短編
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「ユウちゃん〜これユウちゃんの部屋にあったぬいぐるみのキャラだよね?」
休み時間、お茶子ちゃんが見せてくれたスマホ画面にはあのひよこのストラップの画像が表示されていた。
まさか他にもグッズ展開されてたなんて!ぬいぐるみと同じくふてぶてしい表情をしたストラップはたまらなく可愛い。
『おお〜!欲しい!どこ!どこに売ってるの!?』
「い、勢いがすごい...コンビニとのコラボ商品だってさ。系列一緒だし学校から1番近いコンビニでも買えるんじゃないかな?昨日販売したみたいだし」
『出遅れたー!放課後ダッシュで買いに行かなきゃ!売り切れてたらどうしよう〜!』
「多分大丈夫じゃないかな...」
ストラップが買えるかソワソワしながらその後の授業を終え放課後になった途端に私は猛ダッシュでコンビニへと向かった。
以前ならすぐに息切れしていたであろう距離を軽く走れるのは、かっちゃんとの特訓の成果だろう。
コンビニに辿り着き、中に入るなりすぐにお目当てのストラップを探す。
あった!
棚に並んでいるひよこのパッケージの箱を手に取ると、恐ろしいことにランダムと記載されている。
ラインナップを確認すると、ぬいぐるみの子とは別のひよこが何種類か入っているようだった。
こんなにキャラいたの知らなかったなあ...どれも可愛いけどやっぱりぬいぐるみの子が1番可愛いし欲しいな〜
『どの箱にしよう...うーん悩む...』
「悩むじゃねーよバカ!」
『イタッ!今頭ゴンっていったよ!?これ以上頭悪くなったらどうしてくれんの!』
「もう手遅れだろーが!1人で行動すんなって言ったよなァ?ユウチャンよオ」
『ひいっ!だ、だってストラップ絶対欲しかったんだもん!残ってるか心配だったし早く買いに行かなきゃと思って』
「売り切れるかこんなもん!」
『こんなに可愛いのにかっちゃん見る目なさすぎ!』
「あのぉ...もう少し静かに...」
『すいません!』
注意された恥ずかしさから、ぶわっと顔が熱くなってきた。
『かっちゃんのせいで恥かいた...』
「オレのせいにすんじゃねえ!お前がバカだから悪いんだろうが」
自分も注意されてるにも関わらず一切反省の色が見られないかっちゃんにイラッとしながら再度箱選びを開始する。
やっぱり先頭?それとも3列目?いっその事!...でも買い占めはあんまり良くないし...
「ケッ こんなんのどこがいいんだか」
『もう!かっちゃんは黙ってて!』
並んでいた箱を2つ取り、かっちゃんから離れるために他のエリアを見に行こうとするが歩いても歩いても、さも当然のように、かっちゃんが後ろをついてくる。
『ついてこないで』
大きい声を出してはいけないと抑えた結果、自分でも驚くくらい冷たい声が出てしまい内心焦りながらも後に引けず、驚いた顔で固まっているかっちゃんの横を通りすぎ、会計を済ませて外へと出る。
今のは流石に不味かったよなあ...でも嫌なことばっかり言って、私だけ悪いみたいな態度とってくるような人に謝りたくない!そもそも、かっちゃんは心配性すぎ!私だって成長してるのに、いつまでも昔と同じように子ども扱いして!みんな1人でコンビニ行ってるし、かっちゃんだって行ってるじゃん!
でもきっと私のこと心配して用もないのに来てくれたんだろうな...
イライラモヤモヤ気持ちの整理がつかないまま、歩いていると雨が降り始めた。
『嘘っ傘なんて持ってないのに』
急いで走り始めたが、雨はどんどん強くなっていき、雨宿りできそうなところもない。
寮までまだまだあるしもういっか...
走るのを諦めて立ち止まるとふいに雨の当たる感覚がなくなった。
「風邪ひくぞ」
『かっちゃん...』
「別についてきたわけじゃねえ。帰り道が一緒ってだけだ」
目線を逸らし、ぶっきらぼうに話すかっちゃんは少し息が上がっていて、私が傘を持っていない事を察して急いで追いかけて来てくれたのだと私にはすぐに分かってしまった。
酷いこと言って置いてきたのに...私のことなんてほっとけばいいのに...
