短編
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「「「「個性事故!?」」」」
「姿通り記憶は幼少期で止まってるらしい。まあ、1日で元に戻るらしいから、それまで三条はお前らで面倒を見ろ」
「先生雑!」
「可愛い〜!保育園くらいかな?」
「お名前はなんていうの?」
『!』
「あ、あれ?怖くないよ〜」
「あーあ隠れちゃったじゃん。芦戸が怖がらせるから」
「私!?別に何もしてないし!じゃあ上鳴行ってみてよ」
「任せとけって!ユウちゃんこっち来てお兄ちゃんと遊ぼうぜ」
『...』
「更に遠くなったな」
「ショック!全然喋らねえし...爆豪と緑谷は?もうあいつらに頼むしかねえだろ」
「爆豪はトレーニング行ってるぞ」
「緑谷は」
「ええ!?ユウちゃん!?どうしたの!?わー!懐かしい!可愛い!!」
「丁度いいところに!そしてとりあえず落ち着け。1日で戻るらしいんだけど個性事故にあって小さくなっちまったんだって。面倒見ろって先生が置いてったんだけど、声かけると逃げてっちゃうし、全然喋らねえんだよ」
「ユウちゃんは昔から人前とか注目されるの苦手だから...でも人見知りって訳じゃないし、単純というか素直だから何とかなると思う。ちょっと僕行って来る」
「単純って言ったな」
「言った」
怖がらせないようにソファの影に隠れている少女に目線を合わせてしゃがむと、ビクッと肩を揺らして少女は緑谷を見た。
『いずっくん!でもおっきいのなんで?』
「可愛っ...!」
『川?』
「えっと、僕が大きくなったんじゃなくてユウちゃんが小さくなったんだよ」
『ふーん』
「あっちにいるお兄ちゃん、お姉ちゃん達はみんなユウちゃんのお友達なんだ。だから怖がらなくても大丈夫!」
『わかった!』
(それでいいの!?)
(単純っていうか多分何も考えてないよね...)
(てか、ふーんで済ますか普通!?)
(まあ、ユウちゃんやから...)
「何やってるんだ緑谷?この子どもは...?」
「轟くん、この子は個性事故で小さくなったユウちゃんだよ」
「個性事故?言われて見れば面影あるな。オレは轟焦凍だ。よろしくな」
『とろりょきしょーと?』
「ふっ 焦凍でいい。焦凍って呼んでくれ」
『わかった!』
ぐぅ〜っとお腹の鳴る音が聞こえた。
『いずっくん、お腹空いた』
「じゃあおやつでも食べよっか」
『やったー!』
「流石...三条...」
「轟がツボってる」
「てか普通に懐かれててずるい!」
「私もユウちゃんとふれあいたいー!」
「ペットかよ...」
「お腹空いてるみたいだし、おやつとかでどうにかなんねえかな?」
「あんなに怖がってたのに流石にそれは...」
((((どうにかなった))))
なんやかんやで人が増え、たくさんの人に囲まれているにも関わらず、先程までとは打って変わって、ソファの上で美味しそうにおやつを頬ぼっている。
「口にチョコ付いてるよ」
『んう?』
「可愛い!」
「可愛い〜!次私の膝の上に乗せさせて!」
「次私!」「じゃあ次オレ!」
されるがまま、どんどん色んな人の元へ移動させられ、自己紹介を受けるユウちゃんは混乱してきたらしく眉間に皺を寄せて首を傾げている。
「みんな...!ユウちゃん混乱し始めたみたいだから、自己紹介はその辺に...!ユウちゃん覚えるのあんまり得意じゃないから...」
「えー私も名前呼ばれたい!」
「悪い!そんな一気に言われても覚えらんねえよな。ごめんなユウ」
「あ!三条が切島の膝の上に!」
「物分り良いようなフリして卑怯だぞー!」
「そうだそうだ!」
「お前らがこぞって名前教えようとするからだろ!」
「うっせえな。何騒いでんだテメーら。...あ?.....
