短編
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『かっちゃん...!誕生日って何か予定あったり...』
「ねーよ。空けてあるにきまってンだろ」
『あ、あのね!光己さんがかっちゃんがよければ夜は家族でお祝いしたいって。私も一緒にお祝いして泊まっていいって言われてるんだけどどうかな?』
「別にいいんじゃねーの。で、昼は?」
『昼はかっちゃんの自由でいいよ!切島くんとか上鳴くんとかと遊んでもいいし』
「なんでだ!!そこはフツーお前とデートだろーが!」
『えええ!?』
付き合い始めて初めての誕生日。
寮暮らしになってから実家に帰る事はほぼなく、顔を合わせる場所は病院が多く、心配しかかけていないような状態。ユウがずっと寮にいるため、オレも帰省していなかったがたまには実家に帰らなければと考えてはいたしそれはいい。でもそんなタイミングでデートしないことに驚いているユウにはツッコミしかない。
『クラスのみんなと過ごさなくていいの?』
「逆になんでデート行かねえンだって全員にツッコまれるぞ」
『そ、そうなの?』
全然ピンときていない様子のユウにため息が出る。
『じゃあ私がかっちゃんのこと独り占めしちゃっていいの?』
こてんと首を傾げ、伺うように見てくるユウにぶわっと体中が熱くなる。身長差のせいで上目遣いになるし、そんな可愛いこと言うなんて反則も反則だ。
「い、いいに決まってんだろ」
『かっちゃん顔赤いよ?もしかして熱あるんじゃ』
「ねえわ!それよりデート、どっか行きてえとこねえか?」
『かっちゃんの誕生日だしかっちゃんの行きたいとこ行こうよ!』
「行きたいとこか...考えとく」
『晴れて良かったね!あったかいし、お散歩日和!桜も綺麗!』
「そうだな」
今年は桜が咲くのが遅く、まだ綺麗に咲いているためデートしては相応しい場所だろうと花見を選んだ。花より団子なユウだが、一応愛でる気持ちはあるらしい。まあ、屋台が出ているからここを選んだのだが...
オレ自身も景色を愛でるような人間ではないが、桜は他の花よりなんとなく特別な感じがするし、桜とユウの組み合わせはずっと見ていたくなる。
『ねえ、かっちゃん。この格好どう思う...?』
「どう思うってその格好自分で選んだのか?」
予想通りユウは首を横に振った。
きっといつも通り女子達に選んでもらったのだろう。自分で選んだ物でもいいのでは?と思うが自分のセンスが信用できないらしい。恥ずかしがって普段はオレのお古をはじめ、ユニセックスの物ばかり着ているがユウ自身は可愛い系統の服が好きなのだと思う。
今着ている服はパステルカラーは似合うし悪くないが、ユウは変に流行りの服を着せたり大人っぽく見せようとするより可愛いを突き詰めた方が多分いい。
『全然こういう服着たことないしやっぱり似合わないかな?』
長い間じっと見ていたことに気付き、恥ずかしくなりながら慌てて別にと返す。
「...似合わなくはねえけど、大人っぽい服よりもっと可愛い服の方が似合うと思う」
『そっか...!春になって着れる服のバリエーションも増えるしどんな系統の服がかっちゃんの好みか調べようってなって今日は流行の大人っぽいヤツなんだって!』
似合うって言うべきだったよなと後悔したが、ユウが嬉しそうでとりあえずよかったと安心する。しかしすぐにしゅんとなり、伺うように顔を覗いてきた。
『でもその方が今の格好より似合うってだけでかっちゃんが好きってわけじゃないんだよね...かっちゃんはやっぱりセクシーなやつが好き...?』
どうやら似合う似合わないよりオレの好みかどうかの方がこいつには重要らしい。その心意気が可愛いすぎるが、男はセクシーだと喜ぶという考えを吹き込んだ奴は後でボコさなければいけない。
「そのやっぱりはなんなんだよ。オレは...可愛い方がいい」
ユウに似合う服が一番良いし可愛いに決まっている。
『分かった!』
ぱあっと嬉しそうな顔をしたユウを見ながら、次のデートは服屋もありだなと考えていると『わー!』とユウが興奮した声を上げた。