『ごめんかっちゃん...かっちゃんは私のこと心配してくれてたのに私』
「帰るぞ。こんなとこいつまでもいたらガチで風邪ひきそうだ」
『うん...!』
なんだか懐かしいな。小学校の時も、私が傘を忘れると毎回いれてくれてた。あの時はそこまで身長も変わらなかったのにな...
「んだよ。人の顔じっと見やがって」
『かっちゃん大きくなったなーと思って。昔はそんなに変わらなかったのになあ』
「お前はチビのままだな」
『これから大きくなるの!あっ!かっちゃん肩濡れてるじゃん!ごめん、私のせいだ』
「出ようとすんじゃねえ!風邪ひくだろバカ!」
『バカはひかないから大丈夫!...くしゅっ!』
「何が大丈夫だバカ。傘ちょっと持ってろ」
渡された傘を持っていると、かっちゃんは鞄からタオルを出して、わしゃわしゃと私の頭を拭き始めた。
「結構濡れてんなクソッ」
『なんか犬になった気分...』
「なんで犬だよ!つーかタオルとかブレザー使ったりもうちょっと防ぎようあっただろこれ」
『なるほどその手が』
「はあ...ブレザーもビショビショじゃねえか。脱いでこれ着ろ」
『かっちゃんは寒くないの?』
「寒くねえ。寒かったら鞄になんて入れねえで着てるわ」
『それもそうか。じゃあ借りるね、ありがとう。お〜大っきい!...ふふっ かっちゃんの匂いがする』
「なっ!?へ、変なこと言ってんじゃねーぞクソチビが!」
『イタッ!なんで叩かれてんの私...』
「お前が変なこと言うからだろーが!」
『変なことなんて言ってないもん!』
「ほんとタチ悪ィ...行くぞ。傘貸せ」
『むう...』
「!クソッ」
『うわっ!』
ふわっとブレザーと同じ匂いがした瞬間、視界が暗くなり体が温かいものに包み込まれる。前が見えない中、数秒遅れて自分の置かれている状況を即座に理解し顔に熱がたまっていく。
なっなな、なんで私かっちゃんに抱きしめられてるの!?
傍から見ればきっと世の女の子達憧れの少女漫画のワンシーンようだろう。しかし私とかっちゃんは恋人同士ではないし、先程までも普段も甘い雰囲気などほんの少しもないような間柄だ。
なのにどうしてこうなった!?
覆い被さるような体制とギュッと力強くまわされた腕により彼との距離は信じられない程に近く、彼特有の甘い香り、私よりも温かい体温、筋肉質で硬い体、全てを余すほどに感じる。体が熱くなってドキドキする、緊張している時と同じような感覚に陥る。でも不思議と嫌じゃない釈然としない変な感覚だ。
なにこれ...
「クッソ!思いっ切り水飛ばしやがって!あの車マジぶっ殺す!おい、お前は水大丈夫だったか?」
『へ!?』
何事もなかったように離れ、平然とした顔で私を見てくるかっちゃんに何が何だか分からず混乱する。
「だから濡れてねえかって聞いてんだ」
『えっあっうん!』
「ならいい。...なんかお前赤くないか?もしかして熱あんじゃ...」
『大丈夫!ほんと大丈夫だから!』
「お前の大丈夫は信用できねえ」
私の額に触れるかっちゃんに熱はないことを証明したいが、頭は全く回らないし私の体は熱くなる一方だ。
『こ、ここにいてもしょうがないし、早く帰ろ...?』
「キツかったらちゃんと言えよ?チッ!シャツが張り付いて気持ちわりィ」
『あっ』
かっちゃんの後ろ姿を見て何が起こったかようやく理解できた。私は全く気が付いていなかったが、車に気付いたかっちゃんは、車が飛ばした水がかからないように、ああして私を守ってくれたのだ。
『かっちゃん、後ろ側全部ビショビショだし拭かないと!』
「拭いたとこでこんだけ濡れてりゃ変わんねえよ」
『じゃあせめてブレザーを』
「いらねえ。行くぞ。早く帰って着替えてェ」
『うん...』
私、こんな時でもかっちゃんに迷惑かけてばっかりだ...