ハァ!?なんでこいつ小さくなってんだよ!!」
『ヒッ!』
「爆豪静かに...!ユウが怖がってんだろ」
「個性事故で、明日には元に戻るらしいんだけど、今は小さい時の記憶しかないみたいなんだ」
「個性事故だァ?」
ジッとかっちゃんに睨まれ、慌てて切島くんの膝の上から降りると、ユウちゃんは隠れるようにして僕の脚に掴まった。
可愛い!じゃなくて!
「ユウちゃん!あのお兄ちゃんは、大きくなったかっちゃんだから怖い人じゃないよ!」
顔が見やすいようにユウちゃんを膝の上に乗せ、そう話すとユウちゃんはチラッとかっちゃんを見た。
『かっちゃんは怖くないもん!いずっくんの嘘つき!』
「ええっ!?」「「「ブフッw」」」
「お」
盛大に吹き出す切島くん、上鳴くん、瀬呂くんをかっちゃんがすごい勢いで睨みつける間に、ユウちゃんは僕の隣に座っている轟くんの膝の上に移動していった。
「ユウちゃん!嘘じゃなくて本当に」
『嘘つき!』
ぷくっと頬を膨らませて怒るユウちゃんはとても可愛いが、僕から離れるように轟くんを挟んで座り直すユウちゃんに大ショックを受ける。
「幼馴染み2人とも嫌われたー!?」
「緑谷死ぬな!帰ってこい!」
「爆豪くんも落ち込みすぎ!」
「...落ち込んでねえわ」
「無理すんな爆豪!」
『しょーとくん半分冷たくて半分あったかい!なんで〜?』
「氷と火の個性だからな」
『すごい!氷ができた!しょーとくん、かき氷屋さんできるね!』
「ふっ そうだな」
「ついさっきまで怖がったり怒ってたのに、何事も無かったかのように、楽しそうだなユウは...」
「2人はもう立ち直れなさそうだけどな」
「昔からユウちゃんは超マイペースなんだね...今と同じだ」
かっちゃんが近付くと、やはり怖いらしくユウちゃんは轟くんにしがみついた。
「おい、爆豪怖がってんだろ」
怖がってるのは事実だが、本当はユウちゃんと仲良くしたいであろう、かっちゃんにはあまりに容赦ない一言だ。
轟くん!ちょっとはかっちゃんの気持ち分かってあげて!
クラス全員の心の声が一致し、この後のかっちゃんの反応が怖くて、みんな息を呑んで見ている。
「怖がらせて悪かった。もう近付かねえから安心しろ」
ギュッと目を瞑るユウちゃんの頭を撫でた後、かっちゃんが部屋を去ろうとすると、ユウちゃんがかっちゃんの元へ走っていった。
『かっちゃん待って!抱っこ!』
「は」
両手をあげて抱っこをせがむユウちゃんに、かっちゃんだけでなく全員が戸惑う。
戸惑った様子でかっちゃんがユウちゃんを抱き上げるとユウちゃんがかっちゃんにギュッと抱き着いた。
《ええ!?》
「な!?」
『ほんとのほんとに、かっちゃんだ!?大きくなったね、かっちゃん。あと人相わるい』
「う、うるせえ!お前が縮んだんだチビ!まあ大きくなってもお前はチビのままだけどな」
『嘘だー!絶対大きくなるもん!』
「無事懐かれたみたいだし、戻ってこいよ爆豪〜」
「ユウちゃんの独り占め反対〜!」
「うるせえ!」
『あんまり怒るのは良くないよかっちゃん』
「余計なお世話だ!」
ユウちゃんをソファに降ろし、その横にかっちゃんが座ると興味津々に上鳴くんがユウちゃんに質問し始めた。
「ユウちゃんなんであの怖いお兄ちゃんが、かっちゃんだって思ったの?」
「何ふざけた質問してんだ」
「それ私も気になる!」
『匂いがかっちゃんだった』
「匂い!?」
「すげえ野性的な答えが返ってきたな...」
「犬...」
『かっちゃんってあまい良い匂いがするの!』
「そうなの?」「マジ?」
「てめえら寄ってくんじゃねえ!」
『あと撫で方が一緒だった』
「撫で方...?」
「こっち見んじゃねえ!」