『屋台がいっぱいある!』
表情がコロコロ変わるユウは本当に見ていて飽きない。
何種類か購入し、2人で桜を見ながら食べる。
『美味しいね〜のどかだねえ』
「そーだな」
『あ、かっちゃんの髪に桜付いてる』
「お前にも付いてんぞ。払ってもどうせ降ってくんだから立ってから払えばいいだろ」
『かっちゃんと桜って色がいい感じだよね。髪の色とも目の色とも合って綺麗』
「そーかよ」
『小さい頃、かっちゃんの髪と目の色綺麗で羨ましかった。ヤオモモちゃんみたいに美人さんだったら黒が似合うんだろうけどそうじゃないし』
「別に黒だって綺麗だろ。オレはお前の髪も目も好きだし、できればそのままでいてほしいって思ってる」
『ありがとう』
はにかむユウと風で舞った桜が綺麗で思わず見とれてしまった。
「せっかくだし、もう少し歩いて見ようぜ」
『うん!』
遠くまで続いている桜の木を眺めながら歩いていると立ち止まってユウが写真を撮り始めた。自分も1枚くらい撮るかとスマホのカメラを起動させて写真を撮り、これでいいかとスマホを下ろしかけたところで撮影を終えたユウが桜を見始め、チャンスだとユウの写真を撮る。ユウはあまり写真に写りたがらないし、ユウの写真を撮りたいなんて自分の口からは恥ずかしくて絶対言えない。だから隠し撮りで少〜しずつコレクションを増やしている。
『いっぱい撮ってたけど上手く桜撮れた?』
「上手く撮れねえから撮り直してた」
『あはは、なるほど』
「お前は上手く撮れたか?」
『結構いい感じに撮れた!と思う!これとか!』
確かに人も写らず綺麗に撮れている。
『あとこれとか』
「へえ」
『あ』
スワイプされて出てきたのはオレの写真で思わず笑ってしまう。
「上手く撮れたか?」
恥ずかしそうにしているユウが口元をスマホで隠しながらじっと見てきた。
『怒らないの?』
「べ、別に上手く撮れてんなら問題ねェ」
自分も同じ事をしている手前、下手な事をするとブーメランになりかねないとなんとか誤魔化して切り抜ける。
『誕生日だし桜綺麗だしせっかくだから写真撮ろっか』
「そうだな」
インカメにして撮影しようとするが、なかなか上手く桜が映らない。
「相変わらず下手くそだな」
『滅多撮らないんだからしょうがないじゃん!腕死ぬ...』
「あの、よかったら写真撮りましょうか?」
『いいんですか...!ありがとうございます!』
見兼ねて話しかけてくれたカップルらしき2人に写真を撮ってもらい、ユウから写真をもらう。
もっと近付いてもよかったな...
『親切な人がいて助かったね!』
「そうだな。そろそろ家行くぞ」
『はーい!光己さんに会うの久しぶりだ〜』
ユウは楽しそうだが、ババアに根掘り葉掘り聞かれそうでオレとしては頭が痛い。
「おかえり。ユウちゃん、勝己」
『た、ただいまです...!』
「ん」
「料理できるまで勝己はテレビでも見てて。ユウちゃん、作るの手伝ってくれる?」
『いいんですか...!』
「怪我するからやめとけ。オレがやる」
『し、しないもん!』
「一応今日はあんたが主役なんだから、あんたのために何かしたいっていうユウちゃんの気持ちを汲んであげなきゃ。そんなダメダメ言ってたら嫌われるわよ」
「うるせえっつーか一応ってなんだ!」
小声で会話しながら、ユウの気持ちは嬉しいし今回は仕方ないかと諦める。
ババアもユウの不器用っぷりは分かっているだろうし、そんな難しいことや危険なことはさせないだろう。と思いつつも不安になってしまい、じっと料理をしている様子を眺める。
「勝己、気が散るから部屋に行ってて」
「は!?」
「そんなに見てたらユウちゃんが緊張して失敗しちゃうでしょ」
確かにそれはあるかもしれないと仕方なく部屋へと向かう。
「...」
布団が2組敷かれた部屋に思わず立ち止まる。
ベッドは寮に持って行ってしまったため、布団なのは分かる。でも2組あるということは恐らくというかほぼ確実にユウのものだろう。
付き合ってるとはいえ、同じ部屋に寝かせていいものなのか?
