インターン&文化祭 編
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「いくぞコラァアア」
かっちゃんの声と共に爆発が起こる。それに合わせるようにして、部屋の周囲に配置しておいた狐火を上空へと飛ばす。
「タイミングバッチリだぜ!」
『ありがとう!』
次に備え狐火を生成しながら、ステージに立つ
いずっくんを見つけてほっと胸を撫で下ろす。
良かった...!間に合った!
いずっくんと青山くんの出番が終わりいよいよ私の出番だ。
たくさん生成した狐火を一気に観客の真上に集める。難しいのはここからだ。
落ち着け。練習通りに...!
「うわあ...!」
「すごい!生きてるみたい!」
「火が色んな形に変わってく!」
よし、順調だ...!狐火で竜巻を作り上げる。
いよいよサビだ。
『瀬呂くん、お願い!』
「あいよ!」
瀬呂くんが竜巻の中心に飛ばしたボールと入れ替わる。
外に姿が見えないように、一気に自身を覆う大きな狐火を作り上げ、サビの始まりと同時に、竜巻の狐火を全方位に勢いよく飛ばす。
激しく燃え盛る炎が消し飛び、中から少女が現れる。
「人!?」
「あれ三条じゃね!?」
「火の中から一体どうやって!?」
「空中だし、何!?どういうこと!?」
「すげえ!マジックだ!」
「綺麗...!」
「神秘的だ...」
よし!成功!
ボールも私もお茶子ちゃんのゼログラビティが発動されているので、入れ替えも空中浮遊もできるという仕掛けだ。これで1番の難所は超えたが、次は観客とのハイタッチだ。
正直1番緊張するかも...てか視線がすごい!恥ずかしい!最初くらい知ってる人がいいな...
ふわふわと狐火を引き連れながら空中を泳ぐようにして移動していると、後方に相澤先生とマイク先生を見つけた。よし!いくぞ!
突然向かって来た私に驚いている先生に触れる。
ボフンッと煙をたてて、先生の姿になると、観客達はものすごいどよめき、マイク先生は横で大笑いしている。続けてマイク先生に触れ変身すると一層観客達はどよめき始める。
走り抜けるように観客に触れ、どんどん変身していく。するとビック3のすり抜ける先輩が小さな女の子を抱き上げているのが見えた。
あれがエリちゃんかな。
ゆっくり近付きピタッと触れ変身すると、エリちゃんは大きな目を更に大きくして驚いた顔をしている。
そんなエリちゃんに微笑んだ後、ステージの天井スレスレまで上がる。
空中を覆うような大きな狐火を作ると、曲の終わりに合わせ下へと放つ。
悲鳴や驚きの声が上がった後、歓声と大きな拍手が上がる。狐火でThank youの文字を作った後、ステージに降り、頭を下げる。更に大きくなる歓声と拍手に泣きそうになる。
こんな私でもちゃんと成功させられた...
これだけの人達を喜ばせることが出来たんだ...
幕がおりると、一気に気が抜けてドッと疲れが押し寄せてきた。
歩こうとして、ふらついたところを、いずっくんに支えられる。
「ユウちゃん大丈夫!?」
『大丈夫...!ちょっと疲れちゃっただけだから』
「高度なことたくさんしてたもんね。あんなにたくさんの狐火を一気に操れるようになったなんてすごいよ!
とっても綺麗だったし、火からユウちゃんが出てきたところは鳥肌ものだったよ!!」
『ふふっ ありがとう』
「三条!マジスゴかったぜ!感動した」
「ユウちゃんすごく綺麗だった!」
「三条がスゴすぎて、私達が霞んじゃったじゃん!
練習で合わせた時よりだいぶ進化してんだもん!びっくりした」
「見とれて思わず演奏を忘れてしまうところでしたわ」
「ウチも歌うの忘れるとこだった。やるじゃんユウ!」
みんな褒めてくれて...る...?まずい...眠過ぎて頭が全然回らない...
「行くぞ」
『わっ』
「おい爆豪!独り占めすんなよ〜!」
「何が独り占めだ!もうほぼほぼ頭回ってねえし、こいつ休ませてくんだよ!ここで倒れられても困るだろうが!」
『えっこれから片付けしないと』
「こっちは大丈夫だから、ユウちゃん休んでて!」
「そうそう!この後文化祭回れるように体力回復しとかないと!」
「爆豪頼んだぞー」
『みんなごめん、ありがとう』
ふらふらとぼーっとした頭で、かっちゃんに引っ張られるがまま歩き、寮に着くと片付けが終わったら起こしに来ると言ってかっちゃんは戻って行った。
眠い...もうダメ...