「あーそういえば爆豪がユウの頭撫でてるとこ見たことあるな」
「言われてみればオレもあるわ」
「私もある」
「アレ小さい時からの習慣のようなものだったんだ」
「えー!そんな胸きゅんシーン私見たことないんだけど!」
「胸きゅんってより、兄妹みたいで微笑ましいって感じだけどな」
「こうしてみると普通に兄妹みたいだよな。普段も似たようなもんだけど」
「こんなやつが妹とか御免だわ」
『えーかっちゃん酷い』
「そうだよな!妹じゃ付き合」
「それ以上言ったら殺す」
『ダメだよかっちゃん!殺すって言っちゃダメってこの前先生に注意されてたじゃん!』
「「ブフッw」」「そうだぞかっちゃん」
上鳴くんと吹き出す切島くん、瀬呂くんをかっちゃんが、人を殺せるんじゃないかという目付きで睨みつける。
「ねえねえ!ユウちゃんは、かっちゃんのこと好き!?」
「おい、ふざけたこと聞いてんじゃねえ!」
『好き!』
「そっかそっか〜!」「やったな爆豪!」
「うるせえ!」
ここぞとばかりに弄ってくる奴らにイライラしながら時は流れ、夜になった。
「そろそろ、ユウ寝かせた方が良いんじゃねえか爆豪?」
「なんでオレだ!明日には戻んだから同じ階のヤツが寝かせろや!」
「確かに!じゃあ私と一緒に寝よっか!」
「爆豪あいつ正気か!?せっかくの女子と寝られるチャンスを自ら放棄するなんて!!ラッキースケベな展開もありありなのにアイツ...!」
「峰田、冗談抜きで爆豪に殺されるぞ」
『私、おかあさんと寝る』
「ユウちゃん、ここにはお母さんいないから今日はお姉ちゃんと一緒に寝よう?」
『おかあさんはどこに行ったの?夜には絶対帰るって約束したのになんで!?』
(さっきまで全然平気だったのに)
(なんか様子がおかしくない?)
「ええっと...お母さんは...」
「お前の母ちゃんならオレの親と旅行行った。明日には帰るって言ってたから今日だけは我慢しろ。お前の事はオレが守ってやる。だから怖い事も心配するような事もなんもねえ」
『うん...』
「かっけえ!漢だな爆豪!」
「やべえ爆豪超イケメンじゃん」
「見直したよ爆豪くん!」
「うるせえ! 行くぞユウ」
ユウを抱き上げ自分の部屋へと向かう。
こいつがいつ頃のユウなのか気になっていたが、さっきの様子で分かった。父親が亡くなり、オレがヒーローになると約束した後、保育園にも来られるようになったし、元通りのあいつに戻ったように思えた。
けれど実際はそう簡単ではなく、1人だと怯えてパニック状態になったり、夜は母親がいなければ寝られないという話を親同士がしているのを聞いた。きっと今がその時期なのだ。
部屋に着き、ベッドに寝かせようとするがユウはオレのTシャツを掴んだまま離さない。
「安心しろ。何処にも行かねえよ」
『おかあさん無事帰って来るかな...』
「心配しなくても帰って来るわ」
『おかあさん死んじゃったら私独りぼっちになっちゃう。独りは怖いし嫌だよぉ...』
「何があってもオレはお前の傍にいる。お前を独りにはさせねえ」
『本当に...?』
「今だって一緒にいるだろうが。大きくなったお前はクラスのヤツらに囲まれて馬鹿みたいにはしゃいで毎日楽しそうに過ごしてる。だから安心しろ」
『あ...わたしが小さくなったって言ってたっけ。高校生になってもかっちゃんと一緒なんだね!おかあさんも元気?』
「...ああ。お前の事いつも応援してる」
『よかった!』
安心した顔で笑うユウにやるせない気持ちでいっぱいになる。
このまま幼馴染みとともに成長し、大好きな母親と幸せに暮らす。そうだったならどんなに良かっただろう。
これでもう十分だろ...