別に何かしようというわけではないが変に緊張してしまう。頼まれて添い寝をした時は緊張しすぎて寝られなかったし明日は間違いなく寝不足だろう。
今のうちに寝ておくかと布団で横になっていると料理ができたと呼ぶ声が聞こえた。
リビングに行くと父も帰って来ており、3人から誕生日おめでとうと祝いの言葉を言われる。
「...おう」
両親とユウにプレゼントを渡され、照れくさくて俯きながら席に着くと「もっと嬉しそうにしなさいよ!」とババアに怒られた。
「手伝いって何したんだ?」
『えっとねー材料混ぜるのと、クッキー割るのとフルーツ並べるのとゆで卵剥いた!』
幼稚園が手伝いでやるようなラインナップを得意げに言うユウ吹き出しそうになるのを必死に堪える。
「っ...ありがとなっ」
『うん!』
カットされてはいるが若干デコボコした卵が乗ったサラダを口に入れる。
テーブルに置かれた料理は全てオレの好物。ではなく半数くらいはユウの好物だ。普通全部オレの好物だろと思ったが美味しそうにご飯を食べるユウ見てまあいいかとたわいのない話をしながらご飯を食べる。
『かっちゃんケーキあるよイチゴタルト!』
「ユウちゃんがデコレーションしてくれたのよ。感謝して食べなさい」
ご飯を食べ終え、運ばれてきたタルトは若干イチゴの配置がズレ、バランス悪く薄ら失敗した形跡が残っているチョコプレートが乗っていた。
『上手く書けなかったし、かっちゃんのみたいに綺麗にならなかったけど頑張って作った...!』
この歪さがユウらしいなとほっこりしていると親までほっこりしていた。
「可愛い...!勝己はなんでもできちゃって可愛げなかったからほんと可愛いっ!」
「なんていうか新鮮でいいね」
『ぜ、全然可愛いくないですっ』
親に彼女が好かれているのはとてもいいことだと思うが、どう考えても熱量がおかしいと思う。親バカな親を見ているようでこっちが恥ずかしくなってくる。
「早く食わねえと全部食っちまうぞ」
サッとフォークを構えた後、ユウの顔が赤くなり、フォークが置かれる。
『ケーキ、かっちゃんのだから全部食べていいよ』
「冗談だから安心しろ」
「何今の...可愛いすぎる...」
「ユウちゃん、よければ僕の分も」
「私のも食べて食べて!」
『一切れあれば十分なのでお気遣いなくです!』
「ったく誰の誕生日だよ」
賑やかすぎる夕飯が終わり、ドッと疲れた状態で布団に転がる。
「マジで疲れた...」
親に貰ったプレゼントを開けると映画のギフトカードとテーマパークのチケットが2枚ずつ入っていた。ユウと一緒に行ってこいということだろう。
『かっちゃん...!光己さんがよければ着てってくれたんだけどどうかな...?』
お風呂上がりに部屋に入ってきたユウが着ているのはモコモコしていて温かそうなワンピース型の部屋着だった。
「いいんじゃねーの」
『よかった...!』
流石自分の親というか血は争えないようだ。趣味がよく似ている。ユウに絶対似合うと確信が持てるデザイン。正直めちゃくちゃ可愛い。
『かっちゃんの誕生日なのに、なんかごめんね。光己さん達に気遣わしちゃうし、やっぱり私来ない方がよかったね』
「気遣ってんじゃなくてお前好きすぎるだけだからほっとけ。昔からお前のことうちの子にしたいっつってたしかなって嬉しいんだろ」
『そ、そうなの?』
「もう家族みてえなもんなんだし色々遠慮すんのやめろ。その方が喜ばれる」
『分かった...』
「明日普通に学校だし寝るぞ」
布団の中にユウが入ったのを確認し、電気を消す。
『せっかくの誕生日なのにいつも何もできなくてごめんね。プレゼントもセンスないからどうしていいか分かんなくて、かっちゃんに聞いちゃうし、料理全然できないし』
「誕生日にお前と一緒に過ごせるだけで十分すぎるプレゼントだ。しかも付き合ってんだぜ?これ以上なんて怖くて望めねえ」
『そんな大袈裟な』
「大袈裟じゃねえよ。また毎日お前と会えるようになっても付き合っても、ふとした時にお前がいなくなったあとの喪失感とか救けられなかった時の悔しさとか悲しみとか思い出して怖くなる時があんだ。だから一緒にいてくれるのが安心できるし一番嬉しい」
ユウと付き合いたい。
プレゼントなんてなくてもいいからユウにまた会いたい。
ずっとずっと欲しかったもの。それが手に入った今、何が欲しいと言われてもこれというものが浮かばない。でも、またなくなってしまった時の事を考えると怖くて怖くて堪らなくなる。
未だに泣きながら救けてと叫ぶあの日のユウの夢を見ることがあるし、ユウの姿が見えないとどうしようもなく不安になる。
ゴソゴソと音が聞こえ、体が温かいものに包まれる。
『ちゃんと傍にいるから大丈夫』
抱きしめ返した体は柔らかくて小さい。でもこれ以上ないってくらい安心できて眠くなってきた。
『おやすみ。誕生日おめでとう、かっちゃん』
鳥のさえずりが聞こえる。温かくて柔らかい。心地よくて微睡んでいると、ふわふわしてて柔らかいものに顔が当たり、少し息苦しくなる。
抜け出そうとするとギュッと抱き寄せられ、苦しくて目を開けると暗くて何も見えない。体を動かすと、ん...と小さな声が聞こえ、一気に意識が覚醒する。少し手を動かすと顔に触れているのと同じくふわふわしているものに触れた。
このふわふわしてる感触ってもしかして...