かっちゃんだけなら車が飛ばした水も避けられただろう。そもそもこんな雨の中を歩く必要なんて彼には全くないのだ。それなのに...
「おい、やけに静かだが具合悪いんか」
『だ、大丈夫だよ!ただ...私のせいでかっちゃんが風邪ひいたらどうしようって思って...』
「すぐに風邪ひくほどヤワじゃねえわ。第一なったらそんなもん自己責任だろ。全部オレがやりたくてやったことだ。風邪ひいたって後悔はしねえし、お前が気にすることじゃねえ。つってもどうせお前は気にするから言っとく。これに懲りたら1人で出掛けようとすんじゃねえ。分かったかバカ 」
『いたっ 分かりました...』
かっちゃんのデコピン痛い...
「コンビニであの可愛くねえひよこのコラボ商品を来週から売るんだとよ。行くか?」
『そうなの!?行く行く!学校終わったら即ダッシュだよかっちゃん!』
「そんな必要ね...わーったよ、ダッシュすりゃいいんだろ」
『何売るか楽しみ〜!』
寮に着き、お風呂に入った後、待ちに待ったストラップの開封式を始める。1箱目で出たのはケーキを頬張っているひよこだった。
『うーんハズレかあ...可愛いっちゃ可愛いけどやっぱりあの子がいいなあ』
ドキドキしながら2箱目を開けるとなんと同じひよこだった。
『終わった...』
まさかのダブりである。
もっと買えばよかったな...明日残ってるかなあ...
ブルーになりながら、そろそろ頃合かなとブレザーを返しに、かっちゃんの部屋を訪ねる。
『かっちゃん、ブレザーありがとう』
「ああ。全然濡れてねえな」
『轟くんに乾かして貰ったから!』
「何やらせてんだ」
『おかげで制服全部乾いちゃった!そうだ!かっちゃん、ズボンビショビショになっちゃったし乾かしてもらいに行ってくるよ』
「予備あるし別にいい。で、お目当ての物は出たのか?」
『出ないうえにダブりました...』
「ハッ運がねえな」
そう言ってかっちゃんが投げてきた何かをキャッチし損ね、顔面に食らう。
『痛!』
「下手くそ」
『む〜...!これ!!なんでかっちゃん持ってるの!!??』
「なんも買わずに出るのが気まずかったから買った。いらねえからお前にやる」
『いいの!?やったー!かっちゃん大好き〜!』
「!?...チッ」
『今度からランダムの時はかっちゃんに選んでもらお〜あ、お礼にかっちゃんにこれあげる』
「これお前がダブったってやつだろ!いらねえもん押し付けてくんじゃねえ!」
『まあまあ。かっちゃんがくれた子ほどじゃないけどそこそこ可愛いよ多分』
「多分ってなんだ!いらねえわ!どのひよこも可愛いくねえだろどうせ」
『全然違うし!ほらよく見て!』
「...お前にやったやつよりはマシだが、なんかバカそうだなこいつ」
『バカそうは可愛そうだよかっちゃん!さっき調べたら食いしん坊とは書いてあったけどバカとは書いてなかったし!』
「その説明からもうバカさが滲み出てんじゃねえか」
『食いしん坊イコールバカではないでしょ!あ、好物はシフォンケーキって書いてあったし、なんでもとかよりちょっと頭良さそうじゃない?ね?』
「それはもうバカ確定だな」
『何故!?えーじゃあ誰にあげよう...』
「寄越せ。貰っといてやる」
『いらないのにいいよ他の人にあげるし』
「いいから寄越せ」
『何その圧!?別にいいけど...ちゃんと使ってあげてね』
あんなにいらないって言ってたのになんだ突然...