殺されそうになるのも、母親を亡くすのも、虐待されるのも、呪いを受けるのもなんで全部ユウなんだよ...
『かっちゃんどこか痛いの?なんか悲しそうで苦しそう』
「なんでもねえ。早く寝るぞ」
心配そうに見上げてくるユウの頭を撫でると、真似するかのようにユウはオレの頭を撫で始めた。
「何真似しとんだ」
『かっちゃんに撫でられると安心したり元気になれるから、撫でたらかっちゃんも元気になるかなと思って!』
「ふっ 確かに元気になった気するわ」
『良かった!...寝る時手繋いでくれる...?』
「いいぜ。おやすみユウ」
『お休みかっちゃん』
握った掌はとても小さく温かかった。
翌朝、目を覚ますと隣で眠っているユウは元の姿に戻っていた。目覚めてすぐに煩くなる心臓を誤魔化すように、握られたままの手を眺め、握り返す。
チビのままだと思ってたけど、ちゃんと成長してたんだな。
『んぅ...あれ?かっちゃんだ〜どうしたの?』
「な、なんでもねえわ!」
急いで握っていた手を離すが、まだユウは寝惚けているらしくぼーっとしている。
『あれ?ここどこ?』
「お前、昨日のこと覚えてないのか?」
『昨日...?』
「個性事故で小さくなってたんだぞお前。保育園の時と記憶も姿も全部一緒の状態でな」
『え!そうなの!?全然覚えてない...でもここ、かっちゃんの部屋だし、かっちゃんに多大なご迷惑をかけたとかそういう感じ...?』
「別に。お前あんまり泣かねえし、やんちゃってわけでもねえし。逆に今の方が手かかるくらいだわ」
『はは...そっか...でも夜に私が騒いだから一緒に寝てくれたんでしょ?私、小さい頃夜1人で寝られなかったから』
「... 何があってもオレはお前の傍にいる」
『え...ど、どうしたの急に?』
「昨日お前と約束した。今のお前に言っても今更って思うだろうが、覚えとけ。家族はいなくなっちまったけど、お前にはまだオレがいる。だから独りじゃねえ」
『うん...ありがとうかっちゃん』
そう言って微笑むユウと泣きそうになりながら、オレに縋りついていた幼い少女が重なってみえた。母親が亡くなった後、ユウがどんな思いで夜を過ごしていたか、昨日の姿を見れば想像がつく。暗い過去など微塵も感じさせない明るく、よく笑う少女はきっとオレが思ってたよりも強くない。
まだ言えない熱を増していくこの思いが、いつか叶うことを願いユウの頭を撫でる。
嬉しそうにふわっと顔を綻ばせるユウにつられて表情が緩むが、時計を見て思った以上に時間が経っている事に気が付いた。
「そろそろ、自分の部屋戻って支度しろ。遅刻すんぞ」
『ヤバ!朝食食べそびれちゃう!ごめんねかっちゃん!お世話になりました!』
遅刻より朝食の心配かよとバタバタと部屋を出て行くユウの背を見て笑う。
オレが幸せにしてやる。
なんて大それたプロポーズのような言葉を言う勇気も、実現させる力も今のオレにはまだない。
でも自信を持って言えるその日が来たら...
なんて考えている自分が恥ずかしくなり、誤魔化すように舌打ちをする。
「覚悟しとけよバカユウ」
その後、朝から昨日のことで弄られまくり、最悪な1日だったことは言うまでもない。
遅くなってすいません!
ちゃんとご希望通り書けているか不安しかないですが、書くのとっても楽しかったです!