昨夜の事を思い出し、勢いよく顔を上げると真下には何かを探すようにもぞもぞ動いてるユウがいた。恐らく、オレはユウに抱きしめられているというか抱きかかえられた状態だったのだろう。不可抗力であって断じて自ら胸に顔を埋めていたわけではないと思いたい。
未だ落ち着かなそうにもぞもぞしているユウを見て緊張しながら再び横になり、ユウを抱き寄せる。ドキドキとうるさい自分の鼓動で起きてしまわないか心配だったが、ギュッとオレのシャツを握り、ピッタリくっ付いてユウはすやすや寝息を立て始めた。
めちゃくちゃ可愛い。なんだこいつ。
温かいしふわふわしたぬいぐるみみたいで触り心地がいいがドキドキしすぎてとても寝れそうもない。
結局アラームが鳴るまで一睡もできず、まだウトウトしているユウを連れてリビングに向かう。
「おはよう勝己。ふふっ、ユウちゃんはまだ半分夢の中って感じだね」
「勝己!できてる料理そっちに運んでちょうだい」
料理をテーブルに運び終え、いただきますと手を合わせる。少しだけ目覚めたらしいユウがゆっくりご飯を食べているのを見ながら、二人暮しになったら早めに起こさねえとだなと考えているとババアが小声で話しかけてきた。
「あのルームウェア可愛いでしょ!見た瞬間絶対ユウちゃん着せたいと思って!それに触り心地とってもいいでしょ」
「は!?」
思わずデカい声が出てしまい、驚いたらしくユウがビクッと肩を揺らした。
「え、その反応もしかして抱きしめたりとかしちゃってるわけ?」
めちゃくちゃニヤニヤしているババアにやられたと舌打ちをする。
「うるせえババア!ってえなクソ!」
頭をはたかれ、ババアを睨みつけながら部屋に着替えに戻る。
リビングに戻ると制服に着替えたユウが赤くなっていた。
「どうした?」
『な、なんでもない!』
「じゃあ2人とも行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい」
何があったのか上機嫌なババアと父に見送られ、外に出る。
「何言われたんだ?」
『来年の誕生日プレゼント...は...キスしてあげてって...』
言われてみればせっかく付き合い始めて、ユウもプレゼントは何がいいかと聞いてくれていたのだから、言えばしてくれただろう。惜しいことをしたと後悔は残るが来年の楽しみに取っておくとしよう。
「来年楽しみにしてっから」
『あと、かっちゃんに言われたこと一日全部聞くとかって言えばめちゃくちゃ喜んでくれるよって...そんな事でい「来年のプレゼントはそれで頼むわ」
『分かった?』
全くピンときていないようだが、ユウにとって来年は大変な事になるだろう。
ユウが隣にいてくれるだけで十分幸せだし欲張るのは良くないと思いながらも、ユウの事となるとどこまでも強欲になってしまう。
けれど誕生日だしそれくらいは望んでもバチは当たらないだろう。
久しぶりに欲しいと思えるプレゼントが見つかり、ガキの頃と同じように既に来年の誕生日が楽しみでたまらなくなった。
「来年の誕生日も一緒に過ごそうな」
『うん!』
「ねーよ。空けてあるにきまってンだろ」
『あ、あのね!光己さんがかっちゃんがよければ夜は家族でお祝いしたいって。私も一緒にお祝いして泊まっていいって言われてるんだけどどうかな?』
「別にいいんじゃねーの。で、昼は?」
『昼はかっちゃんの自由でいいよ!切島くんとか上鳴くんとかと遊んでもいいし』
「なんでだ!!そこはフツーお前とデートだろーが!」
『えええ!?』
付き合い始めて初めての誕生日。
