対抗戦 編
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「家帰るの久しぶりだな〜!」
「ねー!1日だけだけど、帰れないと思ってたから嬉しい!」
「お父さんもお母さんも心配してメールばっか送ってくるし顔見せて安心させてあげなきゃ!」
「久しぶりに好物作ってもらお!」
「ユウちゃんは帰るの楽しみじゃないの?」
『え?』
「確かにやけに静かだねえ〜」
『い、色々あったからさ!大怪我したり拉致されたり...』
「あーそういうことね」
「色々言われるだろうし、そりゃ憂鬱になるわ」
『う、うん!そうなんだよね!』
本当は帰らず、寮にいるけど...
ファイト!とエールをくれる葉隠ちゃん達に少し申し訳ない気持ちになるが、私の家庭事情はとても人に言えるようなものではないし、言うつもりもない。
せっかく地元に帰って来たのだから、お墓参りに行きたいところだが、自分の家がどこにあったかさえも覚えていない私が、お墓の場所なんて覚えているはずもなかった。
違う...例え覚えていたとしても、会いに行く勇気が私にはない。両親が死んでしまってる事くらい分かってる。それでもお墓を見れば思ってしまう。思い出してしまう。いくら忘れたフリをしても、こうして大勢の中にいても、お前は1人なのだと現実を突きつけられるのが怖かった。
とんだ親不孝者だなと自嘲しているとポケットに入れてあったスマホが揺れた。スマホを確認すると、部屋に来いとだけ書かれたメッセージが入っていた。
OKとやる気のなさそうなスタンプを送り、席を立つ。
部屋に行くと珍しくかっちゃんが疲れた顔をしていた。
『なんか疲れてるみたいだけど、もしかして体調悪いの?』
「体調悪かったらもう少し使える奴呼ぶわ」
『デスヨネー』
「お前、大晦日ここにいるんだろ?」
『うん。帰るとこないし、相澤先生もいていいって言ってくれたし』
「ちょっと待ってろ」
『え?うん』
かっちゃんが誰かに電話をかけているのを眺めていると、電話が繋がったらしくなにか言い合いが始まった。何を見せられてんだと思いつつ黙って見ていると突然スマホを突き出される。
「変われ」
『え、変われって何!?どういうこと!?も、もしもし...?』
<ユウちゃん!元気してる?>
『あっ多分元気です...!』
「多分てなんだよ」
<ふふっ元気なら良かった!ねえ!大晦日の日、家に来ない?>
『え、え?...え?』
「こっち見んな」
<ユウちゃんが家の事情で寮に残るって聞いたから、よかったらと思って!ご馳走いっぱい用意するし、久しぶりにユウちゃんに会いたいからさ、おいでよ!>
「押しが強すぎんだよクソババア」
<あんたは黙ってなさい!>
『あ、えっと、行っていいなら私も光己さんに会いたいんですけど、もう残るって言っちゃったし、今から変えれるかというか許可が降りるかどうか...』
<それなら大丈夫!さっき勝ち取ったから!>
『ん?勝ち取った...?』
「こっち見んな!」
<じゃあ来てくれるってことでいいわね!待ってるから!>
『切れちゃった』
「否応言わせる前に切りやがったな。お前、ほんとに来たいのか?断るなら今のうちだぞ」
『かっちゃんがいいなら行きたいかな』
「...ちゃんと着替えとか用意しとけよ」
『うん!』
当日、大勢がバスに乗る中、私とかっちゃんは相澤先生の車に乗っていた。
『私達だけこんなVIP待遇でいいんですか先生!?』
「VIPも何もどうしてもって頼まれたからな」
「ッチ」『ん?』
「まあこれが理由で許可が降りたようなものだ。大勢が乗ったバスでこんなとこに降ろすわけにはいかないからな。終わったら来い」
『墓地...?』
「行くぞ」
言われるがままかっちゃんについて行くと、花束を持った光己さんがこちらに気付き手を振ってくれた。
『ユウちゃん久しぶり!行き先が家じゃなくてびっくりしたでしょ?ごめんね。ユウちゃんにとっては来たくない場所かもしれないし、申し訳ないんだけど、どうしても成長したユウちゃんを見せてあげたくてさ。ついでに勝己も』
「ついでってなんだよ。...もう流石にお前でも此処がどこだか分かっただろ?」
『うん...』
光己さんが足をとめ、花を飾り始めた場所には三条家と書かれ、お父さんとお母さんの名前が刻まれている。
なんとも言えない気持ちが溢れて、我慢しようとしてもぽろぽろと落ちていく涙が止まらない。
どうしよう、二人も一緒なのに涙が止まってくれない...
「我慢せず泣きたいだけ泣け」
ポンと頭に手を置かれ、その手の温かさと優しさに更に涙が零れ落ちていく。
「ユウちゃんもうちのバカもこんなに大きくなったんだよ。二人とも立派にヒーロー目指してる。だから応援して見守っててあげてね」
お参りが終わる頃には私はボロボロ泣いていたが、泣き止むまで二人は何も言わずに待ってくれていた。
『ごめんなさい...時間が...』
「いいのいいの!泣くのはいいことよ。泣いたら泣いただけまた笑えるから。にしてもそのコートすっごく可愛い!私の好みどストライクだわ!」
『かっちゃんがクリスマスプレゼントにくれたんです』
「ええー!?マジで!?やるじゃん勝己!」
「うるせえ!頭撫でんな!」
「あれブランド物でしょ?お母さん半分出してあげようか?」
「いらねえ。プレゼントやるなら自分で買ったものじゃねえと意味ねえだろ」
「そっか。そういうとこは男らしいんだけどねえ...なんで肝心の告白ができないのかしら」
「うるせえ!」
なんか二人でわちゃわちゃしてる。仲良いなあ。
「さ!時間も時間だし、お腹空いたでしょ?早く帰ってご飯にしましょう!二人とも先生待たせてるんでしょ?早く行っておいで」
『忘れてた!殺される!』
「どうせ寝てんだろ」
『こういう時に限って起きてるかもしれないじゃん!行くよ!かっちゃん!』
「バカ!そっちじゃねえ!」
「うちのバカが奥手なせいで、まだなんの進捗もないのよ?昔よく一緒に話してたように、二人がくっついてくれると嬉しいんだけどね」
結局相澤先生に殺されることも怒られることもなく、家に送ってもらえた。
『かっちゃん、ありがとね』
「フン。......いつか笑顔も見せれるようになるといいな」
『え?』
「泣き顔ばっかりじゃ心配させちまうだろ。言っとくが、オレは泣くなって言ってるんじゃねえ。我慢して無理やり笑ったって余計心配かけるだけだしな。あくまで自然にだ。まあすぐには無理だし、難しいかもしれねえけど...」
『今日いっぱい泣いたし、多分次は平気。それに、もうお母さん達も心配せず安心してるだろうし』
「は?あんだけボロボロ泣いといて心配してねえわけねえだろ」
『ううん。お参りした時に、かっちゃんが一緒にいてくれるから、心配しないでねって伝えたから大丈夫!』
「...んだよそれ」
『お母さんからの信頼が厚い勝己くんですから!大きくなっても、勝己くんにばっかり頼って、全く成長できてない!って怒られちゃうかもしれないけど...』
「ハッ 色々あったし、まだ信頼があるか怪しいけどな。それに、ばっかりじゃねえよ。今度はオレもお前を頼る」
『うん!』
大丈夫、私は1人じゃない。
だから安心して見守っていて
オレがアンタらの分までユウを守ります