鈴様リクエストありがとうございました!
「姿通り記憶は幼少期で止まってるらしい。まあ、1日で元に戻るらしいから、それまで三条はお前らで面倒を見ろ」
「先生雑!」
「可愛い〜!保育園くらいかな?」
「お名前はなんていうの?」
『!』
「あ、あれ?怖くないよ〜」
「あーあ隠れちゃったじゃん。芦戸が怖がらせるから」
「私!?別に何もしてないし!じゃあ上鳴行ってみてよ」
「任せとけって!ユウちゃんこっち来てお兄ちゃんと遊ぼうぜ」
『...』
「更に遠くなったな」
「ショック!全然喋らねえし...爆豪と緑谷は?もうあいつらに頼むしかねえだろ」
「爆豪はトレーニング行ってるぞ」
「緑谷は」
「ええ!?ユウちゃん!?どうしたの!?わー!懐かしい!可愛い!!」
「丁度いいところに!そしてとりあえず落ち着け。1日で戻るらしいんだけど個性事故にあって小さくなっちまったんだって。面倒見ろって先生が置いてったんだけど、声かけると逃げてっちゃうし、全然喋らねえんだよ」
「ユウちゃんは昔から人前とか注目されるの苦手だから...でも人見知りって訳じゃないし、単純というか素直だから何とかなると思う。ちょっと僕行って来る」
「単純って言ったな」
「言った」
怖がらせないようにソファの影に隠れている少女に目線を合わせてしゃがむと、ビクッと肩を揺らして少女は緑谷を見た。
『いずっくん!でもおっきいのなんで?』
「可愛っ...!」
『川?』
「えっと、僕が大きくなったんじゃなくてユウちゃんが小さくなったんだよ」
『ふーん』
「あっちにいるお兄ちゃん、お姉ちゃん達はみんなユウちゃんのお友達なんだ。だから怖がらなくても大丈夫!」
『わかった!』
(それでいいの!?)
(単純っていうか多分何も考えてないよね...)
(てか、ふーんで済ますか普通!?)
(まあ、ユウちゃんやから...)
「何やってるんだ緑谷?この子どもは...?」
「轟くん、この子は個性事故で小さくなったユウちゃんだよ」
「個性事故?言われて見れば面影あるな。オレは轟焦凍だ。よろしくな」
『とろりょきしょーと?』
「ふっ 焦凍でいい。焦凍って呼んでくれ」
『わかった!』
ぐぅ〜っとお腹の鳴る音が聞こえた。
『いずっくん、お腹空いた』
「じゃあおやつでも食べよっか」
『やったー!』
「流石...三条...」
「轟がツボってる」
「てか普通に懐かれててずるい!」
「私もユウちゃんとふれあいたいー!」
「ペットかよ...」
「お腹空いてるみたいだし、おやつとかでどうにかなんねえかな?」
「あんなに怖がってたのに流石にそれは...」
((((どうにかなった))))
なんやかんやで人が増え、たくさんの人に囲まれているにも関わらず、先程までとは打って変わって、ソファの上で美味しそうにおやつを頬ぼっている。
「口にチョコ付いてるよ」
『んう?』
「可愛い!」
「可愛い〜!次私の膝の上に乗せさせて!」
「次私!」「じゃあ次オレ!」
されるがまま、どんどん色んな人の元へ移動させられ、自己紹介を受けるユウちゃんは混乱してきたらしく眉間に皺を寄せて首を傾げている。
「みんな...!ユウちゃん混乱し始めたみたいだから、自己紹介はその辺に...!ユウちゃん覚えるのあんまり得意じゃないから...」
「えー私も名前呼ばれたい!」
「悪い!そんな一気に言われても覚えらんねえよな。ごめんなユウ」
「あ!三条が切島の膝の上に!」
「物分り良いようなフリして卑怯だぞー!」
「そうだそうだ!」
「お前らがこぞって名前教えようとするからだろ!」
「うっせえな。何騒いでんだテメーら。...あ?.....