寮暮らしになってから実家に帰る事はほぼなく、顔を合わせる場所は病院が多く、心配しかかけていないような状態。ユウがずっと寮にいるため、オレも帰省していなかったがたまには実家に帰らなければと考えてはいたしそれはいい。でもそんなタイミングでデートしないことに驚いているユウにはツッコミしかない。
『クラスのみんなと過ごさなくていいの?』
「逆になんでデート行かねえンだって全員にツッコまれるぞ」
『そ、そうなの?』
全然ピンときていない様子のユウにため息が出る。
『じゃあ私がかっちゃんのこと独り占めしちゃっていいの?』
こてんと首を傾げ、伺うように見てくるユウにぶわっと体中が熱くなる。身長差のせいで上目遣いになるし、そんな可愛いこと言うなんて反則も反則だ。
「い、いいに決まってんだろ」
『かっちゃん顔赤いよ?もしかして熱あるんじゃ』
「ねえわ!それよりデート、どっか行きてえとこねえか?」
『かっちゃんの誕生日だしかっちゃんの行きたいとこ行こうよ!』
「行きたいとこか...考えとく」
『晴れて良かったね!あったかいし、お散歩日和!桜も綺麗!』
「そうだな」
今年は桜が咲くのが遅く、まだ綺麗に咲いているためデートしては相応しい場所だろうと花見を選んだ。花より団子なユウだが、一応愛でる気持ちはあるらしい。まあ、屋台が出ているからここを選んだのだが...
オレ自身も景色を愛でるような人間ではないが、桜は他の花よりなんとなく特別な感じがするし、桜とユウの組み合わせはずっと見ていたくなる。
『ねえ、かっちゃん。この格好どう思う...?』
「どう思うってその格好自分で選んだのか?」
予想通りユウは首を横に振った。
きっといつも通り女子達に選んでもらったのだろう。自分で選んだ物でもいいのでは?と思うが自分のセンスが信用できないらしい。恥ずかしがって普段はオレのお古をはじめ、ユニセックスの物ばかり着ているがユウ自身は可愛い系統の服が好きなのだと思う。
今着ている服はパステルカラーは似合うし悪くないが、ユウは変に流行りの服を着せたり大人っぽく見せようとするより可愛いを突き詰めた方が多分いい。
『全然こういう服着たことないしやっぱり似合わないかな?』
長い間じっと見ていたことに気付き、恥ずかしくなりながら慌てて別にと返す。
「...似合わなくはねえけど、大人っぽい服よりもっと可愛い服の方が似合うと思う」
『そっか...!春になって着れる服のバリエーションも増えるしどんな系統の服がかっちゃんの好みか調べようってなって今日は流行の大人っぽいヤツなんだって!』
似合うって言うべきだったよなと後悔したが、ユウが嬉しそうでとりあえずよかったと安心する。しかしすぐにしゅんとなり、伺うように顔を覗いてきた。
『でもその方が今の格好より似合うってだけでかっちゃんが好きってわけじゃないんだよね...かっちゃんはやっぱりセクシーなやつが好き...?』
どうやら似合う似合わないよりオレの好みかどうかの方がこいつには重要らしい。その心意気が可愛いすぎるが、男はセクシーだと喜ぶという考えを吹き込んだ奴は後でボコさなければいけない。
「そのやっぱりはなんなんだよ。オレは...可愛い方がいい」
ユウに似合う服が一番良いし可愛いに決まっている。
『分かった!』
ぱあっと嬉しそうな顔をしたユウを見ながら、次のデートは服屋もありだなと考えていると『わー!』とユウが興奮した声を上げた。
『屋台がいっぱいある!』
表情がコロコロ変わるユウは本当に見ていて飽きない。
何種類か購入し、2人で桜を見ながら食べる。
『美味しいね〜のどかだねえ』
「そーだな」
『あ、かっちゃんの髪に桜付いてる』
「お前にも付いてんぞ。払ってもどうせ降ってくんだから立ってから払えばいいだろ」
