あの光景が見えて今日で数週間。
きっと刻一刻とその時は迫っている。


「おい、おいって!」

『え...ごめんボーッとしてた』

「大丈夫か?お前なんか最近変だぞ」

『なんでもな...』

「おい、顔色悪いぞ?」

『...大丈夫。ちょっと寒いだけ。ねえ勝己くん』

「ンだよ?」

『かくれんぼしよっか』

「いいぜ!お前が鬼な!またお前を降参させてやる!」

『今日こそ見つけるから覚悟しといてよね!』


ドタドタ嬉しそうに出ていったカツキくんの背を見つめる。

元気でね。散々な人生だったけど、カツキくんのおかげで初めて幸せに触れられた。もし次があるとしたらまた会いたいな...

乱暴に扉を叩く音が聞こえる。


『やっと来たのね。子羊さん?』






『これで終わり...』


壁にもたれ掛かりそのまま床に座り込む。
床も倒れている人間も私も見渡す限り全部赤。
もう体の感覚がない。
足が早ければ生きられたのかな...
未来が見えても体が追いつかなければ意味がない。でもおかげで目的は達成できた。私が人狼。向かった人間全てが帰って来ないとなれば、村のヤツらはそう思い込んでくれるだろう。


『こんなとこ、とてもじゃないけどカツキくんには見せられないな』


マッチを床へ投げ捨てると床からどんどん炎が燃え広がりあっという間に周りは炎に包まれた。


『あ......ふふ、こんな未来なら悪くないかも』


最期に見えた未来を夢見て、私はゆっくり目を閉じた。






また何処かできっと





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