ハァ!?なんでこいつ小さくなってんだよ!!」
『ヒッ!』
「爆豪静かに...!ユウが怖がってんだろ」
「個性事故で、明日には元に戻るらしいんだけど、今は小さい時の記憶しかないみたいなんだ」
「個性事故だァ?」
ジッとかっちゃんに睨まれ、慌てて切島くんの膝の上から降りると、ユウちゃんは隠れるようにして僕の脚に掴まった。
可愛い!じゃなくて!
「ユウちゃん!あのお兄ちゃんは、大きくなったかっちゃんだから怖い人じゃないよ!」
顔が見やすいようにユウちゃんを膝の上に乗せ、そう話すとユウちゃんはチラッとかっちゃんを見た。
『かっちゃんは怖くないもん!いずっくんの嘘つき!』
「ええっ!?」「「「ブフッw」」」
「お」
盛大に吹き出す切島くん、上鳴くん、瀬呂くんをかっちゃんがすごい勢いで睨みつける間に、ユウちゃんは僕の隣に座っている轟くんの膝の上に移動していった。
「ユウちゃん!嘘じゃなくて本当に」
『嘘つき!』
ぷくっと頬を膨らませて怒るユウちゃんはとても可愛いが、僕から離れるように轟くんを挟んで座り直すユウちゃんに大ショックを受ける。
「幼馴染み2人とも嫌われたー!?」
「緑谷死ぬな!帰ってこい!」
「爆豪くんも落ち込みすぎ!」
「...落ち込んでねえわ」
「無理すんな爆豪!」
『しょーとくん半分冷たくて半分あったかい!なんで〜?』
「氷と火の個性だからな」
『すごい!氷ができた!しょーとくん、かき氷屋さんできるね!』
「ふっ そうだな」
「ついさっきまで怖がったり怒ってたのに、何事も無かったかのように、楽しそうだなユウは...」
「2人はもう立ち直れなさそうだけどな」
「昔からユウちゃんは超マイペースなんだね...今と同じだ」
かっちゃんが近付くと、やはり怖いらしくユウちゃんは轟くんにしがみついた。
「おい、爆豪怖がってんだろ」
怖がってるのは事実だが、本当はユウちゃんと仲良くしたいであろう、かっちゃんにはあまりに容赦ない一言だ。
轟くん!ちょっとはかっちゃんの気持ち分かってあげて!
クラス全員の心の声が一致し、この後のかっちゃんの反応が怖くて、みんな息を呑んで見ている。
「怖がらせて悪かった。もう近付かねえから安心しろ」
ギュッと目を瞑るユウちゃんの頭を撫でた後、かっちゃんが部屋を去ろうとすると、ユウちゃんがかっちゃんの元へ走っていった。
『かっちゃん待って!抱っこ!』
「は」
両手をあげて抱っこをせがむユウちゃんに、かっちゃんだけでなく全員が戸惑う。
戸惑った様子でかっちゃんがユウちゃんを抱き上げるとユウちゃんがかっちゃんにギュッと抱き着いた。
《ええ!?》
「な!?」
『ほんとのほんとに、かっちゃんだ!?大きくなったね、かっちゃん。あと人相わるい』
「う、うるせえ!お前が縮んだんだチビ!まあ大きくなってもお前はチビのままだけどな」
『嘘だー!絶対大きくなるもん!』
「無事懐かれたみたいだし、戻ってこいよ爆豪〜」
「ユウちゃんの独り占め反対〜!」
「うるせえ!」
『あんまり怒るのは良くないよかっちゃん』
「余計なお世話だ!」
ユウちゃんをソファに降ろし、その横にかっちゃんが座ると興味津々に上鳴くんがユウちゃんに質問し始めた。
「ユウちゃんなんであの怖いお兄ちゃんが、かっちゃんだって思ったの?」
「何ふざけた質問してんだ」
「それ私も気になる!」
『匂いがかっちゃんだった』
「匂い!?」
「すげえ野性的な答えが返ってきたな...」
「犬...」
『かっちゃんってあまい良い匂いがするの!』
「そうなの?」「マジ?」
「てめえら寄ってくんじゃねえ!」
『あと撫で方が一緒だった』
「撫で方...?」
「こっち見んじゃねえ!」