『かっちゃんと桜って色がいい感じだよね。髪の色とも目の色とも合って綺麗』
「そーかよ」
『小さい頃、かっちゃんの髪と目の色綺麗で羨ましかった。ヤオモモちゃんみたいに美人さんだったら黒が似合うんだろうけどそうじゃないし』
「別に黒だって綺麗だろ。オレはお前の髪も目も好きだし、できればそのままでいてほしいって思ってる」
『ありがとう』
はにかむユウと風で舞った桜が綺麗で思わず見とれてしまった。
「せっかくだし、もう少し歩いて見ようぜ」
『うん!』
遠くまで続いている桜の木を眺めながら歩いていると立ち止まってユウが写真を撮り始めた。自分も1枚くらい撮るかとスマホのカメラを起動させて写真を撮り、これでいいかとスマホを下ろしかけたところで撮影を終えたユウが桜を見始め、チャンスだとユウの写真を撮る。ユウはあまり写真に写りたがらないし、ユウの写真を撮りたいなんて自分の口からは恥ずかしくて絶対言えない。だから隠し撮りで少〜しずつコレクションを増やしている。
『いっぱい撮ってたけど上手く桜撮れた?』
「上手く撮れねえから撮り直してた」
『あはは、なるほど』
「お前は上手く撮れたか?」
『結構いい感じに撮れた!と思う!これとか!』
確かに人も写らず綺麗に撮れている。
『あとこれとか』
「へえ」
『あ』
スワイプされて出てきたのはオレの写真で思わず笑ってしまう。
「上手く撮れたか?」
恥ずかしそうにしているユウが口元をスマホで隠しながらじっと見てきた。
『怒らないの?』
「べ、別に上手く撮れてんなら問題ねェ」
自分も同じ事をしている手前、下手な事をするとブーメランになりかねないとなんとか誤魔化して切り抜ける。
『誕生日だし桜綺麗だしせっかくだから写真撮ろっか』
「そうだな」
インカメにして撮影しようとするが、なかなか上手く桜が映らない。
「相変わらず下手くそだな」
『滅多撮らないんだからしょうがないじゃん!腕死ぬ...』
「あの、よかったら写真撮りましょうか?」
『いいんですか...!ありがとうございます!』
見兼ねて話しかけてくれたカップルらしき2人に写真を撮ってもらい、ユウから写真をもらう。
もっと近付いてもよかったな...
『親切な人がいて助かったね!』
「そうだな。そろそろ家行くぞ」
『はーい!光己さんに会うの久しぶりだ〜』
ユウは楽しそうだが、ババアに根掘り葉掘り聞かれそうでオレとしては頭が痛い。
「おかえり。ユウちゃん、勝己」
『た、ただいまです...!』
「ん」
「料理できるまで勝己はテレビでも見てて。ユウちゃん、作るの手伝ってくれる?」
『いいんですか...!』
「怪我するからやめとけ。オレがやる」
『し、しないもん!』
「一応今日はあんたが主役なんだから、あんたのために何かしたいっていうユウちゃんの気持ちを汲んであげなきゃ。そんなダメダメ言ってたら嫌われるわよ」
「うるせえっつーか一応ってなんだ!」
小声で会話しながら、ユウの気持ちは嬉しいし今回は仕方ないかと諦める。
ババアもユウの不器用っぷりは分かっているだろうし、そんな難しいことや危険なことはさせないだろう。と思いつつも不安になってしまい、じっと料理をしている様子を眺める。
「勝己、気が散るから部屋に行ってて」
「は!?」
「そんなに見てたらユウちゃんが緊張して失敗しちゃうでしょ」
確かにそれはあるかもしれないと仕方なく部屋へと向かう。
「...」
布団が2組敷かれた部屋に思わず立ち止まる。
ベッドは寮に持って行ってしまったため、布団なのは分かる。でも2組あるということは恐らくというかほぼ確実にユウのものだろう。
付き合ってるとはいえ、同じ部屋に寝かせていいものなのか?