じーっと渡したキーホルダーを見つめるかっちゃんが何を考えているか私には知る由もなかった。
こいつにそっくりだな
休み時間、お茶子ちゃんが見せてくれたスマホ画面にはあのひよこのストラップの画像が表示されていた。
まさか他にもグッズ展開されてたなんて!ぬいぐるみと同じくふてぶてしい表情をしたストラップはたまらなく可愛い。
『おお〜!欲しい!どこ!どこに売ってるの!?』
「い、勢いがすごい...コンビニとのコラボ商品だってさ。系列一緒だし学校から1番近いコンビニでも買えるんじゃないかな?昨日販売したみたいだし」
『出遅れたー!放課後ダッシュで買いに行かなきゃ!売り切れてたらどうしよう〜!』
「多分大丈夫じゃないかな...」
ストラップが買えるかソワソワしながらその後の授業を終え放課後になった途端に私は猛ダッシュでコンビニへと向かった。
以前ならすぐに息切れしていたであろう距離を軽く走れるのは、かっちゃんとの特訓の成果だろう。
コンビニに辿り着き、中に入るなりすぐにお目当てのストラップを探す。
あった!
棚に並んでいるひよこのパッケージの箱を手に取ると、恐ろしいことにランダムと記載されている。
ラインナップを確認すると、ぬいぐるみの子とは別のひよこが何種類か入っているようだった。
こんなにキャラいたの知らなかったなあ...どれも可愛いけどやっぱりぬいぐるみの子が1番可愛いし欲しいな〜
『どの箱にしよう...うーん悩む...』
「悩むじゃねーよバカ!」
『イタッ!今頭ゴンっていったよ!?これ以上頭悪くなったらどうしてくれんの!』
「もう手遅れだろーが!1人で行動すんなって言ったよなァ?ユウチャンよオ」
『ひいっ!だ、だってストラップ絶対欲しかったんだもん!残ってるか心配だったし早く買いに行かなきゃと思って』
「売り切れるかこんなもん!」
『こんなに可愛いのにかっちゃん見る目なさすぎ!』
「あのぉ...もう少し静かに...」
『すいません!』
注意された恥ずかしさから、ぶわっと顔が熱くなってきた。
『かっちゃんのせいで恥かいた...』
「オレのせいにすんじゃねえ!お前がバカだから悪いんだろうが」
自分も注意されてるにも関わらず一切反省の色が見られないかっちゃんにイラッとしながら再度箱選びを開始する。
やっぱり先頭?それとも3列目?いっその事!...でも買い占めはあんまり良くないし...
「ケッ こんなんのどこがいいんだか」
『もう!かっちゃんは黙ってて!』
並んでいた箱を2つ取り、かっちゃんから離れるために他のエリアを見に行こうとするが歩いても歩いても、さも当然のように、かっちゃんが後ろをついてくる。
『ついてこないで』
大きい声を出してはいけないと抑えた結果、自分でも驚くくらい冷たい声が出てしまい内心焦りながらも後に引けず、驚いた顔で固まっているかっちゃんの横を通りすぎ、会計を済ませて外へと出る。
今のは流石に不味かったよなあ...でも嫌なことばっかり言って、私だけ悪いみたいな態度とってくるような人に謝りたくない!そもそも、かっちゃんは心配性すぎ!私だって成長してるのに、いつまでも昔と同じように子ども扱いして!みんな1人でコンビニ行ってるし、かっちゃんだって行ってるじゃん!
でもきっと私のこと心配して用もないのに来てくれたんだろうな...
イライラモヤモヤ気持ちの整理がつかないまま、歩いていると雨が降り始めた。
『嘘っ傘なんて持ってないのに』
急いで走り始めたが、雨はどんどん強くなっていき、雨宿りできそうなところもない。
寮までまだまだあるしもういっか...
走るのを諦めて立ち止まるとふいに雨の当たる感覚がなくなった。
「風邪ひくぞ」
『かっちゃん...』
「別についてきたわけじゃねえ。帰り道が一緒ってだけだ」
目線を逸らし、ぶっきらぼうに話すかっちゃんは少し息が上がっていて、私が傘を持っていない事を察して急いで追いかけて来てくれたのだと私にはすぐに分かってしまった。
酷いこと言って置いてきたのに...私のことなんてほっとけばいいのに...