「あーそういえば爆豪がユウの頭撫でてるとこ見たことあるな」
「言われてみればオレもあるわ」
「私もある」
「アレ小さい時からの習慣のようなものだったんだ」
「えー!そんな胸きゅんシーン私見たことないんだけど!」
「胸きゅんってより、兄妹みたいで微笑ましいって感じだけどな」
「こうしてみると普通に兄妹みたいだよな。普段も似たようなもんだけど」
「こんなやつが妹とか御免だわ」
『えーかっちゃん酷い』
「そうだよな!妹じゃ付き合」
「それ以上言ったら殺す」
『ダメだよかっちゃん!殺すって言っちゃダメってこの前先生に注意されてたじゃん!』
「「ブフッw」」「そうだぞかっちゃん」
上鳴くんと吹き出す切島くん、瀬呂くんをかっちゃんが、人を殺せるんじゃないかという目付きで睨みつける。
「ねえねえ!ユウちゃんは、かっちゃんのこと好き!?」
「おい、ふざけたこと聞いてんじゃねえ!」
『好き!』
「そっかそっか〜!」「やったな爆豪!」
「うるせえ!」
ここぞとばかりに弄ってくる奴らにイライラしながら時は流れ、夜になった。
「そろそろ、ユウ寝かせた方が良いんじゃねえか爆豪?」
「なんでオレだ!明日には戻んだから同じ階のヤツが寝かせろや!」
「確かに!じゃあ私と一緒に寝よっか!」
「爆豪あいつ正気か!?せっかくの女子と寝られるチャンスを自ら放棄するなんて!!ラッキースケベな展開もありありなのにアイツ...!」
「峰田、冗談抜きで爆豪に殺されるぞ」
『私、おかあさんと寝る』
「ユウちゃん、ここにはお母さんいないから今日はお姉ちゃんと一緒に寝よう?」
『おかあさんはどこに行ったの?夜には絶対帰るって約束したのになんで!?』
(さっきまで全然平気だったのに)
(なんか様子がおかしくない?)
「ええっと...お母さんは...」
「お前の母ちゃんならオレの親と旅行行った。明日には帰るって言ってたから今日だけは我慢しろ。お前の事はオレが守ってやる。だから怖い事も心配するような事もなんもねえ」
『うん...』
「かっけえ!漢だな爆豪!」
「やべえ爆豪超イケメンじゃん」
「見直したよ爆豪くん!」
「うるせえ! 行くぞユウ」
ユウを抱き上げ自分の部屋へと向かう。
こいつがいつ頃のユウなのか気になっていたが、さっきの様子で分かった。父親が亡くなり、オレがヒーローになると約束した後、保育園にも来られるようになったし、元通りのあいつに戻ったように思えた。
けれど実際はそう簡単ではなく、1人だと怯えてパニック状態になったり、夜は母親がいなければ寝られないという話を親同士がしているのを聞いた。きっと今がその時期なのだ。
部屋に着き、ベッドに寝かせようとするがユウはオレのTシャツを掴んだまま離さない。
「安心しろ。何処にも行かねえよ」
『おかあさん無事帰って来るかな...』
「心配しなくても帰って来るわ」
『おかあさん死んじゃったら私独りぼっちになっちゃう。独りは怖いし嫌だよぉ...』
「何があってもオレはお前の傍にいる。お前を独りにはさせねえ」
『本当に...?』
「今だって一緒にいるだろうが。大きくなったお前はクラスのヤツらに囲まれて馬鹿みたいにはしゃいで毎日楽しそうに過ごしてる。だから安心しろ」
『あ...わたしが小さくなったって言ってたっけ。高校生になってもかっちゃんと一緒なんだね!おかあさんも元気?』
「...ああ。お前の事いつも応援してる」
『よかった!』
安心した顔で笑うユウにやるせない気持ちでいっぱいになる。
このまま幼馴染みとともに成長し、大好きな母親と幸せに暮らす。そうだったならどんなに良かっただろう。
これでもう十分だろ...