別に何かしようというわけではないが変に緊張してしまう。頼まれて添い寝をした時は緊張しすぎて寝られなかったし明日は間違いなく寝不足だろう。
今のうちに寝ておくかと布団で横になっていると料理ができたと呼ぶ声が聞こえた。
リビングに行くと父も帰って来ており、3人から誕生日おめでとうと祝いの言葉を言われる。
「...おう」
両親とユウにプレゼントを渡され、照れくさくて俯きながら席に着くと「もっと嬉しそうにしなさいよ!」とババアに怒られた。
「手伝いって何したんだ?」
『えっとねー材料混ぜるのと、クッキー割るのとフルーツ並べるのとゆで卵剥いた!』
幼稚園が手伝いでやるようなラインナップを得意げに言うユウ吹き出しそうになるのを必死に堪える。
「っ...ありがとなっ」
『うん!』
カットされてはいるが若干デコボコした卵が乗ったサラダを口に入れる。
テーブルに置かれた料理は全てオレの好物。ではなく半数くらいはユウの好物だ。普通全部オレの好物だろと思ったが美味しそうにご飯を食べるユウ見てまあいいかとたわいのない話をしながらご飯を食べる。
『かっちゃんケーキあるよイチゴタルト!』
「ユウちゃんがデコレーションしてくれたのよ。感謝して食べなさい」
ご飯を食べ終え、運ばれてきたタルトは若干イチゴの配置がズレ、バランス悪く薄ら失敗した形跡が残っているチョコプレートが乗っていた。
『上手く書けなかったし、かっちゃんのみたいに綺麗にならなかったけど頑張って作った...!』
この歪さがユウらしいなとほっこりしていると親までほっこりしていた。
「可愛い...!勝己はなんでもできちゃって可愛げなかったからほんと可愛いっ!」
「なんていうか新鮮でいいね」
『ぜ、全然可愛いくないですっ』
親に彼女が好かれているのはとてもいいことだと思うが、どう考えても熱量がおかしいと思う。親バカな親を見ているようでこっちが恥ずかしくなってくる。
「早く食わねえと全部食っちまうぞ」
サッとフォークを構えた後、ユウの顔が赤くなり、フォークが置かれる。
『ケーキ、かっちゃんのだから全部食べていいよ』
「冗談だから安心しろ」
「何今の...可愛いすぎる...」
「ユウちゃん、よければ僕の分も」
「私のも食べて食べて!」
『一切れあれば十分なのでお気遣いなくです!』
「ったく誰の誕生日だよ」
賑やかすぎる夕飯が終わり、ドッと疲れた状態で布団に転がる。
「マジで疲れた...」
親に貰ったプレゼントを開けると映画のギフトカードとテーマパークのチケットが2枚ずつ入っていた。ユウと一緒に行ってこいということだろう。
『かっちゃん...!光己さんがよければ着てってくれたんだけどどうかな...?』
お風呂上がりに部屋に入ってきたユウが着ているのはモコモコしていて温かそうなワンピース型の部屋着だった。
「いいんじゃねーの」
『よかった...!』
流石自分の親というか血は争えないようだ。趣味がよく似ている。ユウに絶対似合うと確信が持てるデザイン。正直めちゃくちゃ可愛い。
『かっちゃんの誕生日なのに、なんかごめんね。光己さん達に気遣わしちゃうし、やっぱり私来ない方がよかったね』
「気遣ってんじゃなくてお前好きすぎるだけだからほっとけ。昔からお前のことうちの子にしたいっつってたしかなって嬉しいんだろ」
『そ、そうなの?』
「もう家族みてえなもんなんだし色々遠慮すんのやめろ。その方が喜ばれる」
『分かった...』
「明日普通に学校だし寝るぞ」
布団の中にユウが入ったのを確認し、電気を消す。
『せっかくの誕生日なのにいつも何もできなくてごめんね。プレゼントもセンスないからどうしていいか分かんなくて、かっちゃんに聞いちゃうし、料理全然できないし』
「誕生日にお前と一緒に過ごせるだけで十分すぎるプレゼントだ。しかも付き合ってんだぜ?これ以上なんて怖くて望めねえ」
『そんな大袈裟な』
「大袈裟じゃねえよ。また毎日お前と会えるようになっても付き合っても、ふとした時にお前がいなくなったあとの喪失感とか救けられなかった時の悔しさとか悲しみとか思い出して怖くなる時があんだ。だから一緒にいてくれるのが安心できるし一番嬉しい」
ユウと付き合いたい。
プレゼントなんてなくてもいいからユウにまた会いたい。
ずっとずっと欲しかったもの。それが手に入った今、何が欲しいと言われてもこれというものが浮かばない。でも、またなくなってしまった時の事を考えると怖くて怖くて堪らなくなる。
未だに泣きながら救けてと叫ぶあの日のユウの夢を見ることがあるし、ユウの姿が見えないとどうしようもなく不安になる。
ゴソゴソと音が聞こえ、体が温かいものに包まれる。
『ちゃんと傍にいるから大丈夫』
抱きしめ返した体は柔らかくて小さい。でもこれ以上ないってくらい安心できて眠くなってきた。
『おやすみ。誕生日おめでとう、かっちゃん』
鳥のさえずりが聞こえる。温かくて柔らかい。心地よくて微睡んでいると、ふわふわしてて柔らかいものに顔が当たり、少し息苦しくなる。
抜け出そうとするとギュッと抱き寄せられ、苦しくて目を開けると暗くて何も見えない。体を動かすと、ん...と小さな声が聞こえ、一気に意識が覚醒する。少し手を動かすと顔に触れているのと同じくふわふわしているものに触れた。
このふわふわしてる感触ってもしかして...
