インターン&文化祭 編
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冷静になれ自分。ただ耳元でいきなり話されたから驚いただけだ。ゾクゾクっとしたのもドキッとしたのも一気に体が熱くなったのも咄嗟のことで驚いたせいだ。
かっちゃんに言われた通り、耳元で話すくらい今までもあったことだし、別に変なことではない。普通だ普通...
「ユウちゃんさっきから百面相してどうしたん?」
「爆豪となんかあったっぽいよ〜!呼び行ったら2人して真っ赤な顔してたから」
「なにそれなにそれ!何があったの!?」
「葉隠さん!今はとにかくユウさんの支度を早く整えて写真撮影しないとですわ!」
(すごいソワソワしてるし八百万さんも本当は気になってるんだな...私も気になるけど)
「よし!これで全員揃ったな!」
「じゃあ早速撮ろうぜ!ってなんでそんな端にいんだよユウ!お前は真ん中だろ!耳郎もな!」
『いいいですここで!』
「問答無用!」「ほら行った行った!」
女の子達に押され、真ん中へと連れて行かれると同じく真ん中へと押されたジロちゃんと目が会い2人で苦笑いをする。
「じゃあ撮るよー!ハイチーズ!」
数枚撮った後解散となり、早く着替えようと寮に戻ろうとすると呼び止められる。
「三条〜!女子だけでも撮ろうよ!」
『うん!』
「ユウ!演出隊でも撮ろうぜ!」
『OK!』
「ユウちゃん〜!オレとも撮ろうぜ!」
「ぼ、僕もいいかな?」「オレもいいか?」
『う、うん』
何故か色んな人と撮ることになったが、ようやく終わり今度こそと寮へ向かおうとするが再び呼び止められる。
「三条!爆豪も撮って欲しいってさ」
「んなこと言ってねえ!」
「素直になれよ爆豪〜この衣装来てるユウちゃん見れんのはこれが最後なんだぜ?」
「ユウ!悪いが一緒に撮ってやってくれ!」
『分かった...?』
かっちゃんはこっちを見ようともしないし、私も先程の気恥しさがまだあり、どうしたらいいか分からず、距離を置いて横に並ぶと、瀬呂くん達にもっと寄れと言われ恐る恐る距離をつめる。
「じゃあ撮るぞ〜ほら笑って笑って!」
「お前らいつもの距離感どうしたよ」
「あ〜でもこの写真はこの写真でありじゃね?」
「オレにも見してって ブハッ!アオハルかよw」
「あとでユウちゃんのラインに写真送っとくわ!」
「引き止めて悪かったな!」
『ううん、全然大丈夫だよ』
「おい。約束通り奢ってやるから早く着替えて来い」
『うん...!すぐ着替えて来る!』
かっちゃん達と別れ、私は駆け足で寮へと向かった。
「なになに〜?ちゃっかり文化祭は一緒に回ろうと約束してた感じ?」
「食い物で釣るとは流石爆豪」
「釣ってねえわ!ステージやる前に約束したから仕方なくだ!」
「仕方なくねえ〜?わざわざ開演間際の待機時間に三条に会いに上に来てたのに?」
「あいつに会いに行ったわけじゃねえ!」
「みんなで止めても無視してどっか行っちまったけど上行ってたの!?」
「.....」
「で爆豪くん〜ほんとに写真要らないの?」
「.....寄越せ」
写真に写った2人は気恥しそうで、どこかぎこちない雰囲気がありながらも視線だけは互いに向けられていていて、いかにも両片思いっぽく見える。
実際そうなら良いのにと心の中で溜息をつきながら写真を保存し、寮へと向かった。
クラスTに着替え寮を出ると、かっちゃんが待っていてくれた。
『ごめん、お待たせしました』
「別にそんな待ってねえ。まずは飯食いに屋台行くぞ」
『うん!お腹空いたし楽しみだ〜!あーこれで緊張とか不安なしで思いっ切り文化祭楽しめる!Tシャツ落ち着く最高』
「あの格好はとんだ詐欺だったな」
『詐欺!?一体なんの!?まさかあんな格好させられるなんて夢にも思わなかったよ...可愛いし普通にクラスTで良かったのにさ』
「まあいい思い出ってことにしとけ」
『いい思い出...なのか?』
「...お前の演技すごかった。よく頑張ったな」
『えへへ...ありがとう。かっちゃんのドラムもすごかった!てかバンドの完成度ヤバくない?そのままデビュー出来ちゃいそうな感じだったよ』
「あたりめえだ。中途半端じゃ音で殺れねえからな」
『音で殺る...』
実にかっちゃんらしい言い方だなあ。
屋台であちこち買い食いをし、かっちゃんのフライドポテトをつまんでいると、突然知らない人から声を掛けられる。
「あっ!三条さんと爆豪くんだ!1-Aの出し物良かったよ!」
「すっごく楽しかった!」
「三条さんめちゃくちゃ綺麗だった」
「マジ妖精みたいだった!」
『そ、そんな!なんかすいません...』
「なんで謝っとんだ。行くぞ」
いきなり声かけられてびっくりしたあ...なんか体育祭の時みたいだな...私は注目されずに生きていきたいのに!
