対抗戦 編

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爆豪落ち予定
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森のような場所で知らない男の子が怪我をして座り込んでいるのが遠くに見える。
自分の意思とは関係なしに、木の影に隠れるようにして見ていた視点が恐る恐る男の子へと近付いていく。

男の子の前に行くと、とても驚いた顔で私を見た。
手を伸ばすと、男の子は後退しようとしたが怪我で動けないようだった。
男の子の足に触れると、あの時と同じように手の甲に桜のマークが現れ、桜が舞い始める。
桜が淡いピンク色になった頃、男の子の足の傷は跡形もなく消えた。

男の子は再び驚いた顔で、私を見る。
そんな視線から逃げるようにして、走り出すと「待って!」と男の子の声が聞こえ足を止める。

「助けてくれてありがとう。僕の名前は■■■。君の名前は?」

「私の名前は────」


可愛らしい女の子の声が男の子に返答する。
緊張と嬉しいという感情が体を巡る。
突然景色が変わり、桜の木と先程の男の子がすぐ横に現れる。


「僕と付き合ってください...!」

「はい...!」


先程と同じ可愛らしい声が響く。ドキドキと胸が高鳴り、喜びが全身を駆け巡る。


コンコンとドアをノックする音がして飛び起きる。

痛っ!肋折れてるんだった...
不思議な夢...誰だったのかな?
私が言われたんじゃないってのは分かるんだけど、最後のは流石に...!

再び鳴るノックに急いでドアを開けると、カレーとうどんの乗った盆を持った、かっちゃんが立っていた。


「飯、食えんなら食え。体調どうなんだよ」

『やった!ありがとうかっちゃん!でも流石にカレーとうどん両方は食べれないな』

「カレーはオレんだわバカ!その様子じゃもう大丈夫だな」

『うん!寝たら熱下がったみたいだし今は元気。元々ただの微熱だし。なんかお腹空いたし早くご飯食べよーよ』


ご飯を食べながら、かっちゃんはいずっくんの個性について、新たに分かった事を教えてくれた。


『じゃあ、いずっくんも個性複数持ちなんだ。あの黒いのは歴代所有者の個性か...歴代所有者...』

「なんかあったんか」

『さっき不思議な夢を見てさ。誰かの中に私が入ってるみたいだった。感情とか感覚もすごいリアルに伝わってきて、でも体を動かしたり喋ったりはできなくて誰かの記憶を体験してるみたいな...知らない男の子を助けて、それで...』

「それでなんだよ」

『こ...告白された』

「はぁ!?」

『助けた場所からいきなり景色が変わってそこでね...男の子は着物着てて高校生くらいかな?私が入ってたと思われる子は、鏡なんてないし、姿はわかんないけど、手の甲に桜のマークがついてて、可愛い声だった。いずっくんの話を聞いたら、夢にしてはリアルすぎるし、呪いを継いだ人の誰かの記憶とかなのかなと思ってさ』

「...お前、熱以外は大丈夫なのか?今日に限らず、何か体が変だって思う時とか、違和感とかないか?」

『う、うん...どうしたの?そんな焦った顔して』

「...なんでもねえ。クソデクの個性やお前の狐火でカメラからはお前の姿がほぼ映ってなかったが、周りに散ってたあの桜の花びらみてえなやつが関係あんのか?」

『そっか、そっちからは見えなかったんだね。なんかまた新しい能力が発動したみたいで、あれ?マークが消えてる』

「マークだぁ?んだよそれ」

『あのね、』


私はあの時起きた事をかっちゃんに全部話した。


「夢の奴と同じ、形や色の変わる桜のマークができたんだな?お前はクソデクの個性を抑えかけたが途中で体に激痛が走った。だが自分自身何をしたかよく分かってねえ」

『うん...夢の子はその力で男の子の傷を治してたけど、私がしたのは治癒とは言えないし...なんか体に流れ込んで来る感覚がした』

「自分の傷が治せるか試したか?」

『ちょっと試してみる!』


肋や頬に触れて念じても何も起こらない。


『何も起こらないね...』

「お前、嘘ついたな?頬より先に体に触れたってことは、体のどっか結構な怪我してんだろ?よくよく考えりゃ微熱くらいじゃ授業中に保健室なんて行かねえよなァお前」

『うっ...鋭い.....肋がちょっと...ね?折れてるっていうかなんていうか...』

「ちょっとじゃねえわバカ!お前のことだから、クソデクが気に病まないようにとか考えてんだろうが、骨折なんて隠せるわけねえだろ」

『今日は熱あるからってあんまり治癒して貰えなかったけど、明日以降、たくさんして貰えばなんとかなるかなって...』

「治癒力高める分、体力使うんだ。そんな無理にブーストしたら、どっちにしろお前まともに動けねえだろ」

『確かに...』

「はあ...じゃあこれは治せるか?」

『やってみる』


小さな擦り傷ができているかっちゃんの手に触れる。
すると桜が舞い始め、傷が無くなった。


「自己治癒はできねえが他人の傷は治せるってことか。体はどっか痛かったりするか?あとマークは白い桜だったがどうなった?」

『体はなんともない。マークは消えちゃったみたい』

「そうか。色々調べるのは明日以降だな。疲れてるだろうし今日はもう休め」

『うん。ありがとねかっちゃん』


かっちゃん、なんか様子が変だったような...?すんなり受け入れてる風だったけど、夢の話聞いてやっぱり呆れてたのかな。
あの子は一体誰だったんだろう。






それから数日、着々と桜の能力の解析が進み、おおよその能力が判明した。


「ダメージを吸収する個性で間違いなさそうだな。他人の負ったダメージと相手の攻撃を吸収。治癒や防御に使えるが、吸収できる量には限度があり、一定量を超えると体にダメージが直接来る。吸収の量は限界に近くなるほど、桜の花びらとマークが赤に近付き、3時間はダメージが蓄積されたままの状態になる。桜のマークが消えれば蓄積はゼロに戻る。こんなとこか?」

『流石かっちゃん、素晴らしい分析です!』

「ちったァ自分で考えろや!とりあえず限界超えた量の吸収はすんなよ。桜色で止めろ」

『分かった!これでかっちゃんの怪我治してあげられるね!回復の個性って貴重らしいし、私の需要が上がったのでは!?』

「そんな大怪我するつもりねえわ!何よりお前に痛み押し付けて回復なんてオレはごめんだ」

『押し付けてなんてそんな』

「回復はむやみやたらに使うな。自分で負った傷は自分で治すのが筋だ。お前が引き受けるもんじゃねえ。分かったな?」

『分かった...』


せっかく役に立てそうな技を習得出来たのに...
限界量を増やせれば、かなり強力な技だし優先して伸ばした方がいいのではと、かっちゃんに言ったがこの技はあまり使うな、今まで通り他を伸ばせと却下されてしまった。

私が陣地作成で、いきなり無茶な広さを作って保健室に運ばれたからなのか、新しい技に対して異常なほど、かっちゃんが慎重だ。
早く強くなってかっちゃんの役に立ちたいのにどうして...
対抗戦で見切りをつけられた?それとも元から...






私は何も期待されてない






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