昨夜の事を思い出し、勢いよく顔を上げると真下には何かを探すようにもぞもぞ動いてるユウがいた。恐らく、オレはユウに抱きしめられているというか抱きかかえられた状態だったのだろう。不可抗力であって断じて自ら胸に顔を埋めていたわけではないと思いたい。
未だ落ち着かなそうにもぞもぞしているユウを見て緊張しながら再び横になり、ユウを抱き寄せる。ドキドキとうるさい自分の鼓動で起きてしまわないか心配だったが、ギュッとオレのシャツを握り、ピッタリくっ付いてユウはすやすや寝息を立て始めた。
めちゃくちゃ可愛い。なんだこいつ。
温かいしふわふわしたぬいぐるみみたいで触り心地がいいがドキドキしすぎてとても寝れそうもない。
結局アラームが鳴るまで一睡もできず、まだウトウトしているユウを連れてリビングに向かう。
「おはよう勝己。ふふっ、ユウちゃんはまだ半分夢の中って感じだね」
「勝己!できてる料理そっちに運んでちょうだい」
料理をテーブルに運び終え、いただきますと手を合わせる。少しだけ目覚めたらしいユウがゆっくりご飯を食べているのを見ながら、二人暮しになったら早めに起こさねえとだなと考えているとババアが小声で話しかけてきた。
「あのルームウェア可愛いでしょ!見た瞬間絶対ユウちゃん着せたいと思って!それに触り心地とってもいいでしょ」
「は!?」
思わずデカい声が出てしまい、驚いたらしくユウがビクッと肩を揺らした。
「え、その反応もしかして抱きしめたりとかしちゃってるわけ?」
めちゃくちゃニヤニヤしているババアにやられたと舌打ちをする。
「うるせえババア!ってえなクソ!」
頭をはたかれ、ババアを睨みつけながら部屋に着替えに戻る。
リビングに戻ると制服に着替えたユウが赤くなっていた。
「どうした?」
『な、なんでもない!』
「じゃあ2人とも行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい」
何があったのか上機嫌なババアと父に見送られ、外に出る。
「何言われたんだ?」
『来年の誕生日プレゼント...は...キスしてあげてって...』
言われてみればせっかく付き合い始めて、ユウもプレゼントは何がいいかと聞いてくれていたのだから、言えばしてくれただろう。惜しいことをしたと後悔は残るが来年の楽しみに取っておくとしよう。
「来年楽しみにしてっから」
『あと、かっちゃんに言われたこと一日全部聞くとかって言えばめちゃくちゃ喜んでくれるよって...そんな事でい「来年のプレゼントはそれで頼むわ」
『分かった?』
全くピンときていないようだが、ユウにとって来年は大変な事になるだろう。
ユウが隣にいてくれるだけで十分幸せだし欲張るのは良くないと思いながらも、ユウの事となるとどこまでも強欲になってしまう。
けれど誕生日だしそれくらいは望んでもバチは当たらないだろう。
久しぶりに欲しいと思えるプレゼントが見つかり、ガキの頃と同じように既に来年の誕生日が楽しみでたまらなくなった。
「来年の誕生日も一緒に過ごそうな」
『うん!』