『ごめんかっちゃん...かっちゃんは私のこと心配してくれてたのに私』
「帰るぞ。こんなとこいつまでもいたらガチで風邪ひきそうだ」
『うん...!』
なんだか懐かしいな。小学校の時も、私が傘を忘れると毎回いれてくれてた。あの時はそこまで身長も変わらなかったのにな...
「んだよ。人の顔じっと見やがって」
『かっちゃん大きくなったなーと思って。昔はそんなに変わらなかったのになあ』
「お前はチビのままだな」
『これから大きくなるの!あっ!かっちゃん肩濡れてるじゃん!ごめん、私のせいだ』
「出ようとすんじゃねえ!風邪ひくだろバカ!」
『バカはひかないから大丈夫!...くしゅっ!』
「何が大丈夫だバカ。傘ちょっと持ってろ」
渡された傘を持っていると、かっちゃんは鞄からタオルを出して、わしゃわしゃと私の頭を拭き始めた。
「結構濡れてんなクソッ」
『なんか犬になった気分...』
「なんで犬だよ!つーかタオルとかブレザー使ったりもうちょっと防ぎようあっただろこれ」
『なるほどその手が』
「はあ...ブレザーもビショビショじゃねえか。脱いでこれ着ろ」
『かっちゃんは寒くないの?』
「寒くねえ。寒かったら鞄になんて入れねえで着てるわ」
『それもそうか。じゃあ借りるね、ありがとう。お〜大っきい!...ふふっ かっちゃんの匂いがする』
「なっ!?へ、変なこと言ってんじゃねーぞクソチビが!」
『イタッ!なんで叩かれてんの私...』
「お前が変なこと言うからだろーが!」
『変なことなんて言ってないもん!』
「ほんとタチ悪ィ...行くぞ。傘貸せ」
『むう...』
「!クソッ」
『うわっ!』
ふわっとブレザーと同じ匂いがした瞬間、視界が暗くなり体が温かいものに包み込まれる。前が見えない中、数秒遅れて自分の置かれている状況を即座に理解し顔に熱がたまっていく。
なっなな、なんで私かっちゃんに抱きしめられてるの!?
傍から見ればきっと世の女の子達憧れの少女漫画のワンシーンようだろう。しかし私とかっちゃんは恋人同士ではないし、先程までも普段も甘い雰囲気などほんの少しもないような間柄だ。
なのにどうしてこうなった!?
覆い被さるような体制とギュッと力強くまわされた腕により彼との距離は信じられない程に近く、彼特有の甘い香り、私よりも温かい体温、筋肉質で硬い体、全てを余すほどに感じる。体が熱くなってドキドキする、緊張している時と同じような感覚に陥る。でも不思議と嫌じゃない釈然としない変な感覚だ。
なにこれ...
「クッソ!思いっ切り水飛ばしやがって!あの車マジぶっ殺す!おい、お前は水大丈夫だったか?」
『へ!?』
何事もなかったように離れ、平然とした顔で私を見てくるかっちゃんに何が何だか分からず混乱する。
「だから濡れてねえかって聞いてんだ」
『えっあっうん!』
「ならいい。...なんかお前赤くないか?もしかして熱あんじゃ...」
『大丈夫!ほんと大丈夫だから!』
「お前の大丈夫は信用できねえ」
私の額に触れるかっちゃんに熱はないことを証明したいが、頭は全く回らないし私の体は熱くなる一方だ。
『こ、ここにいてもしょうがないし、早く帰ろ...?』
「キツかったらちゃんと言えよ?チッ!シャツが張り付いて気持ちわりィ」
『あっ』
かっちゃんの後ろ姿を見て何が起こったかようやく理解できた。私は全く気が付いていなかったが、車に気付いたかっちゃんは、車が飛ばした水がかからないように、ああして私を守ってくれたのだ。
『かっちゃん、後ろ側全部ビショビショだし拭かないと!』
「拭いたとこでこんだけ濡れてりゃ変わんねえよ」
『じゃあせめてブレザーを』
「いらねえ。行くぞ。早く帰って着替えてェ」
『うん...』
私、こんな時でもかっちゃんに迷惑かけてばっかりだ...
