の袖をチョンチョンと引っ張る。
その行動に、一二三は思わず目を瞬かせ、ある考えが頭に浮かぶ。
彼の事を喰おうとしていない…?
鬼なら速攻で首に齧り付いているはずだ。
二年も人を喰っていない状態で、喰う素振りを全く見せない。まるで喰う気が無いとでも言うようだった。
『本当に人を喰べた事が…?』
「あぁ…!本当だ!!」
鬼殺隊は、鬼を滅殺させるため暗躍してきた組織である。
その為、鬼に出会った場合は、例え死のうとも鬼と戦うのは当たり前だった。
彼の言葉に、心の中でお館様に謝る。
静かに刀を鞘に納め、それに合わせ、安心したように息を吐く少年。
『あなたの言葉は信じる。
けど、この先その娘が人を喰う事が無いとも言い切れ無い。』
安堵した様子に釘を刺せば、一二三の言葉に背筋をピンッと伸ばし、困惑したような複雑な表情を浮かべる彼。
『なので、次の任務に私が同行します。
そこで、もし人を喰う素振りが少しも無かったなら見逃しましょう。』
所謂、監視役という役割だが、少年は顔を綻ばせ、快い返事をした。
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