『頼むから私にふれないで欲しい...恥ずかしくて死んじゃう』
「ほんとヘボメンタルだな。あの堂々と演技してた奴と同一とは思えねえ」
『お世辞も過ぎると逆にダメージがね...だって綺麗じゃないし、妖精って何!?妖精に失礼すぎるでしょ!衣装は確かに凄かったけど!』
「たこ焼き食いながら、人のポテト食ってるようなヤツだもんな」
『かっちゃんが食べていいって言ったんじゃん!』
食べ終わった後、校内を見て回ったが行く先々で声を掛けられ、なんだか疲れてしまった。
『なんか疲れた...』
「変に色々考えるから疲れんだろ。褒められてんだから素直に受け取っときゃ良いのに、めんどくせえヤツだな」
『だってすごかったとかなら分かるんだけど、見た目褒められてもさ...私なんて別に綺麗でも可愛くもないし無理して褒めなくて良いよってなるじゃん?』
「別に無理して褒めてるわけじゃねえだろ。オレも少し疲れたし、休憩にすっぞ」
『賛成〜じゃあ寮戻る?』
「いや、寮には戻らねえ」
『じゃあどこ行くの?』
「ついて来りゃ分かる」
かっちゃんについて行くと、行ったことのないような道を通り、知らない場所に着いた。
扉を開け中へ入っていくかっちゃんに続いて中へはいるとそこには立派なグランドピアノが置かれていた。
『もしかしてここって音楽室?こんなとこ初めて来たよ』
「こっちの方にある教室は大体が普通科向けのものでオレらが使うことはねえからな」
『そっか。ここら辺は文化祭の会場に含まれてないから人もいないし静かでいいね。でもなんで音楽室に?』
「お前が聞きたいって言ったんだろが」
『あ!ピアノ!弾いてくれるんだ!やったー!』
「なんか聞きてえ曲でもあんのかよ」
『特にというか私曲名とか全然分かんないし』
「聞きてえって言った癖に舐めてんのかてめェ」
『舐めてないって!じゃあモーツァルトとか...?』
「思いついた音楽家テキトーに言っただろ。まあいいわ。これならお前も知ってるだろ」
椅子に座るとかっちゃんはピアノを奏で始めた。
この曲は...!
『きらきら星!昔かっちゃんがモーツァルトの曲だって教えてくれたよね』
「どーでもいいことはよく覚えてんなお前」
『言い方に棘しかない!そういえばかっちゃん知ってる?きらきら星って恋のうたなんだって!』
「...知ってる」
『なんだ〜知ってるのかあ...というかよく喋りながら弾けるね』
「こんくらい余裕だわ」
『じゃあもっと近くで聞いてもいい?』
「好きにしろ」
『やった!』
「なんで横に座ろうとしてんだ!」
『昔隣に座って聞いてたの思い出したから?かっちゃん、もうちょっと詰めて』
「これ以上詰めたら落ちるわ!」
『え〜かっちゃん大きくなりすぎ。見るのに首痛そうだけど横向きに座るしかないか』
「諦めるって選択肢はねえのかよ。せめえなクソ」
『ふふっ 特等席で聞きたくなっちゃったからさ』
「!...チッ!ほんとどうでもいい事ばっかり覚えてやがる」
『思い出したのはさっきだけどね。小さい時のかっちゃん可愛かったよね〜お前だけの特等席だって横に座らせてくれてさ』
「今すぐ忘れろ」
『やだ!だってすごい嬉しかったんだもん!特別って感じがしてさ』
「じゃあそこでしっかり聞いとけ」
再びかっちゃんがピアノを弾き始める。
クラッシックではなく、小学生の時に見ていたアニメの主題歌。幼い頃に好きになり、今でもよく聞いている私のお気に入りの歌だ。
綺麗な音...
美しい旋律を奏でていく大きな手に鍵盤を見つめる表情。
音も然る事乍ら演奏する彼の姿はとてもかっこよかった。
すごいとか綺麗って感想ばかりで昔はかっこいいなんて思ったことなかったのにな。
「急に静かになったな。眠くなったのか?」
『ううん。ピアノ弾いてるかっちゃん、かっこいいなと思って』
「は!?」
『あ、外れた』
動揺したのか、盛大に音が外れた。
かっこいいなんて言われ慣れてるだろうに、どうしたんだろ?
「歌え」
『え、な、何突然』
「特等席に座ってる時、よく歌ってたじゃねえか」
『今は恥ずかしいし、覚えてないとこあるかもしれないし...じろちゃんのあんなすごい歌聞いた後じゃきっと滅茶苦茶下手に聞こえるし、恐れ多すぎるというか...』
「この曲プレイリストに入ってたろ。お前が別に歌上手くねえ事くらいわかっとるわ」
『じゃあ歌わなくて良くない!?』
「演奏料だ。歌わなきゃピアノやめる」
『え!?』
かっちゃんはチラッとこちらを見てニッと意地悪そうに笑った。
ミスった腹いせだ絶対!なんて性格の悪い...
でももっと演奏を聞いてたいし、ここは恥を忍んで...
『...笑わないでね?』
「ああ。始めからいくぞ」
弾いていた曲の途中から、アレンジが入り綺麗に前奏へと繋がる。
ミュージシャンでもないのに、こんなことまで出来てしまう彼は本当にズルいと思う。
緊張と恥ずかしさでいっぱいの中、歌が始まる。
昔の音をなぞって