かっちゃんだけなら車が飛ばした水も避けられただろう。そもそもこんな雨の中を歩く必要なんて彼には全くないのだ。それなのに...
「おい、やけに静かだが具合悪いんか」
『だ、大丈夫だよ!ただ...私のせいでかっちゃんが風邪ひいたらどうしようって思って...』
「すぐに風邪ひくほどヤワじゃねえわ。第一なったらそんなもん自己責任だろ。全部オレがやりたくてやったことだ。風邪ひいたって後悔はしねえし、お前が気にすることじゃねえ。つってもどうせお前は気にするから言っとく。これに懲りたら1人で出掛けようとすんじゃねえ。分かったかバカ 」
『いたっ 分かりました...』
かっちゃんのデコピン痛い...
「コンビニであの可愛くねえひよこのコラボ商品を来週から売るんだとよ。行くか?」
『そうなの!?行く行く!学校終わったら即ダッシュだよかっちゃん!』
「そんな必要ね...わーったよ、ダッシュすりゃいいんだろ」
『何売るか楽しみ〜!』
寮に着き、お風呂に入った後、待ちに待ったストラップの開封式を始める。1箱目で出たのはケーキを頬張っているひよこだった。
『うーんハズレかあ...可愛いっちゃ可愛いけどやっぱりあの子がいいなあ』
ドキドキしながら2箱目を開けるとなんと同じひよこだった。
『終わった...』
まさかのダブりである。
もっと買えばよかったな...明日残ってるかなあ...
ブルーになりながら、そろそろ頃合かなとブレザーを返しに、かっちゃんの部屋を訪ねる。
『かっちゃん、ブレザーありがとう』
「ああ。全然濡れてねえな」
『轟くんに乾かして貰ったから!』
「何やらせてんだ」
『おかげで制服全部乾いちゃった!そうだ!かっちゃん、ズボンビショビショになっちゃったし乾かしてもらいに行ってくるよ』
「予備あるし別にいい。で、お目当ての物は出たのか?」
『出ないうえにダブりました...』
「ハッ運がねえな」
そう言ってかっちゃんが投げてきた何かをキャッチし損ね、顔面に食らう。
『痛!』
「下手くそ」
『む〜...!これ!!なんでかっちゃん持ってるの!!??』
「なんも買わずに出るのが気まずかったから買った。いらねえからお前にやる」
『いいの!?やったー!かっちゃん大好き〜!』
「!?...チッ」
『今度からランダムの時はかっちゃんに選んでもらお〜あ、お礼にかっちゃんにこれあげる』
「これお前がダブったってやつだろ!いらねえもん押し付けてくんじゃねえ!」
『まあまあ。かっちゃんがくれた子ほどじゃないけどそこそこ可愛いよ多分』
「多分ってなんだ!いらねえわ!どのひよこも可愛いくねえだろどうせ」
『全然違うし!ほらよく見て!』
「...お前にやったやつよりはマシだが、なんかバカそうだなこいつ」
『バカそうは可愛そうだよかっちゃん!さっき調べたら食いしん坊とは書いてあったけどバカとは書いてなかったし!』
「その説明からもうバカさが滲み出てんじゃねえか」
『食いしん坊イコールバカではないでしょ!あ、好物はシフォンケーキって書いてあったし、なんでもとかよりちょっと頭良さそうじゃない?ね?』
「それはもうバカ確定だな」
『何故!?えーじゃあ誰にあげよう...』
「寄越せ。貰っといてやる」
『いらないのにいいよ他の人にあげるし』
「いいから寄越せ」
『何その圧!?別にいいけど...ちゃんと使ってあげてね』
あんなにいらないって言ってたのになんだ突然...
じーっと渡したキーホルダーを見つめるかっちゃんが何を考えているか私には知る由もなかった。
こいつにそっくりだな