あまりの眠さに寮に入るなり共有スペースのソファに倒れ込むようにして眠ってしまった。
片付けが大方終わり、寮へと向かう。
「1-Aすごかったね!三条、ヤバすぎ」
「綺麗だったよね〜!今度見掛けたら一緒に写真撮ってもらお」
「三条さん、すごい綺麗だし可愛いかったな〜」
「オレ、ファンになっちゃうかも」
片付け中も今歩いてる最中にも、ユウの事を話す声が聞こえてくる。文句や不満、悪意や敵意に満ちた声ばかりだった昨日までとは違い、賞賛や羨望の声ばかりだ。本当に都合のいい奴ばかりだと心の中で悪態をつく。
ユウが過ごしやすいように、こうなることを望んでいたはずなのに、喜べないどころかイライラしている自分がいる。
今まで見てきた何よりも綺麗だった。炎の中から現れ、ヒラヒラと宙を舞う姿は、個性での姿の変化もあり、幻想的で人間離れした美しさを醸し出していた。あれに何の感想も抱かない奴はどうかしていると思う。そう思いながらも、ユウに好意のある発言をする野郎どもにイライラが止まらない。
ああクソ...
イライラしながら乱暴に入口の扉を開け寮の中へ入る。エレベーターへ向かおうとしたが、共有スペースのソファから綺麗な半透明の布が見え、そっちへと向かう。
ソファを覗き込むと、ユウがスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。
服装と化粧のせいで、いつもより大人っぽく見える。
バンド、演出と別々にずっと練習してきた為、コイツの演技をオレは今日初めて見た。
あれだけの火を1度に操り、コントロールするなんて余程練習したに違いない。文化祭前はあそこまでの技術はなかったし、すぐに出来るようになるほどアイツは器用ではない。だからどれだけ頑張ってきたか痛いほど伝わってきた。
そして技術もさることながら演技を際立たせていた、この衣装の破壊力が凄まじかった。
開演前の様子やユウの性格的に無理やり着せられたのだろうが、よく似合っているし、着せたヤツらにはナイスとしか言いようがない。見事に可愛さと美しさが両立していて、そんな衣装を纏ったまま眠るユウはまるで眠り姫のようだ。
「チッ!柄にもねえ」
自分らしくない発想に恥ずかしくなり、誤魔化すようにユウを起こそうと声を出す。
「起きろユウ」
全く反応を示さないユウに、声を大きく出そうとして思い止まる。
普段の仕返しにどうせなら少し驚かせてやろうと思い、ユウの耳元に顔を寄せる。
「起きろバカユウ」
『ふぇ!?』
あまりうるさくするのも可哀想だと、少し控えめに声を出したが、どうやらちゃんと聞こえたらしい。変な声を上げて飛び起きたユウに成功だとしたり顔をしていたが、真っ赤な顔で耳をおさえるユウと目が合い驚いて一瞬固まってしまう。
「な、なななんで赤くなってんだよ!」
『だ、だってかっちゃんが変なことするから...』
「耳元で喋っただけで、へ、変なことなんてしてねえだろうが!」
別に変なことではない。ない筈だ。しかし、顔を真っ赤にして俯いているユウに釣られるようにして、オレの顔も熱くなっていく。
「おーい!片付け終わったし、写真撮るよ〜!」
「いなくなったと思ったら、やっぱり抜け駆けしてユウちゃんのとこ来てたんだな爆豪〜って何?なんで2人してそんな顔真っ赤なの!?」
「ついにキスでもした!?」
「もしかしてオレら邪魔しちゃったんじゃ...」
『し、しししてないよ!写真撮るんだよね?早く行こうよ!』
「その反応怪しいな〜?まあでも今は文化祭楽しまないとだし、みんな外で待ってるから追求はあとで!衣装も着替えてないし、ちょちょっと髪型整えればOKだね!」
黒目に引っ張られていく、ユウを見ているとアホずらどもに絡まれる。
「隠すなよ〜その様子じゃキスしたんだろ?なあ!」
「まさか寝込みを襲ったとか」
「誰が襲うか!」
「冗談だって〜やったとしてもデコか頬にキスするくらいだろ」
「乙女かよ」
「んなことしてねえわ!!」
ぐっすり眠っているアイツを見て、その考えが過ぎらなかったこともなかったが、やっていない。というかオレはアイツを起こしただけで、変なのはアイツの反応の方だ。
断じてオレは変なことなんかしてねえ!