殺されそうになるのも、母親を亡くすのも、虐待されるのも、呪いを受けるのもなんで全部ユウなんだよ...
『かっちゃんどこか痛いの?なんか悲しそうで苦しそう』
「なんでもねえ。早く寝るぞ」
心配そうに見上げてくるユウの頭を撫でると、真似するかのようにユウはオレの頭を撫で始めた。
「何真似しとんだ」
『かっちゃんに撫でられると安心したり元気になれるから、撫でたらかっちゃんも元気になるかなと思って!』
「ふっ 確かに元気になった気するわ」
『良かった!...寝る時手繋いでくれる...?』
「いいぜ。おやすみユウ」
『お休みかっちゃん』
握った掌はとても小さく温かかった。
翌朝、目を覚ますと隣で眠っているユウは元の姿に戻っていた。目覚めてすぐに煩くなる心臓を誤魔化すように、握られたままの手を眺め、握り返す。
チビのままだと思ってたけど、ちゃんと成長してたんだな。
『んぅ...あれ?かっちゃんだ〜どうしたの?』
「な、なんでもねえわ!」
急いで握っていた手を離すが、まだユウは寝惚けているらしくぼーっとしている。
『あれ?ここどこ?』
「お前、昨日のこと覚えてないのか?」
『昨日...?』
「個性事故で小さくなってたんだぞお前。保育園の時と記憶も姿も全部一緒の状態でな」
『え!そうなの!?全然覚えてない...でもここ、かっちゃんの部屋だし、かっちゃんに多大なご迷惑をかけたとかそういう感じ...?』
「別に。お前あんまり泣かねえし、やんちゃってわけでもねえし。逆に今の方が手かかるくらいだわ」
『はは...そっか...でも夜に私が騒いだから一緒に寝てくれたんでしょ?私、小さい頃夜1人で寝られなかったから』
「... 何があってもオレはお前の傍にいる」
『え...ど、どうしたの急に?』
「昨日お前と約束した。今のお前に言っても今更って思うだろうが、覚えとけ。家族はいなくなっちまったけど、お前にはまだオレがいる。だから独りじゃねえ」
『うん...ありがとうかっちゃん』
そう言って微笑むユウと泣きそうになりながら、オレに縋りついていた幼い少女が重なってみえた。母親が亡くなった後、ユウがどんな思いで夜を過ごしていたか、昨日の姿を見れば想像がつく。暗い過去など微塵も感じさせない明るく、よく笑う少女はきっとオレが思ってたよりも強くない。
まだ言えない熱を増していくこの思いが、いつか叶うことを願いユウの頭を撫でる。
嬉しそうにふわっと顔を綻ばせるユウにつられて表情が緩むが、時計を見て思った以上に時間が経っている事に気が付いた。
「そろそろ、自分の部屋戻って支度しろ。遅刻すんぞ」
『ヤバ!朝食食べそびれちゃう!ごめんねかっちゃん!お世話になりました!』
遅刻より朝食の心配かよとバタバタと部屋を出て行くユウの背を見て笑う。
オレが幸せにしてやる。
なんて大それたプロポーズのような言葉を言う勇気も、実現させる力も今のオレにはまだない。
でも自信を持って言えるその日が来たら...
なんて考えている自分が恥ずかしくなり、誤魔化すように舌打ちをする。
「覚悟しとけよバカユウ」
その後、朝から昨日のことで弄られまくり、最悪な1日だったことは言うまでもない。
遅くなってすいません!
ちゃんとご希望通り書けているか不安しかないですが、書くのとっても楽しかったです!
鈴様リクエストありがとうございました!
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